第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「『ありがとう』を集める。」の経営理念のもと、株主、取引先、社員等、全てのステークホルダーから信頼される企業であり続けるために、透明性の高い企業経営を目指し、コンプライアンスの徹底を経営の基本と位置付け、あらゆる法令やルールを厳格に遵守し、誠実で公正な企業活動を推進し企業の社会的責任を果たしてまいります。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループを取り巻く経営環境は、国内経済は各種経済政策の効果を受けて緩やかに回復しております。一方で、各国の政治情勢やインフレの進行など、世界経済の不確実性は高まっております。そのような中で当社グループの経営基盤の強化と安定した成長を実現するために対処すべき課題は、以下の通りであります。

 

①ホームユース事業

 主に集合住宅向けサービスを展開しているホームユース事業では、レジデンスWi-Fiサービスの新規契約獲得及びシェア拡大を目標に掲げ、邁進してまいります。また、新規契約物件は新築物件の比率が増加しており、納期が長期化しているため、受注状況の管理をより強化してまいります。

 また、ネットワークカメラ、FGスマートコール等のクロスセルによる単価アップを行いながら利益貢献する見込みです。

 

②ビジネスユース市場の開拓

 ビジネスユース事業は、従来のフリーWi-Fサービス業に加え、ホテル、介護施設、BCP対策などの業務利用Wi-Fi需要を開拓してまいります。また、リース型モデルをビジネスユース事業にも追加し、さらなる売上及び利益貢献を行う見込みであります。

 

③コスト上昇への対応

 通信トラフィックの急拡大、為替影響等によるコスト上昇に対応するため、回線の有効活用などの合理化、為替予約の検討等によりコスト上昇の影響を抑える対策を行ってまいります。

 

④社内システムの効率化・生産性向上

 会社規模拡大に伴う業務の煩雑化に対応し、社内業務の効率化及び生産性向上が必須と考えております。そのため当社の基幹システムの改修や外部サービスの利活用を実施いたします。

 

⑤内部統制の安定運用とコンプライアンスの遵守

 当社は、「内部統制」、「コンプライアンス」、「開示情報統制」が充分に機能したコーポレート・ガバナンス体制を構築することが経営上の重要な課題と認識しております。株主を始めとする全てのステークホルダー及び社会からの信頼を確保することが企業価値向上につながると考え、公正性・効率性を追求しながら、健全で透明性のある経営に努めるとともにアカウンタビリティー(説明責任)を果たしてまいります。また、株主をはじめとするステークホルダーに対して適時かつ適切に情報開示を行う経営体制の構築・整備に取組んでおります。

 

(3)経営上の目標の達成状況と判断するための客観的な指標等

 当社事業における主要な取組みは、既存事業の展開を強化し、当社グループの特徴でもある通信機器開発からWi-Fi環境の構築、運用、お客様サポートまで内製化された垂直統合型のビジネスモデルを強みとして、新たな事業パートナーの開拓や既存パートナーとの協業推進、新商品・サービスの開発・各事業におけるサービス品質の強化による事業拡大に取り組んでおります。

 主要な取組みは各事業に区別して社内目標を設定し、達成状況を判断しております。

 通信サービス事業が投資から回収まで数年を要する事業特性から、業績の伸長を踏まえ、かつ将来の事業展開・設備投資等を長期的・総合的に勘案したうえで、将来の設備投資動向等の資金を睨みつつ、株主の皆様への還元を行ってまいります。

 

(4)経営環境

次期の見通しにつきましては、ホームユース事業が引き続き堅調な展開を見込んでおり業績に大きく貢献する見込みです。ビジネスユース事業はさらなる営業体制の強化と専門性の高度化により多様な顧客ニーズに応える体制を整備、販路開拓を行い売上高を拡張してまいります。不動産事業は案件端境期に入るものの、その他事業である再生可能エネルギー(電力)事業は本格的な営業活動を開始し大きな増収を見込んでおります。

一方で基幹システム開発や財務分析ツール導入等の社内体質強化等により本社費は増加する見込みであります。

現時点で入手可能な情報や予測等に基づき、連結の業績予想を算定いたしました。

 

(連結業績の見通し)                         (単位:百万円)

 

2024年6月期実績

2025年6月期予想

増減率(%)

売上高

12,613

14,370

13.9

営業利益

2,387

2,620

9.7

経常利益

2,395

2,600

8.5

親会社株主に帰属する当期純利益

1,567

1,650

5.3

 

(連結セグメント別売上高の見通し)                  (単位:百万円)

セグメント

2024年6月期実績

2025年6月期予想

増減(%)

Wi-Fi

事業

ホームユース事業

10,386

11,140

7.3

ビジネスユース事業

1,675

2,220

32.5

不動産事業

523

410

△21.8

その他

27

600

2,071.9

合計

12,613

14,370

13.9

 以上の背景により、当社グループの2025年6月期は、売上14,370百万円、営業利益2,620百万円、経常利益2,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,650百万円を予想しております。

 なお、上記の業績予想は、本報告書の提出日現在において入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績は今後の様々な要因によって予想値と異なる結果となる可能性があります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 サステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

当社グループは経営理念として、「お客様の事業に貢献することでビジネス上の“ありがとう”を集める」を掲げています。これは、利益追求だけのビジネススタイルには限界があり、信用と信義を第一に据えた「先義後利」の精神が、企業の成長においてより重要であると考えているためです。この理念に基づき、当社は自社の発展だけでなく、社会全体の発展にも貢献できる企業を目指しています。

