第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

回次

第2期

第3期

第4期

第5期

第6期

決算年月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

2024年6月

売上高

(千円)

1,939,668

16,457,876

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

24,391

12,183

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

(千円)

1,292

278,397

包括利益

(千円)

1,844

266,916

純資産額

(千円)

3,619,709

3,361,188

総資産額

(千円)

4,221,108

7,605,353

1株当たり純資産額

(円)

270.46

247.76

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

0.09

21.03

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

0.09

自己資本比率

(%)

84.33

43.26

自己資本利益率

(%)

0.04

株価収益率

(倍)

11,833.33

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

341,587

713,590

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

517,943

1,752,744

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

31,102

1,617,706

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

3,146,414

2,297,785

従業員数

(人)

63

124

(外、平均臨時雇用者数)

(-)

(-)

(-)

(20)

(21)

(注)1.第5期連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、それ以前については記載しておりません。

2.第6期における売上高の大幅な増加は、メールカスタマーセンター株式会社の連結子会社化によるものです。

3.第6期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

4.第6期の自己資本利益率は、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

5.第6期の株価収益率は、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

6.従業員数は就業人員数であり、従業員数の( )外書きは、臨時従業員(インターン、アルバイト、人材会社からの派遣社員を含まない。)の年間の平均雇用人数であります。

 

(2)提出会社の経営指標等

回次

第2期

第3期

第4期

第5期

第6期

決算年月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

2024年6月

売上高

(千円)

515,515

1,089,424

1,413,332

1,866,969

1,896,415

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

81,945

27,825

79,439

52,661

107,595

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

86,428

27,719

82,931

31,471

332,848

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

100,000

100,000

100,000

115,831

12,955

発行済株式総数

(株)

 

 

 

 

 

普通株式

10,333

10,333

12,811,700

13,242,900

13,359,800

A種優先株式

3,000

3,000

B種優先株式

4,398

純資産額

(千円)

385,291

3,051,881

3,587,752

3,590,874

3,266,421

総資産額

(千円)

469,109

3,188,388

3,729,464

4,155,861

5,187,489

1株当たり純資産額

(円)

11.79

15.62

279.99

272.75

245.93

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

9.27

2.39

6.56

2.42

25.14

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

2.27

自己資本比率

(%)

82.13

95.72

96.20

86.38

62.95

自己資本利益率

(%)

1.61

0.88

株価収益率

(倍)

440.08

配当性向

(%)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

72,933

150,315

147,100

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

21,542

14,451

129,613

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

177,955

2,628,373

614,931

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

251,418

3,015,655

3,353,873

従業員数

(人)

41

52

74

58

90

(外、平均臨時雇用者数)

(13)

(19)

(23)

(20)

(21)

株主総利回り

(%)

183.6

119.5

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(-)

(-)

(-)

(125.2)

(156.6)

最高株価

(円)

3,120

1,303

1,489

最低株価

(円)

548

548

677

(注)1.第5期より連結財務諸表を作成しているため、第5期以降の持分法を適用した場合の投資利益、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー、及び現金及び現金同等物の期末残高を記載しておりません。

2.第2期から第4期までの持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。

 

3.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため、記載しておりません。

4.第2期から第3期までの1株当たり純資産額については、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して算定しております。

5.第2期から第3期までの潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、第2期、第4期及び第6期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

6.第2期、第4期並びに第6期の自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

7.第2期から第3期までの株価収益率は当社株式が非上場であるため、また、第4期及び第6期の株価収益率は当期純損失が計上されているため記載しておりません。

8.第3期の財務活動によるキャッシュ・フローについては、有償第三者割当増資による株式の発行による収入2,628,373千円により大幅に増加しております。

9.従業員数は就業人員数であり、従業員数の( )外書きは、臨時従業員(インターン、アルバイト、人材会社からの派遣社員は含まない。)の年間の平均雇用人数であります。

10.当社は、2021年8月19日開催の取締役会決議により、2021年9月29日付で普通株式1株につき700株の割合で株式分割を行っております。第2期の期首に当該株式分割が行われたものと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)を算定しております。

