第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)現状の認識について

 2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、グローバルな景気や企業の活動及び採用動向にも大きな影響が生じております。当社グループに関しても、国内事業及び海外事業ともに、人材紹介事業を中心に影響を受けております。足元は総じて回復傾向にあるものの、人材紹介事業では、企業の採用に対する慎重姿勢の継続等の影響を引き続き受けており、人材派遣事業でも、企業からの新規の派遣需要が減少しております。

 このような状況ではありますが、COVID-19収束後は、国内において少子高齢化という構造のもと、再び、中途採用の積極化、女性や高齢者、外国人等の活躍等、人材サービス業界の社会的役割、当社の果たすべき役割やその責任は大きいものと捉えております。「人生100年時代」として、世界的に寿命が延びていく中で“はたらく”期間が長くなることから、生涯にわたって様々な仕事をする機会が多くなり、また、「テクノロジー、AIの進化」により、あらゆる産業における個人のはたらき方が変わっていくことが想定されております。テクノロジーの進歩によって、ライフスタイルやはたらき方の本質的で不可逆な変化が起きていく中、COVID-19の影響により、リモートワークの急速な浸透に代表されるような変化は加速するものと考えております。はたらく世界が変化しつつある中、2030年時点の社会を予測しながら、人生100年時代における新しいはたらき方、そして企業や組織の新たな雇用のあり方を提案し続けることで、あらゆる個人が、当社グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現できる企業を目指して、『価値創造ストーリー』を策定いたしました。

 

・価値創造ストーリー

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 価値創造ストーリーを実現するために、事業活動において3つの重点戦略を策定いたしました。

 第一に、『個人』にフォーカスしてまいります。

 すべてのはたらく個人のワークエンゲージメント向上に資する取り組みに、優先的に投資を行います。「はたらく個人」の視点から、よりよい仕事、よりよいはたらき方、よりよい人生とはなにかを見つめ、これからの未来を形づくる多様な“はたらく”を創造し、支援していきます。具体的には、ライフステージの変化や適性・能力に合わせたはたらく機会と気づきの提供を行います。また、仕事選びのタイミングだけではなく、はたらく個人の生涯に寄り添い続けるパートナーとして、仕事以外の領域での支援も行います。すべてのライフステージにおいて、継続的に十分な選択肢を得られるよう、学びの機会を提供してまいります。

 

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 第二に、『テクノロジー』を積極的に活用してまいります。

 テクノロジーを最大限活用し、デジタルトランスフォーメーションを推進することで、新たなはたらき方や、雇用のあり方を提案してまいります。これまで蓄積された膨大な個人・法人のデータを分析、活用するための基盤整備を行い、人材派遣、人材紹介等の基盤事業においてデジタル化を推進することで、さらに高度化してまいります。また、これまでの提供価値を最新のテクノロジー活用の視点で捉え直すことで、未来の新たな事業を創出してまいります。

 

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 第三に、日本のみならず、世界で価値を提供してまいります。

 人口減少や少子高齢化に伴う労働力不足等、“はたらく”に関する課題を多く抱える課題先進国である日本から、アジア・パシフィック地域で価値提供できる経営体制を整えます。さらに、その先には、世界の社会課題の解決に貢献し、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現します。

 

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 また、当社グループでは、経営理念である「雇用の創造」、「人々の成長」、「社会貢献」に基づき、持続可能な社会を目指して、多様なステークホルダーと連携し、社会課題解決に積極的に取り組んでおります。グループビジョンを実現する過程で、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の目標の中から、事業を通じて直接的に関与することができる「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「人や国の不平等をなくそう」の5つのSDGs達成を重点課題として取り組むとともに、17すべてのゴールについて、達成に寄与する人材の成長支援や雇用創出の実現を目指してまいります。

 

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(2)中期経営計画2023について

  a.全体方針

 2030年に向けた、最初の3年間であるグループ中期経営計画2023では、事業の磨き込みと経営基盤の整備による成長に向けた基礎作りを行う3ヵ年と位置付け、「社会的価値の向上」「経済的価値の向上」「SBU体制への移行」「成長領域の特定」「テクノロジーによる事業強化」の5つの全体方針を策定いたしました。全体方針及び初年度に当たる当連結会計年度の進捗は以下の通りです。

 

・中期経営計画2023の全体方針

社会的価値の向上

・グループビジョン実現に向け、「はたらいて、笑おう。」指標を設定し、向上に資する施策を実行

・ESGを推進し、グループの取り組みを統合レポートで開示

経済的価値の向上

・単年のP/L重視経営から持続的に企業価値の成長を実現する経営へ

・ROIC等を活用した資本収益性の指標を導入し、グループ全体の企業価値向上を推進

SBU体制への移行

・当社の収益を支えるStaffing SBU、Career SBUを一層強化しつつ、Professional Outsourcing SBUを第3の柱として位置付け

・Asia Pacific SBUはマネジメントを一本化。コストシナジーにより収益性を改善

成長領域の特定

・Professional Outsourcing SBUを当社の第3の柱として確立すべく、SBU内のシナジー創出に加えて、積極的にM&A等の投資を実施

・Solution SBUにおいて新規事業の創造を積極的に推進

テクノロジーによる

事業強化

・Digital Transformation(DX)への投資による生産性向上・顧客満足の向上

 

