第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社グループは、創業以来、「天然資源の少ない日本で資源の有効利用を透明性の高い所で行う」を経営方針としております。当社グループは、日本のみならず世界中で発生した金属リサイクル原料を社会の大事な再利用可能な資源と捉え、金属のリサイクルを通じて低炭素化社会・循環型社会の実現に向け、社会的責任を果たせる企業グループを目指します。

 

(2) 経営戦略等

当社グループは、非鉄金属事業につきましては、非鉄金属のリサイクルをコアビジネスとし、その競争力を高めるためさまざまな施策に取り組んでいます。環境に配慮した資源需要は世界的に高まっており、当社グループは金属資源の有効活用を推し進め、金属リサイクル原料に付加価値を生み出し、社会に貢献していくことを重要な経営戦略と位置づけています。

美術工芸事業に関しましては、長期的に安定的利益を確保できるように、企画提案力、製造技術力のより一層の強化を図ってまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、企業価値の向上及び財務体質の強化を図るため、具体的な数値目標は設定しておりませんが、自己資本比率、自己資本利益率、有利子負債比率を重要な経営指標としております。

 

(4) 経営環境

現在、地球温暖化や環境破壊等が世界中で起きており、カーボンニュートラルの実現に向け、各国では今まで以上に循環型社会や脱炭素化社会が志向されています。また、環境に配慮した電気自動車の普及もAIの活用拡大により進み、銅の需要は今後ますます高まっていくと想定されます。このように、当社グループを取り巻く事業環境は、リサイクル事業への関心の高まりの中で金属需要も趨勢的に増加していく状況にあります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①優秀な人材の確保

当社グループは、非鉄金属リサイクル原料を世界及び日本全国から集荷し、それを原材料として各種インゴットを製造し販売している事業と、集荷したリサイクル原料を選別・加工し販売する事業を主に行っており、あらゆる産業分野の基幹素材としての幅広いニーズに応えております。近年の多種多様な合金開発、市況の変化や営業戦略の多様化など当社グループを取り巻く環境の変化に迅速に対応していくためには、海外営業や商品市場取引等に精通した人材確保が必要であります。

そのために、採用制度の多様化を図り、中途採用と新卒採用の併用を行い、海外人材の採用強化も行っています。入社後の研修制度には、英語・中国語のメニューも加え整備をすすめており、人材育成制度の強化を行います。また、公平な人事制度の確立を目指すとともに、魅力ある職場作りの一環として福利厚生制度の充実も図っています。

②海外市場への進出

我が国においては、ここ数年において工場の海外移転が進み、加えて、少子高齢化の進行で、金属リサイクル原料市場の今後の大きな拡大が見込めない環境となっております。

一方、新興国をはじめとした海外では、今後の成長が期待できる市場が数多くあり、当社グループの成長には、海外戦略が重要であると考えております。

以上のことから、当社グループでは、まず2012年7月に世界最大の市場である米国に当社初の海外拠点を設立し、2014年8月には東南アジアの拠点としてタイで現地企業との合弁会社を設立し、海外での営業基盤を構築いたしました。今後も引き続き海外での業容拡大を目指してまいります。

③リスク管理体制の強化

当社グループの取り扱っている製・商品は、非鉄金属相場や為替相場等市場の変動に大きく影響を受けます。特に、近年の新興国等のインフラ整備拡大の影響による非鉄金属需要の増大に加え、主要国金融政策の変化に伴う投機資金の流出入もあって、非鉄金属価格や為替相場の変動率は高まっております。また海外需要の高まりや、国内でのリサイクル原料の発生量及び流通量が減少傾向にあることで輸出入取引も増加傾向が見込まれます。

このように、当社グループを取り巻く状況は大きく変化してきており、特に市場リスクの管理が重要になっております。

このため、ロンドン金属取引所(LME)での先物取引や為替予約取引等によるヘッジ手段の多様化、情報収集能力の強化を図り、また市場関連知識を持った人材の採用や育成を行うことによって、市場リスクの管理能力を高めていきます。

