(1) 経営環境及び当社の経営方針
当社は、国内での労働力人口の減少等を背景とした、日々刻々と変化する労働市場の中で、中途採用の積極化、女性や高齢者、外国人等の活躍の推進等、人材サービス業界の社会的役割、当社グループの果たすべき役割やその責任は大きいものと捉えております。また、当社は、「人生100年時代」において、世界的に寿命が延びていく中で“はたらく”期間が長くなることから、生涯にわたって様々な仕事をする機会が多くなり、加えて、「テクノロジー、AIの進化」により、あらゆる産業における個人のはたらき方が変化すると想定しております。
2030年時点の社会を予測しながら、“はたらく”世界の変容を捉え、「人生100年時代」における新しいはたらき方、そして企業や組織の新たな雇用のあり方を提案し続けることで、当社グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現できる企業を目指してまいります。
(2)価値創造ストーリーについて
グループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現のため、企業活動と社会貢献のサイクルを「2030年に向けた価値創造ストーリー」として設計しました。これまで培ってきた価値創造の源泉を磨き、事業活動の成長につなげてまいります。その結果として、社会的価値と経済的価値の双方を高め、新たな価値の創造を実現します。同時に、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)達成に貢献してまいります。
価値創造ストーリーを実現するために、事業活動において3つの重点戦略を策定いたしました。
a.『個人』にフォーカスする
すべてのはたらく個人のワークエンゲージメント向上に資する取り組みに、優先的に投資を行います。「はたらく個人」の視点から、よりよい仕事、よりよいはたらき方、よりよい人生とはなにかを見つめ、これからの未来を形づくる多様な“はたらく”を創造し、支援していきます。具体的には、ライフステージの変化や適性・能力に合わせたはたらく機会と気づきの提供を行います。また、仕事選びのタイミングだけではなく、はたらく個人の生涯に寄り添い続けるパートナーとして、仕事以外の領域での支援も行います。すべてのライフステージにおいて、継続的に十分な選択肢を得られるよう、学びの機会を提供してまいります。
b.『テクノロジー』を武器にする
テクノロジーを最大限活用し、デジタルトランスフォーメーションを推進することで、新たなはたらき方や、雇用のあり方を提案してまいります。これまで蓄積された膨大な個人・法人のデータを分析、活用するための基盤整備を行い、人材派遣、人材紹介等の基盤事業においてデジタル化を推進することで、さらに高度化してまいります。また、これまでの提供価値を最新のテクノロジー活用の視点で捉え直すことで、未来の新たな事業を創出してまいります。
c.世界で価値を提供する
人口減少や少子高齢化に伴う労働力不足等、“はたらく”に関する課題を多く抱える課題先進国である日本から、APAC地域で価値提供できる経営体制を整えます。さらに、その先には、世界の社会課題の解決に貢献し、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現します。
また、当社グループでは、経営理念である「雇用の創造」、「人々の成長」、「社会貢献」に基づき、持続可能な社会を目指して、多様なステークホルダーと連携し、社会課題解決に積極的に取り組んでおります。グループビジョンを実現する過程で、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の目標の中から、事業を通じて直接的に関与することができる「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「人や国の不平等をなくそう」の5つのSDGs達成を重点課題として取り組むとともに、17すべてのゴールについて、達成に寄与する人材の成長支援や雇用創出の実現を目指してまいります。
(3)中期経営計画2023について
a.全体方針
2030年に向けた、最初の3年間であるグループ中期経営計画2023では、事業の磨き込みと経営基盤の整備による成長に向けた基礎作りを行う3ヶ年と位置付け、「社会的価値の向上」「経済的価値の向上」「SBU体制への移行」「成長領域の特定」「テクノロジーによる事業強化」の5つの全体方針を策定いたしました。全体方針及び進捗は以下のとおりです。
・中期経営計画2023の全体方針
社会的価値の向上 |
・グループビジョン実現に向け、「はたらいて、笑おう。」指標を設定し、向上に資する施策を実行 ・ESGを推進し、グループの取り組みを統合レポートで開示 |
経済的価値の向上 |
・単年のP/L重視経営から持続的に企業価値の成長を実現する経営へ ・ROIC等を活用した資本収益性の指標を導入し、グループ全体の企業価値向上を推進 |
SBU体制への移行 |
・当社の収益を支えるStaffing SBU、Career SBUを一層強化しつつ、Professional Outsourcing SBUを第3の柱として位置付け ・Asia Pacific SBUはマネジメントを一本化。コストシナジーにより収益性を改善 |
成長領域の特定 |
・Professional Outsourcing SBUを当社の第3の柱として確立すべく、SBU内のシナジー創出に加えて、積極的にM&A等の投資を実施 ・Solution SBUにおいて新規事業の創造を積極的に推進 |
テクノロジーによる事業強化 |
・Digital Transformation(DX)への投資による生産性向上・顧客満足の向上 |
・中期経営計画2023の進捗
社会的価値の向上 |
・2021年9月に統合報告書2021を発刊し、ESG関連の開示を充実化 ・2021年9月にジェンダーダイバーシティ委員会、2022年3月にサステナビリティ委員会をそれぞれ新設 |
経済的価値の向上 |
・取締役会などにおいて、ROICを踏まえた議論やモニタリングを継続実施 ・2022/3期のROICは14.2%と、最低水準として設定した10%を上回って着地 |
SBU体制への移行 |
・2021年7月にコーポレートガバナンス委員会を新設し、ガバナンス機能を強化 ・これにより迅速に意思決定できるSBU体制においても経営監督機能を確保 |
成長領域の特定 |
・Professional Outsourcing SBUにおいて、M&A投資を引き続き模索中 |
テクノロジーによる事業強化 |
・2022年2月に「はたらく未来図構想(注)」の中核を担うキャリアマネジメントサービス「PERSOL MIRAIZ」のβ版を提供開始 |
(注)あらゆる個人が自分らしくはたらき、自らの未来を描くことをサポートする仕組み
b.財務方針
企業価値向上に向けて、資本収益性重視の財務方針に転換し、さらに強固かつ機動性の高い財務基盤の構築を目指します。また、株主還元及びキャッシュポジションについても下記のとおり方針を定め、株主還元を強化してまいります。
企業価値向上に向けた資本収益性の導入 |
