第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動等または、前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について重要な変更はありません。

 

継続企業の前提に関する重要事象

当社グループは、前連結会計年度において、北米における当社グループを取り巻く事業環境の変化等に鑑み、事業予想等を見直した結果、特許権などの無形資産やのれんにおいて多額の減損損失を計上したこと等により、シンジケートローン契約に付されている財務制限条項に抵触しました。

このような状況に対し、当社グループは、基幹3製品(進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「マイフェンブリー」、過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」)の早期価値最大化およびグループをあげた構造改革により、2024年度を将来の再成長に向けた転換点とすべく、コア営業利益黒字化を目指してまいります。

さらに、財務面では、当社が保有するRoivant Sciences Ltd.の全株式の売却に加え、政策保有株式等の資産の売却を進め、必要な資金の確保に向けた施策も進めています。また、当社グループの金融機関からの借入金等について、親会社である住友化学株式会社による債務保証を受けています。これらの施策を踏まえ、主要な取引先金融機関から期限の利益喪失の請求権を行使しないことについて承諾を得ていることから、引き続き取引先金融機関の支援を得られる見通しです。

以上より、当社グループでは、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような状況が存在していますが、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しています。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当中間連結会計期間における当社グループ(当社および子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

また、文中における将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績

(業績管理指標「コア営業利益」について)

当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。

「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額等です。

 

当中間連結会計期間の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。

 

 

 

(単位:億円)

 

前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

至 2023年9月30日)

当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

至 2024年9月30日)

増減

増減率

(%)

売上収益

1,526

1,807

281

18.4

コア営業利益

△658

△0

658

営業利益

△865

△82

783

税引前中間利益

△561

△324

237

中間利益

△677

△322

355

親会社の所有者に
帰属する中間利益

△677

△322

355

 

 

売上収益は1,807億円(前年同期比18.4%増)となりました。

北米において進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「マイフェンブリー」、過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」(以下「基幹3製品」)の売上が拡大したことに加え、期中の平均為替レートが円安となったことによる為替換算の影響等により増収となりました。

 

コア営業損益は0億円の損失(前年同期は658億円の損失)となりました。

売上収益の増加に加え、北米グループ会社の再編等による事業構造改善効果の発現や研究開発投資の選択と集中による削減等グループをあげて合理化を進めたことにより、販売費及び一般管理費ならびに研究開発費が大きく減少したことから、コア営業損益は前年同期と比較し大幅に改善しました。

 

営業損益は82億円の損失(前年同期は865億円の損失)となりました。

コア営業損益の改善に加え、事業構造改善費用が減少したことにより、営業損益は前年同期と比較し大きく改善しました。

 

税引前中間損益は324億円の損失(前年同期は561億円の損失)となりました。

金融損益は、前年同期は円安により金融収益が金融費用を上回りましたが、当中間連結会計期間は前連結会計年度末との比較では為替が円高に振れたことから金融費用が金融収益を上回りました。しかしながら、営業損益が大きく改善したことから、税引前中間損益は前年同期と比較し改善しました。

 

中間損益は322億円の損失(前年同期は677億円の損失)となりました。

税引前中間損益が改善したことに加え、法人所得税が減少したことから、中間損失は前年同期と比較し改善しました。

 

親会社の所有者に帰属する中間損益は322億円の損失(前年同期は677億円の損失)となりました。

非支配持分に帰属する利益を控除した親会社の所有者に帰属する中間損益は前年同期と比較し改善しました。

 

(セグメント業績指標「コアセグメント利益」について)

セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。

「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益等を除外したセグメント別の利益となります。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりです。

日本>

売上収益は528億円(前年同期比9.8%減)となりました。

非定型抗精神病薬「ラツーダ」や2型糖尿病治療剤「ツイミーグ」などの売上が伸長しましたが、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」の独占販売期間が終了したことによる売上減少に加え、薬価改定の影響が大きく、減収となりました。

コアセグメント損益は63億円の利益(前年同期比6.5%増)となりました。

減収により売上総利益は減少しましたが、コスト削減を進めたことによる販売費及び一般管理費の減少の影響が大きく、増益となりました。

 

<北米>

売上収益は1,042億円(前年同期比42.2%増)となりました。

基幹3製品および抗てんかん剤「アプティオム」の売上が伸長したことに加え、為替換算の影響により、増収となりました。

コアセグメント損益は74億円の利益(前年同期は422億円の損失)となりました。

増収による売上総利益の増加に加え、北米グループ会社の再編に伴う事業構造改善効果等による販売費及び一般管理費の減少が大きく寄与し、コアセグメント利益となりました。

 

<アジア>

売上収益は237億円(前年同期比14.0%増)となりました。

中国において、カルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の売上が増加したこと等により、増収となりました。