また、海外子会社及び海外関連会社を有していることから、海外拠点の管理体制の整備、強化も行っていきます。

④事業分野の拡大

当社グループは、銅系商品を中心とした製品を中心に事業展開を行っておりますが、更なる業容拡大のためには、銅系以外の分野の強化が必要であります。具体的には、「都市鉱山」といわれている事業分野である、パソコンや携帯電話等の電子機器に含まれる貴金属の回収・リサイクルに力を入れていくほか、鉄やレアメタルといった分野においても国内・海外を問わず経営資源を投入していきたいと考えています。その実現のために、銅系以外の分野に強い人材の育成や当該分野に強い業者との関係強化を目指します。

また、美術工芸事業では、販路拡大のためキャラクター商品を用いた金製品の開発をはじめとした企画型営業に取り組み、企画から製造引き渡しまでの一貫体制をとっております。精密鋳造技術による原型に忠実な再現力と金工技術による最終仕上げの完成度の高さやEC取引を活用してビジネスチャンスの拡大に努めております。当社グループ全体における美術工芸事業のシェアは非常に小さいものではありますが、今後も、市場・顧客に対し存在感のある製品を提供し、更なる事業拡大に努めていく予定です。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題に適切に対応することは経営の重要な責務の1つであると捉えております。また、当社グループの事業そのものが銅を中心とした金属資源のリサイクルを柱とするものであり、「環境にやさしい循環型社会の実現」に資するものと考えております。

(1)ガバナンス

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、サスナビリティへの対応が重要な経営課題であるとの認識の下、株主はもとより、従業員、取引先、地域社会等、企業をとりまくステークホルダーとの協働を実践するために「企業行動規範」を定め、さまざまなステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に努めております。

また、法令遵守、積極的な情報開示、ワーク・ライフ・バランスの取れた労働環境の整備など、さまざまな社会問題に適切に対応するとともに、環境問題についても、ISO14001を取得するなど環境マネジメントシステムを推進し対応しております。

このほか、当社取締役会等において、人的資本投資をはじめとする経営資源の配分や事業戦略の実行がサステナビリティの観点から実効性を有するものであるか、監督しております。

 

(2)戦略

(サステナビリティ全般)

当社グループは、気候変動に伴う自然環境の変化を取り組むべき重要な社会課題と捉えており、リスク及び機会に対処するための具体的な取り組みを検討してまいります。

(人的資本及び多様性)

当社の人的資本の取り組みとしては、当社の事業活動の多様性を高めるため、管理職の中途採用および外国人の採用等を積極的に行っております。

 

(3)リスク管理

当社グループは、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題に適切に対応することは、重要なリスク管理の一部であるという認識の下、ISOで定める各種認証の取得、バーゼル条約に基づく貿易取引の実施、始業・終業時間の弾力化等働きやすい労働環境の整備、社員の健康維持に関する啓蒙活動の推進など、社会・環境への対応を意識したさまざまな取り組みを実践しております。

 

(4)指標及び目標

(サステナビリティ全般)

当社グループは、気候変動問題への対応として、二酸化炭素排出量などについて具体的な削減目標を定めることを検討してまいります。

(人的資本及び多様性)

当社は、専門的分野の業務においては社内教育による人材確保を進めつつも、中途採用の管理職を積極的に登用しております。現状の管理職登用者に占める中途採用者の割合は約41%であり、今後も当該水準程度は維持する予定としております。また女性の管理職の登用についても、ここ数年で積極的に取り組みを進め、徐々に上位の職位への登用を推し進めております。現状の管理職登用者に占める女性の割合は約4%ですが、今後も少なくとも当該水準は維持しつつ、さらなる増加についても検討を重ねていく予定としております。

外国人については、現状では管理職の登用はありませんが、今後は能力、知見、人格等が優れていれば国籍等に関係なく多様な人材を登用してまいりたいと考えております。

なお、上記「(2)戦略」における「人的資本及び多様性」の記載に関しては、当社においては具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われておらず、当社グループとしての記載が困難であるため、「(4)指標及び目標」の記載においても、提出会社である当社のものを記載しております。

