第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は、「企業活動の継続性と生産性の劇的な向上に貢献すること」をミッションに掲げて、先端オープン技術の活用力と独自の高い技術力を競争の源泉として、明るい未来を創造する技術者集団であり続けることを目指しております。このため当社が事業成長を実現するにあたっては、継続的な技術力の強化とともに、絶え間ない技術革新から生み出される先端技術をいち早く獲得・事業化し、技術的な環境変化に適応した顧客価値を創出していくことが最重要課題であると認識しております。

 

(2)経営環境及び経営戦略

 新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限の緩和により、一部では社会経済に持ち直しの兆しがみられるもののエネルギー価格の高騰等、景気の先行きは依然不透明な状況にあるものと考えております。また、あらゆる産業においてデジタル技術を駆使してこれまでにない革新的なビジネスモデルを展開する企業が台頭しており、ビジネス環境は大きく変化しているものと認識しております。これらに加えて、日本においては生産年齢人口の減少による労働力不足や技術承継が問題となっており、企業は事業継続性と競争優位性の確立に向けて、早急にデジタル変革を進める必要に迫られていると考えております。

 これらの社会的課題の解決とミッション追求のために、当社は機械学習やAIを企業の内部に組み込み、日常業務に実装し「データ活動の機動性を獲得」することがこれまでになく重要と捉え、業務の高度化・省人化を目指す、異常検知ソリューション「Impulse」と、企業内データの利活用の促進に資する、企業内検索エンジン「Neuron Enterprise Search」という2つのソフトウエアパッケージの推進を継続するとともに、研究開発による新製品・サービスの創出を行うことで、成長戦略の実現を図ってまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等

 当社は、主な成長性・収益性の指標として、売上高成長率と営業利益率、及びソフトウエアライセンス数を重視しております。当社のエンタープライズAIソフトウエア事業は、顧客ニーズに併せてクラウド型のサービス提供とオンプレミス型のソフトウエアライセンス、保守ライセンス提供を併用しておりますが、提供形態に関わらず共通でソフトウエアによる収益の獲得を志向しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社が優先的に対処すべき主な課題は、以下の項目と認識しております。

① 新技術への対応

 当社が強みとするAI関連の技術は、将来的な利用可能性の高さから世界的に研究開発が活発に行われております。このような事業環境の下で当社が事業を継続的に拡大していくには、継続的な技術力の強化とともに、絶え間ない技術革新から生み出される先端技術をいち早く獲得・事業化し、技術的な環境変化に適応した顧客価値を創出していくことが必要であると認識しており、その対応を行っております。

 

② 人材の確保

 当社は、市場の拡大、新規参入企業の増加、顧客ニーズの多様化に迅速に対応していくため、最先端の技術を有する人材の確保、育成が必要と考えております。優秀な能力を持つ人材を獲得するために、当社が取り組む先端技術等の情報をメディア経由で外部発信する等、技術を軸とした会社の魅力を訴求していくことが重要であると考え、その対応を行っております。

 

③ 開発体制の強化

 当社は、事業拡大を図る上では、提供サービスの進化、継続的な機能向上が重要であると考えております。そのためには、さらなる優秀な人材の確保に加えて開発プロセスの改善、社内におけるノウハウの共有や教育訓練等が不可欠であるため、優秀な人材を積極的に採用するとともに、開発プロセスを継続的に見直し、社内におけるノウハウの共有や教育訓練等を実施し、より強固な開発体制の構築に努めてまいります。

 

 

④ 営業体制の強化

当社は、安定的かつ着実な事業拡大を図る上で、既存契約の継続に加えて案件数が増加した場合においても、収益率を高水準に維持し、かつ提供サービスの品質を維持・向上することが重要であると考えております。そのためには、さらなる営業体制の強化等が不可欠であるため、販売パートナーを含めた営業プロセスを継続的に見直し、より強固な営業体制の構築に努めてまいります。

 