持続的な成長を実現するためには、従業員を含むすべてのステークホルダーとの長期的な良好な関係が不可欠です。そのため、多様な人材が活躍できる環境を整え、次世代へと続くビジネスモデルの構築と、それを支える社内体制の整備を重視しています。また、地球環境に対する課題にも事業を通じて取り組んでまいります。

上記に基づき、当社では「通信ソリューションを通じた社会への貢献」、「カーボン・オフセットの推進」、「人的資本経営の推進」を重要課題(マテリアリティ)として取り組んでまいります。

マテリアリティ(テーマ)

課題

通信ソリューションを通した社会への貢献

①日常の暮らしへの貢献

②地域活性化への貢献

再生可能エネルギー事業によるカーボン・オフセットの推進

①太陽光発電設備によるCO2削減

人的資本経営の推進

①社員の健康管理

②社員のスキルアップ

③経営幹部候補の育成

④一人当たり収益力の向上

 

(2)ガバナンス

サステナビリティ推進体制として、担当役員を筆頭に経営企画本部を中心とした推進チームを設置しています。このサステナビリティ推進チームでは、取締役会や執行役員会、各本部機能、リスク・コンプライアンス委員会と連携し、重要課題に関するリスクや機会を特定し、課題解決のための施策の立案および実行を推進しています。また、これらの活動の進捗をモニタリングし、グループ全体での取り組みをサポートしています。

今後は、サステナビリティ委員会を設置し、社外取締役も参画することで、各分野における助言や監督機能を強化し、さらに充実したサステナビリティ推進体制を構築してまいります。なお、本委員会では、当社が特定した重要課題を中心に、持続的成長に関する取り組みについての審議や、活動進捗の評価を行い、取締役会に報告する予定です。

 

(3)戦略

当社グループは「通信ソリューションを通じた社会への貢献」として、ホームユース事業およびビジネスユース事業を通じて、日常生活や地域活性化への貢献を目指し、事業戦略を展開しています。また、地球環境への取り組みとして、再生可能エネルギー事業を通じて「カーボン・オフセットの推進」を進めてまいります。「人的資本経営の推進」については、これらの戦略を確実に実行するため、社員の健康やスキルアップを通じた自己実現の支援、経営幹部候補の育成、収益力の向上による経営基盤の強化を図る方針です。各事業の戦略については、2024年8月14日に公表した2024年6月期決算説明資料に記載されています。

「2024年6月期決算資料:https://ssl4.eir-parts.net/doc/9450/ir_material_for_fiscal_ym/161895/00.pdf 」

 

また、カーボン・オフセットの推進(気候変動への対応)及び人的資本経営の推進については、以下の取り組みを進めてまいります。

 

①気候変動への対応

当社では、気候変動に関連する自社のリスクや対応策および考えられる機会について、TCFD提言に基づき、重要な物理的リスク、移行リスク、機会を以下の通り開示いたします。

 

リスク種類

顕在化時期

影響度

対応方針

移行リスク

(1.5~2℃シナリオで最も顕在化すると想定)

政策・法規制リスク

規制対応コストの増加

中期

・法規制調査および製造ベンダーからの情報収集

・製品の省資源化推進

・複数調達先による安定調達と適正価格での調達

技術リスク

環境配慮技術に対する投資・開発コスト増加

中期

・メーカーや業界の市場動向のモニタリング

・製品リサイクルの推進、省エネ、耐久性能向上による長期利用

・新規パートナー開拓

市場リスク

環境負荷の大きい商材需要の減少

中期

・環境配慮事業の成長に向けて投資・開発を拡大

・機器メーカーや業界の市場動向のモニタリング

物理的リスク

急性リスク

サプライチェーンの被災による操業停滞

中期

・持続可能な調達に向けたサプライチェーンマネジメントの実施

・サプライチェーンBCPの策定

機会の種類

顕在化時期

影響度

対応方針

機会

資源の

効率性

生産や輸送の高効率化によるエネルギーコストの削減

長期

・通信機器の製造コスト、在庫コントロールによる輸送コストの削減

・あらゆる場所に通信の導入、高速化、長距離化の促進により、ドローンやセンサー、VR/AR/MRによる遠隔ビジネスが活性化し、エネルギーコストが削減される

製品・

サービス

 

再生可能エネルギー事業による、自家消費型太陽光発電システムの需要増加

長期

・蓄電、蓄熱設備を増設し、リサイクルエナジーの提供促進

環境配慮技術の開発や実装に対する助成の強化

短期

・助成制度の活用による再生エネルギービジネスの拡大

環境配慮設備(再エネ、バッテリー、燃料電池など)に必要な材料や部品、ソリューション需要増加

中期

・環境配慮技術への開発投資、パートナー開拓による対応技術の発展、新市場開拓による販売増加

 

 

 

②人的資本経営の実現

当社グループは製品開発、営業、導入、運用からアフターサポートまでをワンストップで行うビジネスモデルを実現しており、「職種ダイバーシティ」であることが特徴です。具体的にはハードウェア、ファームウェア、ネットワーク等の各種エンジニア、営業スタッフやカスタマーサポート、経営管理スタッフ等、職種は多岐にわたります。

また、目指すべきはジョブ型雇用ではなく、一人が複数の業務に対応できる能力を身に着けていく「多刀流人材の育成」であり、その時々の企業課題に合わせて柔軟配置ができるよう、継続して社員の能力開発を行ってまいります。各課題に関して、以下のとおり施策を掲げております。

課題

施策

社員の健康管理

・定期健康診断の実施、ストレスチェック

・従業員エンゲージメントの可視化による見直し

社員のスキルアップ

・社内教育制度、資格取得支援制度の充実

・社内公募制度

・表彰制度の確立・運用

経営幹部候補の育成

・経営幹部育成コースの設置

一人あたり収益力の向上

・上記施策実行(健康管理、スキルアップ)による収益力の向上

・生成AIを活用した業務効率化の支援

・多機能組織の適正な評価システムの導入

 