・企業価値向上の観点から、従来のPLから、資本収益性を重視する方針に転換 ・将来的なIFRS導入を見据え、当社のROICは、『のれん償却前税引後営業利益÷投下資本(=有利子負債+自己資本)』で算出 ・2023年3月期は、最低基準として10%を上回る水準を設定 |
将来的なIFRS導入 |
・海外での買収により導入を延期していたIFRSを2024年3月期を目途に導入予定 ・将来的なIFRS開示を踏まえ、のれん償却前当期純利益をベースとした調整後EPSを継続的に開示 |
株主還元 |
・調整後EPSの25%を目途とした配当実施を基本とする ・調整後EPSは、のれん償却前当期純利益をベースに、特別損益の影響を除外しているため、比較的安定的な配当水準で推移できる見込み |
キャッシュポジション |
・適正キャッシュポジションとして、「ネットキャッシュまたはネットデットが連結EBITDAの1倍以内」と定義 ・今後、投資が計画通りに進まず、過剰キャッシュとなった場合、または投資を実行した結果、過剰債務状態になった場合の基本方針は以下のとおり -ネットキャッシュが連結EBITDAの1.0倍を超える場合、自己株式取得等の株主還元強化を検討 -ネットデットが連結EBITDAの1.0倍を超える場合、増資等による資本充実を検討 |
c.ガバナンス方針
2021年3月期以降、事業執行体制及びガバナンス体制を変更しております。事業執行体制については、SBU(Strategic Business Unit)体制とし、事業執行に関する意思決定をSBUに適切に権限委譲することで、執行の迅速化を図るとともに、2021年7月にコーポレートガバナンス委員会を新設し、ガバナンス機能を強化しております。さらに、独立社外取締役比率を原則2分の1以上にすることで、取締役会はモニタリングモデルへ移行したほか、CEOの意思決定を補佐する機関としてHMC(Headquarters Management Committee)の設置に加え、HMCの助言機関として、投資委員会、人事委員会、リスクマネジメント委員会、テクノロジー委員会、ジェンダー・ダイバーシティ委員会(2021年9月新設)、サステナビリティ委員会(2022年3月新設)を設置し、意思決定の迅速化とガバナンスの両立を図ってまいります。
d.業績数値目標
中期経営計画2023の最終年度である2023年3月期には、売上高1兆円、営業利益450億円、親会社株主に帰属する当期純利益268億円の数値目標を掲げておりましたが、当連結会計年度において、売上1兆608億円、営業利益481億円、親会社株主に帰属する当期純利益315億円の業績を実現し、1年前倒しで中期経営計画2023の数値目標を達成いたしました。
後述「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 」に記載のリスクマネジメント委員会を当事業年度においては4回開催し、「IT関連リスク(個人情報漏えい、システム障害等)」「企業買収投資に伴うリスク」「プライバシー侵害リスク」「自然災害等の有事に関する事業継続リスク」「気候変動に伴うリスク」「人権侵害リスク」といった事業への影響度や社会からの期待・関心が高いグループ重要リスク6項目を選定しました。2022年度以降はこれらの重要リスクを中心に定期的なモニタリングを実施する予定です。
また上記のグループ重要リスク6項目を含め、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす主要なリスクは以下の表に記載のとおりであります。当社経営者が認識する当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与えるリスクに関し、発生の蓋然性及び事業への影響の度合いを鑑み、重要と考えられる順に記載しております。当社グループは、これらリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありません。
主要なリスク一覧
重要度順位 |
リスク名称 |
グループ |
① |
IT関連リスク(個人情報漏えい、システム障害等) |
● |
② |
企業買収投資に伴うリスク |
● |
③ |
プライバシー侵害リスク |
● |
④ |
自然災害等の有事に関する事業継続リスク |
● |
⑤ |
気候変動に伴うリスク |
● |
⑥ |
人権侵害に関するリスク |
● |
⑦ |
法令遵守等コンプライアンスに関するリスク |
|
⑧ |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するリスク |
|
⑨ |
景気変動によるマクロ経済の変化に関するリスク |
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⑩ |
人材の育成・確保におけるリスク |
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⑪ |
海外事業展開に伴うリスク |
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⑫ |
技術革新によるリスク |
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⑬ |
競合によるリスク |
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⑭ |
人口構造の変化に対応できないリスク |
|
①IT関連リスク(個人情報漏えい、システム障害等)
a.個人情報漏えいのリスク
当社グループは、情報セキュリティ対策として、情報セキュリティや個人情報取扱いに関する規程を定めております。また、かかる規程に沿ったIT環境の構築、グループのセキュリティ統括部門を中心としたIT環境やグループ各社のセキュリティ状況の点検、従業員に対する定期的な教育の実施等、IT面と人的な面の双方から適切な情報管理体制の構築・維持に努めております。しかしながら、当社グループにおいてサイバー攻撃をはじめとした、第三者によるセキュリティ侵害、不適切なシステムの設定、従業員の不正又は過失等によりこれらの個人情報が漏えいする事態が生じた場合、当社グループのブランドの棄損、サービス利用者数の急減、企業イメージの悪化等の社会的信用の低下や損害賠償請求等の発生により、事業運営に重大な影響を与えるとともに、財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
b.システム障害等リスク
当社グループの事業は、国内外を問わず、コンピュータシステム及びその通信ネットワークに多くを依存していることに加え、近年の当社グループにおけるリモートワーク拡大により、当該リスクの重要性は一段と高いものとして認識しております。またシステムのメンテナンス等の一部はクラウドシステム業者を含む外部業者に委託しております。そのため、不測の事態に対しては、障害発生時の体制整備、システムセキュリティの強化、通信回線やハードウェアの増強等、様々な対策を講じておりますが、これらの対策にもかかわらず人為的過誤、サイバー攻撃、広範な自然災害や外部業者のトラブル等により、コンピュータシステムや通信ネットワークが利用できなくなることにより、当社グループの業務や提供するサービスが停止する可能性があり、かかる状況が長期にわたる場合、当社グループに対する信頼性の低下を招く等の重大な影響を及ぼす可能性があります。