⑤ 知的財産権の確保等

 当社では、日々の開発業務から生じた新規性のある独自技術の保護のために、当社単独又は共同開発企業等と共同で、それらに関する特許権等の知的財産権の取得を図っております。しかしながら、当社の事業分野においては、国内外大手IT企業等が知的財産権の取得に積極的に取り組んでいるため、当社も特許権等の取得により当社の活動領域を確保することが課題であると認識しており、外部専門家とも協力しながら、独自の技術分野については、他社に先立って戦略的に特許権等を取得してまいります。

 

⑥ 内部管理体制の強化

 当社は、今後もより一層の事業拡大を見込んでおります。そのため、当社の事業拡大に応じた内部管理体制の構築を図るとともに、金融商品取引法における内部統制報告制度の適用等も踏まえ、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでまいります。また、当社の成長速度に見合った人材の確保及び育成も重要な課題と認識しており、継続的な採用活動と研修活動を行ってまいります。

 

⑦ 情報管理体制の強化

 当社は、サービス開発、サービス提供の過程において、機密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、情報管理規程等に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修の実施やシステムの整備などを継続して行ってまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社は中長期的な企業価値の向上、安定期な経営基盤構築の観点から、サステナビリティに関する課題への対応は重要と認識し、取組を行っております。

 取締役、監査役から構成される取締役会、経営会議においてサステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、総合的なリスクマネジメントを行います。

 具体的な活動は、取締役が監督責任を持ち、その配下の各組織、各委員会が協議・推進をしています。

 

(2)戦略

 当社は、「企業活動の継続性と生産性の劇的な向上に貢献する」をミッションに掲げ、自社のプロダクトを通して社会貢献活動を目指しています。今後、事業活動を取り巻く社会情勢が大きく変動する可能性がある中で、前述のミッションの遂行、安定的な経営を図るために、人的資本の重要性を認識しています。人材の成長と事業成長が継続的に連動しており、社員個人の特性や能力を最大限に活かすことが、組織力の強化に繋がるため、優秀な人材の確保・育成、専門性の高い知識の習得、社員の労働意欲が高まる社内環境・制度の整備・拡充に努めております。

 

 人材の確保・育成に対する取組

 ビジネスモデルを支える優秀な人材の確保・育成のため、特定の分野の専門スキルを持つスペシャリストを国内外から採用ができるよう投資を行っております。社員の能力が発揮できるキャリア開発の実現のため、目標管理面談や1on1ミーティングを定期的に実施し、キャリアの志向や適性を判断し、業務のアサインや部署間の移動などを柔軟に行っております。

 専門スキルの向上に関しては、書籍や講習費用の補助、国内外の技術発表への参加費用補助など積極的にスキルを習得できる環境の整備を進めています。また、若手社員の早期戦力化のためにOJTや社内外の研修を実施しています。

 

(3)リスク管理

 ガバナンスのもと、リスクの低減、企業価値の維持・向上のため、リスクの管理を徹底しています。サステナビリティ関連のリスク及び機会は、リスク管理体制を統括する取締役会が主導で定期的にリスクの検証、評価、見直しを行います。その中で経営に与える影響が大きく、対応の強化が必要だと判断した事項については、優先的に対応し、適切にモニタリングをすすめております。

 

(4)指標及び目標

 人材の確保及び社内環境の整備に関する取組を拡充しております。

 多様性を含む人材確保についての取組としては、国内に限らず海外からの優秀な人材の積極採用や事業成長の要である技術職の採用の強化を引き続きおこないます。

 また、業界固有の特徴である女性従業員比率の少なさを改善できるよう、ダイバーシティを重視した採用や女性従業員の管理職への抜擢等を行ってまいります。

 

項目

当事業年度

エンジニア従業員比率()

68.5

外国籍従業員比率()

14.2

女性管理職比率()

12.5

女性従業員比率()

15.7

 

 

 

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。当社はリスク管理の基本方針を「リスク管理規程」に定め、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスク顕在化の予防を図っております。