(4)リスク管理

担当役員を始めとするリスク・コンプライアンス委員会にて、全社リスクの把握とモニタリングを行っております。予防的な取り組みとして、各本部からあがってきた具体的なリスク事項を分析し、事象が発生していないかどうか、そのための対策を行っているかどうかを四半期ごとに確認し、執行役員会で共有され、リスクに対する適時な対応が行われています。気候変動リスクについては、サステナビリティ推進チームにてモニタリングを行いリスク・コンプライアンス委員会と連携し対応しております。

リスク事案が発生した場合には、執行役員会メンバーを始めとする緊急対策本部を設置し、事態への迅速かつ的確に対応を行います。

 

(5)指標及び目標

気候変動に関する指標については下記のとおりです。

①気候変動への対応

(a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

当社は現在、気候関連リスク・機会を管理するための指標については定めておりません。

今後、当社において指標を定める目的や必要性を協議し、また、同業や同規模の企業のTCFDに関する開示動向を注視しながら、必要な場合は指標の策定を検討して参ります。

 

(b)温室効果ガス排出量(Scope1・2)(※1)

当社は2021年度(※2)からグループ全体の温室効果ガス排出量の算定に取り組んでおります。

当社のScope1・2温室効果ガス排出量は、2021年度(※2)は約89.42 t-CO2、2022年度(※3)は76.77t-CO2、2023年度(※4)は77.23t-CO2、2024年度(※5)は45.25t-CO2となりました。2030年度には排出量ゼロを目指してまいります。

Scope3温室効果ガス排出量については、今後、測定を行ってまいります。

 

 

 

当社Scope1・2温室効果ガス排出量実績、見込み及び目標

(単位:t-CO2)

温室効果ガス排出量

実績・目標

実績

目標※5

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

2030年度

Scope1・2排出量 合計

89.42

76.77

77.23

45.25

0

内訳

Scope1排出量

4.67

5.99

6.72

6.09

0

Scope2排出量

84.75

70.78

70.51

39.16

0

※1.

・Scope1→当社のガソリン使用量×排出係数(2.320(t-CO2/kl))。

排出係数は環境省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を参照しております。

・2021年度Scope2→当社各オフィスの電力使用量×電力会社別排出係数の合計値。

排出係数は「電力会社別排出係数-R1年実績-R3年1.7環境省、経済産業省」を参照しております。

・2022年度Scope2→当社各オフィスの電力使用量×電力会社別排出係数の合計値。

排出係数は「電力会社別排出係数-R2年実績-R4年1.7環境省、経済産業省」を参照しております。

・2023年度Scope2→当社各オフィスの電力使用量×電力会社別排出係数の合計値。

排出係数は「電力会社別排出係数-R3年実績-R5年1.24環境省、経済産業省公表、R5年5.26一部修正、R5.6.20補正率追加、R5.7.18一部追加・更新」を参照しております。

・2024年度Scope2→当社各オフィスの電力使用量×電力会社別排出係数の合計値。

排出係数は「電力会社別排出係数-R4年度実績-R5.12.22環境省・経済産業省公表、R6.7.19一部追加・更新」を参照しております。

・Scope2について台湾オフィスの排出係数は以下の値を参照しております。

台湾電力公司(https://www.taipower.com.tw/2289/2363/48864/51153/normalPost)

※2. 2021年度→2020年7月1日~2021年6月30日

※3. 2022年度→2021年7月1日~2022年6月30日

※4. 2023年度→2022年7月1日~2023年6月30日

※5. 2024年度→2023年7月1日~2024年6月30日

※6. J-クレジット購入による削減を含みます。

 

 

②人的資本経営の実現

当社グループは、多様な視点・価値観を有する人材育成による企業価値向上を目指しており、様々な職種の経験を通じて社員のスキルアップを実現する職種ダイバーシティや、変革に対応できる人材育成と社内環境整備を行っております。また、社員一人ひとりが仕事を通じて自己実現、やりがいを感じられるよう支援する取り組みも推進しています。さらに、人材・働き方の多様化への対応として、フレックスタイム制や在宅ワーク、育児休暇取得などの柔軟な働き方の促進にも力を入れています。

 

(a)働き方多様化への対応指標として、当社グループでは「リモートワーク実施率」「育児休暇取得率」「女性管理職比率」「グローバル人材の比率」を集計しております。実績は以下のとおりです。

 

 

2024年6月期実績

リモートワーク
実施率
(注)1

育児休業取得率

(女性)

育児休業取得率

(男性)

女性管理職比率

グローバル

人材比率

(注)2

割合

65

100

80

27

12

(注)1.正規雇用労働者のうち、月1回以上リモートワークを実施した従業員の割合

2.正規雇用労働者のうち、外国籍の従業員比率

 

(b)当社グループは、多様な年代の人材が活躍できるダイバーシティの推進を図る指標として年代別分布を集計しております。実績は以下の通りです。

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なお、重要課題に対する各課題の指標および目標の検討を進めております。人的資本に関する取り組みにおいても、今後指標と目標を設定してまいります。

 

3【事業等のリスク】

本報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。

当社グループはこれらのリスク発生の可能性を十分認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社グループ株式に関する投資判断は、本項及び本報告書中の本項以外の記載事項内容もあわせて、慎重に行われる必要があると考えております。

