文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
<行動指針>
当社は、「やさしく、つよく、おもしろく。」を行動指針としています。
<社是>
これまで述べた基本方針にのっとり、当社は「夢に手足を。」つける会社を目指します。
(2) 中長期の経営戦略と対処すべき課題
当社では、会社の未来の姿を時間的に遠いほうから「遠景」「中景」「近景」の3つに分けて考えています。会社がどこに向かおうとしているのか(遠景)、途中でどうなっていたら順調だと判断するか(中景)、遠景に向けて今、どちらに一歩を踏み出すか(近景)、の道標にしようというものです。
「遠景」は、創業者である代表取締役社長の糸井重里が引退し、次世代経営陣が率いるチームが生き生きと事業を運営している姿です。糸井と当社がよきライバルとなり、お互いにおもしろいから「じゃあ、手を組もう」といったかたちで仕事ができるようになる未来像をイメージしています。
「遠景」に至る道程の途中の段階である「中景」は、「『いい時間』を提供する場をつくり、育てている」姿です。国内外を問わず今よりも幅広い属性のたくさんのお客様とお付き合いしている姿をイメージしています。それには、コンテンツを生み出す力や仕入れる力、そして届ける力も、今よりつよくなっている必要があります。同時に、「場」を今よりも広げるためには、それを支える土台も強化しなくてはなりません。ITシステムに関する技術開発やサプライチェーン開発は、今後も大切な課題であり続けると考えています。また、世界的な情報セキュリティリスクの増大や個人情報保護の関心の高まり、越境DtoCの活性化を踏まえたインターネット通販を取り巻く環境変化にも注意を払っています。
さらに、「やさしく、つよく、おもしろく。」が社内に浸透し、実践され続けるよう、たゆまぬ組織づくりが必要だと考えています。
当社を取り巻く市場環境においてはスマートフォンの普及などによりインターネットの利用時間が増加しているほか、経済産業省の調査では2023年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、24.8兆円(前年比9.23%増)と拡大し、内訳として物販系分野では前年比4.83%増と伸長しています。一方で、国際的な情勢不安による燃料価格や原材料費の上昇及び外国為替相場の変動など、先行き不透明な状況が続くものと思われます。
このような環境の中、当社は「いい時間」を提供するためのコンテンツを、種類、量ともに増やし、新しい場を生み育てていけるように取り組んでいきます。
これらの状況を踏まえた具体的な課題は、次のとおりです。
①「場」の立ち上げと育成
当社は「ほぼ日刊イトイ新聞」の他に「ほぼ日の學校」「生活のたのしみ展」「ほぼ日曜日」 といった、「場」を立ち上げてきました。今後も魅力的なオリジナルコンテンツの幅を広げるよう、これらの「場」を育て、さらに新しい「場」も立ち上げ、「やさしく、つよく、おもしろく。」の姿勢で複数の「場」を運営する企業になることを目指しています。社外のクリエイターの方々にとってもコンテンツを生む新しい「場」となり、より多くのユーザーにたのしんでいただけるよう、新しいサービスの開発を進めていきます。また、複数の場の開発と並行して、統合IDサービス「ほぼ日ID」を整備し、今後当社が提供する新たなサービスを、既存のユーザーの方々が容易に利用できるよう努めています。
②多様な人材の確保及び育成と組織づくり
今後想定される事業拡大や新サービスを実現するには、継続的な人材の確保及び育成と、 当社の考え方や価値を生む仕組みが定着するような組織づくりが重要だと考えています。当社は、コンテンツを生み出す力や届ける力をつけるため、また、それを支える経営基盤を強化するために、職種を限定せず多様な人材の確保に努めています。今後も「やさしく、つよく、おもしろく。」が社内に浸透し、実践され続けるよう、人材の確保及び育成と組織づくりに取り組んでいきます。
③インターネット環境変化への対応
総務省の情報通信白書によると、インターネットは2023年の国内利用率(個人)が86.2%と、情報化社会の基盤となっています。この基盤の上には、利便性故にさまざまなサービスが展開されており、利用するデバイスや、アクセスする環境も多様化が進んでいます。当社も黎明期からコンテンツを提供する「場」としてインターネットを活用してきましたが、今後のサービスの展開にあたっては、日に日に高まる情報セキュリティリスクへの対応及び、国内だけでなく、多くの国や地域で導入が進む個人情報保護制度への準拠など、ユーザーの場所やアクセス手段にかかわらず、いつでも安心してたのしんでいただける「場」であり続けられるよう、組織的、技術的な対応を進めていきます。
④経営基盤の強化
中期的な事業成長に向けた経営基盤の強化として、基幹業務システム更改やデータ利活用の促進により経営判断の迅速化や業務効率化を実現し、クリエイティブ活動に集中できる時間を増やすことによるコンテンツを生み出す力の向上、海外ユーザーへの越境DtoCの利便性向上と法適合性の強化、ほぼ日手帳の全世界的な市場成長に伴うサプライチェーンマネジメントの強化に重点を置き、施策を推進します。
