第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更は以下のとおりです。なお、以下の見出しは、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 [企業情報] 第2 [事業の状況] 3 [事業等のリスク]」の項目に対応したものです。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本半期報告書提出日(2024年11月14日)現在において判断したものです。

 

16.役職員または第三者による不正行為や詐欺その他の犯罪により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります

 野村の役職員が、上限額を超えた取引、限度を超えたリスクの負担、権限外の取引や損失の生じた取引の隠蔽、顧客に対する犯罪行為や違法行為等の不正行為を行うことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります。また、不正行為には、インサイダー取引、情報伝達行為や取引推奨行為等の役職員または第三者による野村やその顧客の非公開情報の不適切な使用・漏洩その他の犯罪も含まれ、その結果、野村が行政処分を受け、もしくは法的責任を負う可能性、または野村のレピュテーションや財政状態に重大な悪影響が及ぶ可能性があります。

 また、野村は、第三者が行う詐欺的行為に直接または間接に巻き込まれる可能性があります。野村は、投資、融資、保証、その他あらゆる種類のコミットメントを含め、幅広いビジネス分野で多くの第三者と日々取引を行っているため、こうした第三者による詐欺や不正行為を防止し、発見することが困難な場合があり、こうした行為に巻き込まれることにより、野村の将来のレピュテーションや財政状態に影響が及び、野村が被る損失が多額になり、また野村に対する信頼が損なわれる等の悪影響を受けるおそれがあります。

 野村は、「野村グループ行動規範」を策定するとともに、コンプライアンス研修等の実施、内部通報制度での対応の充実等を通じて、その浸透と遵守を徹底することをはじめとする役職員や第三者による不正行為や詐欺的行為を防止または発見するための対策を講じていますが、これらの実装済の対策または今後追加する対策により役職員や第三者による不正行為や詐欺的行為を常に防止または発見できるとは限らず、また、不正行為や詐欺的行為の防止・発見のために取っている予防措置がすべての場合に効果を発揮するとは限りません。そのような不正行為や詐欺的行為の結果として野村に対する行政上の処分または司法上の決定・判決等が行われれば、野村はビジネスの機会を喪失する可能性があり、また、顧客、特に公的機関が野村との取引を行わない決定をした場合は、たとえ処分等が解除された後であっても、ビジネスの機会を喪失し、将来の収益や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

18.野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーショナル・リスクに影響される可能性があります

 (前略)

(2)規制による業務制限や、行政処分等による損失が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります

 (中略)

 なお、当社の子会社である野村證券株式会社が、2021年3月の国債先物取引において法令違反に該当する事実が認められたとして、2024年10月に財務省より国債市場特別参加者制度に基づく特別資格を2024年10月15日から2024年11月14日までの間停止する処分を受け、金融庁から課徴金納付命令を受けました。本事案を受けて、一部の顧客は野村との取引を控えており、収入に影響を与える可能性があります。

 (後略)

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績の概況

 当中間連結会計期間の収益合計(金融費用控除後)は9,378億円、金融費用以外の費用は7,018億円、税引前中間純利益は2,359億円、当社株主に帰属する中間純利益は1,673億円となりました。

 

 中間連結損益計算書における収益合計(金融費用控除後)および金融費用以外の費用の内訳はそれぞれ次のとおりであります。

 

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

 (百万円)

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

 (百万円)

委託・投信募集手数料

171,692

204,113

(委託手数料)

121,557

140,368

(投信募集手数料)

27,389

34,762

(その他)

22,746

28,983

投資銀行業務手数料

69,750

94,586

(引受・募集手数料)

29,921

48,291

(M&A・財務コンサルティングフィー)

23,615

31,912

(その他)

16,214

14,383

アセットマネジメント業務手数料

148,473

184,181

(アセットマネジメントフィー)

134,870

167,901

(その他)

13,603

16,280

トレーディング損益

232,176

279,705

プライベートエクイティ・デット投資関連損益

8,010

4,751

純金融収益

18,729

29,826

投資持分証券関連損益

7,569

△1,112

その他

60,274

141,719

 収益合計(金融費用控除後)

716,673

937,769

 

 

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

 (百万円)

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

 (百万円)

人件費

325,811

369,181

支払手数料

65,701

88,954

情報・通信関連費用

106,452

112,510

不動産関係費

34,078

34,445

事業促進費用

11,540

12,553

その他

70,046

84,185

 金融費用以外の費用計

613,628

701,828

 

事業別セグメント情報

 

 事業別セグメントにおける業績は次のとおりです。野村は、2024年4月1日付で「営業部門」を「ウェルス・マネジメント部門」に改称しました。

 なお、合算セグメント情報と、中間連結損益計算書における収益合計(金融費用控除後)および税引前中間純利益(△損失)との調整計算につきましては、「第4[経理の状況]1[中間連結財務諸表][中間連結財務諸表注記]16 セグメントおよび地域別情報」をご参照ください。

 

収益合計(金融費用控除後)

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

 (百万円)

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

 (百万円)

ウェルス・マネジメント部門

190,982

230,667

インベストメント・マネジメント部門

71,636

103,757

ホールセール部門

394,937

508,227

その他(消去分を含む)

60,708

97,111

718,263

939,762

 

金融費用以外の費用

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

 (百万円)

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

 (百万円)

ウェルス・マネジメント部門

138,990

143,120

インベストメント・マネジメント部門

44,794

48,643

ホールセール部門

384,572

441,812

その他(消去分を含む)

45,272

68,253

613,628

701,828

 