 

 

3【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 原材料の調達について

当社グループは、原材料を国内外の複数の調達先を確保することで安定的な調達を行うよう努めています。しかしながら、市況環境の大幅な変化による発生量や流通量の減少から市場の需給環境が引き締まった結果、適正価格での調達難、調達不足からの大幅な仕入価格の上昇、生産活動への支障が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

 

(2) 顧客が属する業界の需要動向について

当社グループの製品の主要な顧客は、造船業界、住宅販売、設備関連産業に属しています。したがって、当社グループの製品は、上記業界の非鉄金属に対する需要動向に大きく影響される可能性があります。今後何らかの要因で非鉄金属に対する需要が落ち込んだ場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 特定の販売先への集中

2024年8月期において、当社グループの売上高に占めるナカシマプロペラ株式会社の売上高比率は10.1%、住友金属鉱山株式会社の売上高比率は10.0%であります。

当該会社とは長期的な取引関係を継続しておりますが、何らかの理由により、取引関係の解消又は契約内容の大幅な変更等があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 非鉄金属相場、為替相場の変動等

当社グループの取扱い品目の価格は、毎日の非鉄金属相場や為替相場の影響を強く受けます。そのため価格変動リスク及び為替変動リスクのマネジメントは当社グループにとって非常に重要であります。

①非鉄金属相場の影響

海外取引(仕入及び販売)は、ロンドン金属取引所(LME)の価格を基準として刻々と変化します。国内取引(仕入及び販売)は、国内建値(ロンドン金属取引所(LME)×TTS+諸費用)を基準として日々変化します。取引先との価格の決定方法としては、当月平均、前月平均、固定価格等、様々な決め方はありますが、LME価格は、それら全ての基準となっております。また製品及び原材料等については、それらの非鉄金属相場等で変動する直近月の平均販売単価や平均再調達単価等を時価として評価を実施します。これらのことから、非鉄金属相場の変動による利鞘の変動リスクや原材料等の在庫評価額の変動リスクが存在し、業績に影響を与える可能性があります。特に近年は、商品市場への投機資金の流入により価格の変動率は大幅に高まっており、リスク量は増大しております。このためロンドン金属取引所(LME)先物等によるリスクヘッジを行っていますが、これにより当該リスクを完全に回避できる保証はなく、当社グループの業績が大きな影響を受ける可能性があります。

②為替相場の影響

当社グループでは、主にドル建てによる国際間取引の割合が高いため、為替変動の影響を受けます。このため為替予約等によるリスクヘッジを行っていますが、これにより当該リスクを完全に回避できる保証はなく、当社グループの業績が大きな影響を受ける可能性があります。

(注)TTS:対顧客電信売相場

 

 

-ご参考-

2019年9月から2024年8月までのロンドン金属取引所銅相場(LME銅キャッシュ月中平均)及び為替相場

(TTM月中平均)は下記の通りであります。

(注)TTM:電信中値相場

 

2019.9~2020.8

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

LME銅キャッシュ

単位:ドル/MT

5,745

5,743

5,860

6,062

6,049

5,686

5,179

5,048

5,234

5,742

6,354

6,497

為替相場(ドル・円)

単位:円

107.45

108.15

108.90

109.24

109.39

109.98

107.41

107.96

107.35

107.55

106.84

106.05

 

2020.9~2021.8

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

LME銅キャッシュ

単位:ドル/MT

6,712

6,703

7,063

7,755

7,970

8,460

9,005

9,336

10,184

9,612

9,434

9,357

為替相場(ドル・円)

単位:円

105.76

105.27

104.41

103.84

103.69

105.37

108.63

109.14

109.20

110.13

110.31

109.85

 

