当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、第二創業にあたり、「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念と定め、二つの使命を果たすべく事業展開を行ってまいります。
・第一の使命は、日常生活の基本商品群を誠実な品質と倫理的な視点から開発し、使うことで社会を良くする商品を、手に取りやすい価格で提供することです。 ・第二の使命は、店舗は各地域のコミュニティセンターとしての役割を持ち、地域の皆さまと課題や価値観を共有し、共に地域課題に取り組み、地域への良いインパクトを実現することです。 |
これらの企業理念の下、当社グループの事業展開を通じて資源循環型・自然共生型の社会、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(2)経営環境
当連結会計年度におきましては、世界的な資源価格の高騰や金融引き締めに伴う海外景気の下振れにより、依然として国内外における経済の先行きは不透明な状態が続いています。また、円安の進行や原材料価格、エネルギーコストの上昇に伴う生活必需品の値上げも相次いでおり、消費者の節約志向が一層強まっています。
(3)優先的に対処すべき事業上、財務上の課題
「社会や人の役に立つ」という根本方針のもと、社員および事業関係者一人ひとりが、社会全体や地球でいま起きている課題に敏感に呼応し、提供するすべての商品、サービス、活動の全ライフサイクルにわたり、地球環境負荷低減や個人尊重に努めてまいります。
また、100年後のより良い未来を見据えて、2030年までのビジョンを策定しました。個店を通じて、日常生活の基本を担うと共に、地域社会と共生し課題解決や町づくりに貢献してまいります。
当社グループが2030年の姿を目指すにあたり、以下の4つの重点項目を掲げ、基礎固めを進めました。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、一定の前提条件の下で当社グループが判断したもので、様々な要因で大きく異なる可能性があります。
◇サステナビリティ全般
当社は、1980年の「無印良品」誕生当時から、社会全体の課題と向き合ってきました。「社会や人の役に立つ」という根本方針を掲げ、3つの視点「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」で、ものづくりを行っています。この視点は、現在でいうESG経営やサステナビリティの先駆けであると捉えています。
また、オーナーシップをもった社員を事業活動の主役に据え、地域に根差した個々の店舗の活動や個々の社員や事業関係者の活動が公益に寄与する「公益人本主義経営」を実践しています。
当社は、2030年ESG経営のトップランナーを目指しており、提供する商品やサービス、様々な活動を通して、資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現に貢献します。
(1) ガバナンス
当社はサステナビリティへの対応を経営の重要課題の1つとして捉え、取締役会による監督とESG推進委員会を中心とするガバナンス体制を構築しています。取締役会は、サステナビリティやESG経営に関わる取り組みに関して、年2回以上、ESG推進委員会の事務局である経営企画部より報告を受け、進捗や目標達成の状況を監督し、方針や取り組みについて審議、指導を行っています。当社の取締役会は、代表取締役社長が議長を務め、サステナビリティ推進に対し的確な監督・助言をするためにサステナビリティ及びダイバーシティに関する知識・経験・能力を有する構成になっています。
サステナビリティにかかわる事象についての審議・検討は、代表取締役社長が議長を務める「経営執行会議」のほか、「コンプライアンス・リスク管理委員会」及び「ESG推進委員会」にて行われています。
「ESG推進委員会」は代表取締役会長を議長とし、代表取締役社長、社内取締役、執行役員を含むメンバーで構成され、毎月開催しています。「ESG推進委員会」では、当社の重要課題を解決し、ESG経営を推進するための各施策について進捗を確認し、ボトルネックについて担当部署と経営陣が議論することで、各取り組みを加速しています。「コンプライアンス・リスク管理委員会」では、取締役会の監督・指導の下、リスク管理部門管掌役員を委員長として配置し、コンプライアンス及び各種リスクに関する情報収集及び重要課題の審議や進捗確認をしています。なお「経営執行会議」、「ESG推進委員会」及び「コンプライアンス・リスク管理委員会」で議論した内容は、取締役会において報告・審議・承認され、戦略リスク・機会を踏まえ、事業戦略や経営方針に生かされています。
また、当社にとって最大の資本は「人財」であり、さまざまな従業員が自らの夢の実現に対する情熱と志を持って、地域や店舗で主体的に考え、自律的、自発的に行動することを大切にしています。そのためにも多文化共生社会の実現や、多様な人財が柔軟に働ける環境整備が不可欠と考え、人事管掌役員を議長とした「ダイバーシティ委員会」を設置し、毎月開催しています。人事部門だけでなく、所属する従業員の人数が最も多い営業部門や、経営企画部門をはじめとする関連部門の執行役員、部課長、そして選任された従業員から構成されており、半数以上が女性です。従業員の働きやすさや働きがいに関するヒアリングと、現状に対する施策について議論し、「経営執行会議」や「ESG推進委員会」にて経営陣に報告しています。
なお、サステナビリティの取り組みや目標達成に対する経営責任を明確にするため、役員報酬(非金銭報酬)にESG評価を組み込んでいます。当社の社外取締役を除く取締役に付与する非金銭報酬は、長期的な視野で重要なESG等の指標の達成度により、役位別基礎額の30%~100%に付与数を変動させる退任直後時点までの譲渡制限が付された株式の付与を行います。報酬諮問委員会で審議を行い、取締役会への答申をしたうえで決定いたします。
当事業年度のESG評価係数は75%となりました。なお総評、当事業年度において評価した取り組み、今後に向けた改善事項は以下のとおりです。
総評:
・ESG経営に関して、経営陣が自分事となり、ESGの注力領域や実行テーマなどが明確になった。また独自のESG指標が設定され、メリハリのあるESG経営を推進するための基盤が整った。全社として、事業やチームを横断しESG経営を推進していく機運が醸成されてきた。
・一方で、社会に対してのインパクトある取り組みの実現については道半ばである。また、企業としてのESGイメージは比較的良いが、外部のESG評価機関のスコアを踏まえると、国内外の同業他社との比較において、トップランナーの一角にはなれていない。
・昨年の実績と比較した際、大幅な進捗が見られているため、次事業年度の活動に期待するものとする。