また、本項の記載内容は当社株式の投資に関するすべてのリスクを網羅しているものではありません。

以下の記載のうち将来に関する事項は、特段の記載がない限り、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1)情報セキュリティに係るリスクについて

当社グループは、インターネットを用いたサービスを展開しており、当社グループのサービス提供に必要なコンピューターネットワークをはじめとする情報セキュリティの強化を推進し、設備及びネットワークの監視や冗長化、定期的なデータのバックアップなど、障害の発生防止に努めております。

しかしながら、製品の脆弱性を悪用されたコンピューターウイルスやハッカーなどによる攻撃、ハードウェア・ソフトウェアの不具合、人為的ミス、地震、火事などの災害、その他予期せぬ重大な事象の発生により、万が一、当社の設備又はネットワークが利用できなくなった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)個人情報の管理に係るリスクについて

当社は電気通信事業者であり、当社グループの保有するデータベースには、消費者の通信行為にかかる通信記録及びサービス利用者の個人情報のデータが蓄積されております。このため、当社グループ各社は、個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者に該当し、個人情報の取扱いについての規制の対象となっております。

当社グループでは、これらの情報の重要性に鑑み、情報保護に関する各種規程を定め、2016年2月にプライバシーマークの認証を取得し、当社グループによる個人情報管理の社内研修も実施しております。外部委託先との機密保持契約を締結するなど法令やルールを厳格に取組み運用しており、プライバシーポリシー等を含めて当社のサイトに提示しております。

現時点までにおいて、情報管理に関する重大な事故やトラブルの発生は認識しておりません。しかし、これら情報等が何らかの形で外部漏洩したり、不正使用されたりする可能性が完全に排除されるとはいえません。

従いまして、これらの事態が起こった場合、とりわけ通信記録の漏洩が発生した場合には、監督官庁より業務改善命令が発せられる可能性もあり、当社グループへの損害賠償請求や当社グループの信用の低下等によって当社グループの経営成績及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。

 

(3)法的規制に係るリスク

当社グループの事業におきましては、「有線電気通信法」、「電波法」、「電気通信事業法」、「建設業法(北海道知事許可:電気通信工事業)」等の法的規制を受け、またそれら事項を遵守しております。当社は、「電気通信事業法」による電気通信事業者として次の通り総務省から登録を受けております。

取得年月

2015年7月

許認可等の名称

電気通信事業者登録全部認定(電気通信事業登録 第358号)

所管官庁等

総務省

許認可等の内容

電気通信事業法第9条の規定に基づく電気通信事業の登録

有効期限

無し

法令違反の要件及び主な許認可取消事由

法令違反の要件:電気通信事業法第14条

取消事由:通信事業者としての欠格要件に該当

 

現在のところ、これらの法律による規制の強化等が行われるという認識はありませんが、これらの規制が変更され、又は新たな法令が適用されることにより事業に対する制約が強化された場合、事業活動が制限され、又はコストの増加につながる可能性があります。

また、上記登録又は認定の取消し等の懸念は生じておりませんが、それらの事象が生じた場合、当社グループの主要な事業活動に支障をきたすとともに、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)知的財産権に係るリスクについて

当社グループは、通信インターネットビジネス業界における技術革新、ビジネスの拡大に伴い、知的財産権の社内管理体制を強化しておりますが、契約条件の解釈の齟齬、当社グループが認識していない知的財産権の成立等により、当社グループが第三者から商標等に係る知的財産権侵害の訴訟、使用差止請求等を受け金銭の支払等が発生した場合、当社グループの経営成績及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。

 

(5)競合他社の影響について

当社グループの属するホームユース事業を主とする業界には、多数の競合企業が存在しております。当社グループは、ブランド力の強化を図るとともに、顧客ニーズに応じた商品開発・企画、サービス提供価格、通信速度及び通信品質、付加価値サービス、多言語コールセンター等を一気通貫で提供することで差別化を図っておりますが、異業種からの新規参入者等を含め競合他社による商品力・サービス力、価格競争力、知名度、顧客基盤が優位である場合があります。その場合、当社グループの収益力の低下や、顧客獲得の進捗鈍化により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)提携・協力関係について

当社グループでは、取次販売代理店や協力企業などのビジネスパートナーとの提携をさらに進め、商品・サービスの開発や販売体制の整備・強化、さらなる顧客販路の開拓に努めております。本報告書提出日現在においてビジネスパートナーとの関係は良好でありますが、期待する効果が得られない場合や何らかの事情により、提携・協力関係が解消された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、売上占有率の高いビジネスパートナー販路の売上が鈍化することにより、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)事業における仕入、ネットワーク回線・帯域調整コスト、データセンターの賃貸借契約、製造委託について

当社グループは、ネットワーク回線及びデータセンターの設備の一部を自社で保有することなく、複数の国内通信事業者から通信サービスの回線の提供を受け、またそれらの施設内に、自社の製品機器を設置し、顧客にサービスを提供する形態により事業展開しております。

インターネット上では、利用者一人あたりの使用データ量は急激に増えております。これにより、インターネット業界全体で、通信回線整備が需要に追いつかなかったり、帯域の不足が生じたりしております。

当社グループでは、回線・帯域調達の効率化を含めた高効率のネットワーク運用を行うなどの努力を行い、これらの環境に対応すべく努めておりますが、更なる設備供給不足が進んだ場合には、これらの要因により、当社グループの事業運営及び拡大が制約され、調達コスト増加により採算悪化が生じる可能性があります。

また、ネットワーク回線及びデータセンターの設備所有者との間でサービス提供契約及び賃貸借契約を締結し、契約期間満了後も賃貸借契約等の継続を予定しております。しかしながら、所有者が何らかの理由で、契約の継続を全部もしくは一部拒絶した場合又は契約内容の変更を求めてきた場合には、当社グループが、従前と同様の取引条件で更新できるという保証はありません。