2021.9~2022.8

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

LME銅キャッシュ

単位:ドル/MT

9,324

9,779

9,765

9,550

9,776

9,941

10,238

10,183

9,363

9,033

7,530

7,961

為替相場(ドル・円)

単位:円

110.17

113.11

114.14

113.88

114.85

115.22

118.53

125.98

128.81

133.93

136.79

135.24

 

2022.9~2023.8

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

LME銅キャッシュ

単位:ドル/MT

7,735

7,621

8,030

8,367

9,000

8,955

8,836

8,814

8,234

8,386

8,445

8,352

為替相場(ドル・円)

単位:円

143.09

147.19

142.48

135.09

130.35

132.75

133.92

133.40

137.43

141.27

141.30

144.84

 

2023.9~2024.8

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

LME銅キャッシュ

単位:ドル/MT

8,271

7,940

8,174

8,394

8,344

8,311

8,676

9,482

10,129

9,642

9,394

8,964

為替相場(ドル・円)

単位:円

147.73

149.60

149.95

144.13

146.65

149.50

149.67

153.51

156.25

157.89

158.16

146.44

(データ出典 LME銅:ロンドン金属取引所  為替相場:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

 

(5) 有利子負債

2024年8月期末において、当社グループの有利子負債は127億88百万円、総資産に対する割合は47.6%となっております。当社グループは、財務体質の改善に努力いたしておりますが、今後の金利動向が当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(6) 法的規制について

当社グループは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」という。)に基づいて、産業廃棄物保管基準に則った保管を行い、産業廃棄物処理業者に収集運搬及び処理を委託しています。廃棄物処理法における(不適切な産業廃棄物の保管、委託処理に係る契約書の未作成、マニフェスト虚偽記載等)一定の要件に抵触した場合、行政処分等がなされる可能性があり、当社グループの風評、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

また、国内事業所において、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律などの環境関連法令に基づき、大気、排水、土壌等の汚染防止に努めておりますが、関連諸法令の改正・強化によって、当社グループにおいて新たな管理費用・処理費用負担が求められる可能性があります。

さらに、当社グループが製造、販売する一部の製品には、製造過程で毒物及び劇物取締法の対象となる薬品が使用されております。その管理については、法令を遵守するとともに当社グループの環境マネジメントマニュアルに従い、廃液流出や盗難、労災事故等への対応を行っておりますが、万が一、使用、保管上の不測の事態の発生や天災、火災等の事故があった場合、環境汚染を招く可能性があり、当社グループの風評、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) カントリーリスク

当社グループは、多国間取引の割合が高いことから、取引先各国の経済情勢に加え、貿易・通商規制、税制、予期しない法律又は規制の変更並びにそれらの解釈の相違等により、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

(8) 設備事故等

当社グループは、多くの生産設備等を有しており、運転・保守管理と設備安全化の両面から労働災害及び生産設備等の事故防止の徹底を図っておりますが、万が一、重大な労働災害や設備事故等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

 

(9) テロ、戦争、事故、地震など自然災害について

当社グループは、北陸地区における大規模な自然災害や、当社グループの製造施設における事故等が発生した場合、製造設備等への損害、生産活動の停止、取引先や製造施設近隣住民への補償等により、当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。また、当社グループの主要取引先の地域での地震等の大規模な自然災害で、主要取引先の生産活動が停止した場合や広いエリアでの災害のため、経済全体が大きく減速した場合にも営業活動(仕入及び販売)が困難になることで当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。

非鉄金属の鉱山が多い地域での地震、テロ、戦争などが起こった場合も、非鉄金属の供給及び価格に大きく影響を及ぼすことから、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(10) システム障害等

