当社グループは「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念のもと、独自開発の人工知能(AI)エンジン「KIBIT」(*)を活用した高度な情報解析技術を駆使し、祖業である国際訴訟支援、不正調査から製造、金融、小売、流通、そして医療分野といった様々なフィールドで、必要かつ適切な情報に出会えるフェアな世界の実現及び社会課題の解決に貢献しております。
(*)2023年4月1日より、FRONTEOのAI設計思想の一層の追求と、顧客への認知促進を図ることを目的に、従来よりAIエンジン名として使われていた「KIBIT」、「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」及び「Looca Cross(ルーカクロス)」の3つの名称の併用を取りやめ、「KIBIT」に名称を統一するとともに、各製品名に同名称を冠しております。「KIBIT」は、FRONTEOのAI設計思想である人間の思考プロセスや判断を、数学的アプローチで表現し、「あいまい性」をあえて許容することにより、小型で高精度での解析を実現したAIエンジンです。
当社は現在、第25期(2028年3月期)に達成を目標としております中期戦略「ステージ4」(詳細は2023年5月15日に公表しております「事業計画及び成長可能性に関する事項」をご確認ください)の達成に向けて、全社一丸となって全力で取り組んでおります。2024年3月期は、前連結会計年度の業績からしっかりと回復した上で、更にライフサイエンスAI分野におけるAI創薬や経済安全保障分野のビジネスモデルを確立するための1年間と位置づけ、「ステージ4」実現のための土台を盤石にするための仕組みを構築し、運用を徹底してまいります。
(AIソリューション事業)
ライフサイエンスAI分野では、独自の言語系AI技術を中核に、AI創薬とAI医療機器の2つの領域において、事業拡大を迅速に進めてまいります。
AI創薬領域においては、当第4四半期連結会計期間に構想を打ち出したDD-AIFにおいて、FRONTEO独自の5つの創薬テクノロジーメソッド(Drug Discovery Best Known Method 以下、DD-BKM)と、DD-BKMを複合的に組み合わせたレシピを最大限活用することで、製薬企業や創薬ベンチャーなどからの標的分子探索・選定などの様々なリクエストに対して、網羅的かつノンバイアスな探索・評価を行い、通常の創薬プロセスの数十倍以上の効率性を持つ革新的な受託サービスの提供を拡大してまいります。創薬プロセスの最上流工程である探索研究領域において、当社は、自然言語処理AIを用いたAI創薬サービスを提供できる技術力を持つ唯一の企業であると考えております。当社のDD-AIFが提供するソリューションは、顧客にとって革新的でかつ効果的であると考えており、当社のAI創薬ビジネスの認知度を向上させることで、事業拡大を加速してまいります。
AI医療機器領域では、引き続き、世界初の言語系AI医療機器となる「会話型 認知症診断支援AIプログラム」の開発を進めてまいります。また、医療の安全推進と質の向上、患者のQOL(Quality of Life)向上のため、今後もAI医療機器の開発を進めてまいります。現在開発進捗中のプログラムとしては、早期診断・治療が重要とされる一方、診断に専門的な知識や経験が必要とされる統合失調症やうつ病の診断を支援する「統合失調症診断支援AIプログラム」及び「うつ病診断支援AIプログラム」があります。他の開発準備を進めている製品につきましても適宜公表してまいりますが、引き続きAI医療機器の開発パイプラインの拡充を図ってまいります。
ビジネスインテリジェンス分野では、企業のDXへの投資需要は引続き旺盛であると考えております。そのような市場環境の中で、今後もさらなる事業の成長を見込んでおります。従来の製品よりも精度が更に向上した「KIBIT Eye」に加え、「KIBIT Knowledge Probe」、「KIBIT WordSonar for AccidentView」及び「KIBIT WordSonar for VoiceView」を製品ラインナップの中心として、今後も多様化する企業ニーズを的確に捉え、事業拡大を図ってまいります。課題である営業体制強化につきましては、当第4四半期連結会計期間において一定程度の進捗をしておりますが、来期以降の事業拡大に見合う成長投資は引続き継続してまいります。
経済安全保障分野では、「KIBIT Seizu Analysis」を活用した、サプライチェーン解析ソリューション、株主支配ネットワーク解析ソリューション、最先端技術・研究者ネットワーク解析ソリューションの提供を開始しております。当社のソリューションを活用することで、政府または企業は、自社の取り巻く環境を可視化することができ、最適な戦略を策定することが可能となります。2022年5月に経済安全保障推進法が成立し、官庁と民間企業双方での経済安全保障への関心は一層高くなっており、当社への問合せ件数は増加傾向にあります。引き続き、各所各社のニーズを把握し、的確なソリューションを提供することで事業の成長を図ってまいります。