②企業買収投資に伴うリスク
当社グループは、これまで企業買収や事業提携を通じて成長を遂げており、将来においても同様の手法を通じて、さらなる企業価値の向上を企図しております。
企業買収や事業提携に際しては、対象となる企業の財務内容や契約関係等について詳細なデューディリジェンスを行い、リスク回避に努めておりますが、案件の性質や時間的な制約等から十分なデューディリジェンスが実施できず、買収後に偶発債務の発生や未認識債務が判明した場合、また当該事業が、当初想定した収益計画と大きく乖離した場合、多額の資金投入が発生する可能性のほか、関係会社株式の評価替えやのれんの減損等により、当社グループの事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、買収を通じて取得した企業ののれんは、当連結会計年度末において61,674百万円であり、そのうち、Career SBUに属するパーソルキャリア㈱(旧㈱インテリジェンスホールディングス)及びAsia Pacific SBUのProgrammed Maintenance Services Limitedが大きな割合を占めております。海外事業については、2020年3月期に、2018年3月期に買収した前述のProgrammed Maintenance Services Limitedのスタッフィング事業等ののれんに関する減損損失を計上するとともに、2018年3月期にはPERSOLKELLY事業に係る買収子会社も同様に減損損失を計上している観点から、事業投資案件に関しては、ガバナンス体制を強化して取り組んでいます。新たなガバナンス体制の強化策として、多額の事業投資案件に関しては専門的見地から審議した上で経営陣に対して助言する「投資委員会」を2020年4月に設置いたしました。投資委員会は、グループの投資全般に関する重要事項の審議を行うとともに、投資推進に関連した一連の知識、知見をグループの組織知として高めていくことを目的としており、審議結果をHMC(Headquarters Management Committee)に上程し、HMCの適切な判断を補完する組織となります。
また、買収した企業は、それぞれのブランド力やグループ内の相互協力により極めて有益なビジネスシナジーの創出が可能になるものと判断しておりますが、今後、経営環境や事業の状況の著しい変化、また何らかの事由によりそれぞれの経営成績が想定通り進捗しない場合、これらの資産について減損会計の適用に伴う追加の損失処理が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③プライバシー侵害リスク
当社グループ各社では、事業運営に際し、登録スタッフ、派遣スタッフ、求職者、顧客企業、従業員等その他の関係者の個人情報を大量に保有し取扱っております。
当社グループで保有する個人情報の取扱いについては、当該国の個人情報に関する法律が適用されます。特に主力事業を展開している日本国内においては「個人情報の保護に関する法律」、「職業安定法」、「労働者派遣法」等に準拠した取扱いが求められます。これらの法令は、近年の個人情報保護及びプライバシーの権利に対する意識の高まりや、グローバル基準への適合に向けた動きにより内容が高度化しており、当社グループでは、法務と情報セキュリティの両面からこれらの解釈や運用について慎重な検討と判断を重ねております。しかしながら、これらの法令での実務面に対する要求事項は解釈の余地も多いことから、当社グループにおける解釈によっては、意図せず当社グループの個人情報取扱いが不適切と評価され、当局からの業務停止命令、個人データの提供者若しくは法人からの訴訟につながる可能性があります。
さらに法令を遵守して活用した場合でも、データ提供者の不利益又は不信感を招いたときは、当社グループのブランド及び企業イメージの低下や信用が毀損する可能性があります。
また当社では、2020年度にパーソナルデータ利活用審議会を設置し、グループ全体のパーソナルデータ利活用戦略について議論することで、グループ全体で整合性のとれたパーソナルデータの利活用を行っております。新規サービスの立ち上げや新規の個人データ利活用に際しては、専門部署によるプライバシーレビュープロセスを経る体制を構築し、本人への影響を予め十分に検討し、適切な対応策を講じることで、ユーザー等の信頼を確保することに努めております。
④自然災害等の有事に関する事業継続リスク
当社グループは、日本国内とAPAC地域で事業活動を展開しております。地震、台風、洪水等の自然災害、火災、停電、戦争、テロ行為等が起こり、当社グループの従業員の安全が脅かされ、または会社資産が毀損した場合、若しくはパンデミックが起こり、多数の従業員が感染、または行動制限措置により業務が制限された場合、当社グループの事業が一時的に中断され、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、人材サービスという事業性質上、有事には派遣スタッフの安否確認や顧客企業との契約内容の調整等、多大な顧客対応による業務負荷が予想されることから、当社グループの事業運営に影響を与えるとともに財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
かかるリスクに対し、当社グループでは当社にクライシスマネジメントの統括部署を設置し、①従業員と派遣スタッフの安全確保、②顧客・会社資産保護、③事業継続、④ステークホルダーコミュニケーションを基本方針として、有事に適切な対応をとる体制を構築しております。また、人材サービスの根幹である従業員・派遣スタッフへの給与支払い業務をグループの最重要業務と位置づけ、大規模自然災害やパンデミックが発生した場合でも給与支払い業務を継続し、従業員・派遣スタッフが生活基盤を維持するための事業継続計画を策定するとともに、定期的に訓練を実施のうえ、事業継続計画の実行性向上に努めています。なお、初動対応の迅速化・効率化を実現するため、日本国内ではITを活用した被災時の情報収集システムの整備を進めており、安否確認システムや大規模災害発生時に被災している可能性が高い拠点を自動的に特定するシステムを導入しています。
加えて、当社グループにはAPAC地域に海外駐在員がおりますが、戦争、テロ等を想定し、安全対策・教育、医療支援を実施するとともに、有事の際の安否確認ルールを策定するなど、海外駐在員の安全と健康を守るための取り組みを行っております。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が軽減し、海外出張数が回復することを見据え、今後は海外出張者の安全対策の強化に努める予定です。
⑤気候変動に伴うリスク
当社グループは、地球規模で発生している気候変動問題に対して、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の最終提言に賛同し、気候変動による事業へのリスクと機会を特定するシナリオ分析に基づいた開示を2022年5月より実施しております。