当社グループは、業務処理の基盤をコンピュータシステム及びその通信ネットワークに多く依存していることに加え、近年のリモートワーク拡大により、システム障害等の発生に係る重要性は一段と高いものとして認識しております。またシステムのメンテナンス等の一部はクラウドシステム業者を含む外部業者に委託しております。そのため、不測の事態に対しては、当社グループは障害発生時の体制整備、システムセキュリティの強化、通信回線やハードウェアの増強等、様々な対策を講じておりますが、これらの対策にもかかわらず、人為的過誤、サイバー攻撃、広範な自然災害や外部業者のトラブル等により、コンピュータシステムや通信ネットワークが利用できなくなることにより、当社グループの業務が停止する可能性があり、かかる状況が長期にわたる場合、当社グループに対する信頼性の低下を招く等の重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く外部環境は、各国の高い金利水準継続による景気減速懸念を

持ちながらも米国を中心に景気を維持し、中国は低調なままで推移しました。

 このような外部環境のなか、当社グループの主力取扱商品である銅の価格は5月にロンドン金属取引所銅Cash

価格平均で10,129ドル、銅建値は1,750円/㎏と過去最高値を更新した後、8月末には9,215ドル、銅建値は1,370

円/㎏へと急落するなど混乱した環境となりました。

通期では銅価格は、ロンドン金属取引所銅価格期中平均で前年度比4.9%高、為替相場は8.8%ドル高に推移したことにより、期中平均円ベース価格では14.2%高となりました。

 また、販売数量はインゴットでは12.5%、リサイクル原料では12.2%減少したことにより、全体では前年度

12.3%の減少となりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は820億70百万円(前連結会計年度比2.9%減)、営業利益14億50百万円(同172.1%増)、経常利益10億37百万円(同355.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5億32百万円(同212.7%増)となりました。

セグメントの業績は次のとおりであります。

(非鉄金属事業)

非鉄金属事業の主力取扱製品に影響を与えるロンドン金属取引所銅期中平均円ベースCash価格が前年度比14.2%高く推移したものの、インゴット並びにリサイクル原料の販売量が前年度比12.3%減少したことから当連結会計年度の売上高は815億33百万円(前連結会計年度比3.1%減)となりました。

 品目別では、インゴット売上高は278億58百万円(前連結会計年度比2百万円増)、リサイクル原料売上高は535

億63百万円(同4.7%減)、その他売上高は1億12百万円(同5.7%増)となりました。

(美術工芸事業)

美術工芸事業は、新型コロナウイルス感染症の位置づけも変更となり工芸品の需要が回復して、当連結会計年度の売上高は5億36百万円(前連結会計年度比35.6%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は15億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億71百万円増加いたしました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は8億27百万円(前年は15億98百万円の収入)となりました。これは主に売上債権の増加17億35百万円、前渡金の増加4億1百万円などの支出に対し、税金等調整前当期純利益9億45百万円、棚卸資産の減少14億11百万円、仕入債務の増加6億15百万円などの収入が発生したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は2億6百万円(前年は57百万円の収入)となりました。これは主に定期預金の払戻による収入2億39百万円などの収入に対し、有形固定資産の取得による支出2億67百万円、関係会社貸付金による支出1億19百万円などが発生したことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は1億72百万円(前年は13億84百万円の支出)となりました。これは長期借入金の借入14億円の収入に対し、短期借入金の純減額1億円、長期借入金の返済11億89百万円、配当金の支払2億82百万円などの支出が発生したことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

品目別

当連結会計年度

(自 2023年9月1日

  至 2024年8月31日)

前年同期比(%)

非鉄金属事業(千円)

インゴット

27,858,204

100.0

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.リサイクル原料については、選別、プレスといった加工作業を主としており、生産実績がないため記載を省略しております。

3.美術工芸事業については、記載を省略しております。

 

b.受注実績

非鉄金属事業は受注生産と見込生産を併用しており、両者を明確に区別することが困難であること、また、非鉄金属相場等の市況は日々変動し期末日時点における受注高及び受注残高を合理的に算定することが困難であることから、記載を省略しております。

また、美術工芸事業については、受注生産と見込生産の明確な区分が困難であることから、記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年9月1日

  至 2024年8月31日)

前年同期比(%)

非鉄金属事業(千円)

81,533,599

96.8

美術工芸事業(千円)

536,544

135.6

合計(千円)