 

(1) 景気動向及び業界動向の変化について

 企業を取り巻く環境や労働人口減少に伴う企業経営の効率化などの動きにより、当社が事業を展開するAIシステム市場は今後急速に拡大すると予測されるものの、急拡大が見込まれる反面、企業の景気による影響や別の各種新技術に対する投資による影響を受ける可能性があります。当社においては、複数のソフトウエアサービスを複合的な提供形態(クラウド型/オンプレミス型)、販売形態(サブスクリプションモデル/買取モデル)で提供することにより、外部環境の変動に強いビジネスモデルの構築を推進しておりますが、当社が事業を展開する市場が経済情勢の変化に伴い事業環境が悪化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 競合について

 当社の事業は、同様のビジネスモデルを有している企業は複数あるものの、サービスの特性、その導入実績、保有特許、ノウハウによる技術等、様々な点から他社と比較して優位性を確保できていると認識しておりますが、将来の成長が期待される市場であり、国内外の事業者がこの市場に参入してくる可能性があります。このため、先行して事業を推進していくことで、さらに実績を積み上げて市場内での地位を早期に確立してまいります。しかしながら、今後において十分な差別化ができなかった場合や、新規参入により競争が激化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 技術革新への対応について

 当社が事業を展開するIT業界は、技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が速く、それに基づく新機能の導入等が行なわれております。当社は、先端のオープン技術(主として機械学習技術/深層学習技術・自然言語処理技術)と当社技術を組み合わせることにより、また、常に市場動向を注視し技術革新への対応を講じることにより、今後も競争力のあるサービスを提供できるように取り組んでおります。しかしながら、予想以上の急速な技術革新や代替技術・汎用的な競合商品の出現等により、当社のサービスが十分な競争力や付加価値を確保できない場合には、新規受注の減少や契約継続率の低下により当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 人材の確保及び育成について

 当社が開発するサービスは、従業員(エンジニア)の技術力に拠るところが大きく、積極的に優秀な人材の獲得を進めると共に、社内教育等を通してエンジニアの育成に努めております。また、従業員の働きやすさを重視した業務環境の整備等を積極的に行うことで、人材の外部流出防止にも努めております。しかしながら、事業規模の拡大に応じた当社内の人材育成、外部からの優秀な人材の採用等が計画どおりに進まず、必要な人材を確保することができない場合、あるいは優秀な人材の社外流出等が発生した場合には、当社の成長戦略の遂行に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 内部管理体制について

 当社は、今後企業価値を高めていくためにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底のため、内部管理体制の充実・強化に努めております。

 しかしながら、今後の事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の整備に遅れが生じた場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 情報管理について

 当社は、その業務の性格上、顧客側で保有している機密情報(経営戦略上重要な情報等)に触れる場合があります。情報の取扱いについては、情報管理規程、個人情報保護管理規程等を整備し、適切な運用を義務づけております。このような対策にも関わらず当社の人的オペレーションのミス等、その他予期せぬ要因等により情報漏洩が発生した場合には、当社が損害賠償責任等を負う可能性や顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) システム障害等について

 当社がクラウドで提供しているソフトウエアサービスの大半は、サービスの基盤をインターネット通信網に依存しております。したがって、自然災害や事故によりインターネット通信網が切断された場合には、サービスの提供が困難となります。また、予想外の急激なアクセス増加等による一時的な過負荷やその他予期せぬ事象によるクラウドサービス事業者のサーバーダウン等により、当社のサービスが停止する可能性があります。これまで当社において、そのような事象は発生しておらず、システム障害やシステム過負荷等によるシステムダウンを避けるべく、システム冗長性の確保やシステム稼働状況の監視等の技術的な対策を実施しておりますが、今後このようなシステム障害等が発生し、ソフトウエアサービスの安定的な提供が行えないような事態が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 法的規制等について