 

(8)大規模システム障害に係るリスクについて

当社グループは、サービス製品開発のための設備を多数保有しており、当社グループが提供するサービスにおいて顧客の情報資産が格納されるサーバーは、日本国内において2拠点以上で管理することでリスク分散を図っております。当該データセンターは、登録電気事業者として基準とされている迂回経路を確保した冗長構成、大規模地震に耐えられる耐震構造、消火設備、停電時に備えたバックアップ電源等24時間365日安定した運用ができるよう最大限の業務継続対策が講じられております。また、障害発生時の検知と現地対応人員の確保を迅速に行う体制を整えております。

しかしながら、サイバー攻撃、システム又はハードウェアの不具合、電力会社の電力不足や大規模停電、想定したレベルをはるかに超える地震、台風、洪水等の自然災害、戦争、テロ、事故等、予測不可能な事態によってシステム障害が発生した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、通信設備の不具合、システム設定や仕様変更に伴うプログラム変更に不備があり、システム障害が発生した場合には、大規模な範囲で当社の通信サービスを提供することが困難となる可能性があります。

 

 

(9)風評被害について

当社グループはソーシャルメディアサイト等の定期的な巡回を行い、執行役員会議において巡回結果の報告を行っており、必要に応じて適切な情報開示により風評被害の払拭を図っております。

しかしながら、ソーシャルメディアやインターネット上の書き込みなどによる風評被害が発生、拡散した場合 その内容の正確性に関わらず、ブランド力の低下や、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)製品の陳腐化、脆弱性の顕在化について

当社グループは、ルーター等の通信設備を自社で開発しており、ファームウェアの定期的なアップデートや数年周期での新製品への交換等を行っております。

しかしながら、それらの製品を構成する部品の老朽化や製品の脆弱性を悪用されたコンピューターウイルスの感染が起きた場合は、一時的なサービス停止や交換のためのコストが発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)技術動向対応遅れについて

当社グループは、インターネットの高速化や、IoT等のインターネットに接続する製品やクラウドサービスが次々と登場する中で、新規サービスや製品の導入が滞った場合、顧客獲得や維持に支障が生じ、競合他社に対して競争力を失う可能性があります。社内においても業務効率向上のためのシステム増強や人材へのトレーニングが滞った場合、競合他社に対しての優位性が失われる可能性があります。

 

(12)違法性、危険性のある製品の仕入について

当社グループは、製品開発や製造の委託先に対して製品の保証内容や役割の明確化、新規開発については委託先への調査や監査を行い、違法性や危険性のある製品の仕入を未然に防いでおります。

しかしながら、違法性や危険性のある製品を仕入れてしまった場合は、当該製品を廃棄せざるを得ず、または既に導入してしまった場合は交換のためのコストが発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)人材の確保及び育成について

当社グループの更なる販売活動強化及び事業拡大を図るため、新卒者の採用、中途での専門知識保有者・業務経験者の採用を強化、さらに紹介制度やアルムナイ等の人材採用も積極的に取り入れております。また、社員の階層に応じた研修を実施する等、人的資源の活性化に引き続き注力する方針であります。

しかしながら、上記方針に基づく採用活動や人材育成が計画どおり進まない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)特定の人物への依存について

当社グループの代表取締役である猪又將哲は、当社グループの事業開始以来、最高経営責任者として、経営方針及び事業戦略を決定するとともに、新規ビジネスの開拓及びビジネスモデルの構築から事業化に至るまでの過程において重要な役割を果たしております。

当社グループは、権限の委嘱や経営幹部候補の育成、取締役会や執行役員会議等において役員及び幹部社員間の情報共有を図ることで、猪又將哲に過度に依存しない経営体制の構築を進めております。しかしながら、何らかの原因により猪又將哲の業務遂行が困難になった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)ホームユース事業における収益構造について

当社グループのホームユース事業は長期契約による継続収益に加えて、契約形態に応じたサービス導入時に発生する一時収益の両面を併せ持つ収益構造となっております。

長期契約による継続収益については、利用料売上に対応した費用として、受注にともない先行投資として構築した通信設備の減価償却処理を定率法により行っているため、新規契約案件の利用料売上の発生当初は利益率が低く推移する傾向にあり、サービス導入時に発生する一時収益と比べて利益率が低い状況にあります。

現状の事業拡大の局面におきましては、新規契約案件についてサービス開始当初の継続収益の売上高構成比が上昇する事によりセグメント利益率が低下する可能性が有り、そのような場合、当社グループの全体の利益率が低下し、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)ホームユース事業における初期導入サービスに係る売上高の期間帰属について

当社グループは、ホームユース事業において、顧客向けのインターネット接続機器の設置・設定(以下、初期導入サービスといいます。)を行っております。このうちインターネットサービスの提供サービス(以下月額利用料サービスといいます。)と一体の履行義務とみなされない初期導入サービスはインターネット接続機器の設置・設定作業が完了した一時点で収益を認識しており、当連結会計年度における当該初期導入サービスのうち一時点で収益を認識した売上高は2,126百万円であり、連結売上高の17%に相当いたします。

ただし当社の顧客であるマンション・アパート等の賃貸物件オーナー様に、工事実施日に現地でお立ち合い頂くことは実務上難しいことから、その当日の工事完了報告書等の書面入手は困難であります。その代替として、当社において、現地に設置したルーター等の通信設備がインターネットに接続していることの確認(以下、「疎通確認」といいます。)を行い、当該確認日を売上計上日としております。