中期経営計画2023の進捗

社会的価値の向上

・米国Gallup社とともに、世界118ヵ国を対象に「はたらいて、笑おう。」の実現度を測る調査を実施するとともに、社員向けエンゲージメントサーベイ実施

・2020年11月に当社初となる統合報告書を開示

経済的価値の向上

・取締役会等において、ROICを踏まえた議論やモニタリングを実施

SBU体制への移行

・組織の最適再編により、PERSOLKELLYの豪州ビジネスをProgrammedに移管し、黒字化を実現

・投資委員会等の委員会を設置し、ガバナンスの実効性を向上

成長領域の特定

・COVID-19の影響を踏まえ、COVID-19後の世界を見据えた抜本的な事業構造の見直しの議論をはじめ、次期中期経営計画につなげていく

テクノロジーによる

事業強化

・テクノロジー戦略の策定を進め、SBUの枠を超えたパーソナルデータ利活用の土台作りを推進するなど、テクノロジー投資を強化

 

b.財務方針

 企業価値向上に向けて、資本収益性重視の財務方針に転換し、さらに強固かつ機動性の高い財務基盤の構築を目指します。また、株主還元及びキャッシュポジションについても下記のとおり方針を定め、株主還元を強化してまいります。

 

・財務方針

企業価値向上に向けた

資本収益性の導入

・企業価値向上の観点から、従来のPLから、資本収益性を重視する方針に転換

・将来的なIFRS導入を見据え、当社のROICは、

『のれん償却前税引後営業利益÷投下資本(=有利子負債+自己資本)』で算出

・2023年3月期は、最低基準として10%を上回る水準を設定

将来的なIFRS導入

・海外での買収により導入を延期していたIFRSを2024年3月期を目途に導入予定

・将来的なIFRS開示を踏まえ、のれん償却前当期純利益をベースとした調整後EPSを継続的に開示

株主還元

・調整後EPSの25%を配当実施の基本とする

・調整後EPSは、のれん償却前当期純利益をベースに、特別損益の影響を除外しているため、比較的安定的な配当水準で推移できる見込み

キャッシュポジション

・適正キャッシュポジションとして、「ネットキャッシュまたはネットデットが連結EBITDAの1倍以内」と定義

・今後、投資が計画通りに進まず、過剰キャッシュとなった場合、または投資を実行した結果、過剰債務状態になった場合の基本方針は以下の通り

-ネットキャッシュが連結EBITDAの1.0倍を超える場合、自己株式取得等の株主還元強化を検討

-ネットデットが連結EBITDAの1.0倍を超える場合、増資等による資本充実を検討

 

c.ガバナンス方針

 当連結会計年度より、事業執行体制及びガバナンス体制を変更いたしました。具体的には、従来の事業セグメントをSBU(Strategic Business Unit)体制に変更し、Staffing SBU、Career SBU、Professional Outsourcing SBU、Solution SBU、Asia Pacific SBUといたしました。事業執行に関する意思決定はSBUに適切に権限委譲し、執行の迅速化を図ってまいります。さらに、独立社外取締役比率を原則2分の1以上にすることで、取締役会はモニタリングモデルへ移行したほか、CEOの意思決定を補佐する機関としてHMC(Headquarters Management Committee)の設置に加え、HMCの助言機関として、投資委員会、人事委員会、リスクマネジメント委員会、テクノロジー委員会を設置し、意思決定の迅速化とガバナンスの両立を図ってまいります。

 

d.業績数値目標

 中期経営計画最終年度である2023年3月期には、売上高10,000億円、営業利益450億円、当期純利益268億円の数値目標を掲げ、営業利益で過去最高益を更新する水準を目指します。この3年間は、2030年に向けた成長投資の原資と投資後の健全な運営を行える経営基盤をつくり上げ、2024年以降の飛躍的な成長投資を志向してまいります。

 COVID-19収束の時期は不透明ですが、2022年3月期は、中期経営計画2023の計画及び数値目標を達成するために重要な時期と考えており、着実な収益性回復に向けて、全社を挙げて取り組んでまいります。

 

2【事業等のリスク】

 後述「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のリスクマネジメント委員会を当連結会計年度においては4回開催し、『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するリスク』『プライバシー侵害リスク』『IT関連リスク(情報漏えい、システム障害等)』『自然災害等の有事に関する事業継続リスク』『企業買収投資に伴うリスク』『法的規制及び法令遵守違反等コンプライアンスに関するリスク(コンダクトリスク含む)』といった事業に影響度の高いグループ重要リスク6項目を選定しました。2021年度以降はこれらの重要リスクを中心に定期的なモニタリングを実施する予定です。

 また上記のグループ重要リスク6項目を含め、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす主要なリスクは以下の通りであります。当社経営者が認識する当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与えるリスクに関し、発生の蓋然性及び事業への影響の度合いを鑑み、重要と考えられる順に記載しております。当社グループは、これらリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありません。なお、当社グループは2020年4月1日より従来のセグメント体制から、SBU (Strategic Business Unit)体制に移行し、Staffing、Career、Professional Outsourcing、Solution、Asia Pacificの5つのSBU体制で運営致しております。

 

