当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
当中間連結会計期間におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しやインバウンド需要の拡大等により、景気に緩やかな回復が見られました。一方で、株価・為替の急激な変動、地政学リスクの長期化、原材料や燃料等のコストの高止まり、国内の物価上昇や人手不足など、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、地震や豪雨など、自然災害や気候変動の影響も引き続き懸念されるとともに、各種環境規制への対応が求められています。さらに、デジタル化、AIの普及などテクノロジーの変化により、ビジネスはより複雑になり、競争も激化しています。
DNPグループは、環境・社会・経済が急激に変わるなかでも、変化やリスクに対応するだけでなく、自らが長期を見据えて変革を起こし、「より良い未来」をつくり出す事業活動を展開しています。DNPグループ独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めて、事業領域の拡張と業績の拡大に努めています。
当年度は2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」の2年目として、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しています。
事業戦略では、中長期にわたって強みを発揮できる事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、注力事業領域を中心に新しい価値の創出を加速させています。財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長のための投資と株主還元に適切に配分していきます。非財務戦略としては、「人への投資の拡大」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に推進し、サステナブルな成長を支える経営基盤の強化を図っています。
また、自然災害等の不測の事態に対しても、グループを挙げて事業継続マネジメント(BCM)の徹底を図ることで、多様な企業活動を持続的に推進していきます。
その結果、当中間連結会計期間のDNPグループの売上高は7,083億円(前年同期比2.1%増)、営業利益は381億円(前年同期比38.6%増)、経常利益は500億円(前年同期比33.5%増)となりました。親会社株主に帰属する中間純利益は、投資有価証券の売却にともなう特別利益の計上もあり、897億円(前年同期比17.7%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用部材が欧米・アジア市場で好調に推移したほか、バーコード等の印字に使用する溶融型熱転写記録材が主に東南アジア市場で堅調に推移しました。また、国内の証明写真サービスや撮影サービスの増加も寄与し、前年を上回りました。
情報セキュア関連は、1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカードが売上に貢献しましたが、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件の減少もあり、前年を下回りました。
マーケティング関連は、長年培ったマーケティング施策の実績・知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めましたが、紙媒体の市場の縮小の影響もあり、前年を下回りました。
出版関連は、図書館運営業務が堅調に推移したものの、雑誌等の市場縮小の影響などにより、前年を下回りました。出版印刷事業においては、意思決定の迅速化及び部門間連携の強化を図り、市場環境の変化に適切に対応するため、製販一体の事業推進体制へと移行する組織再編を2025年4月に行うことを決議しました。
その結果、部門全体の売上高は3,466億円(前年同期比1.1%減)となりました。営業利益は、紙媒体を中心とした市場縮小による減収の影響を受けたものの、為替のプラス効果、人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革により、126億円(前年同期比48.0%増)となりました。
モビリティ・産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、IT向けはスマートフォンやタブレット端末などの新機種向けの需要が伸長したものの、車載向けは電気自動車(EV)市場の需要停滞の影響を受けました。太陽電池関連は、世界的な需要の高まりによって、封止材を中心に好調に推移しました。自動車用の加飾フィルムは、内装用に加えて、塗装工程の短縮と環境負荷の低減を実現しながらデザイン性にも優れた外装用の製品の販売に注力しました。また、2024年8月に株式会社ミックウェアと資本業務提携契約を締結し、同社の車載用デバイスのソフトウェアやコネクテッド基盤の開発の強みと、両社が持つデジタル技術を掛け合わせることで、モビリティ領域におけるDXを推進し、事業の拡大を加速させていきます。
包装関連は、原材料の値上げの影響を受けたものの、価格転嫁が進展したことに加え、スナックや日用品関連などの受注が好調に推移したほか、ペットボトル用無菌充填システムの販売も増加しました。また、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®」をはじめとする機能性包材の開発・販売に注力し、当事業全体で前年を上回りました。
メディカル・ヘルスケア関連は、医療用パッケージの開発・販売に注力しました。また、創薬開発の支援拡大に向け、iPSC(人工多能性幹細胞)専門のバイオ企業である韓国のNEXEL社と心筋細胞の培養に関する技術提携を行い研究・開発を強化・推進していきます。
生活空間関連は、高い耐久性とデザイン性を両立させた外装材「アートテック®」が国内外で堅調に推移したものの、国内の新設住宅着工戸数(持家)の減少などによって住宅向け内装材が減少し、当事業全体で前年を下回りました。
飲料事業は、自動販売機やコンビニエンスストア、Webサイトでの販売が好調に推移したほか、主要な販売チャネルでの昨年来の価格改定の効果もあり、当事業全体で前年を上回りました。
その結果、部門全体の売上高は2,429億円(前年同期比4.8%増)となりました。営業利益は、原材料費や物流費の上昇ペースが落ち着き、価格転嫁が進んだことに加えて、包装関連事業の売上増加もあり、90億円(前年同期比76.8%増)となりました。
デジタルインターフェース関連は、光学フィルムが液晶テレビ用パネルの大型化にともなう出荷面積の拡大等により、堅調に推移しました。有機ELディスプレイ製造用メタルマスクは、スマートフォンでの有機ELディスプレイ採用拡大にともなって増加し、当事業全体で前年を上回りました。なお、タブレット端末、ノートPC、車載デバイス向けの有機ELディスプレイ採用拡大への対応として、福岡県北九州市の黒崎工場内に新設したメタルマスク生産ラインを2024年5月より稼動させています。
半導体関連は、市場の回復によって半導体製造用フォトマスクの出荷量が堅調に推移し、当事業全体で前年を上回りました。
その結果、部門全体の売上高は1,197億円(前年同期比6.3%増)となりました。営業利益は、メタルマスクの新ライン増設による設備費増加の影響がありましたが、為替のプラス効果、デジタルインターフェース関連の売上増加により、278億円(前年同期比11.0%増)となりました。
当中間連結会計期間末の資産、負債、純資産については、総資産は、現金及び預金の増加や、受取手形、売掛金及び契約資産、投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べ138億円減少し、1兆9,417億円となりました。
負債は、未払法人税等の増加や、支払手形及び買掛金、繰延税金負債の減少などにより、前連結会計年度末に比べ255億円減少し、6,933億円となりました。
純資産は、中間純利益による増加や、剰余金の配当、自己株式の取得、その他有価証券評価差額金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ117億円増加し、1兆2,484億円となりました。
当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて513億円増加し、2,859億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前中間純利益1,237億円、減価償却費260億円などにより647億円の収入(前年同期は384億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出300億円、投資有価証券の売却による収入649億円などにより392億円の収入(前年同期は357億円の収入)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出456億円、配当金の支払額76億円などにより596億円の支出(前年同期は645億円の支出)となりました。
(3)研究開発活動
当中間連結会計期間におけるDNPグループ全体の研究開発費は18,448百万円であります。
なお、当中間連結会計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(4)主要な設備
前連結会計年度末において実施中及び計画中であった主要な設備の新設、除却等の計画について、当中間連結会計期間に著しい変更があったものは、次のとおりであります。
三原工場のディスプレイ関連製造設備の新設は、完成予定を2025年4月から2025年9月に変更しております。
当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。