このため、疎通確認が有効に機能しない場合や、疎通確認結果が不適切に調整された場合、売上高が適切な会計期間に計上されない可能性があります。また、疎通確認が実施されずに売上計上が行われた場合、初期導入サービスに係る売上高が適切な会計期間に計上されない可能性があります。

 

(17)通信設備の現物確認について

当社グループは、当連結会計年度の連結貸借対照表において、通信設備(純額)7,153百万円を計上しております。これは顧客へのインターネット接続サービスを提供するために、当社が保有するルーター及びアクセスポイント機器等の固定資産であります。資産残高は当連結会計年度の連結総資産の約55%に相当いたします。

 当該通信設備は顧客の施設等に設置し、インターネット接続サービスの終了時に会計上、除却処理を行います。当連結会計年度において計上した固定資産除却損51百万円のうち、通信設備に係る固定資産除却損の金額は45百万円です。

当社グループは半期ごとに当該ルーター等の通信設備のインターネット接続確認(疎通確認)を実施することにより、現物の有無を確認しておりますが、当連結会計年度末時点において所有する通信設備の数は652,169個であり、また当連結会計年度中に除却した通信設備の数は19,998個あります。数量が多いため、これらの通信設備についてサービス終了時に適時に除却処理が行われない場合には、連結貸借対照表上、資産が過大に計上されるほか、親会社株主に帰属する当期純利益が過大に表示される可能性があります。

 

(18)減損損失に係るリスクについて

当社グループは、Wi-Fi通信サービスを提供するための通信設備を有しております。これらの資産は、ホームユース事業、ビジネスユース事業の二つの報告セグメントにて使用しております。それらの事業において、その収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には帳簿価額を減損し、当該減少額を減損損失として計上することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)内部管理体制について

当社グループは、グループの企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題の一つと位置付け多様な施策を実施しております。当社グループでは、内部監査室を中心とした内部監査の実施や経営管理本部の内部統制チームによる内部統制の構築、改善等により、適切な内部管理体制を維持、構築しておりますが、今後、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(20)有利子負債への依存度について

当社グループは、事業の特性上、収益に先行して通信設備投資が必要となります。現状の事業拡大局面におきましては、通信設備投資規模は増加傾向にあり、資金面では手元資金に加えて金融機関からの借入金によって調達しております。また不動産事業においても販売用不動産の購入資金は手元資金に加えて金融機関からの借入金によって調達しております。当社グループでは、財政状態の健全性を維持するため手元資金とのバランスを考えながら借入額や借入時期を調整しておりますが、市場金利が上昇する局面や、通信業界または当社のリスクプレミアムが上昇した場合には、支払利息が増加し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、資金調達に際しては、営業獲得受注状況、販売用不動産の物件概要及び製品開発本部内における通信機器の開発並びに工事運用部による各製品機器の在庫状況を確認して、特定の金融機関に依存することなく、案件ごとに金融機関に融資を打診し、融資の了解を得ております。

しかしながら、何らかの要因により当社グループが必要とする資金調達に制約を受けた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(21)為替レートの変動について

当社グループが販売する通信設備機器の製造は台湾の提携工場を通じて行っているため、米ドル建ての取引を行っております。これに伴い米ドル建ての費用及び資産・負債が発生しております。また、国内企業を通して海外の通信端末機器の仕入れを行っております。そのため、日本円と米ドル間の為替相場が円安傾向となった場合、円換算した仕入価格が増加することになります。当社グループでは、急激な円安抵抗に対応するため、為替予約などのリスク回避対策を行ってまいりますが、その時点の状況如何では、かかる増加分を適正に販売価格に反映できず、当社グループの業績における利益率の低下を招く可能性があります。

一方、円高傾向となった場合は、在庫販売取引において、状況の如何によっては、円高還元の販売価格引き下げを余儀なくされ、先行して仕入れた商品原価との値差が縮小し、利益率の低下を招く可能性があります。

 

(22)プライム上場維持基準について

当社グループは、東京証券取引所の市場再編においてプライム市場を選択しましたが、2024年6月末時点においてプライム市場の上場維持基準である流通株式時価総額100億円以上を下回っております。「上場維持基準の適合に向けた計画」に従い、事業の成長性をこれまで以上に高め流通時価総額100億円以上を維持できるよう取り組んで参りますが、株式市場の動向によってはプライム市場の上場維持基準に満たない可能性があります。

 

(23)不適切な財務報告について

当社グループは、財務報告の適正性を確保するための内部統制体制を整備しております。

しかしながら、財務報告に係る内部統制が機能せず、不適切な財務報告が行われた場合には、信用の失墜、市場の評価の低下や上場廃止等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(24)顧客対応不備によるクレーム及び工事現場における事故発生による損害賠償について

当社グループは、クレーム対応のマニュアル作成や対応の記録による情報の共有化を図ることでクレーム兆候案件を把握しクレームを防止できるように努めております。また工事業者への作業指示の定期的な見直し等により工事現場における事故を未然に防げるよう努めております。

しかしながら、顧客対応の不備や工事現場において事故が発生した場合は損害賠償等の訴訟が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の概況

①当期の経営成績の概況

(単位:百万円)

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属する当期純利益

1株当たり当期純利益(円、銭)

当連結会計年度

12,613

2,387

2,395

1,567

77.20

前連結会計年度

12,795

2,320

2,290

1,482

72.70

前年同期間増減率(%)

△1.4

2.9

4.6

5.7

6.2

 