当事業年度において評価した取り組み:
・当社が取り組むESGの独自指標が全社レベルで策定され、部門ごとにもESGの注力領域が明確に設定された。これにより、進捗を定量的に図ることが可能となった。
・資源循環について、循環を前提としたモノマテリアルな商品の開発から、回収の仕組みの構築(店舗のオペレーション強化、お客様の認知・協力、推進組織の設置等)まで、一連の取り組みを開始した。
・公益人本主義経営の実現に向けたステークホルダーとの対話の機会が着実に前進した(「タウンミーティング」の開催、「ファンミーティング」の増加、社内有志によるESGの学びと対話を進める「Team ESG」の発足など」)。
・中国大陸でもESG目標が設定され進捗を定量的に図ることが可能になり、その実現に向けたESGの取り組みが加速した。
・CO2排出量削減の取り組み(物流効率化によるCO2削減、単独店における太陽光発電設備の設置増、テナント店のCO2排出量の削減方針の検討等)が進んだ。
・上記の主な取り組みの結果、ESG評価機関からの評価も向上した。
今後に向けた改善事項:
・ESGのトップランナーに向けて、役員がさらなるリーダーシップを発揮し、体制を整え、全社員でドライブしていくこと。
・各部門で設定したESG目標の内容だけでなく、その背景や意図も従業員が理解し、理解度に偏りがない状態にすること。
・当社が独自で進めるESGの取り組みにおいて、社会に対してインパクトのある取り組みへと昇華すること。
・ダイバーシティに向けた取り組みは発展途上。特に女性活躍推進に向けた、より一層の改善をすすめること。
・ESG評価機関の評価向上。
なお2025年8月期におけるESG評価の目標は、「事業・組織面共に良品計画ならではのESG取り組みが始まっている。投資家や生活者など様々なステークホルダーとの対話も進み、各所で共創や協働が加速。CO2削減に向けた歩みを本格的にスタートし、TNFDなどの情報開示を進めることでESG企業の一角となる。」としています。
役員報酬の種類や割合、ESG推進の評価プロセス等については「
(2) 戦略
当社は、衣服・雑貨、生活雑貨、食品と幅広い商品領域を持ち、その全てにおいて、豊かな自然資源に深く依存しています。地球環境を保全し、地域社会の営みを継続・発展させることが企業理念で掲げる「感じよい暮らしと社会の実現」に不可欠と認識しています。
そこで、2021年7月に発表した中期経営計画において「2030年ESG経営のトップランナー」を掲げ、4つの重要課題を設定し、それぞれの課題に応じた全社横断ESGプロジェクトを推進しています。具体的には、資源循環の取り組みや気候変動、生物多様性を考慮した商品開発や、人権尊重のための取り組みや従業員エンゲージメントの向上など、方針を明確にした上で、各種取り組みを加速しています。なお2024年1月には、市場・経営状況の変化を鑑み、重要課題の一部を以下の通り見直しました。
良品計画の「重要課題」
1.資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現
2.地域課題解決と地域活性化の実現
3.多様な個人一人ひとりが主役となる企業活動の実現
4.公益人本主義経営に則したガバナンスの実現
(3) リスク管理
当社は、ESG経営を推進するため、直面する可能性のある主要なリスク・機会を国内外の法令違反に関する「コンプライアンス・リスク」、情報漏洩やサプライチェーンに関わる「オペレーションリスク」、税務や会計に関する「財務及び開示におけるリスク」の3分野で特定し、その重要性及び発生する可能性の高さに応じて評価しています。
リスクマネジメント体制としては、取締役会の監督・指導の下、「コンプライアンス・リスク管理委員会」を設置し、各種リスクに精通した当社執行役員が委員長となり、コンプライアンス及び各種リスクに関する情報収集及び重要課題の審議や進捗確認をしています。コンプライアンス・リスク管理委員会で審議された内容については定期的に取締役会に報告し、取締役及び監査役との共有を図っています。
(4) 指標及び目標
当社は、2030年に向けた各種指標を下記の通り設定し、年に1回モニタリングを実施しています。中でも気候変動への対応は、持続可能な社会のために不可欠なため、GHG(温室効果ガスのスコープ1,2)排出量を2021年8月期比で50%削減することを目標としています。一方、国内直営店の店舗数及び総店舗面積の増加(それぞれ2021/8期比40.3%、同80.2%増)による電力使用量等の増加に伴い、GHG(スコープ1,2)排出量は増加しています。削減の取り組みとしては、独立型自社店舗における太陽光発電設備の設置やグリーン電力への切り替えを進めています。しかしながら、当社店舗の9割以上は商業施設等に入居するテナント型であり、2030年までに全ての独立型自社店舗へ太陽光発電設備の設置が完了したとしても、当社目標に到達できないと試算しています。そのため追加性のある再生可能エネルギーの活用など、さらなる削減策の検討を進めています。
指標 |
目標 |
2023年8月期実績 ※対象範囲:株式会社良品計画 |
グループ全体のGHG排出量(スコープ1,2) |
2030年 50%削減 (2021/8期比) |
|
自社店舗・物流拠点等への再生可能エネルギー導入 |
2030年 100% |
鳩山センターの一部及び一部店舗へ導入済 |
自社店舗・物流拠点等への太陽光パネル設置 |
2030年 100% |
鳩山センター及び7店舗に設置 |
包材や資材の脱プラスチック |
2030年 100% |
衣服・雑貨 96.8% 生活雑貨 64.7% 食品 一部包材に再生/バイオマスプラスチックを使用 |
リサイクルを前提とした製品設計 |
2030年 100% |
生活雑貨 52.1% |
回収したプラスチック製品の再利用 |
2030年 100% |
回収したプラスチック製品の重量 21,884kg (PET素材ボトル 2,298kg, その他のプラスチック製品 19,591kg) 再利用したプラスチック製品の重量 21,884kg |
社会や環境に配慮された綿として評価(GOTS、CmiA、GRSなどの認証取得)した※1綿の使用※2 |
2030年 100% |
衣服 ・ 雑貨 82.9%※3 生活雑貨 66.7% |
動物由来繊維・素材の動物福祉合致・再生素材の使用※2 |
2030年 100% |
<衣服 ・ 雑貨> ウール:ノンミュールジングが証明されたウール 99.9% ダウン:動物福祉が証明されたダウン 100% <生活雑貨> ウール:ノンミュールジングが証明されたウール 100% ダウン:動物福祉が証明されたダウン 100% |
原料まで遡ったお取引先の人権デュー・ディリジェンス |
2030年 100%開示 |