税引前中間純利益(△損失)

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

 (百万円)

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

 (百万円)

ウェルス・マネジメント部門

51,992

87,547

インベストメント・マネジメント部門

26,842

55,114

ホールセール部門

10,365

66,415

その他(消去分を含む)

15,436

28,858

104,635

237,934

 

ウェルス・マネジメント部門

 

 収益合計(金融費用控除後)は、株式委託手数料および投信募集手数料の増加等により、2,307億円となりました。金融費用以外の費用は1,431億円、税引前中間純利益は875億円となりました。2024年9月末のウェルス・マネジメント部門顧客資産残高は、2024年3月末から7.5兆円減少し146.1兆円となりました。

 

インベストメント・マネジメント部門

 

 収益合計(金融費用控除後)は1,038億円となりました。金融費用以外の費用は486億円、税引前中間純利益は551億円となりました。2024年9月末の運用資産残高は、主に運用資産の公正価値の下落により、2024年3月末から0.2兆円減少し88.8兆円となりました。インベストメント・マネジメント部門の収益合計(金融費用控除後)の内訳は以下のとおりです。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

 

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

事業収益 (1)

65,937

 

78,475

投資損益 (2)

5,699

 

25,282

収益合計(金融費用控除後)

71,636

 

103,757

 

(1) 投資損益を除く部門収益であり、主にアセット・マネジメント事業からの収益(アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益を除く)、野村バブコックアンドブラウン株式会社の航空機リース関連事業収益およびプライベート・エクイティ等の投資事業における管理報酬により構成

(2) 部門収益のうち投資に起因するものであり、主にアメリカン・センチュリー・インベストメンツ社への投資およびプライベート・エクイティ等の投資事業における投資にかかる損益(公正価値の変動、資金調達コストおよび配当金を含む)により構成

 

ホールセール部門

 

 収益合計(金融費用控除後)は5,082億円となりました。金融費用以外の費用は4,418億円、税引前中間純利益は664億円となりました。ホールセール部門の収益合計(金融費用控除後)の内訳は以下のとおりです。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

 

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

グローバル・マーケッツ

331,062

 

428,723

インベストメント・バンキング

63,875

 

79,504

収益合計(金融費用控除後)

394,937

 

508,227

 

 グローバル・マーケッツの収益合計(金融費用控除後)は4,287億円となりました。フィクスト・インカムの収益合計(金融費用控除後)は、主にスプレッド・プロダクトが好調で増収となり、前年同期の1,942億円から2,535億円となりました。エクイティの収益合計(金融費用控除後)は、エクイティ・プロダクト、エグゼキューションともに好調で、前年同期の1,368億円から1,752億円となりました。インベストメント・バンキングでは、収益合計(金融費用控除後)は795億円となりました。

 

その他の経営成績

 

 その他の経営成績には、経済的ヘッジ取引に関連する損益、一部の営業目的で保有する投資持分証券の実現損益、関連会社損益の持分額、本社勘定、その他の財務調整が含まれております。また、当中間連結会計期間に生じたデリバティブ負債に対する自社クレジットの変化に起因する利益134億円、カウンターパーティ・クレジット・スプレッドの変化に起因する利益1億円がその他の業績に含まれております。当中間連結会計期間のその他の経営成績の収益合計(金融費用控除後)は971億円、金融費用以外の費用は683億円、税引前中間純利益は289億円となりました。

 

地域別情報

 

 地域別の収益合計(金融費用控除後)および税引前中間純利益(△損失)については、「第4[経理の状況]1[中間連結財務諸表][中間連結財務諸表注記]16 セグメントおよび地域別情報」をご参照ください。

 

キャッシュ・フロー

 

 「(5) 流動性資金調達と資本の管理」をご参照ください。

 

(2)投資・金融サービス業務に付随する主要な資産負債等の状況

 

一定の金融商品および取引先に対するエクスポージャー

 

 市場環境は、野村が一定のエクスポージャーを有するさまざまな金融商品に影響を与え続けています。また、野村は通常の業務においても、特別目的事業体などの取引先に対し、一定のエクスポージャーを有しております。

 

レバレッジド・ファイナンス

 野村は、顧客にレバレッジド・バイアウト、レバレッジド・バイインにかかる貸付金を提供しています。通常このような資金提供はコミットメントを通じて行われることが多く、野村は実行済および未実行コミットメントの双方においてエクスポージャーを有しております。次の表は、2024年9月30日現在において未実行コミットメントがあるレバレッジド・ファイナンスのエクスポージャーを実行済および未実行分に分けて、対象企業の地域別に表しております。

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

実行済残高

 

未実行

コミットメント残高

 

合計

欧州

23,937

 

166,100

 

190,037

米州

18,525

 

254,032

 

272,557

アジア・オセアニア

1,149

 

69,446

 

70,595

合計

43,611

 

489,578

 

533,189

 

特別目的事業体

 野村が行う特別目的事業体との関与は、これらの事業体を組成すること、またマーケットの状況に応じて、これらの事業体が発行する負債証券および受益権を引受け、売出し、販売することが含まれております。また野村は通常の証券化およびエクイティ・デリバティブ業務の中で、これらの事業体に対する金融資産の譲渡、これらの事業体が発行したリパッケージ金融商品の引受け、売出し、販売を行っております。さらに野村は、マーケット・メーク業務、投資業務、組成業務に関連し、特別目的事業体にかかる変動持分の保有、購入、販売を行っております。特別目的事業体とのその他の関与には、債務保証やデリバティブ契約などが含まれます。

 