 当連結会計年度(2023年7月1日から2024年6月30日まで)におけるわが国経済は、外国人観光客の増加、各種国内イベントの再開や人手不足によるDX化の加速がある一方、マイナス金利政策解除による金利の上昇リスクや円安の進行による資材等の調達コストの増加が懸念される等、依然として予断を許さない状況下にあります。

 このような状況下で当社グループは、2023年3月17日に発表した中期経営計画を引き続き着実に実行してまいります。当該中期経営計画における中期ビジョン実現のため、新たに「構内インフラ・インテグレーター」としてのサービス提供を推進し、Step1「すべての施設にWi-Fiを」、Step2「通信・再エネが作る未来インフラの実現」の2つのステップを軸とした中期経営目標の達成に取り組んでまいります。

 

 ホームユース事業におきましては、競争の過熱や特定顧客販路での伸び悩みがあったもののストックビジネス積上効果は継続しております。またホームユース事業の成長を牽引するネットワークカメラやインターホン対応システムである「FGスマートコール」等のクロスセル商材は、積極展開もあり売上規模は徐々に拡大しつつあります。

 一方で通信設備投資に伴う減価償却費や販売費等の費用も増加傾向であること、フロー売上の一時的な苦戦により利益率は減少傾向にあります。

 以上の結果、セグメント売上高10,386百万円(前年同期比8.2%増)、セグメント利益2,910百万円(前年同期比2.0%減)と増収減益になりました。

 

 ビジネスユース事業におきましては、受注から売上計上までのリードタイムの長さがネックとなっておりましたが、これまでの布石効果が発現してきており、従来より注力していた医療介護施設、公共施設、観光施設向けの構内通信インフラサービスの売上が大きく伸長しました。

 子会社である株式会社FG-Labにおいても得意先ごとの個別要望に応じた機器の開発案件に関する売上も堅調に推移しております。

 また大規模案件や高付加価値サービスの提供機会の増加により、案件ごとの利益率が上昇し、ビジネスユース事業全体としても利益率が増加傾向にあります。

 以上の結果、売上高1,675百万円(前年同期比10.8%増)、セグメント利益480百万円(前年同期比65.9%増)と増収増益になりました。

 

 不動産事業におきましては、株式会社FGスマートアセットにおいて複数の不動産販売があったものの、前連結会計年度に物件引渡が集中したことにより、対前年比で売上高及びセグメント利益が減少しております。

 以上の結果、売上高523百万円(前年同期比68.7%減)、セグメント利益57百万円(前年同期比58.0%減)と減収減益になりました。

 

 その他事業のうち再生可能エネルギー事業におきましては、北海道東神楽町の複合施設に対して、自家消費型太陽光発電システムの導入に関する売上の計上がありました。

 以上の結果、売上高は27百万円(前年同期比221.2%増)、セグメント利益は7百万円(前年同期比286.3%増)となりました。

 

 この結果、当連結会計年度の業績は、売上高12,613百万円(前年同期比1.4%減)、営業利益2,387百万円(前年同期比2.9%増)、経常利益2,395百万円(前年同期比4.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,567百万円(前年同期比5.7%増)となりました。

 

 

 

②当期の財政状態の概況

 

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減率(%)

総資産

(百万円)

12,764

13,076

2.4

純資産

(百万円)

4,758

5,836

22.6

自己資本比率

(%)

36.8

44.3

20.3

1株当たり純資産額

(円)

230.12

285.59

24.1

 

(資産)

 当連結会計年度の総資産は、前連結会計年度末比311百万円増加の13,076百万円となりました。これは流動資産が220百万円減少したものの、固定資産が532百万円増加したこと等によるものであります。

 流動資産の減少は、売掛金が186百万円、商品が29百万円増加したものの、現金及び預金が262百万円、販売用不動産が165百万円減少したことによるものであります。固定資産の増加は繰延税金資産が100百万円減少したものの、当社通信サービス提供用の通信設備が608百万円、建物が28百万円増加したことによるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度末比765百万円減少の7,240百万円となりました。

 これは主に、契約負債が321百万円、短期借入金が160百万円及び長期借入金(1年内返済予定含む)が69百万円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度末比1,077百万円増加の5,836百万円となりました。

 これは主に自己株式が168百万円増加したものの、利益剰余金が1,262百万円増加したことによるものであります。

 

 

③当期のキャッシュ・フローの概況

(単位:百万円)

 

前期

当期

増減率(%)

営業活動によるキャッシュ・フロー

4,296

2,833

△34.1

投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,189

△2,377

△8.6

財務活動によるキャッシュ・フロー

△2,027

△723

64.3

現金及び現金同等物の増減額

78

△262

△432.6

現金及び現金同等物の期首残高

2,303

2,382

3.4

現金及び現金同等物の期末残高

2,382

2,120

△11.0

 

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は2,120百万円となり、前連結会計年度末比で262百万円減少しました。

 当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動により得られた資金は2,833百万円(前連結会計年度は4,296百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が2,304百万円及び減価償却費1,650百万円があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動により使用した資金は2,377百万円(前連結会計年度は2,189百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が2,331百万円があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動により使用した資金は723百万円(前連結会計年度は2,027百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入が1,050百万円となった一方、長期借入金の返済による支出が1,119百万円、配当金の支払額305百万円、自己株式の取得による支出188百万円があったことによるものです。

 

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

 b. 受注実績

 当社グループで行う主な事業は、提供するサービスの性格上、受注から売上までの期間が短いことから、当該記載を省略しております。

 

 c. 販売実績

  当連結会計年度における当社グループの販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ホームユース事業

10,386

8.2

ビジネスユース事業

1,675

10.8

不動産事業

523

△68.7

その他

27

221.2

合計

12,613

△1.4

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社 USEN-NEXT LIVING PARTNERS

1,996

15.6

2,669

21.2

いちごオーナーズ株式会社

1,581

12.4

2.当連結会計年度におけるいちごオーナーズ株式会社の販売実績及び総販売実績に対する割合は100分の10未満であるため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析、検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容