82,070,144

97.0

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年9月1日

  至 2023年8月31日)

当連結会計年度

(自 2023年9月1日

  至 2024年8月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

ナカシマプロペラ株式会社

-

-

8,278,551

10.1

住友金属鉱山株式会社

17,303,679

20.5

8,227,739

10.0

3.前連結会計年度においてナカシマプロペラ株式会社は、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は820億70百万円(前年度比2.9%減)、売上総利益31億20百万円(同49.3%増)、売上総利益率3.8%(同1.3ポイント増加)と、売上高は前年を下回ったものの、利益面では大きく前年を上回りました。また、販売費及び一般管理費は前年度比7.2%増となりましたが、営業利益14億50百万円(同172.1%増)、経常利益10億37百万円(同355.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5億32百万円(同212.7%増)となりました。

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、インゴット売上高は278億58百万円(前連結会計年度比2百万円増)、リサイクル原料売上高は535億63百万円(同4.7%減)、美術工芸事業売上高は5億36百万円(前連結会計年度比35.6%増)、その他売上高は1億12百万円(同5.7%増)となり、売上高合計では820億70百万円(前連結会計年度比2.9%減)となりました。

主な変動要因は、次のとおりであります。

非鉄金属事業では、インゴット売上高につきましては、給水設備関連は受注環境の悪化から販売数量は減少したものの、造船関連では受注環境の改善から販売数量は増加し、また販売価格上昇の影響により全体では前年度比2百万円の増収となりました。一方、リサイクル原料売上高につきましては、製錬会社向け故銅は横ばいにて推移したものの、上物は銅管関連などの受注環境が悪化したことから、前年度比4.7%の減収となりました。

一方、美術工芸事業では、新型コロナウイルス感染症の位置づけも変更となり工芸品の需要が回復して、当連結会計年度の売上高は前年度比35.6%の増収となりました。

(売上総利益)

売上総利益は、非鉄金属事業では、銅相場は期初より第3四半期まで上昇傾向が続いたため利鞘が拡大し増益となり、美術工芸事業では、利益率が改善したため増益となりました。この結果、前年度比49.3%増の31億20百万円となりました。また、売上総利益率も3.8%と前年度比1.3ポイント増加となりました。

(営業利益)

売上総利益の大幅増加に比較し販売費及び一般管理費が16億70百万円(前年度比7.2%増)と増加額が抑えられたことにより、営業利益は14億50百万円(同172.1%増)となりました。

(営業外収益及び費用)

営業外収益は、受取配当金9百万円、有価証券利息8百万円等により25百万円(前年度比50.8%減)となりました。

一方、営業外費用は、持分法による投資損失2億81百万円、支払利息95百万円(前年度比25.0%減)、為替差損59百万円(同65.9%減)等により4億38百万円(同22.8%増)となりました。

(経常利益)

営業利益に営業外収益及び費用を加減し、10億37百万円の経常利益(前年度比355.9%増)となりました。

(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)

課税所得の増加により、法人税、住民税及び事業税は4億41百万円(前年度比364.8%増)、法人税等調整額は△28百万円(前年度は△5百万円)となり、税金費用は4億12百万円(前年度比359.4%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は5億32百万円(前年度比212.7%増)となりました。

 

目標とする経営指標について

当社グループは、企業価値の向上及び財務体質の強化を図るため、自己資本比率、自己資本利益率、有利子負債比率を重要な経営指標としております。

今期の実績は、下表の通りとなりました。

経営指標

前連結会計年度

(2023年8月31日)

当連結会計年度

(2024年8月31日)

前年同期比

自己資本比率

36.3%

35.6%

△0.7%

自己資本利益率

1.9%

5.6%

3.7%

有利子負債比率

139.4%

134.9%

△4.6%

 

②経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因といたしましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク(4) 非鉄金属相場、為替相場の変動等」に記載のとおり、当社グループの取扱い品目が、日々の非鉄金属相場や為替相場の影響を強く受けるため、これら二つの市場の相場変動により大きな影響を受ける可能性があります。