 変動持分事業体への関与に関するより詳しい説明は、「第4[経理の状況]1[中間連結財務諸表][中間連結財務諸表注記]7 証券化および変動持分事業体」をご参照ください。

 

(3)トレーディング業務の概要

 

トレーディング目的資産負債

 トレーディング目的資産および負債の内訳については、「第4[経理の状況]1[中間連結財務諸表][中間連結財務諸表注記] 2 公正価値測定 および 3 デリバティブ商品およびヘッジ活動」をご参照ください。

 

トレーディングのリスク管理

 野村はトレーディング業務におけるマーケット・リスクの測定方法として、バリュー・アット・リスク(以下「VaR」)を採用しております。

 

1)VaRの前提

・信頼水準:95%

・保有期間:1日

・商品の価格変動等を考慮

 

2)VaRの実績

 

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

(億円)

当中間連結会計期間末

(2024年9月30日)

(億円)

株式関連

33

30

金利関連

26

24

為替関連

21

24

小計

80

78

分散効果

△25

△24

バリュー・アット・リスク(VaR)

55

54

 

 

 当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

 

最大値(億円)(1)

最小値(億円)(1)

平均値(億円)(1)

バリュー・アット・リスク(VaR)

69

45

56

(1)過去6カ月のVaRの最大値、平均値、最小値は日次の計算結果に基づく。

 

(4)繰延税金資産の状況

1)繰延税金資産・負債の主な発生原因

 当中間連結会計期間末現在、中間連結貸借対照表上、その他の資産-その他として記載されている繰延税金資産、およびその他の負債として記載されている繰延税金負債の内訳は、以下のとおりであります。

 

 

(単位:百万円)

 

当中間連結会計期間末

(2024年9月30日)

繰延税金資産

 

減価償却、その他の償却、および固定資産の評価

40,755

子会社・関連会社株式投資

127

金融商品の評価差額

118,275

未払退職・年金費用

11,967

未払費用および引当金

81,680

繰越欠損金

460,927

リース負債

44,597

その他

18,093

繰延税金資産小計

776,421

控除:評価性引当金

△568,698

繰延税金資産合計

207,723

繰延税金負債

 

子会社・関連会社株式投資

117,274

金融商品の評価差額

97,647

海外子会社の未分配所得

2,606

固定資産の評価

23,026

使用権資産

39,475

その他

4,394

繰延税金負債合計

284,422

繰延税金資産(負債)の純額

△76,699

 

2)繰延税金資産の算入根拠

 繰延税金資産は、米国会計基準に基づき、将来において実現すると予想される範囲内で認識しており、将来において実現が見込まれない場合には評価性引当金を計上しております。なお、将来の課税所得の見積期間は納税単位ごとに個別に判断し、適正な期間見積もっております。

 

3)過去5年間の課税所得および見積もりの前提とした税引前当期純利益、調整前課税所得の見込額

 当社は、日本にてグループ通算制度を採用しており、野村證券株式会社を含む主要子会社は当制度に含まれております。上記1)に記載されている繰延税金資産のうち、日本の通算グループにおける繰延税金資産(負債)の純額は△84,504百万円となっており、野村の連結財務諸表における繰延税金資産(負債)の純額の大部分を占めております。

 

 以下の過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)では、2021年度以前についてはグループ通算制度への移行前の連結納税グループの合算数値を記載し、2022年度以降については通算グループの合算値を記載しております。

 

過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

日本の通算グループ(連結納税グループ)合算値

134,721

214,001

233,508

86,143

239,034

  (注) 法人確定申告書上の繰越欠損金控除前の課税所得であり、その後の変動は反映しておりません。

 

見積もりの前提とした税引前当期純利益、調整前課税所得の見込額

 日本の通算グループについては、5年を課税所得見積期間とし、見込み税引前当期純利益合計および見込み調整前課税所得合計はそれぞれ、579,971百万円、692,994百万円となっております。

 

(5)流動性資金調達と資本の管理

資金調達と流動性管理

 

概況

 

 野村では、資金流動性リスクを野村グループの信用力の低下または市場環境の悪化により必要な資金の確保が困難になる、または通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクと定義しております。このリスクは、市場において有担保あるいは無担保調達が不可能になる、野村の信用格付けが低下する、予定外の資金需要の変化に対応できない、迅速かつ最小の損失での資産の流動化ができない、あるいは、グループ会社間の自由な資金移動が妨げられる規制資本上の制約に関する変化等、市場全体の事情や野村固有の事情により発生します。資金流動性リスク管理については、経営会議が定める流動性リスク・アペタイトに基づくことを基本方針としております。野村の資金流動性リスク管理は、市場全体が流動性ストレス下にある場合において、またそれに加えて野村の信用リスクに過度なストレスを想定した場合においても、それぞれ1年間、および30日間にわたり、無担保による資金調達が困難な場合においても、保有資産を維持しつつ業務を継続することができる十分な資金流動性を常に確保することを主な目的としております。また、金融庁の定める流動性カバレッジ比率および安定調達比率(「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社およびその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社およびその子法人等の経営の健全性のうち流動性にかかる健全性の状況を表示する基準」)の充足が求められております。

 

 野村は、主な流動性維持の目的を達成可能とする、さまざまな資金流動性リスク管理フレームワークを定めております。このフレームワークには、(1)余剰資金の集中管理と流動性ポートフォリオの維持、(2)流動性ポートフォリオ以外の担保未提供資産の活用、(3)資産構成等に見合った資金調達ならびに調達手段の多様化および調達期間の分散、(4)野村グループ各社に対する与信枠の管理、(5)流動性ストレステストの実行、(6)コンティンジェンシー・ファンディング・プランに関することが含まれております。

