第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当半期報告書提出日現在において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更は次のとおりです。

また、以下の見出しに付された項目番号は、前連結会計年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」の項目番号に対応したものであり、文中の下線部分が変更箇所です。

 

 (3) 当社グループの経営に関連するリスク 

① 法的規制等について

鉄道事業においては、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより、経営しようとする路線及び鉄道事業の種別について許可を受ける必要があります(同法第3条)。

収益の中心となる運賃面においては、上限運賃を設定するときは国土交通大臣の認可を受けなければならず、上限運賃の範囲内で運賃を改定する場合にも、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(同法第16条)。 

当社が現在取得しているこれらの国土交通大臣の許可及び認可には期間の定めは無く、当社の現在の運賃は、2019年9月5日に変更の認可を受けたものです(2019年10月1日より改定後の運賃を適用)。

なお、運賃の改定を施行するに当たっては、所定の手続を経る必要があることから、機動的な運賃の改定を行うことができない場合等には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、2021年12月に軌道法施行規則(大正12年内務省・鉄道省令)及び鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)の改正により創設された「鉄道駅バリアフリー料金制度」に基づき、バリアフリー設備の整備費等に充当するための料金を定める場合には、バリアフリー整備・徴収計画を作成の上、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(鉄道事業法第16条第4項)。鉄道駅バリアフリー料金は、第二次交通政策基本計画(2021年5月8日閣議決定)に基づき、利用者に過度の負担感を与えないものとする必要があるとされており、また、その総徴収額はバリアフリー整備・徴収計画における総整備費を超えない額とすることとされています。

当社は2023年3月18日から、運賃に加算して鉄道駅バリアフリー料金の収受を開始しておりますが、法令又は運用の変更等により、バリアフリー整備・徴収計画に定めたとおりに料金の徴収ができない場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。 

鉄道事業を休廃止する場合には、事前に(廃止の場合は廃止日の1年前までに)国土交通大臣に届出を行うこととされています(同法第28条、第28条の2)。また、鉄道事業法、同法に基づく命令、これらに基づく処分、許可・認可に付した条件に違反した場合、正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しない場合、同法第6条に定める事業許可の欠格事由に該当することとなった場合などの際には、国土交通大臣は事業の停止を命じ又は許可を取り消すことができるとされています(同法第30条)。仮に、国土交通大臣より事業の停止や許可の取消しを受けた場合には、事業活動の継続に支障を来すこととなりますが、現在、同法に抵触する事実等は存在せず、事業活動の継続に支障を来す要因は発生していません。

当社は鉄道事業法に加えて、東京地下鉄株式会社法(平成14年法律第188号)や安全、環境、バリアフリー等の規制に関する様々な法令の適用を受けており、これらの法令が改正され又はその運用が変更された場合、その内容によっては当社の事業活動における柔軟性の減少、費用の増加等を招き、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法の概要は以下のとおりですが、この法律においては、国及び同法附則第11条の規定により営団から株式の譲渡を受けた地方公共団体は、特殊法人等改革基本法に基づく特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする旨規定されています(東京地下鉄株式会社法附則第2条)。

また、2021年4月2日に開催された、第3回交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会において、国土交通省が配布した資料には、「東京メトロが完全民営化(政府が株式を全て売却)した場合には、JR本州3社・JR九州の例を踏まえると、現行の東京メトロ法に基づく監督規定は廃止される一方、引き続き、鉄道事業法等の規定に基づき鉄道事業を運営することとなる。」 旨記載されています。

(ⅰ) 制定趣旨・目的等

東京地下鉄株式会社法は、当社の設立について定めるとともに、その目的、事業に関する事項について規定しています。同法は、鉄道事業法に加えて当社を規制するとともに、商号の使用制限等の特例措置を定めています。

なお、東京地下鉄株式会社法に基づく政府の規制は、当社の経営の自主性の確保を前提とするものであり、毎事業年度の開始前に事業計画を国土交通大臣に提出することは求められているものの、事業計画の認可、関連事業の実施についての認可等は不要とされています。

(ii) 概要

ア 国土交通大臣による認可を必要とする事項

(ア) 発行する株式又は新株予約権を引き受ける者の募集等の認可(東京地下鉄株式会社法第4条第1項)