11.当社は、2021年8月19日開催の取締役会決議により、2021年9月27日付ですべてのA種優先株式及びB種優先株式を自己株式として取得し、対価として当該A種優先株式及びB種優先株式1株につき、それぞれ普通株式1株を交付しております。また、当社が取得したA種優先株式及びB種優先株式のすべてについて、2021年8月19日開催の取締役会決議により2021年9月27日付で消却しております。なお、当社は2021年9月29日開催の定時株主総会において、種類株式を発行する旨の定款の定めを廃止しております。

12.2021年12月20日付をもって東京証券取引所マザーズに株式を上場いたしましたので、第2期から第4期までの株主総利回り及び比較指標については記載しておりません。第5期及び第6期の株主総利回り及び比較指標は、第4期末を基準として算定しております。

13.最高株価及び最低株価は、2022年4月3日以前については東京証券取引所マザーズ市場におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所グロース市場におけるものであります。

なお、2021年12月20日付をもって東京証券取引所マザーズに株式を上場いたしましたので、それ以前の株価については記載しておりません。

14.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第4期の期首から適用しており、第4期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

2【沿革】

年月

概要

2018年7月

データサイエンス(*1)やAI(*2)、機械学習(*3)を活用したITシステムの開発・運用、事業投資・運営を目的として、株式会社日本データサイエンス研究所(現 当社)を設立

2019年2月

駿台予備学校を運営する学校法人駿河台学園及びエスエイティーティー株式会社と業務提携

2019年3月

再配達を減少させるための配送実験を行い、スマートメータ(*4)から得られる電力データをもとにAIが配送ルートを示すシステム構築を目指す「不在配送ゼロ化AIプロジェクト」を公開

2019年4月

中部電力株式会社と株式会社インターネットイニシアティブによる合弁会社である合同会社ネコリコ及び東京大学越塚研究室と共同で、スマートホームソリューションの高度化に資する、

電力データ活用のための実証実験・共同研究において技術提携をすることを合意。

「home insight」として研究開発を開始

2019年10月

東京大学大学院工学系研究科 松尾豊教授がアカデミックパートナー(現 顧問)に就任し、東京大学との技術面での連携を強化

2020年1月

「home insight」の技術を活用し、合同会社ネコリコと東京大学大学院情報学環 越塚登研究室と共同で、AIと電力データを用いたフレイル(*5)の検知に関する実証実験について公表

2020年3月

製薬企業・医療機器メーカー向けのコミュニケーションツール「frontconnect」(「sales insight」)を、株式会社アンテカニスから譲受け提供開始

2020年6月

需要予測・在庫最適化・発注自動化ソリューション「demand insight」の提供開始

マーケティング最適化ソリューション「response insight」の提供開始

データ基盤構築サービス「Wodom!」の提供開始

2020年7月

「home insight」の技術を活用し、佐川急便株式会社、東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室、横須賀市及びグリッドデータバンク・ラボ 有限責任事業組合との5者共同で、「AI活用による不在配送問題の解消」に関する共同研究及び世界初の実証実験の実施について合意

2020年10月

ダイキン工業株式会社及び中部電力株式会社等を引受先とする第三者割当増資を実施し、提携関係を強化

2020年11月

商号を株式会社JDSCに変更

一般社団法人 日本経済団体連合会に入会

2021年3月

顧客の機密情報及び顧客が保有する個人情報が含まれるデータ管理等、情報セキュリティ体制や情報管理体制を強化する目的でプライバシーマーク(*6)を取得

 

学校法人駿河台学園と共同開発した教育業界初の「難関国公私立大入試・個別試験対策ICT教材」がリリース開始。「learning insight」として研究開発を加速

2021年5月

東京大学大学院の工学系研究科の准教授である田中謙司氏が社外取締役に就任し、東京大学の知の社会還元と実装を行う体制を強化

2021年7月

製品の不具合を監視し、運転データを活用して不具合を未然に検出することを目指す新たなAIソリューション「maintenance insight」の研究開発を大手メーカーと開始

2021年10月

「DX×PE」(*7)をコンセプトに掲げ、第一線で活躍する投資プロフェッショナルとDXプロフェッショナルから構成されるプライベート・エクイティ・ファンドD Capital 1号投資事業有限責任組合への出資及び事業連携を実施