 

 経営会議は、野村の資金流動性管理に関する重要事項についての決定権を有しており、財務統括責任者(以下「CFO」)は、経営会議の決定に基づき、野村の資金流動性管理に関する業務を執行する権限と責任を有しております。

 

1)余剰資金の集中管理と流動性ポートフォリオの維持

 野村は、野村グループ内で資金流動性を有効に活用することを可能とするため、野村グループ各社の余剰資金の集中管理を行っております。資金の使用に関しても、野村では、無担保で提供される資金を一元的に管理しており、内部で上限を設けております。この上限は、CFOによって決定され、経営会議において各部門へ配分が行われます。ファイナンス部門において、資金流動性の管理を行う組織であるグローバル・トレジャリーは、使用状況についてモニタリングを行い、経営会議へ報告しております。

 

 また、グループ会社間の資金移動を円滑なものにするため、規制対象ブローカーあるいは銀行における資金調達は限定的にしか行っておりません。野村は、無担保による資金調達の当社あるいは主要規制外発行体への集中を積極的に行っております。このことにより、野村は調達コストを最小化し、投資家からの認知度を高め、さまざまなグループ会社間の資金供給のフレキシビリティを高めております。

 

 潜在的な資金流動性必要額を考慮し、十分な資金流動性を確保するために、野村は、現金ならびに売却や担保提供することで流動性資金を供給することができる流動性の高い担保未提供資産等で構成される流動性ポートフォリオを維持しており、グローバル・トレジャリーにて他の資産と区別して管理をしております。流動性ポートフォリオの金額は、2024年9月30日現在、9兆3,758億円となっており、ストレスシナリオを考慮した資金流動性必要額を満たしております。

 

2)流動性ポートフォリオ以外の担保未提供資産の活用

 流動性ポートフォリオに加えて、主にトレーディング資産で構成される有担保資金調達の際の追加担保として使用可能な担保未提供資産を所有しております。グローバル・トレジャリーは、その他担保未提供資産のモニタリングを行っており、流動性ストレス下においてコンティンジェンシー・ファンディング・プランが発動された場合には、当該資産を現金化し、野村グループの流動性供給のために利用することができます。なお、流動性ポートフォリオとその他担保未提供資産の合計は、野村の1年以内に満期の到来する無担保債務の合計に対して、十分な金額を維持しております。

 

3)資産構成等に見合った資金調達ならびに調達手段の多様化および調達期間の分散

 野村は、保有資産を継続して維持していくうえで必要となる長期性資金を確保するために、長期無担保債務の額、および株主資本を十分な水準に維持するように努めております。また、無担保調達資金の借換えリスクを低減させるために、資金調達を行う市場やプロダクト、投資家、通貨および返済期限の分散にも努めております。

 

 野村は、さまざまな種類の債券を発行することによって、資金調達手段の分散を図っております。これらには、仕組ローンや仕組債が含まれ、金利・為替・株式・コモディティやこれらのインデックスにリンクしたリターンが付いております。野村は、資金調達方法の多様性が増すように仕組ローンや仕組債を発行しております。これらについて、野村は、通常、デリバティブや原資産に対する支払い義務をヘッジすることにより、無担保調達債務と同様の効果を得ております。

 

3.1)短期無担保債務

 野村の短期無担保債務は、短期銀行借入(長期銀行借入のうち、満期まで1年未満のものを含む)、その他の短期借入、コマーシャル・ペーパー、銀行業務受入預金、譲渡性預金、および償還まで1年以内の社債で構成されております。銀行業務受入預金および譲渡性預金は、銀行子会社の預金および譲渡性預金を表しております。短期無担保債務には、長期無担保債務のうち残存期間が1年以内となったものを含んでおります。

 

 以下の表は、2024年3月31日、2024年9月30日現在の野村の短期無担保債務明細を表示したものです。

 

 

 

(単位:十億円)

 

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当中間連結会計期間末

(2024年9月30日)

 

短期無担保債務

3,961.4

4,380.0

 

短期銀行借入

177.5

176.4

 

その他の短期借入

356.0

304.1

 

コマーシャル・ペーパー

224.8

116.8

 

銀行業務受入預金

1,880.9

2,258.8

 

譲渡性預金

232.4

206.9

 

償還まで1年以内の社債

1,089.8

1,317.0

 

3.2)長期無担保債務

 野村は、常に十分な長期性資金を確保し、適切なコストでの調達および適切な長期債務償還プロファイル維持を満たすために、満期や通貨の分散を行い定期的に長期性資金の調達を行っております。

 

 野村の長期無担保債務には、米国発行登録および登録ミディアム・ターム・ノートプログラム、ユーロ・ミディアム・ターム・ノートプログラム、国内発行登録およびさまざまな発行プログラムより発行される普通社債や劣後社債が含まれております。

 

 日本のグローバルな金融サービスグループとして、野村は、世界中のさまざまな市場と資金調達センターへのアクセスを持っております。主として当社、野村證券株式会社、ノムラ・ヨーロッパ・ファイナンスN.V.、ノムラ・バンク・インターナショナル PLC、ノムラ・インターナショナル・ファンディング Pte. Ltd.、および野村グローバル・ファイナンス株式会社が外部からの借入、債券発行その他資金調達を行っております。使用通貨や保有資産の流動性に合わせた資金調達や、必要に応じた為替スワップの使用により、調達構造の最適化を図っております。

 