(リーガルテックAI事業)
リーガルテックAI事業では、従来型ビジネスを主体としたものから、AIレビューツール「KIBIT Automator」による案件獲得にシフトしております。「KIBIT Automator」はeディスカバリのレビュー工程で活用される製品で、人によるレビュー数を大幅に削減し、工程を効率化することに優れております。当連結会計年度の売上高は、営業体制強化の遅れや、積極的な非AIビジネスの削減により減収となりましたが、当第4半期連結会計期間において、営業体制強化は一定程度の進捗をしております。営業体制強化の効果が発現するまで時間を要すると想定しておりますが、来期の売上高の回復に向けて、当社ポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」を利用したマーケティング活動や営業活動量を増加させることで、顧客基盤の強化と拡大を進め、大型案件の動向に左右されない収益構造の実現を図ってまいります。また、第2四半期連結会計期間において、実施した米国子会社の構造改革により、米国子会社のコスト構造をスリム化したため、2024年3月期1年間で約10億円の売上原価・販管費の減少を見込んでおり、非AIビジネスの戦略的削減による売上減少・利益減少をリカバリーする見込みです。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、企業理念である「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」に基づき、社会課題の解決に貢献することであると考えております。
当社グループは事業活動を通じて、社会の持続的かつフェアな発展につながる世界を目指しております。その実現に向けて、お客様、取引先、株主、社員はもちろん、環境や社会とのエンゲージメントが非常に重要であると考え、あらゆるステークホルダーとのリレーションを重視することが当社にとってのサステナビリティの取り組みにつながると考えております。
気候関連では、企業の社会的な責任を自覚し、持続可能な社会の発展に貢献します。特に当社が独自に開発した、省エネルギーで高速かつ高精度の解析を実現する「Green micro AI」を社会に提供することにより、環境負荷の低減に寄与し、循環型社会の実現に貢献します。
① ガバナンス
当社では、経営の最高意思決定機関となる取締役会および事業のスピーディーな決定と柔軟な組織対応をおこなうための経営会議を毎月開催し、経営計画の進捗と重要性の高い事項について個別に議論を行っております。サステナビリティの対応についても、取締役会においてリスク管理委員会からの報告をはじめ、事業部門や管理部門からの日々の報告に基づき、適切な監督・助言を行っております。また今後、リスク管理委員会内にサステナビリティ委員会を新たに設け、サステナビリティ関連における影響の評価や報告・提言に取り組んでいくために、体制のさらなる強化を検討してまいります。
低炭素社会の実現を目指し、環境パフォーマンスを向上させるため、TCFD提言によるシナリオ分析ならびに検証に取り組んでまいります。気候変動による物理的リスク、移行リスクが及ぼす影響や機会を認識し、今後、気候関連の観点に基づく情報開示の充実に努めてまいります。当社では気候変動に関する重要な物理的リスク、移行リスク、機会として、下表のとおり想定しております。具体的な影響に関しては、今後検討と開示を進めてまいります。
③ リスク管理
気候問題の様々な状況や人々の働く環境、人権、地政学的リスクに関連した問題が事業活動に与える影響について個別に問題提起し、対策を立てて対処しております。リスク管理はコンプライアンスやリスク要素の運用や管理と連動する形で分析と評価を行い、リスク管理委員会にて協議の上、取締役会で承認しております。
④ 指標と目標
当社では、現時点においてScope1・Scope2に該当する温室効果ガス排出量の計量等を行っておりませんが、今後、当社が提供する「Green micro AI」による環境負荷の低減をはじめ、環境に配慮した技術やシステムの導入などによる効果測定を行いながら、現状の把握、進捗管理ならびに環境コミュニケーションの推進に努めてまいります。
(2)人的資本
① 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
市場環境の変化に対応可能な事業を推進するため、人的資本の強化に取り組んでまいります。性別や国籍、経験にとらわれず、多様な人材の採用や役職への起用を積極的に行います。個人の特性や能力を最大限に活かせる環境の整備や人材への投資を行い、多様性の積極的な受け入れを通じて、事業の変革を実現してまいります。
(a) 女性の管理職登用
当社は、女性活躍推進に積極的に取り組んでおり、女性社員の比率向上に加え、実務におけるリーダーや管理職を担う社員を増やし、活躍の場を拡大しております。当社は2016年に女性活躍推進法に基づく取り組みが優良な企業として、「えるぼし」の最高位認定を取得しております。