会社法(平成17年法律第86号)第199条第1項に規定するその発行する株式若しくは会社法第238条第1項に規定する募集新株予約権を引き受ける者の募集をし、又は株式交換に際して株式、新株予約権若しくは新株予約権付社債を発行しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。

(イ) 代表取締役等の選定等の決議の認可(同法第5条)

代表取締役又は代表執行役の選定及び解職並びに監査等委員である取締役若しくは監査役の選任及び解任又は監査委員の選定及び解職の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

(ウ) 定款の変更等の認可(同法第7条)

定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く)、合併、分割及び解散の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

イ その他の規制事項

国土交通大臣への事業計画及び財務諸表の提出義務(同法第6条、第8条)、国土交通大臣の監督・命令権限並びに報告指示及び検査権限(同法第9条、第10条)が規定されています。

ウ 特例措置

(ア) 商号の使用制限(同法第2条)

当社でない者は、その商号中に東京地下鉄株式会社という文字を使用してはなりません。

(イ) 一般担保(同法第3条)

社債権者は、当社の財産について、民法の規定による一般の先取特権に次いで優先弁済を受けることができます。

 

⑦ 都営地下鉄との一元化について

当社は、当社と同じく東京都区部及びその周辺地域における地下鉄道事業を営む都営地下鉄とのサービスの一体化は、当社の利用者の利便性向上につながるものと考えており、地下鉄利用者の利便性向上への取組の検討を進めていきます。

また、当社は国及び東京都との間で、当社の完全民営化並びに当社と都営地下鉄とのサービスの一体化及び経営の一元化に関して従来から意見交換を行っています。これらの課題について具体的な解決策やサービス向上策の実現に向けて実務的な検討を行うことを目的として、「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が2010年8月に設置されました。また、2013年7月には都営地下鉄と当社とのサービスの改善・一体化を推進することを目的として「東京の地下鉄の運営改革会議」が設置されました。当社・都営地下鉄間の運賃の乗換負担軽減策を含むサービスの一体化に関するこれらの協議の結果によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

他方、都営地下鉄については、公営企業という組織形態や累積欠損を抱えていること等を考慮すると、当社との経営の一元化を図るために解決されなければならない多くの問題が残されており、仮に経営の一元化を実施する場合においても、相当程度の時間を要することが想定されます。また、経営の一元化を実施する場合には、都営地下鉄の経営状況の改善や当社の企業価値向上が図られることが基本と考えますが、経営の一元化の具体的な内容によっては、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ コンプライアンスについて

当社グループは、「コンプライアンスに関する規定」、「東京メトログループコンプライアンス行動基準」などの周知、徹底に加え、コンプライアンス教育を定期的に実施するなどの啓発活動を行うとともに、コンプライアンスに反する行為等を通報できる「企業倫理向上窓口」を設置するなど、コンプライアンス体制の整備・拡充に努めています。

しかしながら、当社グループの役職員によるコンプライアンスに反する行為が発生した場合には、法令等に基づく罰則や規制当局による処分、コンプライアンス違反に起因する損害賠償請求等を受けること等により、当社グループの社会的信用が低下するとともに、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

2024年9月12日、国土交通省関東運輸局からの鉄道車両における輪軸の緊急点検の指示を受け、当社の輪軸組立作業についての検査を実施したところ、全体の約2%にあたる222軸において、車輪圧入作業における圧入力値が社内基準値を超過していたこと、及び社内基準値を満たすために、関連記録を手動で修正する慣行が当該作業に従事している当社グループ従業員の間で常態化していたことが判明しました。なお、当該社内基準値は、日本産業規格(JIS E4504)に基づく圧入力値の最大値となっています。一般的に、高い圧入力は車軸に損傷を与える可能性がありますが、社内基準値の+10%以内であった220軸については、安全性を確認した上で使用しており、社内基準値に対して+10%を超えた2軸については、車輪嵌替を実施のうえ使用を再開しています。また、2024年10月30日には、国土交通省鉄道局から当社に対して保安監査に基づく改善指示が発出されました。当社は、当該改善指示も踏まえ、今後同様の問題が発生しないよう対策を実施していますが、上記の不正行為に関連して、新たな対策を求められることとなった場合等には、コンプライアンスへの取組に関連する費用の発生等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 財務大臣及び東京都の当社株式保有について

