第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社及び連結子会社が判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 ① 財政状態の状況

当中間連結会計期間末における資産、負債及び純資産の状況は次のとおりであります。

 

(資産)

当中間連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ88億33百万円減少し1兆2,198億52百万円となりました。主な要因は以下のとおりであります。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ69億54百万円減少いたしました。これは主に、受取手形及び売掛金が236億15百万円、商品及び製品が221億74百万円および流動資産のその他が36億70百万円増加したものの、現金及び預金が564億27百万円減少したことによるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ18億79百万円減少いたしました。これは主に、有形固定資産が72億53百万円増加したものの、投資その他の資産が92億65百万円減少したことによるものであります。

 

(負債)

当中間連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ222億67百万円減少し7,899億90百万円となりました。これは主に、流動負債のその他が171億81百万円増加したものの、支払手形及び買掛金が390億40百万円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

当中間連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ134億34百万円増加し4,298億62百万円となりました。これは主に、剰余金の配当の支払が31億5百万円、その他有価証券評価差額金の減少が44億29百万円あったものの、親会社株主に帰属する中間純利益を202億78百万円計上したことによるものであります。 

 

 

 ② 経営成績の状況

当中間連結会計期間においては、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染防止対策と社会経済活動との両立を図る動きが進められております。一方、依然としてウクライナ情勢の終息時期が見通せないなか、外国為替相場の変動、電力・エネルギー価格や原材料価格の高騰による物価高が引き続き進展しております。また、政策的な賃金上昇に加えて、いわゆる「2024年問題」に代表される「働き手不足」が進展し様々なコストが上昇する一方で、価格転嫁が十分に見通せないことなど、国内景気や企業収益については先行き不透明な状況が続いております。

 

そのようななか、当社グループは、2026年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しており、本中計の実践を通じて、グループが「One Team」となって健康創造事業体への変革を進め、変化するヘルスケアエコシステムに新たな「解」と「希望」を送り続ける存在として新たな価値を創出し続け、さらなる企業価値の向上と社会課題の解決に貢献してまいります。

2032年の当社創立100周年に向け、本中計期間は「既存事業の変革」と「新たな成長事業の準備」を主なテーマと位置づけて取り組んでおります。

 

当中間連結会計期間における、「既存事業の変革」については、売上・シェアに連動する収益構造が変化しており、多様な企業との協業を通じ、希少疾病薬や再生医療等製品を含むスペシャリティ医薬品の流通モデルの強化やMS(※1)の活動による新たな収益モデル構築に取り組んでおります。

具体的には、医療流通プラットフォームの構築に向けて、スペシャリティ医薬品トレーサビリティシステムである「キュービックス」を全国の地域中核病院などへ導入し、医薬品の流通品質向上に取り組んでおり、スペシャリティ医薬品流通において、国内への新規参入や新製品の上市を目指す製薬企業のご要望にお応えするとともに、新薬を待ち望む患者さまに確実に医薬品をお届けできる流通基盤の強化に努めております。

新たな取り組みとして、公益財団法人がん研究会有明病院(東京都江東区)と共同で、当社の完全子会社である㈱コラボプレイスが新たに開発した服薬管理システム「CubixxDT(キュービックス DT)」(※2)を用いて、服薬アドヒアランス(※3)の評価を行う共同研究を10月より開始しております。既に「キュービックスシステム」が提供している卸物流から医療機関、在宅までのトレーサビリティに加えて、「CubixxDT」の活用により、専用服薬パックや専用通信機器による遠隔での服薬情報を可視化し、医療従事者がリアルタイムで把握・管理することを可能とし、医療従事者の患者さまに対する最適な服薬支援と治療効果の向上へ貢献することを目指してまいります。

また、医薬品流通のリアルタイムの可視化と最適化の取り組みとして、医薬品の出荷調整による医療機関や保険薬局の業務負荷軽減や当社の生産性向上に寄与する仕組みの開発・導入を進め、発注した医薬品の納期や代替品の在庫などをインターネット上で確認できる「納品予定お知らせサービス」ならびに「納品予定アプリ」を2023年5月より導入しており、既に約8.6万軒(2024年9月末時点登録数)を超えるお得意さまにご利用いただいております。また、2023年10月より導入した、需要予測による発注サポートを行う「発注提案アプリ」は、既に約1.3万軒(2024年9月末時点登録数)のお得意さまにご利用いただいております。