2023年3月31日時点で在籍している全従業員に占める女性社員の割合は33.6%、管理職に占める女性社員の割合は17.1%となっております。また、女性の採用全体に占める管理職の割合は2023年度では17.0%となり、前年度の4.3%より大幅に増加しております。今後も管理職適任者等に対する積極的なキャリア採用を実施し、将来的に経営の意思決定に関わる女性幹部職を引き続き増やしていくことを目標とします。
(b) 外国籍従業員の採用
当社は、事業の多様化に伴い、スキルのある外国籍従業員を積極的に採用しております。当社における外国籍の従業員は、2023年3月31日時点で前年同期比46.2%増の19人になりました。今後も事業の多様化やグローバルでの展開を見据え、引き続き増やしていくことを目標とします。
(c) キャリア採用者の管理職登用
当社は、積極的にキャリア採用をしており、2023年3月31日現在の正社員におけるキャリア採用者比率は93.1 %です。役職への登用も同様で、2023年3月31日現在の課長職以上の管理職のキャリア採用者比率は47.0%です。今後も職務の多様化や高度化に応じて、多彩なキャリアを有する、優れた人材の採用や、管理職適任者等の積極的な登用を実施してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、本項における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは事業計画、研究開発の進捗、市場環境の変化、内部リソースの状況などを随時レビューしており、重要事項については取締役会、経営会議で適切にモニタリングし、管理をしていきます。
(2) 技術革新について
当社グループは、他社に先駆けてユーザーのビジネスにAIを実装してきたフロントランナーであります。近年、
当社グループが属する市場においては、急速な技術変化とサービス水準の向上が進んでおり、これに伴いクライア
ントのニーズも著しく変化しております。今後、クライアントのニーズの変化への対応や技術革新への対応が遅れ
た場合、当社グループの事業及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
一方で、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が加速され、人が行う作業をデジタル
化することで業務を効率化し、高度化することができるAI製品の需要が増加いたしました。当社グループは、AIを
主体としたビジネスモデルへのポートフォリオ・トランスフォーメーションを進めておりますが、これをさらに加
速させ、AIソリューションを展開している各分野において事業領域の拡大・開拓、業務提携先との共同開発を積極
的に推進しております。
(3) 情報の管理について
このような予期せぬリスクが顕在化した場合、事業の中断や損害賠償請求、信用の低下等により、当社グループの事業及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。AIソリューション事業のライフサイエンスAI分野では、医療機器の製造販売承認申請のための治験を進めており、診断に関わる医療情報、創薬に関わる製薬企業の重要機密情報を取り扱っております。またビジネスインテリジェンス分野では、金融や知財、サプライチェーンなどの機密性の高い情報を取り扱い、同様に高度な情報の管理が求められております。
当社グループでは、データ処理センターを分散配置し、静脈認証や入退室管理の徹底、耐火金庫による調査データの保管、外部と隔絶されたネットワークの構築等により安全な作業環境の確保に努めております。また、そのサービス運用において、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格である「ISO27001」、並びに国内規格である「JISQ27001」の認証を取得し、認証に基づく規定類により各種オペレーションを管理するとともに、社員教育及び継続的な情報セキュリティ改善活動を実施し、リスクを未然に防ぐよう取り組んでおります。
当社は、米国子会社のFRONTEO USAにおいて、2022年5月にサイバー攻撃による不正アクセスを受けました。当社では再発防止・改善のため、セキュリティシステムを全面的に見直し、外部の専門機関の協力も得ながら①侵入防止、②侵入時の早期検知、③侵入された場合の被害の最小化対策を講じています。
(4) 人材の確保について
そのため、日本国内での少子高齢化による労働人口減少、AIソリューション事業及びリーガルテックAI事業における人材需要の増加及び要求されるスキルの高度化により、有能な経営幹部並びに一般社員の必要数を確保できない場合、または既存の有能な人材が社外に流出した場合には、当社グループの経営活動に支障が生じ、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、積極的な採用活動を継続して行っており、これを更に強化いたします。加えて、開発、営業推進、サービスの実装というユーザーのニーズや導入フェーズに合わせて必要となる人材の育成を進めてまいります。また、有数の技術と実績をアピールすることで、認知向上と人材の確保に取り組んでまいります。
① 法的規制について