⑤市場の拡大
「ほぼ日刊イトイ新聞」で開発した商品コンテンツは、直販ECサイトで販売を重ね、同時に他の販路にも展開し、より多くのユーザーにたのしんでいただくことが重要だと考えています。近年の、「ほぼ日手帳」のユーザーの拡大と売上増加に加え、ユーザーがSNS上で発信する「ほぼ日手帳/hobonichi」に関する投稿(UGC)の増加による認知拡大を背景に、SNS上で複数言語のコンテンツ発信を強化するとともに、国内では既存取組先販路との連携強化、海外では主要国に適した販路開拓、海外ユーザーとのリアルイベントでの交流等を通してユーザーとの接点を増やし、関係づくりを進め市場拡大を推進します。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
当社は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題への対応は経営の重要な課題であると認識しています。サステナビリティに関する重要な課題がある場合には、取締役会において必要な決定を行うこととし、当該決定に基づき対応を行うこととしています。
当社は、リスク発生の可能性と対策について必要に応じて会議体を設置し、全社的なリスクに関する課題・対応策を検討しています。
情報セキュリティに関するリスク管理においては、当社の情報セキュリティ活動の推進と対応対策に関する決定を担当する情報安心委員会を2週間に一度開催し、検討・協議しています。協議された方針や課題などは、必要に応じて社内や取締役会へ共有され、適切なリスクマネジメントに向けた対応を行っています。
当社は、新しい価値を生み出し、人びとが集う「場」をつくり、「いい時間」を提供するコンテンツを企画、編集、制作、販売する会社であるために、事業の土台となる情報セキュリティの強化やほぼ日に関わるすべての人々の多様性を尊重し、誠実な事業活動を行うことを大切にしています。
①情報セキュリティについて
当社はEC事業やサービス運営に社内外の情報システム機器及びサービスを利用しています。これらのサービスの可用性を高い状態で維持するため、定期・不定期のシステムメンテナンス枠を設けて、ソフトウエアのアップデートを行うとともに、外部専門家による診断テストを適宜実施し、既知の脆弱性への対応と潜在的な脆弱性の発見・対策に努めています。主要なシステム及びネットワークの冗長化を行い単一障害点を作らない設計とし、より大規模な障害に備えて、独自のBCP(事業継続計画)を策定しています。
また、グローバルで事業を行うために必要な顧客、取引先及び当社内の機密情報や個人情報を保護するため、2024年4月に国際標準規格であるISMS認証(ISO/IEC27001)を更新取得し、情報の管理体制を整備するとともに、ITによるセキュリティ及び施設セキュリティの強化、従業員教育等の施策を実行しています。
②人的資本について
(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針)
当社では性別、年齢、国籍、価値観などの違いのある人々の多様性が、新たな発想・アイデアとなり、企画・商品を含むあらゆるコンテンツを生み出す源泉となっています。
このことから、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することが、会社の継続的な成長を確保する上での強みとなり得るとの認識に立ち採用活動を進めています。また、社内における女性、外国人、中途採用者の活躍促進を重視するとともに、その重要性が継続的に社内に浸透するよう人材の育成についても取り組んでいます。
(社内環境整備に関する方針)
当社は従業員が仕事と家庭生活を両立できる、働きやすい職場・環境づくりを目指しています。
多様なニーズやスタイルに合わせるため、その日の業務によって場所を選べるフリーアドレスを採用することで、協働しやすいオフィスづくりを志向しています。また、コアタイムなしのフレックスタイムの導入や、いつでも在宅勤務を含めたリモートワークを出来るインフラの整備を実施しており、女性も男性も、出産や育児、介護などをしながら安心して働き続けられるように、働く場所・時間などの選択肢を増やす取組みを実行しています。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針についての指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績は下記のとおりです。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあり、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しています。これらのリスクについては、その発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。