 当社は、当社の事業を制限する直接的かつ特有の法的規制は、本書提出日時点において存在しないと考えております。しかしながら、今後、当社の事業を制限する法的規制が制定されたり、既存の法的規制の運用が変更された場合には、当社の事業展開は制約を受ける可能性があります。当社としては引き続き法令を遵守した事業運営を行っていくべく、今後も法令遵守体制の強化や社内教育などを行っていく方針ですが、今後当社の事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当該規制に対応するための費用が発生したり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 訴訟、係争について

 当社では、本書提出日現在において、業績に影響を及ぼす訴訟や係争は生じておりません。また、当社は取引の契約締結に際して、法務担当による事前の契約条文の審査を行い、トラブル等の未然防止に取組んでおります。しかしながら、当社が事業活動を行う中で、顧客等から当社が提供するサービスの不備等により、訴訟や係争が生じた場合には、当社の社会的信用が毀損され、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 知的財産権におけるリスクについて

 当社は、事業競争力の優位性を確保するため、製品開発の中で多くの差別化技術あるいはノウハウを蓄積し、それら知的財産権の保護に努めております。また、当社による第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の特許を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、ロイヤリティの支払や損害賠償請求等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 無形固定資産(ソフトウエア)について
 当社は、市場競争力を強化・維持するためソフトウエアへの投資を進めており、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた制作費をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として無形固定資産計上しております。
 ソフトウエアの開発に際しては、市場性等を慎重に見極めておりますが、市場や競合状況の急激な変化などにより、今後利用が見込めなくなった場合や、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、除却あるいは減損の対象となる可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 特定の人物への依存について

 当社の代表取締役社長 齋藤佐和子は、創業者であり、設立以来当社の経営方針、事業戦略の立案やその推進に重要な役割を果たしております。当社は特定の人物へ依存しない体制を構築するべく、経営幹部社員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により齋藤佐和子の当社における業務遂行が困難になった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13) 小規模組織であることについて

 当社は小規模な組織であり、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び業務内容の多様化に対応するため、人員の増強及び内部管理体制及び業務執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 新規サービス・ソフトウエアの開発等について

 当社のソフトウエアサービスは、商品特性ゆえに幅広い産業に対して提供することが可能です。製造業や通信業、建設業といった既存顧客の領域だけではなく、今後も引き続き積極的に他の産業への適用を目指すとともに、新たな技術やニーズに基づく新サービス及び新規ソフトウエアの開発に取り組んでまいります。これによりシステムへの投資や人件費等、追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また、新規サービス及び新規ソフトウエアの開発等が当初の予測どおりに進まない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社では、役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は10.1%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化し、当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 配当政策について

 当社は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、当社は現在、成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、なお一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

(17) 資金使途について

 当社が2021年7月に実施した公募増資による調達資金の使途に関しましては、主に事業拡大に必要となる研究開発費、採用研修費、広告宣伝費等に充当する予定です。

 しかしながら、急速に変化する経営環境へ柔軟に対応していくため、現時点での資金使途計画以外の使途へ充当する可能性があります。資金使途計画が変更となる場合には、速やかに開示いたします。また、当初の計画に沿って資金を使用したとしても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。

 

(18) 自然災害に関するリスクについて

 当社では、従業員安否確認手段の整備等、有事に備えて危機管理体制の整備に努めておりますが、大規模な地震、台風等の自然災害が想定を大きく上回る規模で発生した場合、当社又は当社の取引先の事業活動が制限され、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19) 特定のサービスに関する収益認識について

・AIサービスに関する収益認識について

 当社が営む事業のうち、特にAIサービスについては、取引毎に履行義務の内容が異なっており、当社では内部統制の整備及び運用を通じて、その契約形態や取引実態等に応じて履行義務を識別し収益認識を行っております。しかしながら、各取引の実態を反映した収益認識を行うにあたり、各契約における収益額が、収益認識基準に基づき履行義務の充足とともに適切に計上されているかの判断は複雑な会計上の判断を必要とすることから、何らかの理由により、この判断を適切に実施出来なかった場合には、当社の経営成績並びに財政状態を正しく把握出来ない可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当社は、「企業活動の継続性と生産性の劇的な向上に貢献すること」をミッションに掲げて、先端オープン技術の活用力と独自の高い技術力を競争の源泉として、明るい未来を創造する技術者集団であり続けることを目指して、エンタープライズAIソフトウエアサービスを提供しております。