本書提出日現在において、当社の発行済株式のうち、26.71%を財務大臣が23.29%を東京都が保有しており、財務大臣及び東京都は当社の経営に重要な影響を及ぼしうることになります。当社グループの事業その他に関する政府や東京都の利益は、当社の他の株主の利益と相反する可能性があり、当社グループの他の株主の利益に反する影響力の行使がなされる可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法附則第2条により、「国及び東京都は、特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」旨規定されております。また、2021年7月15日に交通政策審議会が答申した「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」(交通政策審議会答申第371号)において、当社株式の売却に当たっては、国及び東京都が当面当社株式の2分の1を保有することが適切であり、その後の当社株式の売却について国と東京都は、これまでの閣議決定や法律において完全民営化の方針が規定されていることを堅持しつつ、その中で、首都の中枢エリアを支える地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展を踏まえながら対応することが求められるとの考え方が示されております。さらに、2022年3月28日に財政制度等審議会が答申した「東京地下鉄株式会社の株式の処分について」及び同日に東京都が公表した「東京地下鉄株式会社の株式の処分の基本的な考え方」において、新規公開後の「その後の売却においては、国と東京都の協議を踏まえて対応すること」が適当であるとの考え方が示されております。以上のとおり、今後、地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展等を踏まえつつ、国と東京都が保有する当社株式の全部又は一部を売却することが想定されており、かかる売却が実施される場合には、短期的に当社株式の需給バランスに影響が生じ、当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

  文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものです。

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 当中間連結会計期間における我が国経済は、緩やかに回復しているものの、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇や金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。

 このような状況下で、当社グループは、2022年4月に公表し、2023年3月に設備投資計画の見直しやポストコロナを見据えた経営目標値の上方修正等を行った中期経営計画「東京メトロプラン2024」(2022年度~2024年度)に基づき、各種施策を積極的に推進しています。本計画期間において、鉄道事業の持続可能性の向上を図るべく、安全の確保を前提に、次世代に向けたコスト構造や業務の抜本的な見直し等、『構造変革』に取り組むとともに、新線建設、お出かけ機会の創出、都市・生活創造事業の強化等、『新たな飛躍』を目指した各種施策に取り組んでいます。

当中間連結会計期間の業績は、経済活動が活性化したこと等により、旅客運輸収入が増加し、営業収益が2,023億6千9百万円(前年同期比5.5%増)となり、営業利益が500億6千万円(前年同期比23.9%増)、経常利益が445億2千5百万円(前年同期比27.4%増)、親会社株主に帰属する中間純利益が306億9千9百万円(前年同期比26.6%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

[運輸業]

① 安全性・利便性の向上

 (セキュリティ強化)

テロ行為や犯罪に備え、車内セキュリティカメラの導入を進めており、2024年度中に全路線設置完了予定です。

 (自然災害対策)

阪神・淡路大震災及び東日本大震災後の通達に基づく耐震補強(高架橋、石積み擁壁)は完了しています。また、熊本地震後の通達に基づく震災対策として、早期運行再開を目的としたロッキング橋脚、こ線道路橋・人道橋の補強は完了し、現在はトンネル中柱の耐震補強工事を進めています。

大規模浸水対策として、浸水深に応じた駅出入口の止水板の改良、防水扉の設置、上屋建て替えによる完全防水型出入口への改良、換気口浸水防止機の改良、換気塔の嵩上げ、地上駅・地上設備の外壁の鉄筋コンクリート化、トンネル坑口への防水ゲートの設置等を進めており、現在60.6%の進捗となっています。

 (お客様の円滑な移動の実現)

お身体の不自由なお客様をはじめとした全てのお客様に安心してご利用いただけるよう、エレベーター、エスカレーター及びバリアフリートイレの整備を進めており、東西線南砂町駅にエレベーターを設置しました。また、ホームと車両床面の段差・隙間縮小のため、日比谷線、東西線、半蔵門線、南北線及び副都心線においてホームの嵩上げ、くし状ゴムの設置を進めています。