なお、文中にある一部将来に関するリスクについては、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生可能性のあるすべての事項を網羅するものではありません。
(1) ブランドに関するリスク
当社は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で糸井重里のエッセイ「今日のダーリン」をはじめとする様々なコンテンツを1998年6月より毎日更新し、高品質のコンテンツをつくり続けており、ウェブサイトとして独自の位置づけと信頼を得てきました。主力商品「ほぼ日手帳」はウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」から独立したブランドとして認知されています。また近年では、「ほぼ日の學校」「生活のたのしみ展」「ほぼ日曜日」といった新しい「場」も立ち上げてきました。今後もコンテンツを生む力を強化し、ウェブメディアのみならず、リアルスペースや商品についてもブランド価値を高めていきます。そのために、経営方針に則って事業を運営していきますが、生活者の志向の変化等をきっかけに当社のブランド価値が低下した場合、サイトへの訪問数や販売数量の低下により、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社コンテンツについては、メールやSNS等を通じて顧客から多くのフィードバックを得ており、日々のコンテンツ制作に顧客の声を役立てています。一方、ウェブメディアやSNS等で発信した情報は、即座に拡散され、炎上を引き起こしてしまう可能性が高まっており、これにより当社のブランド力の低下を引き起こす可能性が存在します。ウェブメディアやSNS等の運用については社内外からの継続的なチェックにより、その品質の確保に努めています。
当社は、より多くの顧客に喜んでいただき、持続的な成長を図るため、生活雑貨の販売イベント「生活のたのしみ展」、映像配信を中心とした「ほぼ日の學校」、幅広い表現で企画やイベントをおこなうリアルスペース「ほぼ日曜日」等の新しいサービスや商品の開発を進めています。加えて、「ほぼ日×地域」に関するプロジェクトや「ほぼ日手帳アプリ」など、さらなるコンテンツの充実に向けての取り組みを進めています。今後も新たなコンテンツについては適切な人材配置や、損益管理を通して、リスクをコントロールしていきますが、予測困難な問題が発生して計画通りに進まない場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 組織に関するリスク
当社は、長期的な事業継続と成長を目指して経営しています。そのために人材投資を強化しており、短期的な財務成果より投資を優先することがあります。当期は、会社の動きや仕組みをより健康的なものとし、成長につなげていくために、管理部門の「ほぼ日の大開拓採用」を実施するなど、採用手法や育成機会を多様化し、人材投資の効果向上を図っていますが、人材の確保や能力開発が計画通りに進まない等の場合、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
創業者であり代表取締役社長CEO兼CCOの糸井重里は、当社全体の経営方針や経営戦略の立案をはじめ、社会的な知名度と信頼、広い人脈による関係構築、新規事業の構想、毎日のエッセイ「今日のダーリン」執筆等、当社の事業活動上重要な役割を果たしています。代表取締役社長CEO兼CCOに依存しない組織的な経営体制を見据え、各取締役の業務執行区分を明確化するなど体制の構築を進めていますが、何らかの事情により代表取締役社長CEO兼CCOが業務を継続することが困難になった場合、一時的に事業推進力が停滞し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、内発的動機と自己管理を基礎にした組織風土が、高品質のコンテンツやサービスを生む源となっています。そのため、組織風土の維持強化を念頭において、採用、人材育成、組織開発を進めていますが、急激な組織拡大等により、こうした組織風土が十分機能しなくなると、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) インターネット環境等に関するリスク