AIソリューション事業におけるライフサイエンスAI分野では医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の
確保等に関する法律に準拠する必要があります。今後、他の分野においても、新たに法律や規制が制定された場
合や、業界内で自主規制が求められた場合には、当社グループの事業上の計画等の見直しが必要となる可能性が
あります。その結果、これらに対応するための支出が増加する等、当社グループの事業及び経営成績に影響を与
える可能性があります。
リーガルテックAI事業において、当社グループは米国における訴訟制度に基づくディスカバリ(証拠開示)
支援サービスを行っておりますが、現在のところ、当社グループが事業を展開するにあたり、法的な規制は受け
ておりません。しかしながら、今後、米国における訴訟関係の法律、法令が変更された場合、当社グループの事
業及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、日本国内において新たな法規制が制定された場合に
も、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。
② 知的財産等について
当社グループによる第三者の知的財産権侵害の可能性については、調査可能な範囲で対応を行っております
が、当社グループの事業領域に対する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識をせ
ずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、ロイヤリティの支払や損害賠償請
求等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
③ 為替相場の変動について
当社は、日本円を価格決定のベースとした外貨建て(米ドル)の取引を継続する予定であります。このため、
為替相場の変動は外貨取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。また、為替相場の変動は、海外の
連結子会社の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与える可能性があります。
当社では、為替変動リスクの主な要因である親子会社間の債権債務の減少、債権回収の早期化により、リスク
を低下させる方針を取っております。また、並行して為替動向を注視し、必要に応じて為替予約等により、リス
クを最小化しております。
④ 気候変動について
気候変動に伴う自然災害や異常気象等によって当社関連施設等に物理的な被害を被った場合、または、当社
の気候変動への対応が不十分と評価された場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態に影響が現れる
可能性があります。
⑤ 新型コロナウイルス感染症対応について
今般の新型コロナウイルス感染症については、感染者数の減少と経済活動の再開に向かっているものの、引き
続き今後の事業展開への影響を注視する必要があります。当社では、代表取締役社長を委員長とする新型コロナ
ウイルス感染症対策本部を中心に、情報の共有や影響の把握に努めるとともに、経営会議、取締役会等の主要会
議体において状況の見極めと対策の立案を進め、影響の極小化を図っております。また、グローバルでのITシス
テム全体に多要素認証を導入し、システムへのリモートアクセスに対するセキュリティ向上を図っています。
さらに、勤務環境への影響は、勤怠管理ツールと就労状況のヒアリングを定期的に行い、業務進捗ならびに適正
な労働時間の把握を行っております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容)
当連結会計年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)において、世界的な原材料価格の高騰や国際紛争などを背景に、わが国では企業の生産性向上や業務効率化、ビジネスモデルの変革を目的としたデジタルトランスフォーメーション(DX)など、今後の持続的な成長を目指す投資需要が高まり、AIはその有力な選択肢となっています。この社会的要請に応えるべく、質の高いAIソリューションの研究開発・提供を推し進め、企業価値の向上に向けて事業活動を推進してまいります。
AIソリューション事業のライフサイエンスAI分野の中のAI創薬領域においては、DD-AIF構想を打ち出し、立ち上げに向けた準備を進めております。
一般的な創薬プロセスにおいて、創薬能力向上のボトルネックになっているのは、創薬プロセスの最上流工程である標的同定プロセスですが、既存の方法による同プロセスの改善には多大な時間と費用がかかると言われております。そのため、創薬研究者は、創薬能力を向上させるべく、標的同定プロセスの効率化・高度化のために既存の方法を打破するイノベーションを起こすという思いを抱いています。