※銀座線・丸ノ内線・千代田線は設置完了

ホームドアの整備については、2025年度までの全路線全駅への設置完了を目指しており、2路線において設置工事を進めています。現在の全線及び設置工事中2路線の整備率は、以下のとおりです。

 

全線

東西線

半蔵門線

整備率

92%

52%

79%

 

※他路線は設置完了

また、東西線南砂町駅においては、2024年5月に第1回線路切替工事を行い、新設したホーム、出入口、改札等の供用を開始しました。

 (その他)

2021年6月に発生した日比谷線八丁堀駅における多機能トイレの機能不備によるお客様の発見遅れについては、公表した再発防止対策報告書に基づく取組を確実に推進し、当社施設の確実な施工、保守・点検及び適切な取扱いを徹底しています。

 

② 有楽町線延伸・南北線延伸等によるネットワーク発展・充実

 (有楽町線・南北線の延伸)

有楽町線延伸・南北線延伸に向けては、2024年6月に都市計画決定が告示されたことを踏まえ、地質及び埋設物の調査並びに設計、年内の着工に向けた各種協議及び手続きを行うとともに工事説明会を実施しました。

 

③ 鉄道事業の成長に向けたアクションプラン

 (目的地と連動した移動価値)

沿線施設と連動したお出かけ機会の創出に向けて、企業や自治体とタイアップしたスタンプラリーを実施しました。

  (他サービスと連携した移動価値)

「東京メトロmy!アプリ」を介して、お出かけ情報の提供や二次交通との連携による観光予約等、ご乗車の機会が増えるような「楽しみ」の提案や企画検討を行っています。2024年4月から、同アプリを介して飲食店ポータルサイトであるオズモールを予約いただいたお客様に、メトロポイントクラブ(メトポ)のポイント付与を開始しました。また、同年7月から9月まで、東海汽船株式会社と連携し、同アプリを介した東京湾納涼船の利用予約を提供しました。

 (頻度に応じた移動価値)

より分かりやすくお得に多くのお客様にご利用いただけるよう、2024年4月に、PASMOをお持ちの方を対象とした「メトロポイントクラブ(メトポ)」とTo Me CARDをお持ちの方を対象とした「メトロポイント」の2つのポイントサービスを統合しました。また、同年5月に、モバイルのPASMOをご利用のお客様において、モバイルPASMOアプリ上でメトポの登録手続き及びポイントからのチャージを可能にしました。

 

④ 新技術の導入とDXによる鉄道オペレーションの進化

 (技術開発ビジョン)

新技術の導入・開発やDXの推進等により、持続的な企業価値向上を図り、将来にわたる安心の提供を実現するため、状態基準保全(CBM)の一環として、車両・設備の状態監視を進めています。また、故障予知技術・劣化予測技術の促進の検討を進めています。

 

⑤ 不動産事業の拡大とまちづくりとの連携

 (まちづくりとの連携)

駅周辺開発を計画・検討する都市開発事業者等と連携した「えき・まち連携プロジェクト」として、5駅において開発提案を募集しています。

 

⑥ 海外鉄道ビジネスの拡大・新規ビジネスの開発推進

 (海外鉄道ビジネス)

海外鉄道ビジネスについては、ベトナム、フィリピン等において鉄道整備、技術支援に係る各プロジェクトや世界の鉄道関係者向けオンライン講座・訪日研修を推進しています。「ベトナム国鉄道学校における都市鉄道研修能力強化プロジェクト」においては、ベトナムの鉄道関係者を対象に訪日研修を実施しました。「フィリピン鉄道訓練センター設立・運営支援プロジェクト」では、現地訓練センターの設立、カリキュラム・教科書の作成及び指導員養成等、計画した内容を完遂しました。また、世界の鉄道関係者向けオンライン講座・訪日研修の「Tokyo Metro Academy」においては、オンライン講座6講座を開催しました。

 (新規ビジネスの開発)

新規事業の創出を目的とした社内事業開発プログラム「メトロのたまご」を通じて社員が提案したスケートボードパーク&スクール事業「RAMP ZERO」を、日比谷線南千住駅高架下において2024年4月に営業開始しました。また、「Tokyo Metro ACCELERATOR 2022」で最終審査を通過したSTUDIO BUKI株式会社との協業施策として、子どもが作中で東京メトロの運転士になれるパーソナライズド絵本「僕は私は運転士!」を同年4月に販売開始しました。同様に、最終審査を通過した株式会社休日ハックとの協業施策として、漫画・謎解き・街歩きを掛け合わせたオリジナル体験型エンターテイメント「メトロタイムゲート」を同年5月から8月までの期間限定で実施しました。

