第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 業績の状況

当社グループは「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念のもと、自社開発の特化型AI「KIBIT(キビット)」の提供を通じて、日夜、社会課題と向き合う各分野の専門家の判断を支援し、イノベーションの起点を創造することで、社会のさまざまな場面で必要かつ適切な情報に出会えるフェア(fair)な世界の実現を目指しております。

 

  ■各事業の当中間連結会計期間の活動状況は以下のとおりです。

 

 (AIソリューション事業)

ライフサイエンスAI分野 AI創薬領域

製薬業界を取り巻く状況が大きく変化し、既存の研究手法の延長線上では、創薬標的が枯渇してきております。新薬創出の成功確率が低下し、開発コストが増大する中、新たな開発手法がこの課題を解決する重要な鍵となっております。当中間連結会計期間において、当社は自社開発の特化型AI「KIBIT」による自然言語処理技術を用いた論文等の文献情報の解析を通して、文献に記載のない未知の関連性を体系的に発見する独自の技術を特許出願いたしました。当社は、この独自技術を用いて、疾患関連性の高い未報告の標的分子を抽出し、その根拠となる疾患メカニズムなどの仮説とともに提示するソリューション(AI創薬支援サービス“Drug Discovery AI Factory”(以下、DDAIF))を提供しております。近年、膨大な文献情報から、研究者が求める情報に効率的にアクセスするための技術や方法論に関する研究は進んでいる一方、既知の文献情報からの新しい発見は、未だ研究者自身の発想力や偶然に依存しております。当社のDDAIFにおける革新的アプローチは、こうした非連続的な発見を科学的・体系的に実現することを可能とするものです。DDAIFの立ち上げから約1年が経過し、これまで創薬標的探索をはじめ、ドラッグリポジショニングにおける案件を昨年より複数受託し、実績を積み重ねてまいりました。これらの実績が評価され、現在、顧客の創薬研究者と当社の創薬エキスパートが垣根を越えて密に連携(共創)しながら最終成果物の創造を目指す共創プロジェクト*1について複数の商談を進めております。また、DDAIFの認知度向上にも注力しており、2024年10月に湘南ヘルスイノベーションパークのメンバーシップに加入し、ライフサイエンスエコシステムに参画することで、当社と製薬企業等とのパートナーシップや共創プロジェクトを加速させ、また2024年11月には、創薬研究者の多く集まる米国ボストンで開催される展示会「AI Driven Drug Discovery Summit」に出展するとともに、当社取締役CTO豊柴博義の登壇を予定しており、国内外でプロモーション活動を強化してまいります。当社の革新的なアプローチにより、世界で未報告の標的遺伝子・分子などを捉えることが可能となり、共創プロジェクトを通して、顧客と共にFirst in Classの創薬を目指してまいります。

*1 共創プロジェクトとは、製薬企業と当社の研究チームが協調し、検証済標的の獲得までを目指す形態。

 

ライフサイエンスAI分野 AI医療機器領域

AI医療機器領域では、2024年2月に塩野義製薬株式会社(以下、塩野義製薬)と「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」を締結以降、世界に先駆けた自然言語処理AIを用いた医療機器として、「会話型 認知症診断支援AIプログラム」の日本での製造販売承認取得及び社会実装に向けた開発は順調に進捗しております。

その他の精神神経疾患領域の統合失調症やADHDを対象とするAI医療機器の開発についても、協業・アライアンスに向けたプロジェクトの協議を開始しており、世界に先駆けた自然言語処理AIを用いた医療機器として、日本での製造販売承認取得の早期化を目指してまいります。

また、医療機器の開発と並行して、非医療機器の産業横断アライアンスに関しても、大手企業との本格的な事業化に向けたプロジェクトの協議を開始しており、2025年4月のリリースに向けて開発を進めております。

 

ビジネスインテリジェンス分野

ビジネスインテリジェンス分野においては、昨年度より続く不正リスクの未然防止に関する社会的な要請の高まりや企業のDX推進強化による旺盛な需要により、当中間連結会計期間の売上高は順調に進捗しております。

金融業界においては、ファイアウォール規制を含む各種金融業規制への対応、その他企業においても、情報流出・品質不正・カルテル・ハラスメントなどの不適切な事業活動による企業価値の棄損リスク及び企業の信頼性を含むレピュテーションリスクへの対応として、コンプライアンス体制の構築が喫緊の課題に位置付けられています。

一方で、コンプライアンス監査対象のデータ量及び領域の増加に伴いオペレーションは複雑化しており、人的リソースによる体制維持・拡大には限りがあることから、拡張性の確保を前提としたAI監査ソリューションの導入ニーズが、急拡大しています。

