第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

  当中間会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績及びキャッシュ・フローの状況

(経営成績)

当社は、前事業年度に臨床パイプラインが1本から3本に増加いたしました。当中間会計期間(2024年3月1日~2024年8月31日)においては、パイプラインの着実な開発進展と、社内・社外両方のソースによるパイプラインの更なる拡大に取り組んできた結果、前臨床段階のパイプラインを1つ新たに追加するに至りました。

各パイプラインの概況は次のとおりです。

 

①TMS-007関連の活動

急性期脳梗塞を適応症とするTMS-007(JX10)は、プラスミノーゲンの立体構造変化を介した血栓溶解による血流再建と、可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害を機序とする抗炎症作用に基づく虚血再灌流障害及び出血転換の抑制というメカニズムを併せ持っており、単剤で「血流再建」と「虚血再灌流障害抑制」の双方の治療戦略に対応する薬剤候補です。そのため、t-PA等の薬剤及び薬剤候補物質に対する優位性があると考えられます。

当社が日本国内で実施した前期第Ⅱ相臨床試験において、TMS-007は良好な結果を収めております。現在、急性期脳梗塞治療薬として認可されている唯一の血栓溶解剤t-PAには、頭蓋内出血を助長する副作用のリスクがあることが知られております。この副作用リスクを軽減するため、t-PAの使用は原則として発症後4.5時間以内に制限されています。これに対して、出血リスクが低いと想定されるTMS-007の前期第Ⅱ相臨床試験においては、発症後12時間まで(TMS-007群の平均9.5時間)被験者を組み入れました。その結果、プラセボ群では米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)4以上の悪化を伴う症候性頭蓋内出血の発生頻度が2.6%(1/38)であったのに対して、TMS-007群では0%(0/52)であり、TMS-007の安全性が示されました。また有効性においても、生活自立度を評価するモディファイド・ランキン・スケール(mRS)のスコアのゼロ(全く症候がない)又は1(症候はあっても明らかな障害はない)への転帰率において、TMS-007は統計的な有意差を伴う有効性を示し、急性期脳梗塞のゴールド・スタンダード・エンドポイントを達成しております。

なお、現在当社は、TMS-007の日本における独占的な開発販売権と、日本を除く全世界における開発・販売に対するマイルストーン一時金及びロイヤリティを受領する権利を、JIXING(Ji Xing Pharmaceuticals (Hong Kong) Limited)から得ています。

当中間会計期間においては、JIXINGを主体として実施されている、次相臨床試験開始準備に協力してまいりました。なお、当社においては、2025年3月を目途にJIXINGより進捗状況の発表があると想定しております。

SMTP化合物関連の特許としては、「脳出血を治療又は予防するための薬剤及び該薬剤を用いて脳出血を治療又は予防する方法」について、2024年5月に日本で特許成立いたしました(米国では2023年12月に特許成立)。

※JIXINGは、2024年11月より社名をCORXELに変更する予定です。

 

②JX09関連の活動

JX09は、治療抵抗性又はコントロール不良の高血圧患者さんの治療を適応とした、経口の低分子アルドステロン合成阻害剤です。アルドステロン合成酵素阻害剤においては、アルドステロン合成酵素であるCYP11B2のみを選択的に阻害し、類似した構造を持つCYP11B1(コルチゾール合成酵素)を阻害しないことが重要と考えられていますが、JX09はCYP11B2に対する高い選択性を示しており、ベスト・イン・クラスの可能性があると考えられます。

JX09について、当社は、JIXINGより日本における独占的な開発販売権を許諾されています。現在、JIXINGによりオーストラリアにおいて第Ⅰ相臨床試験が実施されており、当社は、今後日本での臨床試験を実施することにより、グローバル治験の一翼を担う計画を検討しています。

 

③TMS-008関連の活動

急性腎障害及びがん悪液質を適応症と想定し開発を進めているTMS-008については、血栓溶解作用をほとんど持たず、sEH阻害による抗炎症作用を有するSMTP化合物です。炎症性疾患を標的として広範な適応症が期待できると考えられます。

当社は、JIXINGよりTMS-008における特定の適応に関して、全世界における独占的な開発販売権の許諾を得ています。

当中間会計期間においては、当社は第Ⅰ相臨床試験の投与開始に向けた準備を進め、6月19日に第1例目投与を実施し、8月にコホート2の投与が完了しております。現時点において懸念点は発生しておらず、第Ⅰ相臨床試験は順調に進捗しております。本治験は、TMS-008のFirst in Human試験として、薬物動態・薬物力学・安全性等を評価する目的で、健康な成人男性を対象としてTMS-008を漸増的に投与するものです。