加えて、「東京メトロ×プログラボ」15校目となるプログラボ晴海を、東京2020大会選手村の跡地に開発された「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」内にオープンしました。

 

⑦ 脱炭素・循環型社会への貢献

 (脱炭素社会への取組)

脱炭素社会の実現に向けた取組として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、当社の気候関連リスク、機会等を特定し、開示しています。指標、目標として掲げている長期環境目標「メトロCO₂ゼロ チャレンジ 2050」の達成に向け、2024年4月から丸ノ内線・南北線で使用する全ての電力を水力発電由来の再生可能エネルギーに置き換えてCO₂排出量ゼロで運行を開始しました。それに合わせ、当社の環境負荷低減の取組に触れていただく機会を創出するため、同年4月から5月に「乗ってエコ」スタンプラリーを実施しました。また、東西線では、家庭用太陽光発電の余剰電力の環境価値を調達し、使用する電力の一部を実質再生可能エネルギー化して運行を開始しました。その他、同年7月に鉄道業界で初めて小水力発電、9月に太陽光発電に関するバーチャルPPA(需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの環境価値のみを仮想的に調達する契約)を新たに締結しました。今後も再生可能エネルギーの活用や、車両・設備の省エネルギー化に取り組んでいきます。

加えて、当社の鉄道運行を通じて生まれた、社会における環境面でのポジティブインパクト(削減貢献量)を活用し、同年6月、東京都交通局と共同で、環境負荷の少ない移動手段の利用促進を目的として「エコボーナスWキャンペーン」を実施しました。また、同年9月から株式会社大丸松坂屋百貨店が運営する上野松坂屋店と「メトロに乗ってエコフに行こう!キャンペーン」を実施し、鉄道の環境優位性と両者の環境負荷低減に向けた取組の訴求を図っています。引き続き他者と連携した施策の実施等を通じて、鉄道事業の成長を環境課題の解決につなげていきます。

(循環型社会への取組)

当社グループが運営する一部の飲食店、社員食堂等から排出される使用済み油をSAF(Sustainable Aviation Fuel:化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料)の原料に再利用する取組として、「Fry to Fly Project」(国内資源循環による脱炭素実現に向けたプロジェクト)に参加し、2024年6月には、東西線浦安駅で使用済み油回収イベントを実施しました。今後も、お客様に楽しく体感いただけるイベントを企画・実施し、SAFの重要性や当該プロジェクトを発信していきます。

 

⑧ 経営基盤の強化

 (安全文化の醸成)

お客様の安全を第一とし、事故の未然防止、再発防止に取り組むため、グループ全役員・社員を対象にした安全研修を実施したほか、事故防止オープンセミナー、ヒューマンファクター分析等を実施しました。社員一人ひとりが自ら考え行動を起こすことができる安全文化の醸成に努めています。

(豊かな社会のためのパートナーシップ)

女子駅伝部や車いすフェンシング選手である安直樹選手の活動支援のほか、東京マラソンへの参画を通じて、スポーツ選手が活躍できる環境づくりに貢献するとともに地域・社会の活性化に取り組んでおり、2024年9月には、パリ2024パラリンピック競技大会に出場した安直樹選手とともに東京都主催のパラスポーツイベント「TOKYO パラスポーツ FORWARD」へ参加し、車いすフェンシングの体験会を実施しました。また、次世代を担う人財を育成することを目的として、東京大学生産技術研究所とともに、同年7月に中高生を対象とした「鉄道ワークショップ2024」を開催しました。

運輸業の当中間連結会計期間の業績は、経済活動が活性化したこと等により、旅客運輸収入が増加し、営業収益が1,853億3千3百万円(前年同期比5.5%増)、営業利益が430億8千8百万円(前年同期比27.2%増)となりました。

 

(運輸成績表)

 

種別

単位

前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

至 2023年9月30日)

当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

至 2024年9月30日)