当社は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営を事業の中核に据えています。また、新しい事業もすべてインターネットとの連動を前提にしています。メディアとして紙媒体や放送と比べて低コストでリアルタイムに発信でき、地域を問わず多くのユーザーとつながることができるメリットは、1998年の開設当時から変わりません。そのため、インターネット・デジタル社会のさらなる発展が、当社事業の成長にとって重要だと考えています。一方、ICT(情報通信技術)は進展が早い領域であり、例えばユーザーが利用する機器やプラットフォームも急速に変化します。そのため当社では、インターネットを含めたICTに関する技術動向の情報収集及び技術力の向上刷新を図っていますが、こうした変化への対応が不十分な場合、ユーザーの訪問数、購買者数の減少等を通じて、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、オリジナル企画商品を販売しており、売上高の約7割がインターネット通販によるものです。インターネット通販には、サイトを訪れた顧客に、商品の作り手とユーザー双方のエピソードを紹介し、その商品の魅力を詳しく伝えられるという、他の販路にはないメリットがあります。当社では、国内外のインターネット通販利用動向に関する情報を収集し、自社ECの強化や外部ECへの展開を図っていますが、何らかの予測困難な要因により、インターネット通販利用動向が急激に変化し、その対応が不十分な場合、ユーザーの訪問数、購入者数の減少等を通じて、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は「ほぼ日刊イトイ新聞」のコンテンツの配信、「ほぼ日ストア」でのEC事業、「ほぼ日の學校」などのサービス運営に社内外の情報システム機器及びサービスを利用しています。個々のサービスの可用性を高い状態で維持するため、定期・不定期のシステムメンテナンス枠を設けて、ソフトウエアのアップデートを行うとともに、外部専門家による診断テストを適宜実施し、既知の脆弱性への対応と潜在的な脆弱性の発見・対策に努めています。また、予見できない障害の発生に備えて、主要なシステム及びネットワークの冗長化を行い単一障害点を作らない設計とし、より大規模な障害に備えて、独自のBCP(事業継続計画)を策定し、障害が発生しても事業を短時間で再開するための準備を行っています。しかしながら、悪意を持った外部からの標的型攻撃、人為的過誤、自然災害などにより、システムの障害が発生し、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、グローバルで事業を行うために必要な顧客、取引先及び当社内の機密情報や個人情報を保持しています。これらの情報の外部流出や破壊、改ざん等がないように、当社は管理体制を構築し、ITによるセキュリティ及び施設セキュリティの強化、従業員教育等の施策を実行し、2024年4月に国際標準規格であるISMS認証(ISO/IEC27001)を更新取得しました。個人情報の定義や保護のために求められている管理レベルは、国・地域で施行される法令により異なることから、当社が適用を受ける法令を理解し、要求される管理レベルを実践することが求められます。しかしながら、これらの情報セキュリティリスク対策にも関わらず、外部からの標的型攻撃や過失、盗難等により、これらの情報の流出、破壊もしくは改ざんまたは情報システムの停止等が引き起こされる可能性があります。このような事態が生じた場合には、信用低下、被害を受けた方への損害賠償等の多額の費用の発生または長時間にわたる業務の停止や、加えて適用される法令の過失認定により課せられる罰金などにより、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 商品開発と販売に関するリスク
「ほぼ日手帳」は、売上高の約6割を占め、当社の主要商品となっています。手帳市場動向に関する民間の調査によりますと、手帳市場全体の販売高はやや減少しています。近年のリモート勤務の広がりもあり、スケジュールをデジタルで管理する人が増加する一方で、プライベートな内容や日々感じたことをアナログの手帳に記録するといった用途も増加し、手帳の需要は新しい形に変化していると言われています。「ほぼ日手帳」は「LIFEのBOOK」をコンセプトにした自由度の高い手帳であり、足元の市場動向は堅調です。ただし、将来、市場動向が悪化し、また特定の仕入先への依存はないものの、仕入数量の減少や遅延等を通じて「ほぼ日手帳」の売上が減少する場合は、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社の主力商品「ほぼ日手帳」は、商品の性質上、例年秋から冬に多く購入され、春から夏には販売が低調になる季節性があります。当社では、手帳の閑散期に販売を補う商品や市場の開拓を図っていますが、当社の業績は四半期毎に大きく変動します。このため四半期毎の一定期間で区切った場合、期間毎の業績は大きく変動します。
2024年8月期の四半期毎の売上高及び営業利益(損失)は、次のとおりです。