<製品メーカー> 1)73工場 2)A評価2工場、B評価36工場、C評価18工場、D評価8工場、 E評価9工場(不適事項ナシがA評価) <素材・原料メーカー> 1)43工場 2)A評価2工場、B評価30工場、C評価3工場、D評価5工場、 E評価3工場(不適事項ナシがA評価) E評価の12工場の指摘事項は、非常口の施錠や消火器・避難経路が物で塞がれていることによる安全対策の不備、労働時間の不適切な管理などです。すべての工場と改善計画を合意し、順次改善の完了を確認しています。 |
原料まで遡った主要お取引先リスト |
2030年 100%開示 |
2024年3月に衣服・雑貨、生活雑貨、食品の生産を委託している主要工場(Tier1)と衣服・雑貨の編立・織物工場(Tier2)のリストを開示 |
ダイバーシティ&インクルージョンの実現 |
(年齢、ジェンダー、人種などの構成比公開) |
1)
2)
3)
4)
5) ※上記5項目のみ2024年8月期実績 |
※1 2023年8月期から、目標を「社会や環境に配慮された綿の使用100%」に改めました。当社が社会や環境に配慮された綿として新たに評価するものは、指標に適宜追加します。
※2 本指標の集計は、各年の春夏と秋冬に企画・販売した商品に使用した繊維素材を対象にしています。
※3 新型コロナウィルスの感染拡大によるサプライチェーンへの影響を最小化し、綿の安定的な調達を進めた結果、オーガニックコットンの使用率が低下しました。今後はオーガニックコットンに限らず、社会や環境に配慮した綿の選択肢を増やし、安定した原料の調達につとめます。
なお2024年8月期には、上記の全ての指標を包含する、当社が全社レベルで取り組むESGの独自指標を策定し、部門ごとにもESGの注力領域を明確に設定しました。これにより、重要課題それぞれにおける取り組みの進捗を定量的に図ることが可能となります。
◇気候変動への対応(TCFDへの対応)
当社は、気候変動が社会に深刻な影響を及ぼすことを認識し、サプライヤーを含む幅広いステークホルダーとの協働を通して、持続可能な社会の実現に取り組んでいきます。また、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、気候関連のリスクと機会がもたらす事業への影響を把握し、戦略の策定、実行を進め、TCFD「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の枠組みに沿った情報開示の拡充を進めていきます。
(1) ガバナンス
当社は、気候変動を含むサステナビリティへの対応を経営の重要課題の1つと捉え、対応するためのガバナンスを構築しています。当社のサステナビリティ分野におけるガバナンスの詳細については、
(2) 戦略
① リスク・機会の評価と対応策
気候変動によるリスク・機会について、事業に影響を与える内容を洗い出し、これらを事業戦略上の重要度、売上・コストなどの財務影響、発生するまでの期間などから、影響度の大きさを定性・定量で評価し、対応策を実行しています。これらの結果を、TCFD提言で示された項目を軸に、以下の通り整理しました。
各種リスクに対応し、その影響を緩和、排除するとともに、環境負荷に配慮した商品を供給することにより、地球環境保全に貢献し、顧客の環境志向の高まりや期待に応えることで、当社の成長戦略を加速する計画です。
<重要なリスク・機会の影響評価と対応策>
重要なリスク・機会 |
想定される影響の具体例 |
影響 種類 |
影響度 |
時間軸 |
対応策 |
|||
移行リスク・機会 |
規制 |
炭素税等のGHG排出量規制強化 |
リスク |
・GHG排出量に対する炭素税の導入 ・調達品への炭素税等の導入、またはGHG削減対応による操業、調達コストの増加 ・物流センター/事業所、配送車両への炭素税等の導入による輸送、保管コストの増加 |
コスト |
中~大 |
中期 |
・中期経営計画に基づいたGHG排出の削減 ・サプライチェーン全体でのGHG排出量見える化、削減取組みの推進 ・店舗への再生可能エネルギーの導入 |
プラスチックに関する規制強化 |
リスク |
・再生プラスチック、バイオマスプラスチックの使用率の上昇による調達コストの増加 |
コスト |
大 |
中期 |
・商品本体や包材資材の脱プラスチック、薄・軽量化、代替素材への切替えによるコスト上昇の抑制 |
||
市場 |
化石資源の価格変化 |
リスク |
・自社/サプライヤーで消費するエネルギー価格の上昇による操業、調達コストの増加 ・化石資源由来原料の価格上昇による調達コストの増加 |
コスト |
中~大 |
中期 |
・自社及びサプライヤーとの省エネルギー推進や再生可能エネルギー導入の推進 ・商品本体や包材資材の脱プラスチック、薄・軽量化、代替素材への切替え促進 |
|
・倉庫・配送業者が消費するエネルギーの価格の上昇 |
コスト |
大 |
中期 |
・物流倉庫での省エネ取組み実施、再生可能エネルギーの導入 ・物流事業者との協働による輸送効率向上、相乗り物流等によるエネルギー使用の低減、再生可能資源由来の燃料への転換 |
||||
製品の長期使用 |
リスク |
・製品の長期使用による買替え頻度の低下と売上の減少 ・新品衣料品の需要の相対的な低下による売上の減少 |
売上 |
中~大 |
中期 |
・リユース・リサイクルの推進 ・再生原料を活用した商品開発の推進 ・長期使用可能な商品の開発 ・二次流通の事業化など、持続可能な仕組みの構築 |
||
移行リスク・機会 |
評判 |
サステナブルなブランドイメージの認知 |
機会 |
・サステナブル志向の新規顧客の獲得による売上の増加 |
売上 |
中 |
中期 |
・企業理念や創業以来のESG思想、ものづくりの視点、社会課題解決を目指す新たな取組み等の、グローバル発信強化によるサステナブル/ESGの認知向上 |
リスク |
・サステナブル対応の遅れに伴う競争優位低下による、顧客の流出と売上の減少 |
売上 |
中 |
長期 |
・中期経営計画に基づいたESG経営の推進と、情報開示・発信の強化 ・ESG外部評価を踏まえた重点課題の正確な認識と適切な対応 |
|||
サステナブル原料を使用した製品の需要の高まり |
機会 |
・環境配慮製品の需要増加による売上の増加 |
売上 |
中~大 |
中期 |
・カポック、ヘンプなど環境配慮素材の育成、活用 ・環境配慮素材への切り替え、製品開発の推進 |
||
・低炭素なたんぱく質食品の需要増加による売上の増加 |
売上 |
中~大 |
長期 |
・害獣や大豆ミートを活用した商品の拡充 ・低炭素な食材を活用した商品開発 |
||||
物理的リスク・機会 |
急性 |
気象災害の増加 |
リスク |
・洪水、台風などによる店舗、物流センター等の罹災増加に伴う商品等の廃棄損の増加 |
コスト |
中 |
短期 |