気候変動が当事業に及ぼす影響、及び気候関連の機会とリスクを具体化して把握するために、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの外部機関が公表している4℃シナリオ(気候変動により自然災害の甚大さ・頻度が増加する世界)と1.5~2℃シナリオ(急速に脱炭素社会が実現する世界)をベンチマークとして参照し、分析しています。
当社グループの事業活動に伴う温室効果ガスの年間排出量は、CO2換算で約25,350トン(2021年度実績。ただし一部未確定の推定値を含む)で、そのうちの約99%が、電力の使用、車両利用時の燃料の燃焼に伴う排出です。温室効果ガス排出量に関する新たな目標として、2030年度までに、事業活動に伴う温室効果ガス*¹の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」目標を設定しました。
当社グループでは、排出を削減するため、様々な取り組みを推進しております。
全国のオフィスにおける電力使用量を削減するため、環境配慮型オフィスづくり・オフィス生活における環境配慮を通して、オフィスにおける省エネ・省資源活動に努めています。加えて、ICTの活用により社員のテレワークを推進し、通勤回数の減少とオフィス電力使用量の削減に貢献することで、働き方改革とCO2削減の両立を目指しています。更に、オフィスで使用する電力の再生可能エネルギーへの切り替えを検討しています。
また、当社グループの事業活動のうち、特に車両利用の多いProgrammed Maintenance Services Limitedでは、電力の再生可能エネルギーへの切り替え、カーボンニュートラル拠点の立ち上げなどの取り組みを通して、排出量の削減に努めております。
*1 事業活動に伴う温室効果ガスの排出量は、スコープ1、スコープ2の合計を示しています。
⑥人権侵害に関するリスク
当社グループは、日本国内とAPAC地域で事業拠点を持ち、取引する顧客企業や個人の求職者等の方々も多国にわたっています。近年、先進国を中心として「ビジネスと人権」に関する関心は高まっており、またステークホルダーによる人権への高度な対応要求は、ESG観点により、当社グループの事業活動にも大きく影響します。これまで当社グループにおいても、パーソルグループ行動規範の制定など取り組みを進めてまいりましたが、今後は①人権方針の策定、②人権デューディリジェンスの実施、③救済メカニズムの構築等、体制整備に向けて準備を進めてまいります。
しかしながら、人材サービスを提供する当社グループにおいて、人権侵害に該当する事案が生じた場合には、各国における行政罰や当社グループの社会的信用・ブランドイメージ毀損等により、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
⑦法令遵守等コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、自らが事業を展開する国又は地域の法令等を遵守する必要があります。特に、人材サービスを行う当社グループは、労働関連法令の遵守を重視しております。当社グループでは、コンプライアンスを、法令遵守に留まらず、より広範に、「社会からの要請や期待に応え、誠実に事業活動を行っていくこと」と捉え、それを実現するために、2019年度に「パーソルグループ行動規範」を制定し、当社グループの役職員には、公正、正直、敬意及び誠実さをもって行動することを求めております。
当社グループでは、事業の拡大に合わせ、コンプライアンス統括部署を設置し、コンプライアンス関連規程の整備や継続的な教育・研修の実施、グループ内部通報制度の整備等、コンプライアンス体制を整備しております。しかしながら、当社グループに適用される法令等に違反する事態が生じた場合、または社会からの要請や期待に応えられなかった場合は、当社グループの社会的信用やブランドイメージが毀損し、経営成績に影響を与える可能性があり、次のa、b、cに記載するリスクが考えられます。
a.人材派遣事業
当社グループの主要な事業である人材派遣事業は、国内においては「労働者派遣法」に基づき、労働者派遣事業の許可を受けて行っている事業であります。現時点で、当社グループにおいては、労働者派遣法に基づく労働者派遣事業の許可の取消事由に該当する事実はないものと認識しておりますが、今後何らかの理由により当社グループ各社及びその役職員が労働者派遣法に抵触した場合、当社グループの主要な事業活動全体に支障を来たすことが予想され、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。なお、労働者派遣法及び関係諸法令については、これまでにも労働環境の変化に応じ改正が適宜実施されており、当社グループではその都度、当該法改正に対応するための諸施策を採っております。今後、更なる改正が実施され、大きな運用変更が生じた場合、当社グループの今後の事業運営方針並びに経営成績に少なからず影響を与える可能性があります。
b.人材紹介事業・求人広告事業
当社グループが行う人材紹介事業及び求人広告事業は、国内においては「職業安定法」に基づき、有料職業紹介事業の許可を受けて行っている事業であります。現時点で、当社グループにおいては、職業安定法に基づく有料職業紹介事業の許可の取消事由に該当する事実はないものと認識しておりますが、今後何らかの理由により当社グループ各社及びその役職員が職業安定法に抵触した場合、当社グループの主要な事業活動全体に支障を来たすことが予想され、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。なお、職業安定法及び関係諸法令については、これまでにも労働環境の変化に応じた改正が適宜実施されており、直近では、2022年3月に、一部の求人広告事業の届出制を創設する内容の法改正が行われました。当社グループでは法改正の都度、当該法改正に対応するための諸施策を採っております。今後、更なる改正が実施され大きな運用変更が生じた場合、当社グループの今後の事業運営方針並びに経営成績に少なからず影響を与える可能性があります。
c.受託請負事業
当社グループが行う受託請負事業は、事務業務などの業務コンサルティングや業務運営・管理、IT・エンジニアリング領域の製造・開発など多岐にわたります。また、官公庁・地方公共団体・民間企業等の様々な顧客からの事業を受託しております。これら事業の遂行に当たり、顧客の要件を満たすことが第一ですが、特に官公庁・地方公共団体から受託している事業に関しては、その成否が日本社会全体又は地域社会に強く影響する場合もあります。当社グループでは、事前にアセスメントを行ったうえで受託判断を行うとともに、事業開始後も適切に遂行・運営されるように努めております。しかしながら、特に公共性の高い事業を適切に遂行・運営できなかった場合は、当社グループの社会的信用やブランドイメージが毀損し、経営成績に影響を与える可能性があります。
⑧新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するリスク