2021年12月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

2022年3月

ダイキン工業株式会社と共同で、空調機器のIoTデータを用いた不具合監視・運転異常予兆検出AI(maintenance insight)を開発

2022年4月

東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所のマザーズ市場からグロース市場に移行

2022年5月

プライベート・エクイティ・ファンドのIAパートナーズ株式会社との戦略的な業務提携を実施

2022年10月

株式会社ファイナンス・プロデュースとの戦略的な資本業務提携及び連結子会社化を実施

2022年11月

船舶の生涯価値向上に貢献するプラットフォームを構築する合弁会社seawise株式会社を設立

2022年11月

太陽光発電の発電電力量を高精度で予測するシステムを株式会社JERAと共同開発

2023年4月

中部電力の自治体向けフレイル検知サービス「eフレイルナビ」に、特許を持つ「電力データ解析によるフレイル検知AI技術」を提供開始

2023年5月

テクノロジー企業成長率ランキング「Technology Fast 50 2022 Japan」で14位を受賞

2023年10月

メールカスタマーセンター株式会社の連結子会社化を実施

2023年11月

モルゲンロットとの戦略的な業務提携契約を締結

2023年12月

新ソリューション「agri insight」を提供開始-東急不動産の営農型太陽光発電施設でデータ取得を継続し、最適な営農手法の確立を目指す

2024年2月

内閣府主催「第6回日本オープンイノベーション大賞」において、東京大学大学院、中部電力株式会社、合同会社ネコリコ、三重県東員町と共同で取り組んだ『「電力データ×AIでのフレイル検知」産官学連携で高齢化社会課題に挑む』で、選考委員会特別賞を受賞

2024年3月

女性活躍推進企業として「えるぼし」最高位の3つ星認定を取得

2024年5月

SCSK株式会社との資本業務提携及び第三者割当による新株式の発行を公表

2024年6月

海事産業のDXと働き方改革を推進するソリューションを開発。LLM(大規模言語モデル)で、問い合わせ工数を約97%短縮

 

 

  用語集

 

用語

内容

*1

データサイエンス

統計、科学的手法、人工知能及びデータ分析などの複数の分野を駆使してデータから価値を引き出す行為であり、高度なデータ分析を実行するためのデータのクレンジング、集約、操作などをいい、分析用のデータの準備も含まれる。

*2

AI

Artificial Intelligenceの略称であり、人間にしかできなかったような高度に知的な作業や判断を、コンピュータを中心とする人工的なシステムにより行えるようにしたものをいう。

*3

機械学習

コンピュータが大量のデータを学習し、分類や予測などのタスクを遂行するアルゴリズムやモデルを自動的に構築する技術をいう。

*4

スマートメータ

電力をデジタルで計測して通信機能を併せ持つ電子式電力量計をいう。

*5

フレイル

健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態をいう。

*6

プライバシーマーク

個人情報の保護体制に対する第三者認証制度をいう。

*7

DX×PE

DXとは、Digital Transformationの略称であり、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することをいう。

PEとは、Private Equityの略称であり、未公開企業や不動産に対して投資を行い事業価値や企業価値の向上によるリターン創出を図る投資家や投資ファンドのことをいう。

DX×PEとは、DXの実行によってリターン創出を目指すPEのことをいう。

*8

SDGs

SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称であり、2015年9月の国連サミットで採択されたもので国連加盟193か国が2016年

から2030年の15年間で達成するために掲げた目標をいう

*9

アルゴリズム

ある特定の問題を解いたり、課題を解決したりするための計算手順や処理手順をいう。

*10

PoC

Proof of Conceptの略称であり、実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションをいう。

*11

Kaggle

企業や研究者がデータを投稿し、世界中の統計家やデータ分析家がその最適モデルを競い合うコンペティションをいう。

*12

SKU

Stock keeping Unitの略称であり、在庫管理における、単品単位をいう

*13

API

Application Programming Interface (アプリケーション・プログラミング・インタフェース) の略称であり、アプリケーションやソフトウェアの構築と統合 (インテグレーション) に使われるツール、定義、プロトコルをいう。

*14

CVR

Conversion Rateの略称であり、施策が顧客獲得にどの程度繋がったかの指標をいう。

 