上述の創薬研究者の思いと、FRONTEOの理念であるフェアネスの実現、そして当社のコアコンピタンスである独自言語解析AIである「KIBIT」が融合したことで、わが国の創薬研究の一線級の研究者たちがFRONTEOに集結し、DD-AIF構想を打ち出しました。DD-AIFは、創薬研究者、バイオロジスト、データサイエンティスト、AIエンジンである「KIBIT」及び「KIBIT」を搭載した様々な自社開発アプリケーションで構成されます。
当社は、製薬企業、創薬ベンチャーなどからの標的分子探索・選定などのオーダーに対して、DD-AIFにおいて、DD-BKMと、DD-BKMを複合的に組み合わせたレシピを駆使することで、網羅的かつノンバイアスな探索・評価を行い、通常の創薬プロセスの数十倍以上の効率性を持つ革新的な受託サービスの提供を本格稼働いたします。
また、DD-AIFを構成するアプリケーションの一つである、「KIBIT liGALILEO(キビット リガリレオ)」の解析対象である標的遺伝子・分子について評価を行う対象疾患を、従来の1,500疾患から1万2,000疾患に拡充するなど、DD-AIFの機能強化も順調に進捗しており、AI創薬事業の事業拡大に向け推進してまいります。
続けて、医療機器領域における、「会話型 認知症診断支援AIプログラム」に関しては、第2四半期連結会計期間で公表しました通り、会話の音声を入力データとするプログラム(自動音声書き起こし機能付きプログラム)の開発に一本化して、着実に開発を進めております。また、開発プロセスで収集された質の高いデータセットや開発ノウハウを活用した民生品につきましても並行して開発を進めてまいります。
なお、「統合失調症診断支援AIプログラム」及び「うつ病診断支援AIプログラム」などその他の製品につきましても、順調に開発を進めております。
ビジネスインテリジェンス分野につきましては、メール&チャット監査システム「KIBIT Communication Meter(キビット コミュニケーション メーター)」の受注は堅調に推移し、「お客様の声」の分析を行う「KIBIT WordSonar for VoiceView」に関しても複数の企業との間で導入に向けた協議を継続するなど、当社AI技術の優位性は引続き揺るがないと考えております。さらに、当第4四半期連結会計期間において、新たなAIエンジンを搭載した平時監査システム「KIBIT Eye」を発表いたしました。「KIBIT Eye」は、人の優れた直観的な判断能力をAIで再現することで、従来の製品よりも精度が更に向上しております。今後も顧客企業における平時監査業務の効率化・高度化を支援し、不正・不祥事の予防と早期発見に貢献してまいります。
ビジネスインテリジェンス分野の当連結会計年度の売上高は前年度比較で増収となりましたが、営業体制強化に向けた人的投資の推進に遅れが生じた影響で、当初想定していたほどの増収には至りませんでした。営業体制強化は当第4四半期連結会計期間において一定程度の進捗をしておりますが、来期の売上高増加に見合った人的投資は引き続き継続してまいります。DXを推進する市場は今後も引続き旺盛であると認識しており、今後も市場は成長していくと考えております。このような市場環境において、当社の認知度を高め、パイプラインを積上げることで、引き続き事業を拡大してまいります。
経済安全保障分野につきましては、2022年5月に経済安全保障推進法が成立し、官庁と民間企業双方での経済安全保障への関心は一層高くなっており、お問合せは増加傾向にあります。当連結会計年度においては、経済安全保障分野における複数の特許査定を取得するなど、事業の本格化に向けて進捗しております。引き続き、各所各社のニーズを把握し、的確なソリューションを提供することで事業の拡大に努めてまいります。
リーガルテックAI事業は大型案件の積上げが少なく、当第4四半期連結会計期間の当該事業における売上高は第3四半期連結会計期間を下回り、低調に推移いたしました。営業体制強化に向けた人的投資の推進に遅れが生じましたが、当第4四半期連結会計期間において、営業体制強化は一定程度の進捗をしております。来期の売上高の回復に向けて、当社ポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」を利用したマーケティング活動や営業活動量を増加させることで、顧客基盤の強化と拡大を図ってまいります。
各事業の当連結会計年度の概況は以下のとおりです。
(AIソリューション事業)
ライフサイエンスAI分野につきましては、アクセリード株式会社との共同事業「Druggable Target 1000」のプロジェクトが完了し、収益を得ることができました。また、医療・医学専門情報の自動仕分けを行う「KIBIT Mekiki(キビット メキキ)」及び論文探索AIシステム「KIBIT Amanogawa(キビット アマノガワ)」に関しても製薬企業への導入は着実に進捗いたしましたが、大型案件の積上げが少なく、売上高は451,768千円(前年同期比42.2%減)となりました。
ビジネスインテリジェンス分野につきましては、企業のDX推進の需要により、複数の企業で「KIBIT Communication Meter」が導入され堅調に推移した結果、売上高は1,387,549千円(前年同期比8.8%増)となりましたが、業績を牽引する大型案件が少なく、想定していた売上高には届きませんでした。