当社は、市場を創造することを方針として、付加価値の高い独自商品を開発し、新販路を含む幅広い市場開拓を図っています。また、特に新商品では、少量販売や受注販売を活用して在庫リスクを抑えています。しかし、不測の事態により想定を超える滞留在庫が生じた場合には、棚卸資産に関して商品評価損を計上する結果、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、インターネット通販において仕入先から納品される商品の在庫管理業務、商品の梱包、発送等に関する業務、顧客への商品受け渡し、商品代金回収業務等の物流業務を外部業者に委託しています。当社では外部委託業者と緊密に連携し、サービス水準の把握と向上を図っており、また、外部委託先との契約に基づき、直接的な損害は外部委託業者に賠償請求できます。しかし、外部業者のサービスの遅延及び障害等が発生し、当社に対する顧客の信用低下が発生した場合等においては、当社への損害賠償請求や当社の信用下落等によって、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 商品調達コストに関するリスク
当社が取り扱う商品の調達価格及び調達に係る費用は、原材料費や燃料価格の高騰、外国為替相場の変動による影響、輸送費用の高騰により上昇する可能性があります。当社では、最適な価格での仕入れを実現するために必要に応じ仕入先の検討を行うほか、積載効率の改善を図り、また定期的に販売価格の見直しを行っていますが、商品調達コストの上昇が販売価格の見直しに先行する場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 海外での販売に対するリスク
当社は、北米・欧州やアジア・オセアニアをはじめとした海外市場にも事業を展開しています。今後も、海外市場における販売に力をいれていきますが、これらの海外市場への販売には、予期しない法律または税制の変更、不利な政治または経済要因、テロ、戦争、その他の社会的混乱等のリスクが内在しています。事前に調査、把握して対処するよう努力していますが、これらの事象が起これば、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、コンテンツによって「場」をつくり、主にインターネット通販によって収益を得ています。そのため、コンテンツ制作における特許権、商標権、意匠権、実用新案権、著作権等知的財産権に関する各種法規制、特定商取引法、不当景品類及び不当表示防止法、消費者契約法等の消費者法一般、また独占禁止法等の物販に関する各種法規制、個人情報保護法等情報管理に関する法規制等に基づいて事業を運営しています。当社は国内外におけるこれらの各種法規制を遵守しており、現時点において重大な法的問題は生じていないものと認識しています。また、各種法規制を遵守すべく、適宜行政当局や弁護士等に相談するとともに、法務の体制強化を進めています。しかしながら、法規制における解釈、運用の変化や規制の強化、新たな規制の制定等により、より厳格な対応を求められる場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、「夢に手足を。」つけて、歩き出させる会社であることを目指し、「やさしく、つよく、おもしろく。」を行動指針として、新しい価値を生み出し、人びとが集う「場」をつくり、「いい時間」を提供するコンテンツを企画、編集、制作、販売しています。コンテンツとはクリエイティブの集積であり、読みもの、動画、商品、イベントなど、すべてがコンテンツであるととらえています。具体的には、1998年の創刊から26年間、毎日更新をしているウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」、有名無名を問わずあらゆるジャンルの人たちの話を聞くことができる動画サービス「ほぼ日の學校」、さまざまな体験を提供する場として渋谷PARCOで展開する「ほぼ日曜日」、ギャラリーショップの「TOBICHI」、犬と猫と人間をつなぐSNSアプリ「ドコノコ」、さまざまなアーティストやブランドとつくるお買いものフェス「生活のたのしみ展」、といった「場」をつくり、「ほぼ日手帳」をはじめとした生活のたのしみを提供する商品や動画、読みものなどのコンテンツを国内外へお届けしています。
当事業年度の経営成績は、次の表のとおりです。
当事業年度における当社を取り巻く事業環境として、EC市場規模の継続的な拡大があげられます。経済産業省の調査によると、2023年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、24.8兆円(前年比9.23%増)と拡大し、内訳として物販系分野では前年比4.83%増と伸長しています。また、日本・米国・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも昨年に引き続き増加しています。
当社は従前より、主力商品の「ほぼ日手帳」において、幅広いユーザーの手にとってもらえるような新たなブランド、IPやアーティストとのコラボレーションを実施してきました。2024年版では『ONE PIECE magazine』やイラストレーターの北岸由美さん、2025年版では加えてTVアニメ『SPY×FAMILY』や「パディントン™」をはじめとした、多種多様なコラボレーションが実現しています。また、手帳の本体のみならず、カバーや下敷きなど周辺文具の新商品の拡充を進めています。