 

④TMS-010関連の活動

脊髄損傷を適応症とし、2022年7月に北海道大学とオプション契約を締結して評価を行ってきたシーズについて、本年7月3日に同大学との間でライセンス契約を締結し、当社のパイプラインにTMS-010として追加いたしました。当社は当該ライセンス契約により全世界における独占的な開発販売権を取得しております。

脊髄損傷は、運動麻痺・感覚麻痺・排尿排便障害などに至ることがある重篤な疾患ですが、未だ効果的な薬剤がない状況にあります。北海道大学で見出された当該治療薬候補化合物は、血液脳脊髄関門(BBSCB:Blood-brain spinal cord barrier)の破綻を防ぐことで、脊髄の二次損傷を抑制する神経保護作用が期待できます。

当中間会計期間においては、当社は臨床試験入りを目指し、GLP試験等必要な非臨床試験及びPh1試験に向けてGMP製造レベルの製剤の開発を進めるとともに、臨床試験計画の策定を始めました。

 

⑤パイプラインの拡充に関する活動

当社は、当中間会計期間において、社内プログラム及び社外プログラムの2つの軸において、パイプラインの拡充を図るための研究開発活動を積極的に推進しました。

社内プログラムにおいては、当社がこれまでSMTP化合物の研究開発によって培った可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害に関する知識と経験を活かし、AIを活用した化合物生成による創薬の最適化や天然物ライブラリーのスクリーニングを含む複数のアプローチを活用し、新たなsEH阻害剤の候補となる化合物の探索を行いました。その中から有望な候補化合物を取得し、当該化合物の評価を進めました。また、TMS-008の開発対象となる適応の追加についても検討を進めました。社外プログラムにおいては、アカデミア等の研究機関や創薬企業等の早期研究開発段階にあるプログラムの探索及び評価を継続しました。前述④に記載のTMS-010の他に、同じく北海道大学と独占評価を実施中のシーズについて、様々な観点からの評価活動を着実に実施しました。

 

以上の活動の結果、当中間会計期間における営業費用は、TMS-008をはじめとする研究開発費として314,515千円を、その他の販売費及び一般管理費として137,724千円を計上したことから、合計では452,240千円となりました。

これらの結果、営業損失は452,240千円(前年同期は営業損失345,107千円)、経常損失は451,834千円(前年同期は経常損失342,149千円)、中間純損失は477,820千円(前年同期は中間純損失342,624千円)となりました。

なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績については記載を省略しております。

 

 

  (財政状態)

(資産)

当中間会計期間末の資産合計は、前事業年度末に比べ467,416千円減少し、3,087,337千円となりました。

これは主に、営業費用等の支出により、現金及び預金が437,851千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

当中間会計期間末の負債合計は、前事業年度末に比べ1,380千円増加し、99,069千円となりました。

これは主に、未払計上した前事業年度分経費の支出により未払金が17,777千円減少した一方で、TMS-008臨床試

験費用等の増加に伴い委託先等への未払費用が18,954千円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当中間会計期間末の純資産は、前事業年度末に比べ468,797千円減少し、2,988,267千円となりました。

これは主に、中間純損失477,820千円を計上したことに伴う利益剰余金の減少によるものであります。

 

(キャッシュ・フローの状況)

当中間会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べ437,851千円減少し3,008,779千円となりました。当中間会計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当中間会計期間において営業活動に使用した資金は、409,597千円(前年同期は336,694千円の支出)となりました。これは主に、税引前中間純損失の計上によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当中間会計期間において投資活動に使用した資金は、29,172千円(前年同期は1,695千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当中間会計期間において財務活動により獲得した資金は、918千円(前年同期は1,997千円の収入)となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入によるものです。

 

(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(3)経営方針・経営戦略等

当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

当中間会計期間における研究開発費の総額は314,515千円であります。

 なお、当中間会計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(6)経営成績に重要な影響を与える要因

当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 1 事業等のリスク」を参照ください。

 

(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または増資により資金調達しております。当中間会計期間中に、重要な資金調達は行っておりません。

 

3【経営上の重要な契約等】

 当中間会計期間において、新たに締結した重要な契約は次のとおりです。

 

技術導入・特許譲受に関する契約

契約相手方名

(国名)

契約品目

契約締結日

契約期間

契約内容

国立大学法人北海道大学

(日本)

実施許諾契約

2024年7月3日

契約締結日から関連する特許権の消滅する時まで

TMS-010の全世界における独占的実施許諾及びその対価について定める契約