 野村は、市場や投資家のタイプごとに、効率的かつ十分に多様化された資金調達を行うために、さまざまなプロダクトや通貨による調達をしております。野村の無担保債務の大部分は、発行コストの上昇や債務償還満期を早める財務制限条項(格付け、キャッシュ・フロー、決算あるいは財務レシオ)は、付されておりません。

 

 以下の表は、2024年3月31日、2024年9月30日現在の野村の長期無担保債務明細を表示したものです。

 

 

 

(単位:十億円)

 

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当中間連結会計期間末

(2024年9月30日)

 

長期無担保債務

10,254.9

10,576.0

 

長期銀行業務受入預金

243.0

381.5

 

長期銀行借入

3,408.4

3,377.8

 

その他の長期借入

292.3

297.5

 

社債 (1)

6,311.2

6,519.2

(1)編纂書810「連結」に定義される変動持分事業体の要件を満たす“連結変動持分事業体(VIE)が発行する社債”と編纂書860「譲渡とサービシング」により、会計上担保付金融取引として取り扱われる譲渡取消にともなう担保付借入を含んでおりません。

 

3.3)償還プロファイル

 プレーン・バニラ物(プレーン・バニラ債および長期借入金)の調達に関しては、平均残存年数が3年以上となるように努めております。また、仕組ローンや仕組債については、その大部分が、金利・為替・株式・コモディティやこれらのインデックスにリンクしており、これらの償還確率は、内部数理モデルによって継続的に評価され、グローバル・トレジャリーによりモニターされております。予定された満期日以前に償還される可能性のあるものについては、野村の内部ストレスオプション評価モデルにより、評価されております。このモデルは、ストレス市場環境下で、いつその債券が償還される可能性があるかを評価します。

 

3.4)有担保資金調達

 野村は、トレーディング業務のための資金調達活動は、担保付借入、レポ契約、日本の現先レポ取引によって、通常行っております。これらの有担保資金調達は、無担保資金調達に比べコストが低く、格付けの影響を受けにくいものと考えております。有担保資金調達は、担保資産の質や市場環境の影響を受けます。流動性の高い資産を担保として用いる場合は短期の契約で資金調達を行う一方で、流動性の低い資産を担保として用いる場合は、契約期間の長期化に努めております。野村は、有担保資金調達にともなう資金流動性リスクを低減させるために、カウンターパーティのグローバルな分散、担保の種類の多様化にも努めております。また、流動性の低い資産を用いた短期有担保資金調達の借換えが難しくなる場合のリスクに備えて、流動性ポートフォリオを保有しております。詳細は、「第4[経理の状況]1[中間連結財務諸表][中間連結財務諸表注記]5 担保付取引」をご参照ください。

 

4)野村グループ各社に対する与信枠の管理

 野村は、資金調達の安定性を確保するために、金融機関から野村グループに対する与信枠の維持、拡大に努めております。また、資金流動性リスク管理の一環として、借入の契約満期日が一時期に集中しないように分散させております。

 

5)流動性ストレステストの実行

 野村は、先に述べた資金流動性管理方針に沿うよう、一定のストレスシナリオ下でのキャッシュ流出をシミュレートする内部モデルに基づいて流動性ポートフォリオをモニターしております。

 

 資金流動性必要額は、さまざまなストレスシナリオ下において、異なるレベルで、さまざまな時間軸に沿って見積もられております。そこでは、親会社や子会社レベルでの格下げといった野村固有および市場全体のイベント下で発生する資金流動性必要額を見積もっております。野村では、このリスク分析を「マキシマム・キュームレーティブ・アウトフロー(以下「MCO」)」と呼んでおります。

 

 MCOフレームワークは、主たる資金流動性リスクを考慮したうえで構築し、以下の2つのシナリオに基づいて、将来のキャッシュ・フローをモデル化しております。

 

・ストレスシナリオ:市場全体が流動性ストレス下にある場合において、無担保による資金調達、資産の売却をすることなく1年間適切な流動性を維持すること。

・アキュートシナリオ:市場全体が流動性ストレス下にあることに加え、野村の信用リスクに過度なストレスを想定した場合において、無担保による資金調達、資産の売却をすることなく30日間適切な流動性を維持すること。

 

 野村は、これらの各モデルで用いられている時間軸の中で、資産の流動化を行ったり、ビジネス・モデルを修正することはできないと想定しております。したがって、MCOフレームワークは、ストレス状況下においても、野村が適切と考える流動性リスク・アペタイトを満たすために必要な資金流動性額を定義するものです。

 

 2024年9月末時点において、野村の流動性ポートフォリオは、上述のシナリオ下で想定された資金流出予想額を上回っておりました。

 

 野村は、規制環境や市場の変化に基づいた資金流動性リスクの前提条件を継続的に評価し、調整をしております。ストレスの影響をシミュレートするために用いるモデルでは、以下のような事象を考慮、想定しております。

 

・資産の売却ができない状況

・追加の無担保調達を行うことができない状況

・既存の借入金の返済期日や発行済み社債の償還期日(1年以内)

・発行済み社債の買い取りの可能性

・流動性の低い資産を担保とする資金調達ラインの喪失

・通常の事業環境下での運転資金需要の変化

・ストレス時における受入銀行預金および担保の流出

・既存のレポ調達時の担保掛目の拡大

・決済銀行からの担保・預託金追加要求

・コミットメント提供先のドローダウン

・損失にともなう資金の喪失

・野村の信用格付けが2ノッチ格下げされた場合のデリバティブ取引にかかる契約上の追加担保要請、および清算・決済機関からの潜在的な追加担保要請

・グループ会社間の資金や証券の移動を制限する法規制を考慮した資金流出

 