当事業年度(2023年8月1日から2024年7月31日)において、当社はソフトウェアライセンスの積み上げを推し進めるとともに、各種展示会への出展、パートナー連携の強化や共同でのソリューション開発等、営業面を含めた製品力の強化を行ってまいりました。

また、当社のサービスをより多くのお客様にお届けすること、より効率的な製品開発を行うことを目的として、営業体制及び製品開発体制の見直しを含む社内の体制整備に注力してまいりました。優秀な人材の採用は引き続き積極的に進めており、当事業年度末時点における従業員数は70名となっております。

製品開発につきましては、主要アプリケーションの市場成熟度に応じた機能の拡充を行うことで製品としての完成度を高めてまいりました。また、実務で使える生成AIをコンセプトとした、生成AIナレッジチャット「Chat EI」をリリースいたしました。

この結果、当事業年度(第16期)における売上高は、1,004,611千円(前期比4.7%減少)となり、売上総利益は565,824千円(前期比16.9%減少)、営業利益は73,261千円(前期比55.1%減少)、経常利益は73,079千円(前期比55.0%減少)、当期純利益は48,643千円(前期比60.3%減少)となりました。体制整備に伴う人員増加や成長に向けた製品の機能拡充に伴う減価償却費等により売上原価は前期比で増加いたしましたが、必要性を勘案したコストコントロールにより販売費及び一般管理費は前期比で減少し、営業利益率を高い水準で維持・向上できるよう努めております。

なお、当社はエンタープライズAIソフトウエア事業の単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績に関する記載は省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における総資産は1,860,666千円となり、前事業年度末に比べ24,430千円増加いたしました。流動資産は1,449,170千円(前事業年度末比34,500千円減少)となりました。主な減少要因は、現金及び預金の増加2,919千円、売掛金の減少39,441千円等によるものであります。また、固定資産は411,495千円(前事業年度末比58,930千円増加)となりました。主な増加要因は、ソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)の増加49,019千円等によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債は303,701千円となり、前事業年度末に比べ43,402千円減少いたしました。主な減少要因は、未払法人税等の減少19,279千円、未払消費税等の減少18,517千円、長期契約負債の減少9,721千円等によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は1,556,965千円となり、前事業年度末に比べ67,833千円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上による利益剰余金の増加48,643千円等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は1,309,861千円となり、前事業年度末に比べ2,919千円増加いたしました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりで あります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動による資金の増加は230,089千円となりました。これは主に、税引前当期純利益73,079千円の計上、減価償却費189,742千円の計上、契約負債の増加29,403千円、法人税等の支払額54,427千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動による資金の減少は238,359千円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出232,350千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動による資金の増加は11,190千円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入19,190千円、長期借入金の返済による支出8,000千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社の事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年8月1日

  至 2024年7月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

エンタープライズAIソフトウエア事業

1,004,611

95.3

合計

1,004,611

95.3

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2022年8月1日

至 2023年7月31日)

当事業年度

(自 2023年8月1日

至 2024年7月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

丸紅情報システムズ株式会社

114,176

10.8

114,066

11.4

岡谷システム株式会社

108,146

10.3

(注)当事業年度における岡谷システム株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる可能性があります。

 当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

 当事業年度の売上高は、1,004,611千円(前年同期比4.7%減)となりました。

 主な要因は、ストックライセンス数は堅調な積み上がりをみせたものの、案件の期ズレや前事業年度は短期的に大きな売上を計上する買取ライセンスの比重が高かった反動等の影響が挙げられます。

 

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度の売上原価は、438,787千円(前年同期比17.6%増)となりました。