その結果、AIソリューション事業全体の売上高は1,850,483千円(前年同期比11.7%減)となりました。営業損益につきましては、人的投資及び経済安全保障分野に関する投資を戦略的に推進したことなどにより、298,585千円の営業損失(前年同期は451,330千円の営業利益)となりました。
(リーガルテックAI事業)
リーガルテックAI事業につきましては、eディスカバリサービスにおいて大型案件の受注が低調に推移したことに加えて、戦略的な非AIビジネスの削減により売上高が大幅に減少いたしました。
その結果、売上高は5,364,787千円(前年同期比39.3%減)、売上高の減少に伴い1,063,404千円の営業損失(前年同期は1,270,384千円の営業利益)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高7,215,270千円(前年同期比34.0%減)、営業損失1,361,990千円(前年同期は1,721,714千円の営業利益)、経常損失1,292,518千円(前年同期は1,687,434千円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失1,701,317千円(前年同期は1,308,760千円の親会社株主に帰属する当期純利益)と前年同期を下回る結果となりました。なお、不正アクセス対策費用に対する受取保険金として54,648千円を特別利益に、非AIビジネスの戦略的縮小に伴うコスト構造最適化を目的とした構造改革費用として258,876千円、不正アクセス対応のための情報セキュリティ対策費として223,997千円を特別損失に計上しております。
(2) 財政状態
(資産)
総資産は、前連結会計年度末と比べて2,679,900千円減少し、9,145,229千円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末と比べて2,278,263千円減少し、3,663,138千円となりました。これは主に、配当金の支払、借入金の返済、不正アクセス関連の支払に加えて、人的投資やセキュリティ強化の先行投資を行ったことなどにより現金及び預金が1,985,728千円減少したことによるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末と比べて401,636千円減少し、5,482,091千円となりました。これは主に、減価償却や米国子会社における構造改革に伴うオフィスやデータセンターの閉鎖により使用権資産が244,353千円減少したことによるものであります。
(負債)
負債合計は、前連結会計年度末と比べて1,289,020千円減少し、4,095,178千円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末と比べて390,667千円減少し、2,209,173千円となりました。これは主に、借入実行により短期借入金が500,000千円増加した一方で、未払法人税等が255,246千円減少、1年内返済予定の長期借入金が93,442千円減少、リース債務が172,637千円減少、その他(未払費用や未払消費税等)が354,263千円減少したものであります。
固定負債は、前連結会計年度末と比べて898,353千円減少し、1,886,004千円となりました。これは主に、流動負債に振り替えたことにより長期借入金が729,815千円、リース債務が162,522千円減少したことによるものであります。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末と比べて1,390,879千円減少し、5,050,051千円となりました。これは主に円安の影響により為替換算調整勘定が474,882千円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことや、配当による取崩により利益剰余金が1,976,510千円減少したことによるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,471,656千円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況と、その主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により支出した資金は914,615千円(前年同期比3,290,946千円の収入の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失を計上したことや、情報セキュリティ対策費の支払による支出223,997千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は625,060千円(前年同期比6,852千円の支出の増加)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出452,292千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は606,324千円(前年同期比853,399千円の支出の減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出823,258千円、配当金の支払いによる支出275,193千円によるものであります。