「2024年問題」を踏まえた取り組みとして、2024年4月より、埼玉県草加市に、最新のロボット技術を駆使した自動化・省人化を実現する卸物流拠点に、製造業務受託・メーカー物流エリアを併設した、業界初のコンセプトを持つ「首都圏物流センター」を構築し、本稼働しております。「首都圏物流センター」を通じ、自動化による効率化をはじめ、輸配送コストの低減、GDP基準(※4)に準拠した品質面、CO2排出量の削減などの環境面、災害時におけるBCP対応のより一層の強化など、さまざまな効果の実現を目指してまいります。

今後もスズケングループは、「既存事業の変革」を実現する新たな仕組みを順次導入してまいります。

 

「新たな成長事業の準備」については、既に提携している企業とともに、新たな流通チャネル構築や、協業によるデジタルヘルス事業の構築を加速させ、革新的なサービスや情報ビジネスを推進し、製薬企業や医療機関、保険薬局、患者さまへの新たな価値の提供に取り組んでおります。

具体的には、医療・介護従事者向けのポータルサイトである「コラボポータル」(※5)のサービス提供を開始し、当社グループが保有するさまざまなサービスや情報の発信に加え、お得意さまと当社グループ、製薬企業、さらには多職種・専門スタッフをつなぐ機能、協業企業のデジタルヘルスサービスを統合的にお届けする機能などを搭載し、医療・介護現場へデジタルヘルスサービスを安心・安全にご利用いただける環境づくりに取り組んでおります。2023年4月のサービス開始以降、登録ID全体としては、既に約17万ID(2024年9月末時点登録数)の利用をいただいているなか、2024年度は、医師IDの拡大に重点的に取り組むとともに、第1四半期連結累計期間に完全子会社となったエンブレース㈱が展開する、全国多数の医師会に採用され、約27万人の医療介護従事者の方々にご利用いただいている、医療介護に特化したソーシャル医療介護連携プラットフォーム「メディカルケアステーション(MCS)」(※6)との連携を推進し、スピードを上げて更なる拡大を実現してまいります。

今後も、スズケングループは、協業するヘルステック企業をはじめとする外部企業とともに、「健康創造事業体」の構築に向けた取り組みを加速させてまいります。

 

 

株主還元方針については、2023年5月に開示した株主還元方針を2023年11月10日に改定・強化し、安定的な配当の継続を基本とし、中期経営計画の最終年度である2026年3月期までの3年間平均において、総還元性向100%以上の株主還元を実施することにより株主還元の充実を図るとともに、既存事業の強化や新規事業の創出に向けた投資を行うことで企業価値と資本効率の向上を目指してまいります。

 

当中間連結会計期間の業績につきましては、売上高は、新型コロナウイルス関連商材(治療薬・診断薬その他)売上が前年同期よりも落ち込んだものの、医療用医薬品市場が伸長したことに加え、スペシャリティ医薬品等の新薬などが寄与し、増収となりました。営業利益は、増収効果に加えて、2024年4月に改訂された流通改善ガイドラインへの取り組みおよび、物流委託費をはじめ医薬品流通に係る様々なコストが高ぶれする状況下においても、引き続き販売費及び一般管理費の見直しと抑制に取り組んだことなどにより、増益となりました。また、親会社株主に帰属する中間純利益においては、政策保有株式(投資有価証券)の縮減(4銘柄)を実施し、特別利益として投資有価証券売却益(103億円)を計上したことなどが寄与し、増益となりました。

 

その結果、売上高は1兆1,973億23百万円(前年同期比0.2%増)、営業利益は171億1百万円(前年同期比3.2%増)、経常利益は170億9百万円(前年同期比6.5%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は202億78百万円(前年同期比27.7%増)となりました。

 

※1 MS(Marketing Specialist)

:医薬品卸売業の営業担当者のこと。
医療機関・保険薬局等を訪問し、医薬品の紹介、商談、情報の提供や収集を行います。

 

※2 CubixxDT(キュービックス DT)

:当社の完全子会社である㈱コラボプレイスが新たに開発した服薬管理システムのこと。
治療薬を充填する専用服薬パックと、データをサーバーに自動送信する専用通信機器で構成されており、患者さまが専用服薬パックから治療薬を取り出した際、そのイベントデータが専用通信機器によって自動的に専用サーバーへ送信され、医療従事者は、専用ポータルサイトの管理画面からいつでもそのデータを確認しリモートで患者さまの服薬状況を把握することが可能となります。

 

※3 服薬アドヒアランス

:患者さまが医療従事者の指示や治療計画に基づき治療を受けること。
特に薬物治療においてアドヒアランスが低い場合、治療効果が十分に得られない可能性があります。

 

※4 GDP(Good Distribution Practice)

:医薬品の適正流通基準のこと。
医薬品の市場流通における流通経路の管理保証、医薬品の完全性の保持、更に偽造医薬品が正規流通経路へ流入することの防止を図ることを目的としております。