2020年初頭からのCOVID-19感染拡大による世界的な経済活動の急激な収縮といった予見が難しい事象が発生し、主に前連結会計年度において、当社グループの事業運営及び経営成績に大きな影響を及ぼしました。COVID-19感染拡大による経営成績への影響度合いは当連結会計年度において大幅に縮小しましたが、今後の感染拡大の状況や政府による行動制限の程度と継続期間次第では、再び当社グループの事業運営及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。国内事業につきましては、人材派遣事業では、派遣スタッフが在宅勤務をできる環境づくりに努めておりますが、小学校等の臨時休校をはじめ、何らかの事由により派遣スタッフの有給休暇の取得が増加、遅刻や早退等で勤務時間が減少した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、マーケティング領域では、店舗の営業時間短縮等の影響を受ける可能性があります。人材紹介事業では、面談の対面式からオンラインへの切り替えが進んでおりますが、COVID-19の感染拡大により、企業の採用活動抑制の動きがみられた場合、採用決定まで時間の長期化や、採用見送りなどの影響を受ける可能性があります。海外事業につきましては、各国の感染拡大の程度により、状況が大きく異なりますが、一部の地域において当連結会計年度も影響を受けました。アジア地域における人材派遣事業及び人材紹介事業では、地域により在宅勤務が行われておりますが、ロックダウン等の厳しい制限が発令された場合等において、事業運営及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。豪州・ニュージーランドにおいても、ロックダウンや移動制限が発令された場合、今後もStaffing事業及びMaintenance事業ともに影響を受ける可能性があります。
⑨景気変動によるマクロ経済の変化に関するリスク
当社グループが提供している人材サービスは、景気変動による影響を受けやすく、こうしたマクロ経済の変化にうまく対応できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性があります。特に、他国の経済状況、国際政治情勢、地政学的状況、国際金融市場等により、事業を展開する各国の経済が大きく左右される傾向が強まっております。また、2008年の世界金融危機、2020年初頭からのCOVID-19感染拡大や地政学的状況による世界的な経済活動の急激な収縮といった予見が難しい事象が発生しております。通常の景気循環による山谷に対しては、グループ各社・各SBU・コーポレート機能を担う当社において、コスト管理を行う等の経営努力により、当社業績に与える影響を抑制するよう努めております。しかしながら、2008年の世界金融危機のような深刻な経済危機が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性があります。特に、不況時における当社グループの収益に与える影響度の順に記載すると以下の表のとおりです。
|
想定される状況 |
影響度合 |
主要な該当セグメント |
求人広告事業 |
・企業の採用予算の縮小、採用活動の抑制による求人広告出稿数の減少 ・競争の激化による広告単価の低下 |
・景気感応度は最も高い ・売上高の減少及び採算性の悪化 |
・Career SBU |
人材紹介事業 |
・顧客企業の採用抑制による転職決定者数の減少 ・内定決定までのリードタイムの伸長 |
・景気感応度は高い ・売上高の減少及び採算性の悪化 |
・Career SBU ・Asia Pacific SBU |
人材派遣事業 及び 受託請負事業 |
・顧客企業の人件費全般の抑制に伴う派遣スタッフ契約数の減少 ・顧客企業の操業停止等による派遣契約の終了 ・取引規模の大きな顧客企業の業績悪化による売上の大幅な減少 ・業務受託業や人材派遣業等の常用雇用者を有する事業における、契約数の減少及び契約規模の縮小 ・顧客企業のコスト削減に伴う案件のキャンセル、予算の削減による受託案件の減少 |
・景気感応度は相対的に低く遅行する ・売上高の減少及び採算性の悪化 |
・Staffing SBU ・Professional Outsourcing SBU ・Asia Pacific SBU |
⑩人材の育成・確保におけるリスク
当社グループの中長期戦略の実行及び持続的な成長において、様々な分野での多様な人材の確保・育成が必要となります。当社グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」を実現するため、当社グループのすべての従業員が仕事へのやりがいと組織への貢献意欲を持てるよう良好な職場づくりに努めております。しかしながら、今後の当社グループの成長をけん引するためのIT技術者、デジタルトランスフォーメーション推進人材及びグローバル人材等、一部の領域において、要件を満たす人材は希少性が極めて高く、これら人材の確保が想定通り進められない可能性があります。また、当社グループの目指す職場環境づくりが困難な場合には、優秀な人材の育成が想定通りに進まず、また競合他社等への流出が発生し、当社グループの事業運営が計画通りに進まない可能性があります。
⑪海外事業展開に伴うリスク
当社グループは、日本国内に加えAPAC地域においても人材派遣事業、人材紹介事業、受託請負事業等の事業を行っております。海外事業展開に際しては、支援体制及び経営管理機能の強化を進めておりますが、APAC地域各国の政治・社会情勢の急激な変化、法令改正、想定外の為替変動等、著しい事業環境変化等により同地域における明確な競争優位を確立できなかった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑫技術革新によるリスク
当社グループの営む人材関連サービスは、特にITの活用が不可欠な事業であります。当社グループでは、IT技術を用い、新規サービス開発やオペレーションシステムの改善に努めておりますが、新規事業開発で高度な専門性を持つ技術者や企画者の確保や育成ができない場合、当社グループが技術革新のトレンドを正確に予測することができない、又は新技術適用の判断が遅れることで、競争力の低下につながる及び従前のビジネスモデルそのものが陳腐化する可能性があります。また、IT技術の改良や新技術導入に際し、多額の費用が発生する場合、また何らかの事由により当初想定したサービスの質の確保が難しい場合、期待した導入効果が得られない場合、更にディスラプティブテクノロジー(disruptive technology)と言われるこれまでにない発想に基づく新たなプロダクトやサービスが急速にグローバルに普及し、既存のマーケットが破壊された場合等に、当社グループの事業運営に影響を与えるとともに、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