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注)2 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注)3 有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象として
おります。
(4)生産、受注及び販売の状況
当社グループの事業内容は提供するサービスの関係上、生産実績の記載に馴染まないため記載しておりませ ん。
当連結会計年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとお
りであります。
前連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
Google LLC 1,957,774千円 17.91%
Visa U.S.A.Inc. 1,287,324千円 11.77%
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
TMI総合法律事務所 757,952千円 10.50%
Google LLC 749,734千円 10.39%
当社グループは、主に営業活動から得られる自己資金及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。設備投資並びに研究開発等の事業投資の長期資金需要につきましては、資金需要が発生した時点で、自己資金又は、金融機関からの長期借入金、増資等、資金調達コストの最小化を図れるような調達方法を検討し対応しております。また、運転資金需要につきましては、営業活動から得られる自己資金と金融機関からの借入金等により賄っております。
なお、当連結会計年度におけるシンジケートローン契約締結については、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」、重要な設備の新設等の計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」、配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,087,096千円となっており、借入金については主に運転資金や過年度におけるM&A等のための資金で、全て金融機関からの借入となっております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,471,656千円であります。
(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループは「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念のもと、独自開発の人工知能(AI)エンジン「KIBIT」を活用した高度な情報解析技術を駆使し、祖業である国際訴訟支援、不正調査から製造、金融、小売、流通、そして医療分野といった様々なフィールドで、必要かつ適切な情報に出会えるフェアな世界の実現及び社会課題の解決に貢献しております。
当社グループの事業セグメントは、医療、金融、製造、建設、小売、流通、といった各産業でAIソリューションを提供する「AIソリューション事業」と国際訴訟支援及び不正調査においてAIを活用したサービス提供をする「リーガルテックAI事業」の2区分です。2023年3月期において、事業毎に営業の仕組化に取り組み、営業ワークフロー確立を推進しました。さらに事業毎に、以下の項目の強化に取り組むことで、2028年3月期での中期戦略「ステージ4」の達成を目指してまいります。
当社グループは、“新しい、珍しい、何かできそう”というイメージ先行のAI企業から脱却し、「KIBIT」をコアコンピタンスに、各事業において顧客に価値ある成果を出し続け、「ステージ4」に向けて、顧客にとっての成長パートナー企業を目指してまいります。
■AIソリューション事業
働き方改革の推進や人手不足などにより、企業のDXに対する投資が加速され、人が行う作業をデジタル化することで業務を効率化し、高度化することができるAI製品の需要が増加しております。さらに、企業におけるAIの実装が進んでいる現在においては、複数の業務においてAI製品が導入されるフェーズに至っております。このような市場環境の中、当社グループは市場開拓の余地が大きいAI×自然言語の領域において、幅広い事業分野でDXを推進するAIサービスの提供に注力し、ライフサイエンスAI、ビジネスインテリジェンスの両分野において積極的に事業活動を推進してまいります。
(ライフサイエンスAI)