・店舗、物流センターの物理的リスク評価 ・ハザードリスク高拠点の浸水対策、BCP策定の実施 ・店舗、物流センターの災害対策点検の強化や、罹災時の早期復旧にむけた防災備品の常備 |
慢性 |
海面の上昇 |
リスク |
・店舗や物流センター所在地域の浸水リスクが高まることによる移転コストの発生 |
コスト |
中 |
長期 |
・浸水リスクの高い店舗、物流センターの浸水対策実施 ・出店時の気候変動を踏まえたリスク評価の徹底 |
|
平均気温の上昇 |
リスク |
・店舗の冷房コストの増加 |
コスト |
中 |
中期 |
・太陽光発電設備、蓄電池の導入推進 ・省エネ設備の導入 |
||
降水・気象パターンの変化や平均気温上昇 |
リスク |
・洪水・干ばつの増加に伴う、コットン、リネン等の素材価格の上昇による調達コストの増加 ・生態系の変化にともなう木材供給量の減少による木材調達コストの増加 |
コスト |
中~大 |
長期 |
・各国の価格状況を継続的にモニタリング ・原材料生産地の分散 |
影響度評価 :売上 ・・・「大」-100億円以上、「中」-10億円以上100億円未満、「小」-10億円未満
コスト・・・「大」-10億円以上、「中」-1億円以上10億円未満、「小」-1億円未満
時間軸(発現までの期間):「短期」-2年以内、「中期」-2年超10年以内、「長期」-10年超
② シナリオ分析の実施
当社では、リスクを低減し、機会を拡大することが、持続的な企業価値と社会価値の向上に不可欠であると考え、気候変動がもたらすリスクと機会に関するシナリオ分析を実施しました。
参照したシナリオは、国際エネルギー機関IEAの「World Energy Outlook2022」によるSTEPS(公表政策シナリオ;各国が現時点で公表している政策を基に、産業革命以前に比べて世界の平均気温上昇が2100年頃に2.6℃程度となるシナリオ)、SDS(持続可能な開発シナリオ;産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるため、段階的に排出量を低減させていくシナリオ)、気候変動に関する政府間パネルIPCCによるRCP8.5(温室効果ガス最大排出量に相当するシナリオ)、OECDの「Global Plastics Outlook Policy Scenarios to 2060」によるグローバル野心政策シナリオ(2060年までにプラスチック漏出をほぼゼロにすることを目標に国際レベルの協調が進むシナリオ)等を参考に、「1.5℃シナリオ(脱炭素推進)」と「4℃シナリオ(温暖化進行)」の2つを設定し、中長期的な将来の影響度を分析しました。
財務影響は、「大(100億円≦売上、10億円≦コスト)」、「中(10億円≦売上<100億円、1億円≦コスト<10億円)」、「小(売上<10億円、コスト<1億円)」、と設定し以下に記載しています。
|
1.5℃シナリオで示される2030年時点の移行リスクと機会 |
移行リスクと機会を踏まえた方針・対応策 |
炭素税 |
・炭素税負担による財務影響 は「大」となる見込み。 ・当社のGHG排出量(スコープ1,2合計)は、2030年に向けてGHG排出量削減に取り組まなかった場合、事業成長に伴い約2.7倍まで増加すると想定される。 |
・GHG排出量の削減に向け、グループ全体の排出量可視化を進め、削減ロードマップを策定。店舗の出店地域や特性に合わせた方法で再生可能エネルギーの導入に取り組む。 ・スコープ3のGHG排出量削減も視野に入れ、サプライチェーン全体でのGHG排出量の可視化を進める。 |
化石資源の価格変化 |
・エネルギーコスト上昇による財務影響 は「大」となる見込み。 ・当社の電力使用量は、2030年に向けて使用量削減に取り組まなかった場合、事業成長に伴い約5.3倍まで増加すると想定される。 |
・省エネルギー推進による電力使用量の削減や再生可能エネルギーの導入などを進め、化石資源由来のエネルギー使用削減に取り組む。 ・サプライヤーと省エネルギー推進や再生可能エネルギー導入などを進め、生産コストの上昇を抑制する。 |
・プラスチック原料価格の上昇による財務影響は「中」となる見込み。 ・参照したシナリオをもとに、プラスチック原料の単価は2021年8月期比1.3倍まで増加すると想定され、調達するプラスチック原料のうちリサイクル由来原料比率は60%になると想定される。 |
・化石資源由来のプラスチック削減に向け、商品や包材資材の脱・省プラスチック、軽量化に取り組む。 ・化石資源由来からリサイクル由来原料、代替素材への移行を進める。 |
|
プラスチックの規制強化と市場変化 |
・化石資源由来プラスチック製品の売上減少による財務影響は「大」となる見込み。 ・リユース、リサイクル由来プラスチック製品の売上拡大による財務影響は、「大」となる見込み。 ・参照したシナリオをもとに、規制や製品寿命の長期化などによる化石資源由来プラスチック製品が20%減少、需要の変化に伴いプラスチック製品のリサイクル由来原料比率が60%を占めると想定される。 |
・サステナブルな商品やサービスへの需要拡大を見込み、環境配慮型素材の活用や製品開発を進める。 ・自社製品の回収・リサイクルなど再資源化を進め、化石資源由来からリサイクル由来原料への移行に取り組む。 ・二次流通の事業化など持続可能な仕組みの構築を進め、リユースの推進に取り組む。 |
物理的リスク・機会については、温暖化進行による気象災害の増加が、短期に発生する可能性の高い重大なリスクとなります。そこで、この傾向がさらに強まる4℃シナリオを基に、国内・海外の主な事業拠点について、気象災害がもたらす影響を定性的に分析しました。
|
4℃シナリオで示される2050年時点の物理的リスクと機会 |
物理的リスクと機会を踏まえた方針・対応策 |
自然災害による被害 |
・洪水・高潮により3m以上の浸水被害が想定される主要拠点数は、国内2ヵ所、海外11ヵ所の見込み。 ・分析対象となる拠点は、当社が事業展開をしている国・地域の店舗、物流センター、サプライヤー生産拠点のうち、売上高や在庫額、調達額などをもとに影響の大きい拠点を選定。 |
・店舗、物流センター、サプライヤー生産拠点においてハザードリスクの高い拠点の浸水対策の推進に取り組む。 ・被災した地域の店舗の営業を早期に再開し、必要な物資を届けることで、地域社会への責任と貢献を果たす。 |
(3) リスク管理
当社は、気候変動による当社事業への影響を把握し、対策を講じるため、シナリオ分析により影響の大きさや発現までの期間等を評価し、気候変動リスクや機会を特定しています。
リスク評価プロセスとしては、全社リスクを統括する「コンプライアンス・リスク管理委員会」が、直面する可能性のあるリスクを、重要性や発生可能性の高さを基に年1回以上の頻度で評価しており、気候変動に関わるリスクも全社の主要なリスクの一つとして認識しています。
(4) 指標及び目標