更に、企業における業務効率化や生産性向上を実現するテクノロジーとして、Artificial Intelligence(AI)やRobotic Process Automation(RPA)等の導入が急速に拡大しております。例えば、RPAの導入には一定のスキルが必要であることから、当社グループでもRPAスキル保有人材の派遣や、RPA導入支援から運用定着における研修等のサービスを提供し、新たな企業ニーズに適合すべくサービス展開を実施しております。しかしながら、技術革新における高度な専門性を持つ技術者や企画者の確保や育成ができない場合には、当社グループが技術革新のトレンドを正確に予測することができない、又は新技術適用の判断が遅れることで、競争力の低下につながる及び従前のビジネスモデルそのものが陳腐化する可能性があります。また、AIやRPAなどの新技術導入や改良に際し、多額の費用が発生する場合、また何らかの事由により当初想定したサービスの質の確保が難しい場合、期待した導入効果が得られない場合等において、当社グループの事業運営に影響を与えるとともに、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑬競合によるリスク
当社グループが展開している人材ビジネス市場では、各国の各分野において多数の競合他社が存在しております。これらの競合他社が当社グループと同水準のサービスを低価格で提供した場合や、当社グループのサービスを必要としないプロセスや仕組みを顧客企業に提供、若しくは社会的に浸透・普及に成功した場合、求職者等の個人や法人顧客にとってより魅力的なサービスを提供する又は当社グループがニーズに対応したサービスや機能の改善を図れない場合には、当社グループのシェアが下がり、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループにおける派遣スタッフ及び求職者等の個人の集客においては、他社の運営する検索エンジン等を利用して求人広告を掲載しているものがあります。かかるプラットフォームを提供する企業が求人広告業界における集客力を強め、独占的なポジションを確立した場合には、当社グループの集客力や経営成績に影響を与える可能性があります。
⑭人口構造の変化に対応できないリスク
当社グループの提供するサービスは、事業を展開する国の人口動態の変化の影響を受けます。現在、国内において少子高齢化が急速に進んでおり、今後、生産年齢人口の減少が更に進む可能性があります。当社グループでは、生産年齢人口の減少が進むなか、女性・高齢者・外国人の労働参加率の向上に注目し、社会やユーザーのニーズに敏感に対応できるサービスの開発や新規事業展開に取り組む等、労働市場の変化に対応した事業戦略を実行し、多様な働き方の提供と労働市場の拡大に努めております。また、労働者不足への対応として、企業におけるAIやRPA等のテクノロジーを活用した業務効率化が進んでおり、当社グループにおいても、「パーソルのRPA」という、RPAスキル保有人材の派遣、RPA導入支援から運用定着における研修等のサービスを提供し、新たな企業ニーズに合わせたサービス展開を進めております。しかしながら、当社グループがかかる変化を適時適切に把握できない、意思決定の遅れから適切なタイミングでサービスを提供できない、若しくはかかるサービス開発に想定以上のコストを要する場合、又は企業側の対応が積極的ではない場合には、労働市場の縮小が更に進むとともに、当社グループのユーザーが減少し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)業績等の概要
①業績
当社グループは、日本国内及びAPAC地域で、人材派遣及び人材紹介を主力として幅広く人材関連サービスを提供しております。
当連結会計年度の国内の事業環境につきましては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が続いていることから、先行きの不透明感は依然残っておりますが、日本国内の有効求人倍率(季節調整値)は2022年3月には1.22倍となり、人材需要は回復基調にあります。当社においても、人材紹介事業の足元の受注状況は、既にCOVID-19前の水準まで回復しております。APAC地域でも、一部の地域でCOVID-19の影響は残っておりますが、総じて経済は回復基調にあります。また豪州においては円に対する豪ドル高が進みました。
このような事業環境の下、Staffing SBUは堅調に推移し、Career SBUにおいても順調に業績が回復しました。他のSBUにおいても増収となった結果、当連結会計年度の連結売上高は、1,060,893百万円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。利益面では、Staffing SBUでは収益性の高いBPO(Business Process Outsourcing)領域の増収が寄与したことや、その他のSBUにおいてもCOVID-19禍からの需要の戻りによる売上の回復が進んだことで、全てのSBUで増益または赤字幅が縮小し、全体の営業利益は、48,143百万円(同87.2%増)となりました。また、経常利益は、49,484百万円(同73.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、31,523百万円(同105.5%増)となりました。
セグメントの業績(セグメント間内部取引消去前)は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|
|
|
百万円 |
百万円 |
百万円 |
% |
Staffing |
売上高 営業利益 |
530,240 29,123 |
575,743 39,359 |
45,502 10,236 |
8.6 35.1 |
Career |
売上高 営業利益 |
59,568 331 |
75,279 7,264 |
15,710 6,932 |
26.4 2,088.9 |
Professional Outsourcing |
売上高 営業利益 |
113,095 4,028 |
121,109 6,934 |
8,014 2,906 |
7.1 72.1 |
Solution |
売上高 営業利益 |
5,702 △4,809 |
11,169 △3,058 |
5,467 1,751 |
95.9 - |
Asia Pacific |
売上高 営業利益 |
251,447 △2,235 |
290,138 1,042 |
38,691 3,278 |
15.4 - |
その他 |
売上高 営業利益 |
11,464 △1,156 |
13,755 △801 |
2,291 355 |
20.0 - |
調整額 |
売上高 営業利益 |
△20,795 442 |
△26,302 △2,598 |
△5,506 △3,041 |
- - |
連結損益計算書 計上額 |
売上高 営業利益 |
950,722 25,724 |
1,060,893 48,143 |
110,171 22,419 |
11.6 87.2 |
(注)上記の売上高のうち、調整額及び連結損益計算書計上額に記載の売上高以外の売上高については、セグメント間内部取引消去前の金額であります。
a. Staffing SBU
本セグメントは国内で事務領域を中心に幅広い業種に対応した人材派遣事業に加え、受託請負のBPO事業、事務職を中心とした人材紹介事業等を展開しています。