(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するリスク

 2020年初頭からのCOVID-19感染拡大による世界的な経済活動の急激な収縮といった予見が難しい事象が発生しており、当社グループの事業運営及び経営成績に影響を及ぼしております。国内事業につきましては、人材派遣事業では、マーケティング領域は店舗の営業時間短縮等の影響を受けておりますが、主力の事務領域では通常勤務に加え一部在宅勤務により稼働しております。人材紹介事業では、面談を対面式からオンラインに切り替えておりますが、企業の採用活動抑制の動きが継続しており、採用決定まで時間の長期化や、採用見送りの影響を受けております。海外事業につきましては、各国の感染拡大の程度により、状況が大きく異なっております。人材派遣事業はシンガポールでは在宅勤務が行われており、当連結会計年度においても伸長した一方、人材紹介事業は、中国では回復が見られているものの、全体では大幅な需要減となりました。豪州・ニュージーランドは、一部地域でのロックダウンの影響もあり、Staffing事業及びMaintenance事業ともに影響を受けております。今後の感染拡大の収束や政府による行動制限の程度と継続期間次第では、引き続き、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に大きくかつ長期的な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)プライバシー侵害リスク

 当社グループ各社では、事業運営に際し、登録スタッフ、派遣スタッフ、求職者、顧客企業、従業員等その他の関係者の個人情報を大量に保有し取り扱っております。

 当社グループで保有する個人情報の取り扱いについては、当該国の個人情報に関する法律が適用されます。特に主力事業を展開している日本国内においては「個人情報の保護に関する法律」、「職業安定法」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」等に準拠した取り扱いを行っております。これらの法規制は、近年の個人情報保護及びプライバシーの権利に対する意識の高まりや、グローバル基準への適合に向けた動きにより内容が複雑化しており、当社グループでは、法務と情報セキュリティの両面からこれらの解釈や運用について慎重な検討と判断を行っております。

 一方、国内グループ各社では、保有する個人情報の共同利用によって働き方の多様化に合わせたサービス開発を検討しております。当社グループでは、法規制の遵守及び本人の同意の範囲内での活用に努めておりますが、意図せず法規制を違反した場合や同意の範囲外での活用を行った場合には、当局からの業務停止命令、個人データの提供者若しくは法人からの訴訟につながる可能性があります。また、現在の法規制の遵守及び本人の同意の範囲内で活用した場合でも、データ提供者の不利益又は不信感を招いたときは、当社グループのブランド及び企業イメージの価値低下や信用が毀損する可能性があります。

 また、当連結会計年度にはパーソナルデータ利活用審議会を新たに設置し、グループ全体のプライバシー戦略について議論することで、グループ全体で整合性のとれたパーソナルデータの利活用を行うこと、及びプライバシーレビューを行い、新規サービスや新しいデータ利活用に際して個人データの本人への影響を予め十分に検討し、適切な対応策を講じることでユーザー等の信頼を確保することに努めております。

 

(3)IT関連リスク(情報漏えい、システム障害等)

a.情報漏えいのリスク

 当社グループは、個人情報の漏えいを最重要リスクの一つととらえ、情報セキュリティ対策として、個人情報取扱いに関する規程を定め、情報管理を徹底するための部署を設置し、定期的に教育を実施する等、適切な情報管理体制の構築・維持に努めております。しかしながら、当社グループにおいてサイバー攻撃をはじめとした第三者によるセキュリティ侵害や、従業員の不正又は過失等によりこれらの個人情報が漏えいする事態が生じた場合、当社グループのブランドの棄損、サービス利用者数の急減、企業イメージの悪化等の社会的信用の低下や損害賠償請求等の発生により、事業運営に重大な影響を与えるとともに、財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

b.システム障害等リスク

 当社グループの事業は、国内外を問わず、コンピュータシステム及びそのネットワークに多くを依存しており、またメンテナンス等の一部をクラウドシステム業者を含む外部業者に委託しております。そのため、不測の事態に対しては、危機発生時の体制整備、システムセキュリティの強化、ハードウェアの増強等様々な対策を講じておりますが、これらの対策にもかかわらず人為的過誤、サイバー攻撃、広範な自然災害や、外部業者のトラブル等により、コンピュータシステム及びそのネットワーク設備にトラブルが発生した場合には、当該事態の発生地域の事業運営に直接被害が生じるほか、他地域の当社グループの事業運営に損害が生じる可能性があります。また、それが長期に亘る場合、顧客企業へのサービスの提供が事実上不可能になる可能性があり、当社グループが提供するサービスに対する信頼性の低下を招く等の重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)自然災害等の有事に関する事業継続リスク

 当社グループは、日本国内とアジア・パシフィック(APAC)地域で事業活動を展開しております。地震、台風、洪水等の自然災害、火災、停電、パンデミック、または戦争、テロ行為等が起こった場合、当社グループの従業員の安全及び会社資産が毀損することにより、当社グループの事業が一時的に中断し、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、人材サービスの提供という事業性質上、危機発生時には派遣スタッフの安否確認や顧客企業との契約内容の調整等、多大な顧客対応による業務負荷が予想されることから当社グループの事業運営に影響を与えるとともに財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、当社に危機管理の統括部署を設置し、①従業員と派遣スタッフの安全確保、②顧客資産保護、③会社財産保護、④事業継続を基本方針として、適切な対応をとる体制を構築しております。首都直下型地震や南海トラフ大地震等の巨大地震の発生を想定し、グループ各社・各SBUが自律的に予防対策、初動対応の計画を策定、訓練等で実行性を高める活動を行っております。当社はそれらの取り組みに対して必要な支援を行うとともに、適切に取り組みが実施されているかモニタリングを継続しております。また、日本国内では安否確認システムを導入すると共に大規模災害発生時に被災している可能性が高い拠点を自動的に特定するシステムを導入するなど、ITを活用した被災時の情報収集基盤の整備を進めております。加えて、人材サービス事業の根幹である従業員・派遣スタッフへの給与支払い業務をグループの最重要業務と位置づけ、これら巨大地震が発生した時でも従業員・派遣スタッフへの給与支払いを継続し、生活基盤を維持するための事業継続計画を策定しております。