当社は、グループ全体のGHG排出量(スコープ1,2)を2030年までに50%削減(2021年8月期比)する目標を掲げています。その実現に向けて、シナリオ分析により特定されたリスク・機会をもとに、店舗・物流拠点等への再生可能エネルギー導入や太陽光パネルの設置、化石由来原料の削減、リユース・リサイクルなどに取り組んでいます。
詳細は「
◇人的資本・多様性
(1) ガバナンス
「
(2) 戦略
当社は、社員一人ひとりが「社会や人の役に立つ」という根本方針のもと、社会や地域の多様な方々と協働し、良い企業活動を行うことで、「感じ良い暮らしと社会」の実現を目指しています。
これからの時代における真に豊かな社会とは、「環境」・「経済」・「文化」がバランス良く支え合っている社会だと考えます。美しい、豊かな自然や環境が持続可能な形で維持され、人々がそれぞれの有する資質を十分に生かしながら豊かな経済生活を営み、多様なつながりを持って文化的水準の高い生活を送ることができるような社会の実現を目指します。
当社はそのために、社会にとっての公益に貢献する事業活動を通じて営利を生み出すことで、公益と営利を持続可能な形で両立させることができる企業体でありたい考えています。
そのような理想を掲げる当社にとって最大の資本は「人財」です。社員が「社会や人の役に立つ」という理念や、自らの夢の実現に対する情熱と志を持って、地域や店舗で主体的に考え、自律的、自発的に行動することを大切にしています。当社が目指すこのような経営のあり方を「公益人本主義経営」と定義し、その実践を担う人財の育成と組織づくりこそが当社の経営戦略の根幹であると考えています。
良品計画が求める人財像
1. 「社会や人の役に立ちたい」という情熱と志:
「おかげさま・お互い様」、自分は人に支えられているという自覚と感謝の気持ち、謙虚さ、人への思いやり、良心、誠実さ。その結果として自然と生まれる、「社会や人の役に立ちたい」、「社会課題を解決したい」という情熱や志。
2. 共感力、当事者意識:
自分の周りの人やお客様、地域住民など、様々な価値観を有する生活者にリスペクトをもって向き合い、その方々の日々の生活や暮らし、そこで感じていることを想像する。それを他人事ではなく自分事として捉えられる共感力(エンパシー)と当事者意識(オーナーシップ)。
3. 商売人意識:
目の前のお客様や地域の方々に喜んでもらい、役に立つことで、売上利益を上げることはよいことであると信じ、継続的な改善や新しい価値を生み出そうとたゆまぬ努力を続ける姿勢。
4. 探究心、知的好奇心:
最良の生活者の視点で、未来の望ましい暮らしやありたい社会の姿を思い描き、模索しつづける探究心。そのヒントになるような情報を、新聞や書物を読んだり、アートを見たり、街歩きをしたり、社外の方々と繋がったりしながら積極的に情報収集をし、考え続ける姿勢、知的好奇心。
5. クリエイティビティ、構想力:
物事を見つめ、ありたい姿とのギャップに気づいたり面白いものを発見したりする力。気づきや発見を組み合わせ、アイディアを生みだし、形にするクリエイティビティ。目前の課題や矛盾を解決し、継続的価値を創出する事業モデルや仕組みをデザインできる構想力。
6. チーム力、共創力:
価値観や課題意識を共有しながら社内外の様々な人々と協力関係を構築し、一人では決してできない大きなことを実現するチーム力や新しいものを生み出す共創力。
7. 行動力、徹底力:
自らやチームで考えたことを実行する行動力。成果が出るまで粘り強く改善を続けながらやり抜く徹底力。
8. チャレンジ精神、前向きさ:
未知の挑戦や困難にぶつかっても、自分を信じて物怖じせずに取り組むチャレンジ精神。何事にも楽しんで取り組もうとする前向きな姿勢。
社員一人ひとりが、お客様や地域の方々と共に、未来の望ましい暮らしやありたい社会の姿を共創する。その結果生み出された商品やサービス、店舗が多くの人々に喜ばれ、信頼され、愛されている。そして、その過程において社員が自ら成長を実感し、幸せを見出すことで、それが次なる事業活動への原動力となる。こうした活動が世界中のあちこちに広がり、社会や地域を少しずつ良い方向へと後押しし続けている――それがまさしく当社が目指す姿です。
人財育成6つの柱
「公益人本主義経営」実現に向けて、上記の「良品計画が求める人財像」を育むための人財育成方針及び社内環境整備方針は以下の通りです。
1. 当社の理念や価値観を具現化しようという志を有する社員を採用・育成する。
2. 多様な社員が個性を発揮し、自律的に考え、自発的に行動するために、健全な企業風土を醸成する。
3. 社員が自分らしく生き生きと、心身共に健康で、安心して働き続けることのできる職場環境づくりを推進する。
4. 多様な社員の個性と可能性を引き出し、組織としての成果を最大化できるリーダー人財を育成、配置する。
5.「キャリアを通じて学び、成長したい」という社員のニーズをサポートする教育研修体系の整備と支援を行う。
6. 社員一人ひとりの参画意識や挑戦意欲を後押しするための、人事制度の構築と運用を行う。
(3) リスク管理
「
(4) 指標及び目標
すべての従業員の更なる活躍を支援するために、様々なライフスタイルの変化を考慮した環境づくりをすすめることで、従業員が安心して働くことができ、活躍できる会社を目指します。ダイバーシティに関して開示している指標の詳細は、
指標1:「女性管理職比率」
当社は、女性管理職比率は、本来、従業員の男女比率と同等であるべきと考えており、全従業員のチャレンジを促進するとともに、ライフスタイルの変化に影響を受けやすい女性の活躍支援をすすめています。女性がキャリアやワークライフバランスについて考えるキャリア開発研修をはじめ、早い段階でチャレンジングな経験ができる機会の創出に努めています。また、管理監督者の意識改革も積極的に取り組んでいます。
指標2:「男性育児休業取得率」
ライフイベントと仕事を両立するために、多様な働き方が選択できる制度を提供しており、育児休業についても性別を問わず取得することができます。今後、「ダイバーシティ委員会」を中心として、ワークライフバランスを含めたより一層の社内啓発活動と、管理監督者を筆頭に意識改革を進めることで、男性育児休業取得率の向上を目指します。
なお、女性管理職比率、男性育児休業取得率の実績は、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、各リスクが顕在化する可能性の程度や時期については合理的に予見することが困難であるため記載していませんが、当社グループはこれらのリスクに対する管理体制を「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり整備し、リスクマネジメント活動を行っています。
(1)経済状況、消費動向について