6)コンティンジェンシー・ファンディング・プラン

 野村は、詳細にわたるコンティンジェンシー・ファンディング・プラン(以下「CFP」)を定め、包括的リスク管理の枠組みに組み込むとともに、定量的なコントロールを強化しております。この中で、リクイディティ・イベントの範囲の分析と特定方法を記載しております。そのうえで、野村固有のあるいは市場全体の影響の可能性を見積もることや、リスクを低下させるために即座にとられるべき対応を特定しております。CFPは、キーとなる内部および外部の連絡先や、どの情報を知らせるかを示すプロセスの詳細をリスト化しております。また、野村が規制上、法的、あるいは税務上の制限によって、グループ会社レベルにおける資金へのアクセスができなくなったことを想定し、グループおよび地域レベルで、個別の資金需要に応えうるように作られております。なお、野村は、定期的にさまざまな市場や野村固有のイベントに対して本CFPの有効性をテストしております。野村は、日本銀行等中央銀行が行うさまざまな証券に対して実施する資金供給オペレーションへのアクセスも持っております。これらのオペレーションは、通常のビジネスでも利用しておりますが、市場の悪化による不測のリスクを軽減させる重要な手段のひとつです。

 

流動性規制

 2008年にバーゼル委員会は、流動性フレームワークの基盤となる「健全な流動性リスク管理およびその監督のための諸原則」を公表しました。続いて、バーゼル委員会は資金流動性にかかる2つの最低基準を策定し、流動性リスク管理の枠組みをさらに強化しました。これらの基準は、それぞれ独立しているものの相互補完的な2つの目的を達成するために策定されております。

 

 第1の基準の目的は、金融機関の流動性リスク態様の短期的強靭性を高めることにあり、その手段として、金融機関が流動性の高い資産を十分に保有し、30日間継続する強いストレスシナリオに耐える力を持っていることを確保することにあります。バーゼル委員会は、この目的を達成するために流動性カバレッジ比率(以下「LCR」)を策定しました。

 

 第2の基準の目的は、長期的な強靭性を高めることにあり、その手段として、金融機関に対し、常により安定的な資金調達源を確保したうえで、業務を行うことを促すための追加的なインセンティブを設けました。安定調達比率(以下「NSFR」)は、対象期間を1年とし、資産・負債が持続可能な満期構造を保つよう策定されました。

 

 これら2つの基準を構成するパラメータは、主として、国際的に統一された既定の数値です。しかしながら、各国固有の状況を反映させるため、一部のパラメータには各国裁量の要素が含まれております。LCRについては、本邦においてバーゼル委員会の国際合意文書に必要な修正を加えた金融庁告示が公布され、2015年3月末から最低基準として段階導入されております。2024年9月30日までの3か月間におけるLCRの平均値は224.3%となっており、上記金融庁告示の定める要件を満たしております。また、NSFRについては金融庁より流動性比率規制に関する告示の改正が2021年3月31日付で公布され、2021年9月末から導入されております。当中間連結会計期間末におけるNSFRは告示の定める要件を満たしております。

 

キャッシュ・フロー

 

 現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物の前中間連結会計期間末残高および当中間連結会計期間末残高は、それぞれ4兆1,053億円と4兆8,278億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、前中間連結会計期間においては主に売戻条件付買入有価証券および買戻条件付売却有価証券(純額)の減少等により1,941億円の収入となり、当中間連結会計期間においては主にトレーディング資産およびプライベートエクイティ・デット投資の増加等により3,691億円の支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、前中間連結会計期間においては主にトレーディング目的以外の貸付金の増加等により3,329億円の支出となり、当中間連結会計期間においては主に銀行業務貸付金の増加(純額)等により2,037億円の支出となりました。また財務活動によるキャッシュ・フローは、前中間連結会計期間においては主に長期借入の実行による収入等により2,235億円の収入となり、当中間連結会計期間においても主に長期借入の実行による収入等により1兆2,115億円の収入となりました。

 

中間連結貸借対照表および財務レバレッジ

 

 2024年9月30日現在の資産合計は、2024年3月31日現在の55兆1,472億円に対し、トレーディング資産が増加したこと等により、2兆3,114億円増加し、57兆4,586億円となりました。また、2024年9月30日現在の負債は、2024年3月31日現在の51兆6,987億円に対し、買戻条件付売却有価証券が増加したこと等により、2兆3,636億円増加し、54兆622億円となりました。2024年9月30日現在の当社株主資本は、2024年3月31日現在の3兆3,502億円に対し、累積的その他の包括利益が減少したこと等により、前期末比494億円減少の3兆3,008億円となりました。

 

 野村は、マーケットの極端な変動によってもたらされ得る大きな損失にも耐えられる規模の資本を維持することに努めております。野村の適正資本の維持にかかる基本方針は経営会議が決定し、その実践の責任を負います。適正資本の維持にかかる基本方針には、適正な総資産規模の水準やそれを維持するために必要な資本規模の決定などが含まれます。当社は、当社のビジネス・モデルに起因する経済的なリスクに耐え得る必要十分な資本を維持しているかにつき、定期的な確認を行っておりますが、こうした観点とは別に、銀行業や証券業を営む子会社は規制当局から要請される最低資本金額を満たす必要もあります。

 