 

③資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資金調達としては、運転資金に関しては、手許資金(利益等の内部留保金)及び長期借入金による調達を基本とし、不足が生じる場合には調達コストも考慮し、短期借入金による調達で賄っております。設備資金に関しては、手許流動性資金を勘案の上、不足が生じる場合には、長期借入金による調達で賄っております。ただし、設備資金の不足が生じる期間が短期間である場合には、短期借入金による調達で賄っております。

長期資金の調達に際しては、金利動向を注視し、株式の発行に関しては、資本政策に基づき、株式価値の希薄化や配当金の負担等を考慮して実施しております。

資金の流動性については、利益の確保に加え、棚卸資産管理及び売掛債権の管理を行うことにより、営業活動によるキャッシュ・フローの安定的確保に努めております。

 

④財政状態の分析

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は234億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億65百万円増加いたしました。その主な要因といたしましては、棚卸資産が14億11百万円減少した一方で、売上債権が18億39百万円、前渡金が4億1百万円、未収消費税等が4億81百万円増加したことによるものであります。固定資産は31億90百万円となり、前連結会計年度末に比べ21百万円減少いたしました。その主な要因といたしましては、投資有価証券が1億72百万円減少したことによるものであります。この結果、総資産は266億11百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億44百万円増加いたしました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は149億円となり、前連結会計年度末に比べ11億27百万円増加いたしました。その主な要因といたしましては、仕入債務が7億15百万円、未払法人税等が4億4百万円増加したことによるものであります。固定負債は22億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ30百万円増加いたしました。その主な要因といたしましては、長期借入金が37百万円増加したことによるものであります。

この結果、負債合計は171億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億58百万円増加いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は94億82百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億85百万円増加いたしました。その主な要因といたしましては、利益剰余金が2億50百万円、その他有価証券評価差額金が81百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は35.6%(前連結会計年度末は36.3%)となりました。

 

⑤キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により獲得した資金8億27百万円を投資活動による資金として2億6百万円、財務活動による資金として1億72百万円使用した結果、前連結会計年度末に比べ4億71百万円増加し、当連結会計年度末の資金残高は15億33百万円となりました。なお、各キャッシュ・フローの増減要因につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

⑥重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に従って作成されております。当社グループは、連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の決算数値及び偶発債務の開示並びに連結会計期間における収益・費用の決算数値に影響を与える見積りを、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づいて行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、当社グループは、特に以下の重要な会計方針に関して、使用される当社グループの重要な判断、見積りが当社グループの連結財務諸表の作成において大きな影響を及ぼすと考えております。

(棚卸資産の評価減)

当社グループは、棚卸資産の市場需要に基づく将来の消費見込み又は販売見込み並びに市場状況に基づく時価の見積額を測定し、棚卸資産が将来に獲得可能なキャッシュ・フローを見積り、必要な評価減を計上しております。具体的には製品及び原材料等の評価は非鉄金属相場等で変動する直近月の平均販売単価や平均再調達単価等を時価とした評価を実施しており、実際の市場における将来需要又は時価が当社グループの見積りより悪化した場合、期末に計上した評価減を超える損失が発生する可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは循環型社会に対応していくため、既存事業の領域拡大を目指した活動を今後も事業の中心としていくべく研究開発を進めております。具体的にはインゴットでは銅を主体とした銅合金の研究開発、リサイクル原料ではレアメタルリサイクル技術の研究開発、その他これらに付帯する研究開発等であります。

当連結会計年度においては、非鉄金属事業にて、銅合金中の微量貴金属の定量方法を確立することを目的に、大学と共同研究を進めております。当連結会計年度における研究開発費の総額は3,662千円であります。

このほかの活動としては、取引先の新商品開発のための鋳造試験や成分分析などによる協力が中心であり、自社グループにおいては一部実験等を行ってはいるものの、関連情報の収集・調査が主体であるため、研究開発費は発生しておりません。