当社グループは、衣服・雑貨、生活雑貨、食品等のオリジナル商品を通してライフスタイルを提案する事業を営んでおり、国内、海外各国における気候状況、景気後退、及び海外での治安悪化及びそれに伴う消費縮小は当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした外部環境の変化への対応として、事業戦略においては持続的な成長基盤の強化と顧客創造、その支えとしての機能戦略においては外部環境の変化に柔軟に対応できる仕組み作りや生産性向上を図ることにより、引き続き収益性の改善を図ってまいります。
(2)海外の事業展開について
当社グループは、アジア・オセアニア地域において、香港、中国大陸、台湾、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、オーストラリア、インド、ベトナム、フィリピン、クウェート、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、カタール、ヨーロッパ地域において、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ポルトガル、フィンランド、デンマーク、ポーランド、アイルランド、北米地域においてアメリカ合衆国、カナダでの子会社または合弁会社による店舗展開、または現地有力企業への商品供給による事業ならびに現地における商品調達を行っております。
これらの海外における事業展開には、以下のようないくつかのリスクが内在しております。
● 予期しない法律または規制の変更、強化
● 為替レートの変動
● 不利な政治または経済要因
● 税制または税率の変更
● 移転価格税制等の国際税務問題による影響
● テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等
万一、上記リスクが発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社では予防的措置として、コンプライアンス・リスク管理委員会が日常業務の中で当該リスクに対するモニタリングを行っております。顕在化したリスクに対しては、コンプライアンス・リスク管理委員会が関連部門と連携の上、これら是正を進めます。
(3)新規事業について
当社グループは、住宅事業や流通加工等の小売以外の事業を展開しております。これらの事業は、多くの技術課題を解決し、販売拡大の手法を構築することが重要であります。また、不確定要因が多く、事業計画どおり達成できなかった場合は、それまでの投資負担が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社はこのようなリスクを軽減するため、以下の対応を行っております。
● 新規投資を検討するに際しては、マネジメントや各専門部署を含め検討を行い、総合的に事業による機会とリスクの検討を行っています。
● 該当事業の事業計画については、マネジメントや各専門部署に承認されるとともに、事業進捗が定期的に報告され、想定外の事項や新規リスク発生の有無を確認しています。
● 識別されたリスクに関しては一覧として管理され、定期的にリスク評価の見直しを実施するとともに、該当するリスクに対する予防策や、リスクが顕在化した際の対応を検討しています。
(4)災害等について
当社グループは、国内外に店舗、物流センター等を保有しており、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害、事故、火災、テロ、戦争その他の人災等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これら災害等に対する備えとして、対応マニュアル等の策定や損害保険の付保等の対策を講じております。また、災害が予測・警戒のレベルの時にはコンプライアンス・リスク管理委員会委員長の指示のもと災害対応会議を開催し予防に努め、災害発生時には対策本部長(代表取締役社長)の指示のもと、災害対策本部を設置し救済措置を実行します。
(5)情報セキュリティ及び個人情報の管理について
サイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルス等のリスクが現実に起こった場合、当社の事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下のような影響が考えられます。
● 業務の中断: サイバー攻撃によりシステムが停止した場合、業務の継続が困難になる可能性があります。
● 機密情報の漏洩: 顧客情報などの機密情報が漏洩した場合、当社の信用が失墜し、法的責任を問われる可能性があります。
● 財務的損失: サイバー攻撃の対応や復旧にかかる費用、または訴訟費用など、財務的な負担が増加する可能性があります。
当社は、これらのリスクを軽減するために、以下の対策を講じています。
● セキュリティ対策の強化: 最新のセキュリティ技術を導入し、システムの防御力を高めています。
● 従業員教育: 全従業員に対して定期的なセキュリティ教育を実施し、リスク意識の向上を図っています。
● インシデント対応体制の整備: サイバー攻撃が発生した場合に迅速に対応できる体制を整備しています。
(6)人権に関するリスク
当社グループは、生産拠点や生産設備を所有しておらず、商品の生産も行っていません。商品の生産は日本をはじめとする世界各国・地域の生産パートナーに委託しています。
当社グループは、サプライチェーンに関わるすべての人の基本的人権を尊重し、心身の健康や安心・安全を確保することが、最も重要な責務だと考えています。そのために、「良品計画 生産パートナー行動規範」に基づき、サプライチェーン全体の人権尊重、労働環境、環境配慮に関する方針を生産パートナーと共有し、遵守をお願いするとともに、モニタリングの一環として第三者機関によるソーシャル監査を行っています。これまでに強制労働や児童労働にかかる人権侵害は検出されていませんが、深刻な人権侵害が顕在化した場合には、当社グループに対するお客さまおよび取引先の信頼低下などにより、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)気候変動について
当社グループは、気候変動に関わる課題を重要なテーマとして認識し、気候変動への影響を軽減するため、事業活動全般における温室効果ガス排出量の把握と削減に取り組んでいます。気候変動による影響はすでに顕在化しており、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
気候変動によるリスクへの適切な対応および事業機会を特定するため、TCFD「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のフレームワークに沿った分析と対策を進めています。