3【事業の内容】

 当社グループは「UPGRADE JAPAN」をミッションとして掲げ、「AIでデータの真価を解き放ち産業の常識を塗り替える」というヴィジョンを実現すべく、データサイエンスや機械学習、AIといった最先端の技術を社会に実装することを目指しております。日本の現状として、企業が各社の利益追求のために個別の課題解決をDX (Digital Transformation)により実現するというアプローチが主流でありますが、個社では解決できない産業共通課題の解決やSDGs(*8)実現のためにデータ・AIを産業横断で活用するという流れがより一層加速すると考えております。当社は、AIの技術力とビジネス力の双方を駆使して、個社課題の改善のみではなく産業全体の改革(IX=Industrial Transformation)や産業共通のSDGs達成に貢献し、UPGRADE JAPANを実現することを目指しております。

 

 当社グループは「AIソリューション事業」、「フィナンシャル・アドバイザリー事業」及び「マーケティング支援事業」の3事業を報告セグメントとしております。

・AIソリューション事業

「データの真価を解き放ち、革新の連鎖を起こしていく」というヴィジョンを実現すべく、各産業の大手企業へのサービス提供を通じ、データサイエンスや機械学習、AIといった最先端の技術を社会に実装することを目指す事業が対象となります。各産業を代表する大手企業をパートナーとする共同研究開発を通じて、産業共通課題を解決するAI関連のサービスやソリューションを多数創出し、それらを自社プロダクトとして他企業にも幅広く提供することで収益を計上しております。当社の事業は一過性のAIアルゴリズム(*9)受託開発やシステム受託開発、コンサルティングビジネスとは異なり、産業全体の課題に対してAIによる改善効果を創出し、複数の顧客から継続的な収入を得るという特徴を有しております。

 

・フィナンシャル・アドバイザリー事業

「社会を変える事業を創るためのファイナンスをプロデュースする」というミッションを掲げ、企業買収や資金調達などのファイナンス領域の知見を活用し大手企業やスタートアップを支援することで社会変革をもたらすことを目指す事業が対象となります。

 

・マーケティング支援事業

ダイレクトメールの企画、制作、発送代行等のマーケティングサービスの提供を行い、さらにはDX推進やAI活用等の施策により高付加価値化を推進することで顧客企業のダイレクトマーケティングの課題解決を目指す事業が対象となります。

 

 当社グループは各産業の大手企業との提携を通じてそれらの企業が抱えている非公開のデータにアクセスが可能であるという点で、他の企業と比べて情報優位なポジションを有しております。また、データの量や種類が多いほどアルゴリズムの精度が向上するというAI領域の技術的な特徴を活かし、単一の顧客ではなく産業全体の複数社にサービスを提供することで、利益やキャッシュ・フロー等への定量的な改善効果を高めております。AIアルゴリズムの所有権は当社が有しており、AIソリューションの提供社数が増加するほど膨大なデータの学習によりアルゴリズムの精度が向上していくため、後発プレーヤーの参入に対しても非常に有効な参入障壁として機能することが期待されます。

 

 当社グループは個別企業の一過性の課題解決ではなく産業全体のSDGsの達成を志向しております。個別企業の課題解決という観点では、あらゆる産業においてAI活用による課題解決への需要が高まっており、国内のAIビジネス市場は2022-2027年の間に1.3兆円から2.0兆円に拡大する(出典:株式会社富士キメラ総研「2022 人工知能ビジネス総調査」)と予測されております。しかしながら、産業共通課題の解決という観点で見ると、SDGsにより創出されるICT関連市場が中国を除くアジア太平洋先進地域で2030年に10.4兆円に拡大する(出典:三菱総合研究所「デジタル化の社会的・経済的効果について」)と試算されており、当社グループの事業機会は非常に大きいと考えております。

 産業全体の複数社にAIソリューションを提供することが可能であるため、個社の受託開発やコンサルティング等のビジネスと比較して、AI市場/SDGs市場の成長をより強く享受することが可能となります。また、単一の産業やプロダクトに依存しない収益構造であるため、特定産業の景気動向や成長スピードに左右されない優位なポジショニングを有しております。

 