AI創薬領域においては、DD-AIF構想を立ち上げ、創薬プロセスの最上流工程である標的探索・選定プロセスにおいて、創薬研究の大幅な効率化・加速化・成功確率向上を支援するビジネスを推進してまいります。
一般的な創薬プロセスにおいて、創薬成功確率向上のポイントは、創薬プロセスの最上流工程である標的探索・選定プロセスですが、既存の方法による同プロセスの改善には多大な時間と費用がかかると言われております。標的探索・選定プロセスの市場はグローバルで2027年には1兆円を超えると言われており、当社はこの市場において、自然言語処理AIを用いたAI創薬サービスを提供できる技術力を持つ唯一の企業であると考えております。当社は、製薬会社、創薬事業を展開する企業等からの標的分子探索・選定などのオーダーに対して、DD-AIFにおいて、DD-BKMと、DD-BKMを複合的に組み合わせたレシピを駆使することで、網羅的かつノンバイアスな探索・評価を行い、通常の創薬プロセスの数十倍以上の効率性を持つ革新的な受託サービスの提供を2024年3月期から本格稼働いたします。今後は、当社のAI創薬ビジネスの認知度とDD-AIFのスループットを向上させることで、AI創薬ビジネスを当社グループの中長期的な成長の柱と位置付け、事業拡大を目指してまいります。
AI医療機器領域では、現在、会話型 認知症診断支援AIプログラムについて、世界初となる言語系AI医療機器を目指し、早期の薬事承認申請に向け準備を進めております。また、統合失調症診断支援AIプログラム及びうつ病診断支援AIプログラムなどその他の製品につきましても開発を進めております。中長期的には複数の医療機器の上市をすることで、ライフサイエンスAI分野の事業成長を目指してまいります。
(ビジネスインテリジェンス)
DXへの投資増大を追い風として企業のAI活用が進む市場環境の中、当社AI技術の優位性は変わらないと考えており、当社AIサービスの需要は今後も増加すると想定しております。当社では、継続的に顧客単価の上昇を目指して案件の大型化と複数製品の導入を推進すると共に、多分野においてAI製品を浸透させ、導入企業数を増やすことで、ビジネスインテリジェンス分野の大幅な成長を目指してまいります。
また、2022年5月に経済安全保障推進法が成立し、官庁と民間企業双方での経済安全保障への関心が一層高まっており、当社への経済安全保障関連のお問合せは増加傾向にあります。
当社独自のAIシステム「KIBIT Seizu Analysis」を活用することで公開騒擾を収集・分析し、企業間/株主間/研究者間のつながりを可視化し、チョークポイント(戦略的に重要な意味を持つポイント)を見つけ出すことが可能となります。これにより、複雑な世界の状況の把握、経済安全保障における国家戦略の立案・実行、トップマネジメント層の経営戦略立案を支援してまいります。経済安全保障分野は、現時点で事業立ち上げ段階ですが、2024年3月期にビジネスモデルを確立し、中長期的には連結業績に貢献できるよう事業を推進してまいります。
■リーガルテックAI事業
eディスカバリ市場では企業が保有する電子情報のデータ量が継続的に増大している一方、データ容量あたりの解析サービス料の引き下げ圧力は年々高まっております。当社ではこうした市場環境をビジネスチャンスと捉え、レビュー工程をAI技術によって効率化するAIレビューツール「KIBIT Automator」を提供しております。「KIBIT Automator」はレビュー作業のコストを大幅に削減することができるため、従来方法のレビュー案件より利益率が高いことが特長であります。
「KIBIT Automator」による案件獲得に営業活動を集中し、売上構成比について従来型ビジネスを主体としたものから、AIレビューツール「KIBIT Automator」を活用した案件を主体としたものへ転換するポートフォリオ・トランスフォーメーションを推進することで、中長期的に従来型ビジネスからの脱却を図ってまいります。また、強固な顧客基盤を構築すべく、当社ポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」を利用したマーケティング活動、勉強会、ウェビナーなどを継続的に実施し、アジア案件にフォーカスすることで新規顧客開拓を強力に進め、事業の更なる成長を推進してまいります。
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(財務制限条項)
当社は、2020年12月21日にタームローン契約、2022年1月24日及び2022年3月11日にコミットメントライン契約を締結しておりますが、それぞれの契約に財務制限条項が付されております。
詳細は、「第5 経理の状況 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しております。
当社は、独自開発した人工知能エンジン「KIBIT」について創薬支援、診断支援、経済安全保障、金融、人事・営業支援等さまざまなフィールドでの利便性をさらに向上させるため、新たなソリューションの拡充、製品の開発を行っております。当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は