気候変動に係る詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方および取組 ◇気候変動への対応(TCFDへの対応)」に記載のとおりです。
経営成績等の状況の概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におきましては、世界的な資源価格の高騰や金融引き締めに伴う海外景気の下振れにより、依然として国内外における経済の先行きは不透明な状態が続いています。また、円安の進行や原材料価格、エネルギーコストの上昇に伴う生活必需品の値上げも相次いでおり、消費者の節約志向が一層強まっています。
このような状況の中、当社グループは、第二創業にあたり、「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念と定め、事業展開を進めました。
連結会計年度末における当社グループの総資産は5,095億51百万円となり、前連結会計年度末に比べ558億36百万円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加101億87百万円、商品の増加204億93百万円、受取手形及び売掛金の増加44億81百万円、有形固定資産の増加98億84百万円及びソフトウエアの増加58億85百万円によるものです。
負債は2,125億46百万円と262億77百万円増加しました。これは主に、買掛金の増加240億10百万円、短期借入金の減少93億29百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少225億45百万円および社債の増加300億円によるものです。
純資産は2,970億4百万円と295億58百万円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加302億47百万円、繰延ヘッジ損益の減少46億1百万円によるものです。
当連結会計年度における当社グループの経営成績は、次のとおり、営業収益ならびに各段階利益はいずれも過去最高の実績となりました。
営業収益 6,616億77百万円(前期比 13.8%増)
営業利益 561億35百万円(前期比 69.4%増)
経常利益 557億77百万円(前期比 54.3%増)
親会社株主に帰属する当期純利益 415億66百万円(前期比 88.5%増)
(当連結会計年度におけるセグメント別の概況)
当連結会計年度における当社グループのセグメント別業績は、次のとおりであります。なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、当連結会計年度より、報告セグメントの利益又は損失の算定方法の変更を行っています。以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメントの利益又は損失の算定方法により組み替えた数値で比較分析しています。
① 国内事業
国内事業における当連結会計年度の営業収益は3,889億35百万円(前期比13.4%増)、セグメント利益は397億15百万円(同61.8%増)と、増収増益となりました。
営業収益は、スキンケアや日用消耗品をはじめとする生活雑貨が好調に推移したほか、SNSや自社アプリMUJI passport等を通じた継続的なマーケティング活動が集客に寄与したことで、増収となりました。また、価格改定のほか、値下げの抑制等により、営業総利益が改善し、人件費をはじめとする販売費及び一般管理費の増加を吸収したことで、セグメント利益は増益となりました。
② 東アジア事業
東アジア事業における当連結会計年度の営業収益は1,945億59百万円(前期比13.4%増)、セグメント利益は355億29百万円(同16.7%増)と、増収増益となりました。
中国大陸は消費環境が厳しく、客足が鈍化し売上が伸び悩んだものの、新規出店に伴う店舗網の拡大および経費コントロールに努め、増収増益を確保しました。そのほか、台湾、香港、韓国も増収増益となりました。
③ 東南アジア・オセアニア事業
東南アジア・オセアニア事業における当連結会計年度の営業収益は391億38百万円(前期比24.4%増)、セグメント利益は45億99百万円(同59.8%増)と大幅な増収増益となりました。
タイ、マレーシア、ベトナムなど東南アジアへの出店を強化し、出店経費が先行したものの、円安に伴う押上げ効果も加わり、増収増益となりました。
④ 欧米事業
欧米事業における当連結会計年度の営業収益は390億43百万円(前期比10.0%増)、セグメント利益は55億6百万円(同494.1%増)と、円安効果も加わり、増収増益となりました。
北米においては、店舗運営力の向上および経営体制の強化を進めたことにより売上が伸長し、増収増益となりました。欧州においては、事業再編の一環として、2024年4月に連結子会社「MUJI Europe Holdings Limited」を清算手続きし、新会社である「MUJI Europe Limited」のもとで店舗運営を継続しています。この再編と併せて不採算店舗の閉鎖を進めるとともに、コスト構造を見直し、収益改善と財務基盤の強化に努めたほか、円安効果もあり、増収増益となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動および新規出店等による投資活動、並びに財務活動を行った結果、前連結会計年度末に比べ103億43百万円増加し1,255億27百万円となりました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
営業活動の結果獲得した資金は、585億4百万円(前年は565億27百万円の収入)となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益599億14百万円によるものです。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
投資活動の結果使用した資金は、276億54百万円(前年は221億6百万円の支出)となりました。
これは主に、店舗等の有形固定資産の取得による支出226億9百万円、有形固定資産の売却による収入101億8百万円およびソフトウエア投資等の無形固定資産の取得による支出119億77百万円によるものです。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
財務活動の結果使用した資金は、234億12百万円(前年は112億32百万円の支出)となりました。
これは主に、長期借入金の返済による支出219億80百万円、社債の発行による収入300億円、リース債務の返済による支出118億58百万円および配当金の支払110億45百万円によるものです。