コアセグメント損益は114億円の利益(前年同期比15.5%増)となりました。

増収による売上総利益の増加により、増益となりました。

 

(2) 財政状態

資産については、前連結会計年度末に比べ1,077億円減少し、7,998億円となりました。

非流動資産では、Roivant Sciences Ltd.株式等の当社が保有する投資有価証券の売却によりその他の金融資産が大きく減少したことに加え、前連結会計年度末との比較では為替が円高に振れたことによる為替換算の影響で無形資産やのれんが減少したため、前連結会計年度末に比べ1,501億円減少しました。

流動資産では、営業債権及びその他の債権や未収法人所得税が減少しましたが、投資有価証券の売却等により現金及び現金同等物が増加した結果、前連結会計年度末に比べ424億円増加しました。

負債については、投資有価証券の売却により未払法人所得税が増加し、繰延税金負債が減少しました。また、借入金やその他の流動負債等が減少した結果、前連結会計年度末に比べ658億円減少し、6,855億円となりました。

資本合計は、投資有価証券の売却等により、利益剰余金が増加しましたが、その他の資本の構成要素が減少した結果、前連結会計年度末に比べ419億円減少し、1,142億円となりました。

なお、当中間連結会計期間末の親会社所有者帰属持分比率は14.3%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、北米グループ会社での事業構造改善に伴う支出があったものの、中間損益が大きく改善したことに加え、引当金の増加や法人所得税の還付があったこと等により、前年同期に比べ1,790億円改善し46億円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、Roivant Sciences Ltd.株式等の投資有価証券の売却により、前年同期に比べ648億円収入が増加し、975億円の収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少等により、前年同期に比べ742億円収入が減少し、294億円の支出となりました。

上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物に係る換算差額等を加えた結果、当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物は991億円となり、前連結会計年度末に比べ700億円増加しました。

 

(4) 事業上および財務上の対処すべき課題

当中間連結会計期間において、当社グループの事業上および財務上の対処すべき課題に重要な変更および新たに生じた課題はありません。

 

(5) 研究開発活動

当中間連結会計期間における研究開発費の総額は、研究開発投資の選択と集中による削減等により、263億円(前年同期比47.8%減)となりました。なお、当該金額は、当中間連結会計期間に計上した事業構造改善費用12億円を含んでいることから、これを除いたコアベースの研究開発費は、251億円(前年同期比44.6%減)となりました。また、当社グループは、研究開発費をグローバルに管理しているため、セグメントに配分していません。

がん領域では、本年6月、enzomenib(開発コード:DSP-5336)について、米国食品医薬品局(FDA)より、MLLmixed-lineage leukemia)遺伝子の再構成またはNucleophosmin 1NPM1)遺伝子の変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病を対象としたファストトラックの指定を受けました。

その他の領域では、ベルギーにおいて、本年5月、ユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤(開発コード:fH1/DSP-0546LP)について、フェーズ1試験を開始しました。

 

※ファストトラック:重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患に対し、治療効果が期待される治療法の開発・審査の迅速化を目的とした制度

 

当社グループにおける開発状況は以下のとおりです。

1.精神神経領域

 

(2024年10月30日現在)

製品名/一般名/コード名

予定適応症

地域

開発段階

低分子

ラツーダ/

ルラシドン塩酸塩

(新用法:小児)統合失調症

日本

フェーズ3

DSP-0038

アルツハイマー病に伴う精神病症状

米国

フェーズ1

DSP-0187

ナルコレプシー

日本

フェーズ1

DSP-3456

治療抵抗性うつ

米国

フェーズ1

DSP-0378

ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群

日本

フェーズ1

DSP-2342

未定

米国

フェーズ1

再生・細胞医薬

CT1-DAP001/DSP-1083

(他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞)

パーキンソン病

日本

申請準備中

米国

フェーズ1/2

(医師主導治験)

フェーズ1/2

(企業治験)

HLCR011
(他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞)

網膜色素上皮裂孔(RPE tear)

日本

フェーズ1/2

 

 

2.がん領域

 

(2024年10月30日現在)

製品名/一般名/コード名

予定適応症

地域

開発段階

nuvisertib/
TP-3654

骨髄線維症

米国・日本

フェーズ1/2

enzomenib/
DSP-5336

急性骨髄性白血病

米国・日本

フェーズ1/2

DSP-0390

膠芽腫

米国・日本

フェーズ1

SMP-3124

固形がん

米国・日本

フェーズ1/2

 

 

3.その他の領域

 

(2024年10月30日現在)

製品名/一般名/コード名

予定適応症

地域

開発段階

ジェムテサ/

ビベグロン

(新効能)前立腺肥大症を伴う過活動膀胱

米国

申請

(2024/02)