当連結会計年度における売上高は、575,743百万円(前連結会計年度比8.6%増)、営業利益は、39,359百万円(同35.1%増)となりました。
売上高は、人材派遣領域では、派遣稼働者数が前連結会計年度比で増加したこと等により増収となりました。BPO領域は、公共関連の案件を中心に、受注が引き続き好調に推移したことで増収に寄与しました。営業利益は、人材派遣領域の増収効果及び収益性の高いBPO領域の伸長により増益となりました。
b. Career SBU
本セグメントは、顧客企業の正社員の中途採用活動を支援する人材紹介事業、求人広告事業等を展開しています。
当連結会計年度における売上高は、75,279百万円(前連結会計年度比26.4%増)、営業利益は、7,264百万円(同2088.9%増)となりました。
売上高は、人材紹介事業及び求人広告事業において、企業の採用意欲の回復に加え、営業力を強化したことで増収となりました。営業利益は、需要の高まりに伴うマーケティング投資の実行や採用強化により販管費は増加しましたが、増収により大幅な増益となりました。
c. Professional Outsourcing SBU
本セグメントは、IT領域やエンジニアリング領域の製造・開発受託請負事業や技術者を専門とした人材派遣事業を展開しています。
当連結会計年度における売上高は、121,109百万円(前連結会計年度比7.1%増)となり、営業利益は、6,934百万円(同72.1%増)となりました。
売上高は、エンジニアリング領域において、製造業で開発等の需要が回復し、さらにIT領域も引き続き成長をした結果、増収となりました。営業利益はエンジニアリング領域の稼働率の回復及びIT領域の増収により、増益となりました。
d. Solution SBU
本セグメントは、人材採用、人材管理等のデジタルソリューションサービスの提供やインキュベーションプログラムを通じた新規事業の創出を行っております。
当連結会計年度における売上高は、11,169百万円(前連結会計年度比95.9%増)、営業損失は、3,058百万円(前連結会計年度は営業損失4,809百万円)となりました。
売上高は、企業の採用に対する需要の回復や販売促進の取り組みが奏功したこと等により、転職アプリ事業及びクラウドPOS事業が継続して成長した結果、増収となりました。利益面は、増収効果はありましたが、将来的な成長に向けた販売促進のための人員拡充等の投資を進めた結果、営業損失となりました
e. Asia Pacific SBU
本セグメントは、アジア地域で人材派遣事業及び人材紹介事業、豪州においてはStaffing事業及びMaintenance事業を展開しております。(アジア地域では主にPERSOLKELLY、豪州では主にProgrammedのブランドで事業を運営しております。)
当連結会計年度における売上高は、290,138百万円(前連結会計年度比15.4%増)、営業利益は、1,042百万円(前連結会計年度は営業損失2,235百万円)となりました。
売上高は、COVID-19の感染拡大による影響からの回復が進み、主要国であるシンガポールにおいて引き続き売上が堅調に推移したこと及び中国を中心とした人材紹介事業の売上が伸長したことに加え、豪ドル高の影響により増収となりました。利益面は、収益性の高い人材紹介事業の増収効果及び効率的な運営体制の構築を進めたことから営業黒字に転換しました。
なお、当社は、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)を適用しております。また、第3四半期連結会計期間より、国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外子会社において、IFRICアジェンダ決定「クラウド・コンピューティング契約におけるコンフィギュレーション又はカスタマイズのコスト(IAS第38号)」を踏まえ、前連結会計年度の該当数値を遡及適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (会計方針の変更)」をご参照下さい。
②生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループは、Staffing、Career、Professional Outsourcing、Solution、Asia Pacific等のセグメント区分にて国内及びAPAC地域において人材関連事業を行っており、提供するサービスの性質上、生産実績の記載に馴染まないため、省略しております。
b.受注実績
生産実績の記載と同様に、受注状況の記載に馴染まないため省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
売上高 (百万円) |
構成比 (%) |
前年同期比増減 (%) |
|
Staffing |
572,314 |
53.9 |
8.6 |
Career |
73,806 |
7.0 |
25.2 |
Professional Outsourcing |
107,959 |
10.2 |
4.9 |
Solution |
10,501 |
1.0 |
102.4 |
Asia Pacific |
290,136 |
27.3 |
15.4 |
全社及びその他の事業 |
6,175 |
0.6 |
16.6 |
合 計 |
1,060,893 |
100.0 |
11.5 |
(注)セグメント間の取引は、相殺消去しております。
(2)財政状態の分析
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ40,598百万円増加し、421,778百万円となりました。流動資産は49,953百万円増加し、286,897百万円となりました。これは主に、受取手形、売掛金、契約資産の合計(前連結会計年度においては受取手形及び売掛金)が35,784百万円、現金及び預金が24,384百万円、増加したことによるものであります。
固定資産は9,355百万円減少し、134,880百万円となりました。これは主に、のれんが5,077百万円及び投資有価証券が2,679百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ9,885百万円増加し、217,464百万円となりました。流動負債は22,315百万円増加し、167,893百万円となりました。これは主に1年内償還予定の社債が10,000百万円減少した一方、1年内返済予定の長期借入金が11,272百万円、未払金が8,220百万円及び未払法人税等が6,765百万円増加したことによるものであります。
固定負債は12,430百万円減少し、49,570百万円となりました。これは主に長期借入金が11,629百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ30,713百万円増加し、204,313百万円となりました。これは主に、剰余金の配当7,651百万円を行ったことや、親会社株主に帰属する当期純利益31,523百万円の計上等により、利益剰余金が24,077百万円、為替換算調整勘定が3,836百万円増加したことによるものであります。