当社は、「KIBIT Eye(キビット アイ)」、「KIBIT Knowledge Probe(キビット ナレッジ プローブ)」を中心とした監査ソリューションを通じて、金融機関をはじめとする大手企業の法令・コンプライアンス全般及び各種規制の対応を支援しております。当中間連結会計期間においては、三菱電機株式会社のデータドリブンによるリスク制御戦略の一環として、AIを活用した機密情報漏洩防止を目的とした「KIBIT Eye」の導入が公表されました。

 

経済安全保障分野

経済安全保障分野においては、世界情勢と社会構造の急激な変容を背景に、企業を取り巻くリスクは多様化・複雑化し、経済安全保障リスクをはじめ、人権侵害などのサステナビリティリスク、国家紛争や情報流出などに伴うBCPリスクなど、企業の直面する課題は多岐にわたり、企業の調達リスクや各国の規制による制裁リスクが一層高まっております。当中間連結会計期間においては、三菱自動車工業株式会社による、多様な経済安全保障上のリスクマネジメントを目的とした「KIBIT Seizu Analysis(キビット セイズ アナリシス)」の導入が公表されました。

国際的に事業を営む民間企業にとって経済安全保障リスクへの対応が急務になっておりますが、リスクへの事後対策だけでなく、対応の遅れがビジネスの機会損失に繋がる懸念が高まりをみせており、特に民間企業のサプライチェーンリスクの可視化ニーズは一層増しております。当社は米国の税関・国境取締局による輸入差し止めを回避するための対策や、海外からの調達を安定化させる支援を「KIBIT Seizu Analysis」による解析を用いて実施しております。

また、経済安全保障上の重要技術に関する情報漏洩や技術流出防止策において、重要な技術を適切に管理することが喫緊の課題として政府による提言や対策が行われており、研究者をはじめ、所属先となる大学や研究機関、民間企業も同様に情報漏洩・技術流出リスク管理への対応の重要性、必要性が高まっております。当社は、官公庁における経済安全保障政策実現のための「KIBIT Seizu Analysis」の提供及び各種テーマに応じたコンサルティング、民間企業向けには輸出入規制/技術流出リスクの検知及び対策、調達先・買収先のデューディリジェンス等、「KIBIT Seizu Analysis」による解析結果を通じて、最適な経済安全保障対策の支援を行っております。引き続き、変容する社会情勢を注視しながら研究開発を進め、最適なソリューションを提供することで事業の拡大に努めてまいります。

 

(リーガルテックAI事業)

リーガルテックAI事業は、当社ポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」の運営、勉強会、ウェビナーなどの積極的なマーケティング活動を継続してきた結果、顧客である弁護士事務所や企業からの国内不正調査に関する問い合わせ数、受注数は堅調に推移し、当中間連結会計期間においては、売上高、営業利益ともに業績予想を上回る進捗となりました。

また、2023年7月から9月にかけて株式会社アイ・ティ・アールが実施した調査レポート「ITR Market View:エンドポイント・セキュリティ対策型/情報漏洩対策型SOCサービス市場2023」において、当社がフォレンジックサービス市場3年連続国内シェア1位*2と発表されました。特化型AI「KIBIT」の活用によるデジタル・フォレンジック調査支援の圧倒的な実績件数と第三者委員会で利用される等の信頼性を当社の強みとし、引き続き、堅実な事業運営を継続してまいります。

*2 出典:株式会社アイ・ティ・アール「ITR Market View:エンドポイント・セキュリティ対策型/情報漏洩対策型SOCサービス市場2023」フォレンジックサービス市場:ベンダー別売上金額シェア(2021~2023年度予測)

 

■各事業の当中間連結会計期間のセグメント別および連結業績の概況は以下のとおりです。

 

(AIソリューション事業)

ライフサイエンスAI分野につきましては、塩野義製薬との「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」に基づく収益認識や、「KIBIT Amanogawa(キビット アマノガワ)」の導入により売上高は139,744千円(前年同期比5.6%減)となりました。

ビジネスインテリジェンス分野につきましては、不正リスクを予見する監査AIソリューション「KIBIT Eye」が新たに三菱UFJ信託銀行株式会社や三菱電機株式会社で導入されたことに加えて、既存顧客からの受注が堅調に積み上がり、売上高は809,248千円となりました。前年同期比売上高は24.1%減少となっておりますが、これは前年の大型案件の導入による収益及びライセンス買取による収益を一括計上した特殊要因の影響によるものです。