 

(5)企業買収投資に伴うリスク

 当社グループは、これまで企業買収や事業提携を通じて成長を遂げており、将来においても同様の手法を通じてさらなる企業価値の向上を企図しております。

 企業買収や事業提携に際しては、対象となる企業の財務内容や契約関係等について詳細なデューディリジェンスを行い、リスク回避に努めておりますが、案件の性質や時間的な制約等から十分なデューディリジェンスが実施できず、買収後に偶発債務の発生や未認識債務が判明した場合、また当該事業が、当初想定した収益計画と大きく乖離した場合、多額の資金投入が発生する可能性のほか、関係会社株式の評価替えやのれんの減損等により、当社グループの事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、買収を通じて取得した企業ののれんは、当連結会計年度末において66,751百万円であり、そのうち、Career SBUに属する㈱インテリジェンスホールディングス(現:パーソルキャリア㈱)、Staffing SBUに属するパナソニック エクセルスタッフ㈱(現:パーソルエクセルHRパートナーズ㈱)及びAsia Pacific SBUのProgrammed Maintenance Services Limitedが大きな割合を占めております。海外事業については、2020年3月期に、2018年3月期に買収した前述のProgrammed Maintenance Services LimitedのStaffing事業等ののれんに関する減損損失を計上するとともに、2018年3月期にはPERSOLKELLY事業に係る買収子会社も同様に減損損失を計上している観点から、当面、海外での新規の大型企業買収の優先度を下げ、前述の企業を含むAsia Pacific SBUの事業の最適化と収益基盤の確立に向けた取り組みを推進してまいります。加えて、新たなガバナンス体制の強化策として、多額の事業投資案件に関しては専門的見地から審議した上で経営陣に対して助言する「投資委員会」を2020年4月に設置いたしました。投資委員会は、グループの投資全般に関する重要事項の審議を行うとともに、投資推進に関連した一連の知識、知見をグループの組織知に高めていくことを目的としており、審議結果をHMC(Headquarters Management Committee)に上程し、HMCの適切な判断を補完する組織となります。

 また、買収した企業は、それぞれのブランド力やグループ内の相互協力により極めて有益なビジネスシナジーの創出が可能になるものと判断しておりますが、今後、経営環境や事業の状況の著しい変化、また何らかの事由によりそれぞれの経営成績が想定どおり進捗しない場合、これらの資産について減損会計の適用に伴う追加の損失処理が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)法的規制及び法令遵守違反等コンプライアンスに関するリスク(コンダクトリスク含む)

 当社グループは、自らが事業を展開する国又は地域の法令等を遵守する必要があります。特に、人材サービスを行う当社グループは、お客様の個人情報保護に次いで、労働関連法の遵守を重視しております。当社グループでは、コンプライアンスを、法令遵守に留まらず、より広範に、「ステークホルダーからの要請や期待に応え誠実に事業活動を行っていくこと」と捉え、それを実現するために、当社グループの役職員には、「倫理、良識、誠実さ」をもって行動することを求めております。

 かかるリスクに対し当社グループでは、事業拡大に合わせ、コンプライアンス統括部署を設置し、コンプライアンス関連規程の整備や継続的な教育・研修の実施、グループ内部通報制度の整備等、コンプライアンス体制を整備しております。また、当社グループが受託している公共性が高いアウトソーシング事業等については、ステークホルダーからの要請や期待に応えられるのか等、適切なアセスメントを行ったうえで事業の受託可否を判断すると共に、当該事業を適切に遂行または運営する様に努めております。しかしながら、当社グループに適用される法令等に違反する事態が生じた場合、または公共性の高いアウトソーシング事業を適切に遂行・運営できなかった場合は、当社グループの社会的信用やブランドイメージが毀損し、売上の減少等、経営成績に悪影響を与える可能性があり、次のa、b、cに記載するリスクが考えられます。

 

a.人材派遣事業

 当社グループの主要な事業である人材派遣事業は、国内においては「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という。)に基づき、労働者派遣事業の許可を受けて行っている事業であります。現時点において、当社グループにおいては、労働者派遣法に基づく労働者派遣事業の許可の取消事由に該当する事実はないものと認識しておりますが、今後何らかの理由により当社グループ各社並びにその役職員が労働者派遣法に抵触した場合、当社グループの主要な事業活動全体に支障を来たすことが予想され、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。なお、労働者派遣法及び関係諸法令については、これまでにも労働環境の変化に応じ派遣対象業務や派遣期間に係る規制や変更等の改正が適宜実施されており、当社グループではその都度、当該法改正に対応するための諸施策を採ってきております。今後、更なる改正が実施され大きな運用変更が生じた場合、当社グループの今後の事業運営方針並びに経営成績に少なからず影響を与える可能性があります。