以上の結果、財務指標としては、流動比率が前連結会計年度末の162.8%から170.9%に上昇し、自己資本比率が前連結会計年度末の40.8%から43.4%に上昇いたしました。
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
総資産当期純利益率(ROA) |
4.5% |
8.6% |
自己資本当期純利益率(ROE) |
10.1% |
18.6% |
売上高営業利益率 |
2.7% |
4.5% |
売上高経常利益率 |
3.0% |
4.7% |
流動比率 |
162.8% |
170.9% |
固定比率 |
92.7% |
73.7% |
自己資本比率 |
40.8% |
43.4% |
ROIC |
9.2% |
14.2% |
D/Eレシオ(有利子負債/自己資本) |
0.40 |
0.28 |
Net cash/EBITDA倍率 |
0.48 |
0.82 |
総資産 |
381,179百万円 |
421,778百万円 |
自己資本 |
155,564百万円 |
182,995百万円 |
投下資本 |
244,109百万円 |
269,323百万円 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
82,991百万円 |
106,558百万円 |
※国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外子会社において、第3四半期連結会計期間より、2021年4月に公表されたIFRS解釈指針委員会(IFRIC)によるアジェンダ決定「クラウド・コンピューティング契約におけるコンフィギュレーション又はカスタマイズのコスト(IAS第38号)」を踏まえ、会計方針を変更しました。これに伴い、前連結会計年度については、当該会計方針を遡って適用した後の指標等となっております。
(3)経営成績の分析
当連結会計年度における売上高は、1,060,893百万円と前連結会計年度に比べ110,171百万円の増収となりました。利益面では、売上総利益において、240,837百万円と前連結会計年度に比べ39,424百万円の増益、営業利益において、48,143百万円と前連結会計年度に比べ22,419百万円の増益、経常利益において、49,484百万円と前連結会計年度に比べ21,031百万円の増益、親会社株主に帰属する当期純利益においては31,523百万円と前連結会計年度に比べ16,182百万円の増益となりました。
① 売上高
売上高は、主力のStaffing SBUが堅調に推移したことに加え、Career SBUや他のSBUにおいてCOVID-19の影響を受けた前連結会計年度からの業績回復が進み、全てのSBUで増収となった結果、全体として11.6%の増収となりました。
② 売上総利益
売上総利益は、Staffing SBUでは収益性の高いBPO(Business Process Outsourcing)領域の伸長や、その他のSBUにおいてもCOVID-19禍からの需要の戻りによる売上の回復が進んだことで、全体として19.6%の増益となりました。
③ 営業利益
営業利益は、将来に向けたマーケティング投資や人員投資等を行ったものの、収益性の高いCareer SBUをはじめ全てのSBUで増益または赤字幅が縮小した結果、全体として87.2%の増益となりました。
④ 経常利益
経常利益は、営業利益の増加により73.9%の増益となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の増加に加え、固定資産の売却益や投資有価証券売却益といった特別利益も増加したことで、105.5%の増益となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ23,567百万円増加し、106,558百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度より13,887百万円増加し、50,692百万円となりました。これは主に、売上債権の増加額が28,855百万円、法人税等の支払額が12,542百万円となった一方、税金等調整前当期純利益が50,043百万円、減価償却費が12,150百万円、営業債務の増加額が7,367百万円、のれん償却額が6,856百万円となったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度より6,130百万円減少し、7,057百万円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出が8,383百万円、有形固定資産の取得による支出が2,604百万円となったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度より3,172百万円増加し、21,145百万円となりました。これは主に、社債の償還による支出が10,000百万円、配当金の支払額が7,651百万円となったことによるものであります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(6)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の主な運転資金需要は、派遣スタッフ及び従業員に対する給与支払いであります。事業構造上、現金及び現金同等物が資産の中で占める割合が高くなっております。短期運転資金は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保する基本方針を踏まえて、事業収益から得られる自己資金を基本としており、特に多額の資金が必要となる企業買収等については、安定した財務基盤を活かし、銀行借入、社債発行など最適な資金調達手段を通じて行うことを基本としております。なお、当連結会計年度における現金及び預金の残高は107,545百万円、有利子負債の残高は、51,466百万円となっております。また、有利子負債の残高のうち、シンジケートローンを含む協調融資による借入額は、総額35,713百万円となっております。
(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大により、足元の業績に影響が生じております。固定資産の減損及び税効果会計等におきましては、今後、2023年3月期の一定期間にわたって当該影響が継続すると仮定し、会計上の見積りを行っております。
(8)経営者の問題認識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当社は、2022年2月14日開催の取締役会において、当社の100%連結子会社であるPERSOL Asia Pacific Pte.
Ltd.がPERSOLKELLY PTE. LTD.の株式を追加取得することについて決議し、同日付で株式譲受契約を締結いたしました。株式の追加取得日は2022年3月1日です。
詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。