 顧客は当社グループの支援によって、AIを用いた全社経営課題の解決に関する上流の戦略策定から、実際のAIアルゴリズムの構築、システム実装並びにオペレーションの改善等の下流の執行領域まで、一気通貫で成果を創出することが可能となります。当社のAIソリューションは、利益やキャッシュ・フロー等の観点で定量的な改善効果を創出することを重視していることから、顧客は経営課題の解決やSDGsの達成を実現しやすくなります。AIソリューションの顧客との共同研究開発並びに初期導入フェーズにおいて、課題特定や全社戦略策定の支援、PoC(*10)の実施、AIアルゴリズムの構築及びシステム実装等の準委任型の役務提供を通じてフロー型(非継続)の収益を得ております。また、AIソリューション導入後のフェーズにおいて、運用保守料やサービス利用料、ライセンス利用料、コンソーシアム会費等のストック型(継続)の収益を計上しております。

 

(1) 当社グループの特徴と優位性

 当社グループの特徴と優位性は「AIアルゴリズムに関する技術面での豊富な知見」、「AIによる解決策の提示から実行まで一気通貫で支援するビジネス面での高い執行能力」及び「大手企業との共同開発(Joint R&D)と産業横展開を両立する生産性の高いビジネスモデル」にあります。

 

① AIアルゴリズムに関する技術面での豊富な知見

 当社グループは東京大学の大学院工学系研究科の松尾豊教授や田中謙司准教授、同大学院情報学環の越塚登教授の3名を顧問または社外取締役として招聘しており、それぞれの研究室と共同で特許権を取得する等、密接に連携しながら技術領域の研究開発を行っております。

 当社グループはビジネスデベロップメント、データサイエンス及びエンジニアリングの三位一体のチーム体制により、産業課題の掘り起こし、AIによる解決策の提示、AIアルゴリズムの開発及びAIソリューションの実装までを包括的に推進しております。当社グループの一部メンバーは東京大学の最先端の研究室に在籍しながら国際的にも最前線の研究活動を行っております。また、当社グループのメンバーが東京大学と共同で執筆した国際学会論文や共同で取得した特許権は、いずれも当社グループのAIソリューションの構築に大きく貢献しております。2020年に開催された機械学習の著名な世界的コンペティションであるKaggle(*11)に当社の正社員の一部が参加し、トップチームは全世界で上位0.6%の成績を収めて表彰を獲得する等、当社グループのAI領域における技術力の高さは対外的にも示されております。

 

② AIによる解決策の提示から実行まで一気通貫で支援するビジネス面での高い執行能力

 当社グループは技術面に優れたチームに加えて、コンサルティングや課題発見、プロジェクトマネジメント、事業開発等に優れたチームを構築しており、単にAIを技術として提供するだけでなく、産業や顧客の課題を解決し実際に定量的な改善効果を創出することを重視しております。

 当社グループにはコンサルティングや投資銀行、外資系メーカー等のプロフェッショナルファーム出身のメンバーが多数在籍しております。また、エンジニアでありながらMBAを保有してビジネス領域の知見を有する人材や、データサイエンティストでありながらビジネス推進も含めたプロジェクト全体の責任者の役割を担う人材もおり、定量的な改善効果の創出に必須となるビジネススキルの高さが特徴となっております。また、その他もファイナンスやマーケティング等の幅広い専門領域の知見を有しており、グループ全体で顧客の課題解決及び成果創出を進めております。

 顧客にとってAIの導入やDXの推進は、技術力が高いベンダーを選定したとしても容易に進まないケースが多いため、高い技術力を有するメンバーとビジネス領域に知見を有するチームが共同となり顧客を一気通貫で支援することで、利益やキャッシュ・フロー等について定量的な改善効果を創出しやすい体制を構築しております。結果として、当連結会計年度の継続顧客の割合(注:当事業年度に売上が発生した顧客のうち4四半期連続で売上が発生した顧客の割合)は6割を超えており、顧客の満足度は非常に高い状態となっております。

 

③ 大手企業との共同開発(Joint R&D)と産業横展開を両立する生産性の高いビジネスモデル

 当社グループは各産業の大手企業と強固なパートナーシップを結びながら共同でAI活用を推進しており、Joint R&Dフェーズとして既に多数の顧客から収益を得ております。当該フェーズにおける顧客へのサービス提供を通じて、産業固有の課題やデータを収集できるというメリットに加えて、データによる学習を通じて自社が保有するAIのアルゴリズムを強化することが可能となります。さらに、単独での開発と比較すると、共同開発は大手企業の予算や人的リソースを活用できるため、開発費用が大きく抑制され、当社グループの生産性及び収益性が向上する要因となっております。