 

b.人材紹介事業

 当社グループが行う人材紹介事業は、国内においては職業安定法に基づく有料職業紹介事業許可を受けて行っている事業であります。職業安定法においては、人材紹介事業を行う者(法人である場合には、その役員を含む)が有料職業紹介事業者としての欠格事由及び当該許可の取消事由に該当した場合には、事業の許可を取り消し、又は、期間を定めて当該事業の全部若しくは一部の停止を命じることができる旨を定めております。今後何らかの理由により当社グループ各社並びにその役職員が職業安定法に抵触した場合、当社グループの主要な事業活動全体に支障を来たすことが予想され、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

c.アウトソーシング事業

 当社グループが行うアウトソーシング事業の領域は、事務作業やITシステム開発を含む広範に亘ります。また、官公庁・地方公共団体・民間企業等の様々なお客様からの事業を受託しております。これら事業の遂行に当たって、お客様の要件を満たすことが第一ですが、特に官公庁・地方公共団体から受託している事業に関しては、その成否が日本社会全体又は地域社会に強く影響する場合もあります。当社グループでは、これら公共性についても事前にアセスメントを行ったうえで受託判断を行うとともに、事業開始後も適切に遂行・運営されるように努めております。しかしながら、特に公共性の高い事業を適切に遂行・運営できなかった場合は、当社グループの社会的信用やブランドイメージが毀損し、売上の減少等、経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(7)景気変動によるマクロ経済の変化に関するリスク

 当社グループが提供している人材サービスは、景気変動による影響を大きく受けやすく、こうしたマクロ経済の変化にうまく対応できない場合、当社グループの経営成績及び財政状態は大きな影響を受けます。特に、現在の経済はグローバル化が進み、他国の経済状況、国際政治情勢、国際金融市場等により、事業を展開する各国の経済が大きく左右される傾向が強まっております。また、2008年の世界金融危機や2020年初頭からのCOVID-19感染拡大による世界的な経済活動の急激な収縮といった予見が難しい事象が発生しております。通常の景気循環による山谷に対しては、グループ各社・各SBU・コーポレート機能を担う当社においてコスト管理を行う等の経営努力により、当社業績に与える影響を抑制するよう努めております。しかしながら、2008年の世界金融危機のような深刻な経済危機が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。特に、不況時における当社グループの収益に与える影響度の順に記載すると以下の表の通りです。

 

 

想定される状況

影響度合

主要な該当セグメント

求人広告事業

・企業の採用予算の縮小、採用活動の抑制による求人広告出稿数の減少

・競争の激化による広告単価の低下

・景気感応度は最も高い

・売上高の減少及び採算性の悪化

・Career SBU

人材紹介事業

・顧客企業の採用抑制による転職決定者数の減少

・内定決定までのリードタイムの伸長

・景気感応度は高い

・売上高の減少及び採算性の悪化

・Career SBU

・Asia Pacific SBU

派遣事業及び

受託請負事業

・顧客企業の人件費全般の抑制に伴う派遣スタッフ契約数の減少

・顧客企業の操業停止等による派遣契約の終了

・取引規模の大きな顧客企業の業績悪化による売上の大幅な減少

・業務受託業や人材派遣業等の常用雇用者を有する事業における、契約数の減少及び契約規模の縮小

・顧客企業のコスト削減に伴う案件のキャンセル、予算の削減による受託案件の減少

・景気感応度は相対的に低く遅行する

・売上高の減少及び採算性の悪化

 

 

・Staffing SBU

・Professional Outsourcing SBU

・Asia Pacific SBU

 

 

(8)海外事業展開のリスク

 当社グループは、日本国内に加えAPAC地域においても人材派遣事業、人材紹介事業、受託請負事業等の事業を行っております。海外事業展開に際しては、支援体制及び経営管理機能の強化を進めておりますが、APAC地域各国の政治・社会情勢の急激な変化、法令改正、想定外の為替変動等、著しい事業環境変化等により同地域における明確な競争優位を確立出来なかった場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす場合があります。

 

(9)技術革新によるリスク

 当社グループの営む人材関連サービスは、特にITの活用が不可欠な事業であります。当社グループでは、IT技術を用い、新規サービス開発やオペレーションシステムの改善に努めておりますが、新規事業開発で高度な専門性を持つ技術者や企画者を確保又は育成できない場合、当社グループが技術革新のトレンドを正確に予測することができない、又は新技術適用の判断が遅れることで、競争力の低下につながる及び従前のビジネスモデルそのものが陳腐化する可能性があります。また、改良や新技術導入に際し、多額の費用が発生する場合、また何らかの事由により当初想定したサービスの質の確保が難しい場合、期待した導入効果が得られない場合、更にディスラプティブテクノロジー(disruptive technology)と言われるこれまでにない発想に基づく新たなプロダクトやサービスが急速にグローバルに普及し、既存のマーケットが破壊された場合、当社グループの事業運営に影響を与えるとともに、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 また、企業における業務効率化や生産性向上を実現するテクノロジーとして、Robotic Process Automation(RPA)やArtificial Intelligence(AI)等の導入が急速に拡大しております。RPAの導入には一定のスキルが必要であることから、当社グループでもRPAスキル保有人材の派遣や、RPA導入支援から運用定着における研修等のサービスを提供し、新たな企業ニーズに適合すべくサービス展開を実施しております。しかしながら、技術革新における高度な専門性を持つ技術者や企画者を確保又は育成できない場合には、当社グループが技術革新のトレンドを正確に予測することができない、又は新技術適用の判断が遅れることで、競争力の低下につながる及び従前のビジネスモデルそのものが陳腐化する可能性があります。また、改良や新技術導入に際し、多額の費用が発生する場合、また何らかの事由により当初想定したサービスの質の確保が難しい場合、期待した導入効果が得られない場合等が生じた場合、当社グループの事業運営に影響を与えるとともに、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(10)競合によるリスク