当事業年度においては、「ほぼ日手帳」が特に海外で市場を拡大していることを受け、直販ECサイトの機能改善による販売力の強化、積極的な英語版の商品開発と販路の拡大、海外向けの販売促進の強化を行いました。
直販ECサイト「ほぼ日ストア」では、30以上の言語・100以上の通貨・150以上の決済手段への対応を可能にするDtoC越境EC向けサービス「Global-e」の導入により、購買体験の向上を実現しました。商品開発においては、2023年版からラインナップに加わった手帳本体とカバーが一体となった張り手帳「ほぼ日手帳 HON」の英語版及びサイズ・デザイン展開を拡充したことで、新規ユーザーが手に取りやすい商品が増加しました。販売促進においては、YouTubeやInstagramなどSNSのさらなる積極活用を進め、商品紹介だけではなく、使い方の提案や、ユーザーとのコミュニケーションを行った結果、各SNSでのフォロワー数が増加するだけではなく、ユーザーがSNS上で発信する「ほぼ日手帳」に関する投稿(User-generated Contents, UGC)も、Instagramでは前期比でおよそ3倍の規模に拡大しました。また、主要国に適した販路開拓、海外ユーザーとのリアルイベントでの交流等を通してユーザーとの接点増加に取り組みました。
結果として2024年版の販売部数は過去最高の90万部となり、累計販売冊数は1,000万部を突破しました。そして、「ほぼ日手帳」全体の売上高は国内外ともに伸長し、前期比19.5%増(国内9.6%増、海外30.2%増)となりました。国内では、インバウンドの増加等を背景に卸先であるロフト店頭での販売が好調に推移したほか、Amazon.co.jpや楽天市場などのECサイトでも売上が増加しました。海外では、直販売上で29.3%増、卸売上で35.7%増と、北中米・ヨーロッパを中心に大きく伸長し、「ほぼ日手帳」における海外売上高の構成比率は52.0%(前期比4.3pt増)と上昇しました。
ほぼ日手帳以外の商品の売上高は前期並で推移しました。当社初のキャンプのブランド「yozora」や、「ほぼ日MOTHERプロジェクト」における『MOTHER2 ギーグの逆襲』30周年記念の商品・イベントが好調に推移したほか、「ほぼ日曜日」では、スピッツの草野マサムネさんと画家のjunaidaさんによる歌画本の原画展をはじめとした多くのイベントが盛況となり、来場者数・売上金額ともに前年比で増加したのみならず、メディアの取材も多数受けるなど、幅広い層の方と出会うきっかけとなっています。一方で、「生活のたのしみ展」を当期中に開催していないことや暖冬により雑貨・アパレル関連の売上は軟調に推移しました。
これらの結果、売上高は7,534,785千円(前期比10.5%増)となりました。
売上原価については、「ほぼ日手帳」におけるプロダクトミックスの変化や、「ほぼ日手帳 2024」の在庫にかかる評価損が影響し、売上原価率は43.3%(前期比0.2pt増)となりました。※1
販売費及び一般管理費については、物流プロセスの見直し等でコスト削減に努めた一方で、海外市場の拡大に伴う費用の増加や、海外直営販路での売上増加に連動して販売手数料等が増加しました。また、コンテンツを生み出す基盤づくりの推進・海外市場の開拓・ユーザーとのコミュニケーション強化を目的に行った「ほぼ日の大開拓採用」により人員が増加し、人件費が増加しました。
その結果、当事業年度の営業利益は547,476千円(前期比7.2%減)、経常利益は543,812千円(前期比7.0%減)、当期純利益は399,197千円(前期比3.1%減)となりました。
その他の事業活動として、「ほぼ日刊イトイ新聞」では、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さんとの対談「いつ世界が終わっても。」や、任天堂の宮本茂さんの対談「なにもできないからプロデューサーになった」など、読みものを中心にコンテンツを発信、「ほぼ日の學校」では解剖学者の養老孟司さんの授業「生死については、考えてもしょうがないです。」や俳優の中井貴一さんの授業「『じゃないほう』の、 中井貴一さん。」を動画コンテンツとして展開しました。また、「TOBICHI」では、さまざまなイベントの開催のみならず、インバウンドの増加により、来店者数・売上金額が増加しました。
このように、当社は運営する「場」において、生活のたのしみとなるような「いい時間」を過ごしていただけるよう、コンテンツを作り、編集し届けています。業績はこうしたすべての活動の結果だと考えています。なお、当社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
※1 当事業年度における「ほぼ日手帳」の売上高・売上原価・売上総利益は次の表の通りです。
当事業年度においては、「ほぼ日手帳」の売上総利益が前期比18.3%増と成長しました。一方で、業績予想では「ほぼ日手帳」の売上原価率の低減を想定していたところ、実績は37.8%(前期比0.6pt増)となり、「ほぼ日手帳」の売上総利益率は62.2%(前期比0.6pt減)にとどまりました。さらなる成長を見込んで生産していた商品にかかる商品評価損の計上が主な要因です。