経済安全保障分野につきましては、経済安全保障AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」が三菱自動車工業株式会社で導入されたことや昨今の国際情勢や地政学リスク及び各国の規制による制裁リスクの高まりから官公庁及び企業からの受注が堅調に積み上がったことにより、売上高は184,395千円(前年同期比62.4%増)となりました。

これらの結果、AIソリューション事業全体の売上高は1,133,388千円(前年同期比14.6%減)と概ね業績予想通りの進捗となりました。営業損益につきましては、前期に行ったコスト構造の改善効果やビジネスインテリジェンス分野及び経済安全保障分野でリカーリング収益が増加したことによる収益性の改善により、56,720千円の営業利益(前年同期は90,331千円の営業損失)と大幅な増益となりました。

 

分野別の売上高の概況は下表のとおりです。

 

 

(単位:千円)

 分野別

ライフサイエンスAI分野

139,744

(148,067)

ビジネスインテリジェンス分野

809,248

(1,066,282)

経済安全保障分野

184,395

(113,552)

AIソリューション事業売上高 計

1,133,388

(1,327,902)

 

( )は前中間連結会計期間の実績

 

(リーガルテックAI事業)

リーガルテックAI事業につきましては、売上高は2,011,333千円(前年同期比5.1%減)と業績予想を上回る結果となりました。営業損益は、前期に行った全社的なコスト構造の改善効果及びのれん等の減損による償却負担の減少により233,412千円の営業利益(前年同期は468,358千円の営業損失)と大幅な増益となりました。

 

 

サービスタイプ別の売上高の概況は下表のとおりです。

 

 

(単位:千円)

サービスタイプ別

eディスカバリサービス

1,610,733

(1,773,778)

フォレンジックサービス

400,599

(346,486)

リーガルテックAI事業売上高 計

2,011,333

(2,120,265)

 

( )は前中間連結会計期間の実績

 

以上の結果、当中間連結会計期間の連結業績は、売上高3,144,721千円(前年同期比8.8%減)となりましたが、損益面については、営業利益290,132千円(前年同期は558,690千円の営業損失)、経常利益295,709千円(前年同期は492,076千円の経常損失)、親会社株主に帰属する中間純利益206,436千円(前年同期は511,508千円の親会社株主に帰属する中間純損失)と前年同期を大幅に上回る結果となりました。

 

(2) 連結財政状態の分析

   (資産)

総資産は、前連結会計年度末と比べて992,793千円減少し、6,530,071千円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末と比べて790,288千円減少し、4,174,369千円となりました。これは主に、現金及び預金が363,031千円減少したことに加えて、売掛金及び契約資産が494,461千円減少したことによるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末と比べて202,505千円減少し、2,355,702千円となりました。これは主に、投資有価証券が175,500千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

負債合計は、前連結会計年度末と比べて1,027,295千円減少し、3,656,010千円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末と比べて647,668千円減少し、2,775,197千円となりました。これは主に、返済により短期借入金が200,000千円減少したことに加えて、その他(未払費用や未払消費税等)が422,603千円減少したことによるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末と比べて379,626千円減少し、880,812千円となりました。これは主に、流動負債に振り替えたことにより長期借入金が324,463千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末と比べて34,501千円増加し、2,874,061千円となりました。

これは主に、親会社株主に帰属する中間純利益計上による利益剰余金の増加が、株価の変動によるその他有価証券評価差額金の減少と、為替レートの変動による為替換算調整勘定の減少を上回ったことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、2,676,614千円となりました。

当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況と、その主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー) 

営業活動により増加した資金は368,704千円(前年同期比212,354千円の収入の減少)となりました。これは主に、税金等調整前中間純利益を計上したことと非資金項目である減価償却費の計上等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー) 

投資活動により支出した資金は123,318千円(前年同期比165,116千円の支出の減少)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出108,880千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は563,824千円(前年同期比502,961千円の支出の増加)となりました。これは主に、短期借入金の返済による支出200,000千円、長期借入金の返済による支出362,991千円によるものであります。

 

(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題

当中間連結会計期間、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。

 

(5) 研究開発活動

当社グループは、研究開発活動の内容及び金額を特定のセグメントに関連付けることができないため、一括して記載しております。

 

(研究開発費の金額)

当中間連結会計期間における研究開発費の総額は31,849千円であります。

 

(研究開発の内容)

当社は、自社開発の特化型AI「KIBIT」について創薬支援、診断支援、経済安全保障、金融、人事・営業支援等さまざまなフィールドでの利便性をさらに向上させるため、新たなソリューションの拡充、製品の開発を行っております。

 

 

3 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。