 当社グループが展開している人材ビジネス市場では、各国の各分野において多数の競合他社が存在しております。これらの競合他社が当社グループと同水準のサービスを低価格で提供した場合や、当社グループのサービスを必要としないプロセスや仕組みを顧客企業に提供、若しくは社会的に浸透・普及に成功した場合、求職者等の個人や法人顧客にとってより魅力的なサービスを提供する又は当社グループがニーズに対応したサービスや機能の改善を図れない場合には、当社グループのシェアが下がり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループにおける派遣スタッフ及び求職者等の個人の集客においては、他社の運営する検索エンジン等を利用して求人広告を掲載しているものがあります。かかるプラットフォームを提供する企業が求人広告業界における集客力を強め、独占的なポジションを確立した場合には、当社グループの集客力や売上に影響を与える可能性があります。

 

(11)人口構造の変化に対応できないリスク

 当社グループの提供するサービスは、事業を展開する国の人口動態の変化の影響を受けます。現在、国内において少子高齢化が急速に進んでおり、今後、生産年齢人口の減少が更に進む可能性があります。当社グループでは、生産年齢人口の減少が進むなか、女性・高齢者・外国人の労働参加率の向上に注目し、社会やユーザーのニーズに敏感に対応できるサービスの開発や新規事業展開に取り組む等、労働市場の変化に対応した事業戦略を実行し、多様な働き方の提供と労働市場の拡大に努めております。また、労働者不足への対応として、企業におけるRPAやAI等のテクノロジーを活用した業務効率化が進んでおり、当社グループにおいても、「パーソルのRPA」という、RPAスキル保有人材の派遣、RPA導入支援から運用定着における研修等のサービスを提供して、新たな企業ニーズに合わせたサービス展開を進めております。しかしながら、当社グループがかかる変化を適時適切に把握できない、意思決定の遅れから適切なタイミングでサービスを提供できない、若しくはかかるサービス開発に想定以上のコストを要する場合、又は企業側の対応が積極的ではない場合には、労働市場の縮小が更に進展するとともに当社グループのユーザーが減少し、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)人材の育成・確保におけるリスク

 当社グループの中長期戦略の実行及び持続的な成長において、様々な分野での多様な人材の確保・育成が必要となります。当社グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」を実現する為、当社グループのすべての従業員が仕事へのやりがいと組織への愛着を持てるよう良好な職場づくりに努めております。しかしながら、今後の当社グループの成長をけん引するためのIT技術者、デジタルトランスフォーメーション推進人材及びグローバル人材等、一部の領域においては要件を満たす人材は市場においても希少性が極めて高く、これら人材の確保が想定通り進められない可能性があります。また、当社グループの目指す職場環境づくりが困難な場合には、優秀な人材育成が想定通りに進まず、当社グループの事業運営が計画通りに進まない可能性があります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

①業績

 当社グループは、日本国内及びアジア・パシフィック(APAC)地域で、人材派遣及び人材紹介を主力として幅広く人材関連サービスを提供しております。

 当連結会計年度の国内の事業環境につきましては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大が影響し、日本国内の有効求人倍率(季節調整値)は2021年3月には1.10倍となり、4月からは第4波の懸念も報じられるなど先行き不透明感が強まってきております。当社においては、人材紹介事業では、足許の受注状況等は緩やかな回復基調にありますが、COVID-19感染拡大により、企業は依然として採用に慎重になっており、大きな影響を受けております。APAC地域では、総じて経済は回復基調にあるものの、豪州においては、前連結会計年度に続き、円に対する豪ドル安が進みました。

 このような厳しい事業環境の下、主力であるStaffing SBUとProfessional Outsourcing SBUは増収となりましたが、COVID-19感染拡大の影響を受け、主にCareer SBUで売上高が大きく減少したことに加え、「an」事業の終了による減収の結果、当連結会計年度の連結売上高は950,722百万円(前連結会計年度比2.0%減)となりました。一方、利益面では、当社グループの主力事業であるStaffing SBUでは収益性の高いBPO領域の増収も寄与し、増益となりましたが、主に収益性の高い人材紹介事業を展開するCareer SBUでCOVID-19の影響を受けて大幅な減益となったことにより、全体の営業利益は26,439百万円(同32.4%減)となりました。また、経常利益は29,168百万円(同25.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は15,834百万円(同108.0%増)となりました。

 

 セグメントの業績(セグメント間内部取引消去前)は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

セグメントの名称

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

 

百万円

百万円

百万円

Staffing

売上高

営業利益

510,177

23,869

530,240

29,123

20,062

5,253

3.9

22.0

Career

売上高

営業利益

83,449

13,268

59,568

331

△23,880

△12,936

△28.6

△97.5

Professional

Outsourcing

売上高

営業利益

105,826

6,310

113,095

4,028

7,268

△2,282

6.9

△36.2

Solution

売上高

営業利益

7,012

△1,619

5,702

△4,809

△1,310

△3,190

△18.7

-

Asia Pacific

売上高

営業利益

273,241

△408

251,447

△1,520

△21,794

△1,112

△8.0

-

その他

売上高

営業利益

10,111

△427

11,464

△1,156

1,352

△729

13.4

-

調整額

売上高

営業利益

△19,246

△1,909

△20,795

442

△1,549

2,352

-

-

連結損益計算書

計上額

売上高

営業利益

970,572

39,085

950,722

26,439

△19,850

△12,646

△2.0

△32.4

(注)上記の売上高のうち、調整額及び連結損益計算書計上額に記載の売上高以外の売上高については、セグメント間内部取引消去額前の金額になります。

 

a. Staffing SBU

 本セグメントは、国内で事務領域を中心に幅広い業種に対応した人材派遣事業に加え、受託請負のBPO(Business Process Outsourcing)、事務職を中心とした人材紹介事業等を展開しています。