当事業年度における販売実績は次のとおりです。なお、当社は単一セグメントのためセグメント別の記載はしていません。
(注) 1.主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため、記載を省略しています。
2.その他売上は主に送料売上、サービス売上、ライセンス収入等です。
(資産の部)
流動資産は、4,700,416千円と前事業年度末に比べて340,092千円の増加となりました。これは主に商品の増加208,773千円、売掛金の増加306,450千円、現金及び預金の減少178,717千円によるものです。
有形固定資産は、265,833千円と前事業年度末に比べて25,495千円の減少となりました。これは主に減価償却による減少54,494千円、建物の取得による増加10,219千円、工具、器具及び備品の取得による増加14,196千円によるものです。
無形固定資産は、687,625千円と前事業年度末に比べて269,883千円の増加となりました。これは主に自社システムや「ほぼ日の學校」などのソフトウエア取得による増加193,128千円、ソフトウエア仮勘定の増加168,774千円、減価償却による減少94,656千円によるものです。
投資その他の資産は、838,884千円と前事業年度末に比べて60,725千円の増加となりました。これは主に「ほぼ日の學校」の授業制作による長期前払費用の増加82,852千円、償却による減少50,419千円、投資有価証券の時価評価額の増加41,536千円、繰延税金資産の減少13,254千円によるものです。
(負債の部)
流動負債は、1,741,265千円と前事業年度末に比べて310,395千円の増加となりました。これは主に仕入の増加による買掛金の増加256,357千円、未払金の増加79,530千円、前期は未収だった消費税が未払ポジションとなったことによる未払消費税等の増加74,602千円、未払法人税等の減少119,256千円によるものです。
固定負債は、227,963千円と前事業年度末に比べて11,580千円の増加となりました。これは主に退職給付引当金の増加20,509千円によるものです。
(純資産の部)
純資産の部は、4,523,530千円と前事業年度末に比べて323,230千円の増加となりました。これは主に利益剰余金の増加294,795千円と、その他有価証券評価差額金の増加28,364千円によるものです。
当事業年度における現金及び現金同等物は1,194,594千円と前年同期末と比べ178,717千円の減少となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、401,591千円の純収入(前年同期は162,658千円の純収入)となりました。これは主に税引前当期純利益543,812千円、減価償却費の計上199,570千円、仕入債務の増加256,357千円による増加要因と棚卸資産の増加249,941千円、売上債権の増加306,450千円による減少要因によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、467,331千円の純支出(前年同期は292,329千円の純支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得29,231千円、無形固定資産の取得351,871千円、長期前払費用の取得86,236千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、106,447千円の純支出(前年同期は106,927千円の純支出)となりました。これは主に配当金の支払額104,167千円によるものです。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
(注2)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。
(注3)有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債(リース債務を除く)を対象としています。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、当事業年度末日における資産及び負債、会計年度における収益及び費用並びに開示に影響を及ぼす見積りを必要としています。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案して合理的に見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性のため実際の結果とは異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
該当事項はありません。
該当事項はありません。