ビベグロン

過活動膀胱

中国

フェーズ3

KSP-1007

複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、人工呼吸器関連肺炎を含む院内肺炎

米国・日本

フェーズ1

fH1/DSP-0546LP

インフルエンザ

欧州

フェーズ1

 

 

4.フロンティア事業

 

(2024年10月30日現在)

領域

プログラム

概要

開発状況

連携先

精神神経

認知症行動・心理症状用機器

General Wellness品として「Aikomiケア、Aikomi DS」を試験販売中。非薬物療法をデジタルで実現し、個別最適化された五感刺激コンテンツを含むDTx品を研究開発中であり、承認機器としての保険償還を目指す。

日本

臨床研究
準備中

(医療機器)

Aikomi

社交不安障害向けVRコンテンツ(BVR-100)

暴露療法や認知再構築トレーニングなど認知行動療法(CBT)に即したモジュール等をVRコンテンツ化したDTx品を開発中。General Wellness品としてのメンタルヘルスVRコンテンツ「First Resort」を上市済み。

米国

臨床試験
準備中
(医療機器)

BehaVR

ウェアラブル脳波計

日常的にどこでも簡単に前頭2極から測定可能な簡易型脳波計。これにより、脳波トレンドを把握し精神疾患の早期検知を可能にするサービスを目指す。

日本

製品開発中
(医療機器)

㈱ニューロスカイ

うつ病検出・重症度評価支援プログラム

リストバンド型のウェアラブルデバイスの情報から機械学習を用いて、うつ病の早期発見や重症度評価を客観的、定量的かつ簡便に行えるソフトウェアを開発し、薬事承認を得て臨床現場に導入することを目指す。

日本

製品開発中

(医療機器)

慶應義塾大学、i2medical合同会社

バイオレットライト

40Hzに点滅するバイオレットライトによる視覚を介したニューロモジュレーション技術を開発し、精神疾患の治療・予防を目指す。

日本

製品開発中

(医療機器)

㈱坪田ラボ

運動機能
障害

手指麻痺用ニューロリハビリテーション機器

認証機器「MELTz」として上市済み。

手指麻痺等を対象に、筋電信号を利用したロボットニューロリハビリテーション装置について、承認機器としての保険償還を目指す。

日本

製品開発中
(医療機器)

手指麻痺用トレーニング機器

MELTz Portable」として開発中。

手指麻痺等を対象に、筋電信号を利用したロボットを用いてトレーニングを行う小型で簡易な装置を目指す。

日本

製品開発中

(非医療機器)

 

 

 

(6) 生産、受注及び販売の実績

当中間連結会計期間において、基幹3製品および抗てんかん剤「アプティオム」の売上が拡大したことにより、北米セグメントにおける生産実績及び販売実績が著しく増加しました。

 

(7) 主要な設備

当中間連結会計期間において新たに確定した主要な設備の新設の計画は、以下のとおりです。

新設

会社名
事業所名

所在地

設備の内容

投資予定金額

資金調達
方法

着手および完了予定

総額

既支払額

着手

完了

S-RACMO株式会社

大阪府吹田市

再生・細胞医薬

製造施設

3,050
百万円

自己資金及び借入金

2024年7月

2025年7月

 

なお、S-RACMO株式会社は、当中間連結会計期間末時点では連結子会社でしたが、半期報告書提出日時点では連結の範囲から除外され、持分法適用関連会社となりました。

 

3 【経営上の重要な契約等】

借入契約

2023年3月に実施したMyovant Sciences Ltd.の完全子会社化の対価の一部について、短期資金借入契約を締結しており、当中間連結会計期間において、これらに関連する借入契約の契約期限を2024年12月末まで延長しています。また、これらの借入契約は、当社親会社である住友化学株式会社による債務保証を受けています。

契約会社名

相手先

契約内容等

契約期間

住友ファーマ㈱
(当社)

㈱三井住友銀行

Myovant Sciences Ltd.完全子会社化の対価資金の借入

2023.3~2024.12

住友ファーマ㈱
(当社)

㈱三井住友銀行

Myovant Sciences Ltd.完全子会社化の対価資金の追加借入

2023.6~2024.12

住友ファーマ㈱
(当社)

三井住友信託銀行㈱

Myovant Sciences Ltd.完全子会社化の対価資金の追加借入

2023.6~2024.12

 

 

以下の契約については、契約の更改により、契約の相手先を変更しました。

 

技術導入

契約会社名

相手先

国名

技術の内容

対価の受取

契約期間

住友ファーマ㈱
(当社)

Pristine

フランス

イメグリミンに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2017.10~

発売から10年間又は特許満了日の長い方

 

 

販売契約等

契約会社名

相手先

国名

契約内容

契約期間

住友ファーマ㈱
(当社)

ヴィアトリス製薬合同会社

日本

リズミックに関する販売提携

2002.12~2012.11
以後1年間ずつ自動更新