 また、共同開発の契約においては、一部例外を除き、開発したAIソリューション及びアルゴリズムを自社保有のプロダクトとして産業内外の複数の他企業に提供することが可能となっており、単一の顧客から一過性の収入を得る受託開発やコンサルティングと比較して持続的な事業拡大を実現しやすいビジネスモデルを実現しております。収益性についても、各産業において1社目のパートナー企業と共同で創出したAIソリューションを2社目以降に横展開する際には、既に存在するプロダクト及びアルゴリズムの活用が可能であることからプロジェクトの粗利率が改善する傾向にあり、横展開が進むほど収益性が向上するビジネスモデルとなっております。

 

 結果として、特定業界に依存することなく各産業の大手企業との共同研究開発が多数進展しており、複数のAIソリューションにおいて産業内の横展開が進んでおります。アルゴリズムの精度が向上しサービスやソリューションがもたらす価値が高まること等を背景に、継続顧客が増加すると同時に、顧客1社あたりから得られる収益も上昇しやすい構造となっております。

 

(2) 事業展開するAIソリューション

 当社グループは、展開するAIソリューションごとに、共同研究開発や初期導入フェーズにおける課題特定や全社戦略策定の支援、PoCの実施、AIアルゴリズムの構築及びシステム実装等の準委任型の役務提供を通じたフロー型(非継続)の収益と、AIソリューション導入後のフェーズにおける運用保守料やサービス利用料、ライセンス利用料、コンソーシアム会費等のストック型(継続)の収益を得ております。

 産業ごとの共通課題に対してAIソリューションを創出しプロダクト化していくビジネスモデルであるため、今後もAIソリューションの数は増加する見込みであります。

 

[事業概要]

0101010_001.png

 

 

[グループ事業展開]

0101010_002.png

 

 

 

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

(千円)

主要な事業の内容

議決権の所有割合
又は被所有割合(%)

関係内容

(連結子会社)

株式会社ファイナンス・プロデュース

(注)1、2

東京都
文京区

26,521

投資銀行事業(スタートアップM&A、大型IPO、カーブアウト等の助言、フィナンシャル・アドバイザリー事業)

49.0

役員の兼任

(連結子会社)

メールカスタマーセンター株式会社

(注)3

東京都
文京区

223,800

ダイレクトメールの企画、制作、発送代行等(マーケティング支援事業)

100.0

役員の兼任

(持分法適用関連会社)

seawise株式会社

東京都
文京区

100,000

データプラットフォームの構築

自社開発ソフトウェアと他社開発ソフトウェアのSaaS提供

40.0

業務委託

管理業務受託

(注)1.特定子会社に該当しております。

2.持分は100分の50以下であるが、実質的に支配しているため子会社としたものであります。

3.特定完全子会社に該当しております。

4.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

5.メールカスタマーセンター株式会社については、売上高(連結会社相互間の内部売上を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

主要な損益情報等  (1)売上高    14,397,407千円

          (2)経常利益     179,749千円

          (3)当期純利益    119,507千円

          (4)純資産額     802,131千円

          (5)総資産額    2,738,655千円

 

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2024年6月30日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

AIソリューション事業

74

(19)

フィナンシャル・アドバイザリー事業

5

(0)

マーケティング支援事業

29

(0)

報告セグメント計

108

(19)

全社(共通)

16

(2)

合計

124

(21)

(注)1.従業員数は就業人数であり、臨時雇用者数(アルバイト・パートタイム社員を含む、派遣社員は含まない。)は、年間の平均人員を(  )外数で記載しております。

   2.全社(共通)として記載されている従業員数は、コーポレート部門に所属しているものであります。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

 

2024年6月30日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

90

(21)

36.7

1.2

8,427

 

事業部門の名称

従業員数(人)

AIソリューション事業

74

(19)

全社(共通)

16

(2)

合計

90

(21)

(注)1.従業員数は就業人数であり、臨時雇用者数(アルバイト・パートタイム社員を含む、派遣社員は含まない。)は、年間の平均人員を(  )外数で記載しております。

2.全社(共通)として記載されている従業員数は、コーポレート部門に所属しているものであります。

3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

(3) 労働組合の状況

 当社において労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 提出会社及び連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。