 当連結会計年度における売上高は、530,240百万円(前連結会計年度比3.9%増)、営業利益は、29,123百万円(同22.0%増)となりました。

 売上高は、人材派遣事業では稼働日が前連結会計年度より3営業日増加したことに加え、同一労働同一賃金の対応等に係る請求単価の上昇により、増収となりました。また、BPO領域においてもCOVID-19関連を含め受託案件が増加したことにより、増収に寄与いたしました。営業利益は、人材派遣事業及びBPO領域の増収効果により増益となりました。

b. Career SBU

 本セグメントは、顧客企業の正社員の中途採用活動を支援する人材紹介事業、求人メディア事業等を展開しています。

 当連結会計年度における売上高は、59,568百万円前連結会計年度比28.6%減)、営業利益は、331百万円(同97.5%減)となりました。

 売上高は、人材紹介事業、求人メディア事業ともに受注は回復傾向にあるものの、COVID-19感染拡大前の水準への回復には時間を要することに加え、「an」事業の終了(2019年11月)により減収となりました。営業利益は、マーケティング費用や人員の再配置による人件費等、継続してコスト削減に取り組んでまいりましたが、減収により大幅な減益となりました。

 

c. Professional Outsourcing SBU

 本セグメントは、IT領域やエンジニアリング領域の製造・開発受託請負事業や技術者を専門とした人材派遣事業を展開しています。

 当連結会計年度における売上高は、113,095百万円前連結会計年度比6.9%増)となり、営業利益は、4,028百万円(同36.2%減となりました。

 売上高は、IT領域が高成長を維持し、またエンジニアリング領域で新卒技術者の配属や、未稼働技術者の配属が進んだ結果、増収となりました。営業利益は、エンジニアリング領域で期末にかけて減少傾向にはあったものの、未稼働技術者が発生したこと、またIT領域で人員の拡充を行ったことにより、売上高人件費率が上昇した結果、減益となりました。

 

d. Solution SBU

 本セグメントは、人材採用、人材管理等のデジタルソリューションサービスの提供やインキュベーションプログラムを通じた新規事業の創出を行っております。

 当連結会計年度における売上高は、5,702百万円(前連結会計年度比18.7%減)、営業損失は、4,809百万円(前連結会計年度は営業損失1,619百万円)となりました。

 売上高は、事業規模拡大の進捗はあるものの、COVID-19感染拡大による企業の採用意欲の減退傾向や、飲食店への自粛要請等の影響を受けたことにより減収となりました。利益面は、減収に加え、販売促進のために人員拡充等の投資を進めた結果、営業損失となりました。

 

e. Asia Pacific SBU

 本セグメントは、アジア地域で人材派遣事業及び人材紹介事業、豪州においてはStaffing事業及びMaintenance事業を展開しております。(アジア地域では主にPERSOLKELLY、豪州では主にProgrammedのブランドで事業を運営しております。)

 当連結会計年度における売上高は、251,447百万円(前連結会計年度比8.0%減、営業損失は、1,520百万円前連結会計年度は営業損失408百万円となりました。

 売上高は、シンガポールで人材派遣事業が伸長したことに加え、中国における人材紹介事業や豪州のブルーカラー派遣事業に回復が見られたものの、その他アジア地域におけるCOVID-19の感染拡大による経済の低迷からの回復の遅れもあり、また豪ドル安の影響を受けたことから減収となりました。利益面は、豪州事業の統合によりコスト構造が改善したものの、減収により営業損失となりました。

 

②新型コロナウイルス(COVID-19)の影響について

 日本では、2020年後半にはCOVID-19感染拡大による景況感の悪化に歯止めがかかりつつありましたが、2021年の年初より緊急事態宣言が再び発出され、4月からは第4波の懸念も報じられるなど先行き不透明感が強まってきております。APAC地域では、シンガポールや中国をはじめとした大半の地域では、総じて経済は回復傾向にあります。

 当社グループの国内事業につきましては、人材派遣事業では、マーケティング領域において、店舗の営業時間短縮や人員の削減等の影響を受け、稼働者数が減少した一方、主力の事務領域は、契約終了数の減少や期末にかけての受注の回復もあり稼働者数は前連結会計年度に比べ、若干の減少にとどまっております。またBPO領域は、リモートワークを含めたCOVID-19下でのはたらき方が浸透したことから、アウトソーシングの需要の高まりを受け新規案件が増加しております。人材紹介事業においても、受注は回復傾向にあります。

 海外事業につきましては、当社の主力地域のシンガポールでの人材派遣事業や中国における人材紹介事業を中心に総じて回復基調にあります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

 当社グループは、StaffingCareerProfessional OutsourcingSolutionAsia Pacific等のセグメント区分にて国内及びAPAC地域において人材関連事業を行っており、提供するサービスの性質上、生産実績の記載に馴染まないため、省略しております。

 

b.受注実績

 生産実績の記載と同様に、受注状況の記載に馴染まないため省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

売上高

(百万円)

構成比

(%)

前年同期比増減

(%)