 

※5 コラボポータル

:当社グループが保有するさまざまなサービスを提供する「ソリューション機能」をはじめ、当社グループの営業担当者やMRさま、専門スタッフの皆さまなどがチャットや動画などを活用して、遠隔でお得意さまと接点を持つことが可能になる「コミュニケーション機能」、さらにはAmazonビジネスとの連動による「購買機能」などをワンストップで提供するデジタルヘルスサービスの総合ポータルサイトです。SSO(Single Sign On:一度のユーザー認証によって複数のシステムの利用が可能になる仕組み)やデータ連携を採用し、アクセス性を高めることで医療・介護現場の業務効率化にも寄与します。

 

※6 メディカルケアステーション(MCS)

:誰でも簡単に利用できるタイムライン形式による非公開型医療介護連携SNSで、タブレット、スマートフォン、パソコンなど多様な端末に対応しています。強固なセキュリティのもとで院内や施設内はもちろん、外出先からでも必要な情報へ簡単にアクセスし、共有が可能。医師やコメディカル、介護職、患者さまとそのご家族が職種や立場を超えてつながる地域包括ケア・多職種連携を実現します。

 

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(医薬品卸売事業)

医療用医薬品市場は、抗悪性腫瘍剤の市場拡大やスペシャリティ医薬品等の新薬などが寄与したことにより、伸長したものと推測しております。

そのようななか、売上高は、新型コロナウイルス関連商材(治療薬・診断薬その他)売上が前年同期よりも落ち込んだものの、医療用医薬品市場が伸長したことに加え、スペシャリティ医薬品等の新薬の寄与などにより1兆1,551億87百万円(前年同期比0.3%増)となりました。営業利益は、増収効果に加えて、2024年4月に改訂された流通改善ガイドラインへの取り組みおよび、物流委託費をはじめ医薬品流通に係る様々なコストが高ぶれする状況下においても、引き続き販売費及び一般管理費の見直しと抑制に取り組んだことなどにより、145億41百万円(前年同期比3.4%増)となりました。

 

(ヘルスケア製品開発事業)

売上高は、医薬品製造事業における二次性副甲状腺機能亢進症治療薬ウパシタ静注透析用シリンジや、生理的腸管機能改善剤・高アンモニア血症用剤・ラグノスNF経口ゼリー、持続型赤血球造血刺激因子製剤ダルベポエチンアルファBS注の寄与などにより増収となりました。営業利益は、増収効果や、販売費及び一般管理費の抑制に努めたものの、研究開発費など先行投資費用が増加したことなどにより、減益となりました。

これらの結果、売上高は261億51百万円(前年同期比2.8%増)、営業利益は13億33百万円(前年同期比4.8%減)となりました。

 

(地域医療介護支援事業)

売上高は、介護事業においては増収を確保したものの、保険薬局事業において、閉局により運営店舗数が減少した結果、処方箋受付枚数が減少したことにより、減収となりました。営業利益は、販売費及び一般管理費の適正化に努めたものの、減収に伴う売上総利益の減少を十分に補うには至らず、減益となりました。

これらの結果、売上高は466億63百万円(前年同期比4.0%減)、営業利益は1億26百万円(前年同期比75.6%減)となりました。

 

(医療関連サービス等事業)

売上高は、主に、スペシャリティ医薬品流通事業の受託が増加したことなどにより増収となりました。営業利益は増収効果などにより増益となりました。

これらの結果、売上高は1,588億60百万円(前年同期比25.0%増)、営業利益は8億90百万円(前年同期比74.3%増)となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前中間連結会計期間に比べ816億25百万円減少し、1,423億14百万円となりました。当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果支出した資金は、565億97百万円(前年同期は861億75百万円の獲得)となりました。この主な要因は、税金等調整前中間純利益289億73百万円を計上したものの、売上債権の増加236億15百万円、棚卸資産の増加227億2百万円および仕入債務の減少390億40百万円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は、36億52百万円(前年同期比44億18百万円減)となりました。この主な要因は、有価証券の取得による支出270億30百万円、有形固定資産の取得による支出99億69百万円があったものの、有価証券の売却及び償還による収入286億円、投資有価証券の売却及び償還による収入122億20百万円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、34億96百万円(前年同期比3億8百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払31億5百万円があったことによるものであります。

 

(3) 経営方針・経営戦略等

当中間連結会計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間連結会計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。

 

(5) 研究開発活動

当中間連結会計期間の研究開発費の総額は、1,542百万円であります。

なお、当中間連結会計期間において当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3 【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。