 主な要因は、事業規模拡大に伴う人員増加により人件費が増加したこと及び機能拡充に伴いソフトウエアの減価償却費が増加したこと等によるものであります。この結果、売上総利益は、565,824千円(前年同期比16.9%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、492,562千円(前年同期比4.8%減)となりました。

 主な要因は、営業力の強化を目的とした人員増加により人件費が増加したこと及び役員の退任に伴う役員報酬の減少、研究開発費の減少によるものであります。この結果、営業利益は、73,261千円(前年同期比55.1%減)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 当事業年度において、営業外収益は28千円、営業外費用は210千円発生しました。

 主な要因は、受取利息12千円及び支払利息210千円が発生したことによるものです。この結果、経常利益は、73,079千円(前年同期比55.0%減)となりました。

 

(特別損益、当期純利益)

 当事業年度において、特別利益及び特別損失は発生しておりません。

 税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を24,436千円計上した結果、当期純利益は48,643千円(前年同期比60.3%減)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

 各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

 当社の事業活動における資金需要のうち主なものは、当社のエンタープライズAIソフトウエア事業を推進するための運転資金(労務費、外注費、人件費等)があります。これらの事業活動に必要な資金については、営業活動によるキャッシュ・フローでまかなうことを基本として、必要に応じて金融機関からの調達を実施する予定であります。

 また、当社の事業は仕入れ等が無く、提供するソフトウエア製品・サービスに対する利用料やライセンス料、保守ライセンス料をお客様から受領するビジネスモデルであり、短期的な資本の財源及び資金の流動性に問題はないものと考えておりますが、今後も資金の残高及び各キャッシュ・フローの状況を常にモニタリングしつつ、資本の財源及び資金の流動性の確保・向上に努めて参ります。

 なお、当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は1,309,861千円であります。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社は、「企業活動の継続性と生産性の劇的な向上に貢献すること」をミッションに掲げ、事業を拡大してまいりました。

 当社がこのミッションの下、長期的な競争力を維持し持続的な成長を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対して、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、最善の経営方針を立案していくことが必要であると認識しております。

 

 経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑦ 経営戦略の現状と見通し

 経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑧ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等」に記載のとおり、主な経営指標として売上高成長率、営業利益率、及びソフトウエアライセンス数を重視しており、各指標の推移は以下のとおりであります。

 

2023年7月期実績

2024年7月期実績

売上高成長率

12.8%

△4.7%

営業利益率

15.5%

7.3%

ソフトウエアライセンス数

買取

106本

68本

ストック

354本

442本

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社は、先端オープン技術の活用力と独自の高い技術力を競争の源泉として、法人向けに実用性の高いソフトウエアサービスを提供し続けることを目指し、主として機械学習技術/深層学習技術、自然言語処理技術を用いたソフトウエアの研究開発に取り組んでおります。

 社内体制としては、IT系コンサルティングファーム、大手製造業、国立研究機関等での研究開発職出身者や、大学でのコンピューターサイエンス分野の研究経験を有するなど、高い専門性を有するメンバーを中心に研究開発を行っております。

 当事業年度における当社の研究開発費の総額は、38,836千円であります。

なお、当社はエンタープライズAIソフトウエア事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しておりますが、当事業年度の研究開発活動は、以下のとおりであります。

(1)異常検知ソリューション「Impulse」のシステム安定稼働のためのインフラ技術検証及び自動モデル運用機能の調査・検証を行いました。また、嵌合検査アプリケーションのプロトタイピング及びセンサーデバイスとの連携技術検証を行いました。

(2)企業内検索エンジン「Neuron Enterprise Search」の検索精度向上に関する技術調査を行いました。

(3)生成AIナレッジチャット「ChatEI」に関連する大規模言語モデルの制度比較の文献調査・精度検証手法の調査を行いました。また、Agent機能(自律的にツールを活用して状況に応じて問題解決を図る機能)の調査・プロトタイプ検証を行いました。