生産、受注及び販売の実績
(1)販売実績
当連結会計年度における販売実績(営業収益)をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
営業収益(百万円) |
前期比(%) |
国内事業 |
388,935 |
113.4 |
東アジア事業 |
194,559 |
113.4 |
東南アジア・オセアニア事業 |
39,138 |
124.4 |
欧米事業 |
39,043 |
110.0 |
合計 |
661,677 |
113.8 |
(注)営業収益の商品別の構成は次のとおりであります。
商品別 |
営業収益(百万円) |
前期比(%) |
衣服・雑貨 |
248,735 |
111.8 |
生活雑貨 |
302,852 |
116.5 |
食品 |
86,078 |
115.0 |
その他 |
24,010 |
100.1 |
合計 |
661,677 |
113.8 |
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っています。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
① 営業収益及び営業総利益
当連結会計年度の営業収益につきましては、前連結会計年度に比べて、802億65百万円増(前期比13.8%増)の6,616億77百万円となりました。セグメント別の営業収益の詳細については、「生産、受注及び販売の実績 (1)販売実績」に記載しています。
また、営業総利益は、前連結会計年度に比べて648億60百万円増加し3,364億10百万円となりました。営業収益に対する比率は50.8%となり、前連結会計年度より4.1ポイント増加しました。
② 販売費及び一般管理費及び営業利益
当連結会計年度の販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度に比べて418億62百万円増(前期比17.6%増)の2,802億74百万円となりました。営業収益に対する比率は42.4%となり、前連結会計年度より1.4ポイント増加しました。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べて229億97百万円増加し、561億35百万円となりました。営業収益に対する比率は8.5%となり、前連結会計年度より2.8ポイント増加しました。
③ 営業外損益及び経常利益
当連結会計年度の営業外収益につきましては、前連結会計年度に比べて25億94百万円減少し、25億75百万円となりました。また、営業外費用につきましては、7億82百万円増加し29億33百万円となりました。
この結果、経常利益は前連結会計年度に比べて196億20百万円増加し、557億77百万円となりました。営業収益に対する比率は8.4%となり、2.2ポイント増加しました。
④ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の特別利益につきましては、前連結会計年度に比べて69億69百万円増加し、100億16百万円となりました。また、特別損失につきましては、前連結会計年度に比べて4億43百万円増加し、58億79百万円となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べて261億46百万円増加し、599億14百万円の利益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べて195億14百万円増加し、415億66百万円の利益となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容及び資本の財源及び資金の流動性に関する情報
① 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に新規出店および既存店舗の改装といった設備投資、情報システム投資によるものであります。
これらの運転資金や投資資金は、自己資金により充当することを基本方針としておりますが、必要に応じて資金調達を行ってまいります。
② キャッシュ・フローの分析
当社グループの資金の状況につきましては、「経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(固定資産の譲渡)
当社は、2023年7月26日開催の取締役会において、以下のとおり固定資産の譲渡について決議を行い、2023年8月4日に譲渡契約を締結し、2024年3月13日に譲渡いたしました。
(1) 譲渡の理由
本社移転に伴う固定資産の譲渡であります。本社を移転することで、社員同士のコミュニケーションのさらなる活性化、お客さまや周辺自治体や生活者の皆さまとの良好な関係構築を図り、業績の拡大を図ります。当社空間設計部がオフィスの設計を担当し、より働きやすい、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションが活性化する環境を整えます。
(2) 譲渡資産の内容
資産の内容 |
所在地 |
土地・建物 |
東京都豊島区東池袋四丁目26番3号 |
(注) 譲渡価額および帳簿価額につきましては、譲渡先との取り決めにより公表を差し控えさせていただきますが、市場価格を反映した適正な価格での譲渡となります。
(3) 譲渡先の概要
譲渡先につきましては、譲渡先との取り決めにより公表を差し控えさせていただきます。なお、譲渡先と当社との間には、記載すべき資本関係、人的関係および取引関係はありません。また、譲渡先は当社の関連当事者には該当しません。
(4) 譲渡の日程
①取締役会決議日 2023年7月26日
②契約締結日 2023年8月4日
③物件引渡日 2024年3月13日
(5) 業績に与える影響
本固定資産の譲渡に伴い、特別利益(固定資産売却益)として7,941百万円を計上いたしました。
(社債の発行)
2024年4月30日、当社グループは、無担保社債(満期5年、償還期日 2029年4月27日)元本総額300億円を発行しました。
当社グループの自社ブランド商品「無印良品」の生活者のニーズへの対応と新規需要開拓のために、常に最新の商品情報を収集し、意欲的な商品研究開発活動を進めております。
商品開発部門である衣服・雑貨部、生活雑貨部及び食品部において商品企画開発を進めております。また、衣服・雑貨部内に企画デザイン課を、生活雑貨部内に企画デザイン課をそれぞれ設置し、更なる商品開発の強化を図っています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
なお、当社グループにおける研究開発活動は概ね全セグメント区分に共通する「無印良品」の開発を目的としておりますので、セグメント別の記載は行っておりません。