 当連結会計年度の業績は、売上高12,613百万円(前連結会計年度比1.4%減)となりました。売上原価は6,795百万円(前連結会計年度比3.7%減)、販売費及び一般管理費は3,430百万円(前連結会計年度比0.3%増)となり、営業利益2,387百万円(前連結会計年度比2.9%増)、経常利益2,395百万円(前連結会計年度比4.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,567百万円(前連結会計年度比5.7%増)となりました。

 

a. 売上高

 売上高は12,613百万円(前連結会計年度比1.4%減)となりました。ホームユース事業及びビジネスユース事業は引き続き堅調に推移しているものの、前連結会計年度において不動産の物件引渡が集中したことにより、不動産の売上高が減少したことによるものであります。

 

b. 売上原価、売上総利益

 売上原価は6,795百万円(前連結会計年度比3.7%減)となりました。ホームユース事業及びビジネスユース事業の売上増加や通信設備の減価償却費の増加及び通信トラフィックの増加による通信費の増加がある一方で、ビジネスユース事業における大規模案件や高付加価値サービスの提供機会の増加により、案件ごとの利益率が上昇しており、売上総利益率は上昇傾向にあります。この結果、売上総利益5,817百万円(前連結会計年度比1.3%増)となりました。

 

c. 販売費及び一般管理費、営業利益

 販売費及び一般管理費は3,430百万円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。これは主に、事業規模拡大に伴い販売手数料等が増加したことによるものであります。この結果、営業利益2,387百万円(前連結会計年度比2.9%増)となりました。

 

d. 営業外収益、営業外費用及び経常利益

営業外収益及び営業外費用につきましては、重要な発生はありません。この結果、経常利益2,395百万円

(前連結会計年度比4.6%増)となりました。

 

e. 特別利益、特別損失、親会社株主に帰属する当期純利益

 特別利益は当連結会計年度の発生はありませんでした(前年同期は24百万円)。前連結会計年度は固定資産の売却益が24百万円ありました。

 特別損失は91百万円(前年同期比36.8%減)となりました。これは主に利用が終了した通信設備の除却損の計上及び投資有価証券の評価損の計上によるものであります。この結果、税金等調整前当期純利益は2,304百万円(前連結会計年度比6.2%増)となり、法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は1,567百万円(前連結会計年度比5.7%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概況 ③当期のキャッシュ・フローの概況」に記載のとおりであります。

 

b. 資金需要

 当社グループの運転資金需要の主要なものは、売上高増加による仕入債務の支払いと売上債権の回収のサイトの差から発生するもの、通信機器及び販売用不動産などの棚卸資産の増加によるもの、及び有形固定資産である通信設備機器の取得に係る支払であります。その他、業容の拡大及び管理体制の充実による人件費の増加をはじめとした販売費及び一般管理費も資金需要増加要因の一つであります。

 

c. 財務政策

 当社グループにおける増加運転資金につきましては、自己資金及び金融機関からの借入金により資金を調達することとしております。

 

③ 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

 この連結財務諸表の作成にあたる重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表」の「注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、法的規制等様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 そのため、当該リスクを分散・低減すべく、市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保育成し、ユーザーのニーズを的確に捉え最適な製品やサービスを最適なタイミングで提供してまいります。

 

⑤ 経営戦略の現状と見通し

 当社グループは、ニッチな市場を自ら創出し、構内インスラ・インテグレーターとして市場占有率を高めることによってプライスメーカーとなるという経営方針の下、ホームユース事業、ビジネスユース事業を中心に事業拡大に取り組んでまいりました。

 当社グループ事業の継続的な発展を実現するため、今後もパートナー企業を含めた営業体制を強化するとともに、サービス運用及び顧客サポートからのフィードバック情報に基づいた 新商品・新サービスの開発による差別化・高付加価値化の推進を強化し、さらなる拡販による事業拡大を図ってまいります。

 これらの経営戦略方針の下、持続的な成長を目指すとともに、当社グループが成長・発展を指向する過程で、構内インフラ市場の発展に寄与したいと考えております。

 

⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループが今後の業容を拡大し、よりよいサービスを継続的に提供していくためには、経営者は「第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するために、経営者は常に各種ニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を確認し、その間の課題を認識すると同時に最適な解決策を実施していく方針であります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(製造委託契約)

相手方名称(相手先の所在地)

契約の名称

契約内容

契約期間

Tailyn Technologies,Inc.

(台湾)

製造委託契約書

通信機器の製品開発及び製造の委託

2017年12月27日から

2021年12月26日まで

(以後1年毎の自動更新)

Emplus Technologies,Inc.

(台湾)

製造委託契約書

通信機器の製品開発及び製造の委託

定めなし

 

(合弁会社の設立)

当社は、株式会社H-Powerホールディングスとの共同出資により合弁会社を設立しました。

詳細は「第5 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」をご参照ください。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループの垂直統合型のビジネスモデルをより強固なものとするために、通信機器やシステム等について研究開発活動を行っております。具体的には、Wi-Fiルーター兼アクセスポイント(AP)などの通信機器の開発・改良やシステム開発などを中心に実施しております。

 また、効率的な会社経営を行うため、当社グループのWi-Fiサービス提供用通信基盤管理システムの開発なども行っております。

 当連結会計年度の研究開発費は、13百万円であります。

 なお、上記の研究開発費の金額は特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っておりません。