 レバレッジ・レシオは、野村と同様に他の金融機関でも、一般的に用いられており、当社のアニュアルレポートの利用者が野村のレバレッジ・レシオおよび調整後レバレッジ・レシオを他の金融機関と比較できるように、ベンチマークとする目的で、自主的に開示しております。調整後レバレッジ・レシオは、野村がレバレッジにかかる有用な補助的指標であると考える米国会計原則に基づかない指標です。

 

 以下の表は、当社株主資本、総資産、調整後総資産と財務レバレッジの状況を示しています。

 

 

(単位:十億円)

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当中間連結会計期間末

(2024年9月30日)

当社株主資本

3,350.2

3,300.8

総資産

55,147.2

57,458.6

調整後総資産 (1)

34,152.4

37,258.5

レバレッジ・レシオ (2)

16.5倍

17.4倍

調整後レバレッジ・レシオ (3)

10.2倍

11.3倍

(1)調整後総資産は米国会計原則に基づかない指標であり、総資産の額から売戻条件付買入有価証券および借入有価証券担保金の額を控除したものとなり、以下のように計算されます。

(2)レバレッジ・レシオは、総資産の額を当社株主資本の額で除して得られる比率です。

(3)調整後レバレッジ・レシオは、調整後総資産の額を当社株主資本の額で除して得られる比率です。

 

 

(単位:十億円)

 

前連結会計年度末

(2024年3月31日)

当中間連結会計期間末

(2024年9月30日)

総資産

55,147.2

57,458.6

控除:

 

 

売戻条件付買入有価証券

15,621.1

15,256.2

借入有価証券担保金

5,373.7

4,943.9

調整後総資産

34,152.4

37,258.5

 

 総資産は、トレーディング資産が増加したこと等により、4.2%増加しました。当社株主資本は、累積的その他の包括利益が減少したこと等により、1.5%減少しました。この結果、野村のレバレッジ・レシオは、2024年3月31日現在の16.5倍から2024年9月30日現在17.4倍に上昇しました。

 

 調整後総資産が増加した理由は、主にトレーディング資産の増加によるものです。この結果、野村の調整後レバレッジ・レシオは、2024年3月31日現在の10.2倍から2024年9月30日現在11.3倍に上昇しました。

 

連結自己資本規制

 

 金融庁は2005年6月に「金融コングロマリット監督指針」を策定し、連結自己資本規制に関する規定を設けました。この「金融コングロマリット監督指針」に基づき、2005年4月から、当社は、連結自己資本規制比率のモニタリングを開始しました。

 

 2011年4月から、当社は、親会社に対する連結自己資本規制の適用を受ける最終指定親会社の指定を受け、「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準を定める件」(平成二十二年金融庁告示第百三十号、以下「川上連結告示」といいます。)により、バーゼルⅡに基づく連結自己資本規制比率の計測を開始しました。また、2011年12月末からは、マーケット・リスク相当額の計測方法を大幅に改定したバーゼル2.5に基づく連結自己資本規制比率の計測を開始しました。さらに、2013年3月末からは、より質の高い資本を具備させることを目的とした自己資本項目の再定義や、信用リスク・アセットの計測対象の大幅な追加を主な内容とするバーゼルⅢを受けて改正された川上連結告示の内容に基づいた連結自己資本規制比率の計測を行っております。

 

 当社は、川上連結告示第2条の算式に従い、普通株式等Tier1資本の額、Tier1資本(普通株式等Tier1資本およびその他Tier1資本)の額、総自己資本(Tier1資本およびTier2資本)の額、信用リスク・アセットの額、マーケット・リスク相当額およびオペレーショナル・リスク相当額をもとに連結自己資本規制比率を計測しております。2024年9月30日現在の野村の連結普通株式等Tier1比率は15.76%、連結Tier1比率は17.73%、連結総自己資本規制比率は17.73%となり、川上連結告示等の定める要件をそれぞれ満たしました。なお、2024年9月30日現在、川上連結告示等の定める要件は適用される最低連結資本バッファーを含み、連結普通株式等Tier1比率について7.74%、連結Tier1比率について9.24%、連結総自己資本規制比率について11.24%となっております。

 

 また、当社は2021年3月より「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき最終指定親会社が最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める総損失吸収力及び資本再構築力に係る健全性の状況を表示する基準」(以下「TLAC告示」といいます。)に基づく計測を開始しました。TLAC告示第2条の算式に従い、リスク・アセットベース外部TLAC比率を計測しております。2024年9月30日現在の野村のリスク・アセットベース外部TLAC比率は30.88%となり、TLAC告示の定める要件を満たしました。

 

 2024年9月30日現在の連結自己資本規制比率、連結レバレッジ比率および外部TLAC比率について、以下に示しております。

 

(単位:億円)

 

当中間連結会計期間末

(2024年9月30日)

自己資本

 

普通株式等Tier1資本の額

30,149

Tier1資本の額

33,908

総自己資本の額

33,912

 

 

リスク・アセット

 

信用リスク・アセットの額

97,073

マーケット・リスク相当額を8%で除して得た値

64,140

オペレーショナル・リスク相当額を8%で除して得た値

30,012

リスク・アセット合計

191,225

 

 

連結自己資本規制比率

 

連結普通株式等Tier1比率

15.76%

連結Tier1比率

17.73%

連結総自己資本規制比率

17.73%

連結レバレッジ比率

4.96%

外部TLAC比率

 

リスク・アセットベース外部TLAC比率

30.88%

総エクスポージャーベース外部TLAC比率

9.54%

 

 

 