Staffing

526,961

55.4

3.9

Career

58,946

6.2

△28.5

Professional Outsourcing

102,885

10.8

6.5

Solution

5,187

0.5

△12.7

Asia Pacific

251,444

26.4

△8.0

全社及びその他の事業

5,295

0.7

△2.8

合 計

950,722

100.0

△2.0

(注)1.セグメント間の取引は、相殺消去しております。

2.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)財政状態の分析

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ12,422百万円増加し、383,416百万円となりました。流動資産は13,393百万円増加し、236,943百万円となりました。これは主に、現金及び預金が4,913百万円及び受取手形及び売掛金が4,476百万円増加したことによるものであります。

  固定資産は971百万円減少し、146,472百万円となりました。これは主に、投資有価証券が3,197百万円増加した一方、のれんが5,811百万円減少したことによるものであります。

  当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,170百万円増加し、208,258百万円となりました。流動負債は5,525百万円増加し、145,577百万円となりました。1年内返済予定の長期借入金が9,968百万円及び短期借入金が4,696百万円減少した一方、1年内償還予定の社債が10,000百万円、未払金が4,325百万円及び賞与引当金が2,721百万円増加したことによるものであります。

  固定負債は4,355百万円減少し、62,680百万円となりました。これは主に長期借入金が5,901百万円増加した一方、社債が10,000百万円減少したこと等によるものであります。

  当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ11,251百万円増加し、175,158百万円となりました。これは主に、剰余金の配当6,485百万円を行ったことや、親会社株主に帰属する当期純利益15,834百万円の計上等により、利益剰余金が9,349百万円、その他有価証券評価差額金が1,879百万円増加したこと等によるものであります。

  以上の結果、財務指標としては、流動比率が前連結会計年度末の159.6%から162.8%に上昇し、自己資本比率が前連結会計年度末の39.9%から41.0%に上昇いたしました。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

総資産当期純利益率(ROA)

2.3%

4.6%

自己資本当期純利益率(ROE)

5.0%

10.4%

売上高営業利益率

4.0%

2.8%

売上高経常利益率

4.1%

3.1%

流動比率

159.6%

162.8%

固定比率

99.7%

93.2%

自己資本比率

39.9%

41.0%

ROIC

13.8%

9.4%

D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)

0.48

0.40

Net cash/EBITDA倍率

0.12

0.47

総資産

370,993百万円

383,416百万円

自己資本

147,850百万円

157,122百万円

投下資本

234,935百万円

244,109百万円

現金及び現金同等物の期末残高

78,037百万円

82,991百万円

 

(3)経営成績の分析

  当連結会計年度における売上高は、950,722百万円と前連結会計年度に比べ19,850百万円の減収となりました。利益面では、売上総利益において、201,413百万円と前連結会計年度に比べ12,578百万円の減益、営業利益において、26,439百万円と前連結会計年度に比べ12,646百万円の減益、経常利益において、29,168百万円と前連結会計年度に比べ10,192百万円の減益、親会社株主に帰属する当期純利益においては15,834百万円と前連結会計年度に比べ8,222百万円の増益となりました。

 

① 売上高

 売上高は、主力のStaffing SBUでは増収となったものの、Career SBUやAsia Pacific SBUにおいてCOVID-19の影響を大きく受けたことにより、全体として2.0%の減収となりました。

 

② 売上総利益

 売上総利益は、Staffing SBUにおいては、派遣スタッフの有給取得の減少等により増益となりましたが、収益性の高い人材紹介事業を展開するCareer SBUでCOVID-19の影響を受け減収となったこと等により、全体として5.9%の減益となりました。

③ 営業利益

 営業利益は、グループ全体でコストコントロールに取り組んだものの、Career SBUで大幅な減益となった結果、全体として32.4%の減益となりました。

 

④ 経常利益

 経常利益は、営業利益の減少により25.9%の減益となりました。

 

⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益

 経常利益は減益となりましたが、前連結会計年度は主に海外事業におけるのれんの減損損失や「an」事業の終了に伴う特別損失を約193億円計上した結果、親会社に帰属する当期純利益は108.0%の増益となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ4,953百万円増加し、82,991百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度より8,981百万円増加し、37,574百万円となりました。これは主に、法人税等の支払額が12,473百万円となった一方、税金等調整前当期純利益が28,579百万円、減価償却費が10,785百万円、のれん償却額が6,686百万円となったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度より3,554百万円減少し、14,022百万円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出が8,569百万円、有形固定資産の取得による支出が3,666百万円となったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度より15,985百万円増加し、17,973百万円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が10,032百万円、配当金の支払額が6,485百万円となったことによるものであります。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の主な運転資金需要は、派遣スタッフ及び従業員に対する給与支払いであります。事業構造上、現金及び現金同等物が資産の中で占める割合が高くなっております。短期運転資金は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保する基本方針をふまえて、事業収益から得られる自己資金を基本としており、特に多額の資金が必要となる企業買収等については、安定した財務基盤を活かし、銀行借入、社債発行など最適な資金調達手段を通じて行うことを基本としております。なお、当連結会計年度における現金及び預金の残高は83,161百万円、有利子負債の残高は、62,264百万円となっております。

 

(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 なお、新型コロナウイルスの感染拡大により、足元の業績に影響が生じております。固定資産の減損及び税効果会計等におきましては、今後、2022年3月期の一定期間にわたって当該影響が継続すると仮定し、会計上の見積りを行っております。

 

(8)経営者の問題認識と今後の方針について

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。