 

営業日数

183

183

 

旅客営業キロ

キロ

195.0

195.0

 

輸送人員

定期

千人

632,728

659,756

 

 

定期外

558,105

594,799

 

 

 計

1,190,833

1,254,556

 

旅客運輸収入

定期

百万円

62,649

65,827

 

 

定期外

97,996

103,872

 

 

 計

160,646

169,700

 

     (注)記載数値は、千人未満、百万円未満を切り捨てて表示しています。

 

[不動産事業]

不動産事業においては、収益性の向上を図るべく、駅周辺の都市開発と一体となった建物の整備を進めています。2024年4月には神宮前六丁目用地再開発建物が東急プラザ原宿「ハラカド」として開業しました。また、新宿駅西口地区開発計画においては新築工事を推進し、東上野地区においては東上野四丁目A―1地区再開発準備組合へ事業協力者として参画しています。加えて、遊休資産の有効活用として同年7月には北馬込一丁目用地(旧家族寮)に介護付有料老人ホームの「チャームスイート旗の台」が開業しました。そのほか、同年4月に「東京メトロアセットマネジメント株式会社」を設立し、不動産事業の成長を目的とした不動産アセットマネジメント事業への参入に向け、準備を進めています。

不動産事業の当中間連結会計期間の業績は、営業収益が70億9千5百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益が27億2千4百万円(前年同期比3.6%増)となりました。

 

[流通・広告事業]

流通・広告事業においては、収益性の向上を図るとともに、お客様の「新たな日常」を支え、ニーズに迅速に対応するため、各種開発を推進しました。

流通事業については、駅構内店舗等において店舗入替を行うとともに、駅構内の空きスペースにおいて自動販売機、コインロッカー等の増設を行ったほか、日本橋駅及び錦糸町駅において新規店舗の開発を進めました。

広告事業については、デジタルサイネージの販売促進に加え、中づりやまど上、駅ばりポスターの貸切商品等、クライアントニーズに応じたインパクトのある商品の展開により、収益拡大に努めました。

流通・広告事業の当中間連結会計期間の業績は、営業収益が120億9千5百万円(前年同期比4.6%増)、営業利益が41億3千2百万円(前年同期比8.0%増)となりました。

 

当社グループの財政状態については、当中間連結会計期間末における資産合計は前連結会計年度末に比べ256億1千8百万円減1兆9,969億5百万円、負債合計は370億5百万円減1兆3,171億2千2百万円、純資産合計は113億8千7百万円増6,797億8千2百万円となりました。

資産の部の減少については、流動資産において工事代金の支払等による現金及び預金、有価証券(譲渡性預金)の減少等によるものです。

 負債の部の減少については、流動負債において工事代金等の未払金の支払等によるものです。

 純資産の部の増加については、親会社株主に帰属する中間純利益の計上等によるものです。

この結果、当中間連結会計期間末における自己資本比率は、34.0%となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ185億9千万円増加し、当中間連結会計期間末には717億5千6百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当中間連結会計期間における営業活動による資金の増加は、561億4千8百万円(前年同期比11億6千万円の収入増)となりました。これは、税金等調整前中間純利益443億3千8百万円(前年同期比93億4千6百万円の収入増)や非資金科目である減価償却費352億5千6百万円(前年同期比10億8千6百万円の収入減)を計上したこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  当中間連結会計期間における投資活動による資金の減少は、426億4千2百万円(前年同期比152億9千2百万円の支出減)となりました。これは、設備投資等を中心に有形及び無形固定資産の取得による支出が473億9千2百万円(前年同期比136億2千4百万円の支出減)あったこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  当中間連結会計期間における財務活動による資金の減少は、324億1千5百万円(前年同期比4億5千5百万円の支出減)となりました。これは、社債の償還による支出が100億円(前年同期比50億円の資金の増加)、長期借入金の返済による支出が36億8千万円(前年同期比23億5千8百万円の資金の増加)及び配当金の支払額が185億9千2百万円(前年同期比69億7千2百万円の資金の減少)あったこと等によるものです。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間連結会計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。

 

(4) 研究開発活動

特記すべき事項はありません。

 

3 【経営上の重要な契約等】

 当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定、締結等はありません。