 信用リスク・アセットおよびオペレーショナル・リスク相当額は、金融庁の承認を得て2011年3月末から基礎的内部格付手法および粗利益配分手法によりそれぞれ算出しております。また、マーケット・リスク相当額は内部モデル方式により算出しております。

 

 また、当社は川上連結告示で定められた要件の遵守状況を示す他に、バーゼルⅢが適用される他の金融機関との比較を容易にするため、連結自己資本規制比率を開示しております。当社の経営者はこれらに関する報告を定期的に受けております。

 

連結レバレッジ規制

 

 金融庁は2019年3月に「金融庁長官が定める場合において、最終指定親会社が経営の健全性の状況を記載した書面に記載すべき事項を定める件」(平成二十二年金融庁告示第百三十二号、以下「開示告示」といいます。)を改正するとともに「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジにかかる健全性を判断するための基準」(平成三十一年金融庁告示第十三号、以下「連結レバレッジ比率告示」といいます。)を公表し、連結レバレッジ比率に関する計測ならびに開示にかかる要件、および連結レバレッジ比率3%の最低基準を定めました。

 

 2020年6月に金融庁は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大が懸念される中、日本銀行による金融政策と銀行等への健全性規制との調和を図るため、例外的なマクロ経済環境を勘案して金融庁長官が別に定める比率を適用する場合には連結レバレッジ比率を算定するにあたって日銀預け金を除外すること等を趣旨とした連結レバレッジ比率告示の一部改正を行いました。その後、2022年7月に公表された改正後の方針において、日銀預け金を除外する時限的措置を存置し、2024年4月1日以降、連結レバレッジ比率の最低基準を3.15%に引き上げるものとしています。

 

 当社は開示告示等に基づき、2015年3月末から連結レバレッジ比率の計測および開示を開始しました。さらに2019年3月末からは、開示告示、連結レバレッジ比率告示および最低比率基準を下回った場合の早期是正措置を定めたその他の告示等の内容に基づいた連結レバレッジ比率の計測を行っております。なお、2024年9月30日現在の当社の連結レバレッジ比率は、4.96%となりました。

 

 また、当社は2021年3月よりTLAC告示に基づく計測を開始しました。TLAC告示第2条の算式に従い、総エクスポージャーベース外部TLAC比率を計測しております。2024年9月30日現在の野村の総エクスポージャーベース外部TLAC比率は、9.54%となり、TLAC告示の定める要件を満たしました。

 

格付会社による信用格付

 

 2024年5月23日に、格付投資情報センターは、当社の長期発行体格付「A」および野村證券株式会社の長期

発行体格付「A+」の格付アウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に変更しました。

 

(6)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当中間連結会計期間および本半期報告書提出日までに新たに発生した事業上および財務上の対処すべき課題は以下のとおりです。

 

[リスク・マネジメント、コンプライアンスなど]

 

(野村證券株式会社に対する金融庁による課徴金納付命令について)

 2024年9月、当社の連結子会社である野村證券株式会社において、2021年3月の国債先物取引に関して法令違反に該当する事実が認められたとして、証券取引等監視委員会から金融庁に対して課徴金納付命令の勧告が行われ、2024年10月、金融庁から野村證券株式会社に対して課徴金納付命令が発出されました。また、同年10月に財務省より国債市場特別参加者制度に基づく特別資格を2024年10月15日から2024年11月14日までの間停止する処分を受けました。

 これに関し、野村證券株式会社は、当該事案の発生原因を調査・検証し、同年10月31日、下記を主な内容とする再発防止策を公表しています。

 

(1)フロントにおける再発防止策

①トレーダーに対する意識付けの徹底

②フロントにおける売買管理体制の強化

(2)コンプライアンスにおける再発防止策

     監視、監督機能の高度化

 (3) 内部監査部署による検証

     再発防止策の進捗にあわせたインターナル・オーディットによる検証等

(4) 新組織の設立

フロントおよびコンプライアンスにおける施策の早期実施を担保することに加え、モニタリング態勢を主導的に高度化させていくための新部署として「グローバル・マーケッツ・サーベイランス企画部」を設立

 (5) 法令遵守の徹底に向けた経営陣の取組み

野村のパーパス「金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する」の浸透・実践に向けた取組みやコンプライアンス・コンダクト研修による市場の公正性・公平性を確保することが証券会社の基本であるという役職員の認識の向上

 

 今後は、再発防止策を着実に実行することにより、法令遵守体制および内部管理体制のより一層の強化・充実を図り、再発の防止と信頼の回復に努めてまいります。

 

(野村證券株式会社の元社員の逮捕について)

 2024年10月、当社の連結子会社である野村證券株式会社の元社員が強盗殺人未遂、現住建造物等放火の容疑で広島県警察に逮捕されました。在職中に、顧客ほか1名に対してこれらの犯罪行為を行った疑いが持たれています。

 当社は、顧客の大切な資産をお預かりする野村證券株式会社においてこのようなことは二度とあってはならないと重く受け止めております。野村證券株式会社においては、顧客の不安を払拭し、信頼を取り戻すためにも、以下の対応を実施してまいります。

・当面の間の措置として、ウェルス・マネジメント部門の社員による顧客のご自宅への訪問については事前承認のルールを導入

・社員行動のモニタリングのルールを強化し、より厳格かつ実効性のある管理運用体制の構築

・不正検知のために社員が職場から一定期間離れる制度の導入

・コンプライアンスや行動規範の観点における評価の厳格化

・職業倫理醸成のための研修強化

 

 今後も、顧客本位の業務運営の強化に継続的に取り組み、顧客に安心して利用いただける環境を整えてまいります。

 

3【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。