第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)提出会社の経営指標等

回次

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

決算年月

2020年8月

2021年8月

2022年8月

2023年8月

2024年8月

売上高

(千円)

1,039,779

1,259,318

1,978,230

2,775,469

2,766,251

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

886,558

259,703

181,757

379,757

286,672

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

1,031,633

350,425

196,366

421,598

218,712

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

3,114,578

3,114,578

100,000

732,787

832,282

発行済株式総数

(株)

 

 

 

 

 

普通株式

7,711,400

4,405,200

7,711,400

8,598,900

9,260,900

A種優先株式

156,000

B種優先株式

1,473,500

C種優先株式

1,676,700

純資産額

(千円)

2,338,174

1,985,863

1,793,709

3,480,883

3,898,061

総資産額

(千円)

2,553,782

2,378,477

2,159,798

4,109,491

4,239,819

1株当たり純資産額

(円)

302.67

876.85

232.02

404.28

420.49

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益

又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

173.22

65.54

41.18

53.41

24.30

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

43.43

21.04

自己資本比率

(%)

91.4

83.4

82.8

84.6

91.8

自己資本利益率

(%)

16.0

5.9

株価収益率

(倍)

99.04

86.67

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

152,760

253,494

460,532

760,011

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

405,343

14,061

5,638

28,569

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

37,413

3,958

1,241,104

116,955

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

2,108,133

1,844,536

3,540,535

2,868,910

従業員数

(人)

66

58

82

103

125

(外、平均臨時雇用者数)

 

(14)

(11)

(12)

(11)

(12)

株主総利回り

(%)

39.8

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(-)

(-)

(-)

(-)

(119.0)

最高株価

(円)

10,300

6,160

最低株価

(円)

4,190

1,553

 

 (注)1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.持分法を適用した場合の投資利益については、当社は関連会社を有していないため記載しておりません。

3.第9期の1株当たり純資産額については、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して算定しております。

4.第8期から第10期までの潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。第11期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、当社株式は2023年6月13日に東京証券取引所グロース市場に上場したため、新規上場日から第11期末までの平均株価を期中平均株価とみなして算定しております。

5.第8期から第10期までの自己資本利益率は、当期純損失であるため記載しておりません。

6.第8期から第10期までの株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

7.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

8.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第10期の期首から適用しており、第10期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

9.営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物の期末残高については、第8期はキャッシュ・フロー計算書を作成していないため、記載しておりません。

10.第8期、第9期及び第10期は、事業拡大に伴う人件費等の増加により、経常損失及び当期純損失を計上しております。また、同様の理由により、第9期及び第10期の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっております。

11.第12期の営業活動によるキャッシュ・フローは、助成金相当額を未収計上したことによる未収入金の増加等を要因にマイナスとなっております。

12.第9期の投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の清算による収入、敷金の回収による収入等により405,343千円の収入となっております。

13.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

14.2023年6月13日付をもって東京証券取引所グロース市場に株式を上場いたしましたので、第8期から第11期までの株主総利回り及び比較指標については記載しておりません。なお、第12期の株主総利回り及び比較指標は、2023年8月末を基準として算定しております。

15.最高株価及び最低株価は東京証券取引所グロース市場におけるものであります。なお、2023年6月13日付をもって同取引所に株式を上場いたしましたので、それ以前の株価については記載しておりません。

16.当社の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しております。なお、第9期以降の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりますが、第8期の各数値については、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

17.当社は、2020年3月2日開催の取締役会において、A種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式のすべてにつき、定款に定める取得条項に基づき取得することを決議し、2020年3月23日付で自己株式として取得し、対価として普通株式を交付しております。また、当社が取得したA種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式は、2020年3月23日付で会社法第178条に基づきすべて消却しております。

18.2020年3月2日開催の取締役会決議により、2020年3月25日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行いましたが、第8期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

19.2020年11月30日開催の定時株主総会決議により、2020年12月1日付で普通株式の一部をA種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式に変更しております。

20.2022年8月8日開催の臨時株主総会の決議により、定款の一部変更を行い、A種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式に関する定款の定めを廃止し、同日付でA種優先株式156,000株、B種優先株式1,473,500株及びC種優先株式1,676,700株は普通株式3,306,200株となっております。

 

2【沿革】

 当社代表取締役CEOである岡田陽介は、2012年に発表された機械学習分野における技術革新であるディープラーニングをきっかけとして当社を設立いたしました。当社は「ゆたかな世界を、実装する」という企業理念のもと、「デジタルプラットフォーム事業」を展開しております。

 

 当社の設立以降の沿革は、以下のとおりであります。

年月

概要

2012年9月

東京都渋谷区東に株式会社ABEJA(資本金1,000千円)を設立

2012年10月

本社所在地を東京都港区南麻布に移転

2013年6月

移動体付随情報表示装置株式会社を吸収合併

2014年8月

本社所在地を東京都港区六本木に移転

2014年12月

販路の拡大を目的に、salesforce.com, Inc.と資本業務提携

2015年10月

小売流通業向けのディープラーニングを活用した店舗解析SaaS「ABEJA Dashboard(現:「ABEJA Insight for Retail」)」をリリース

2016年3月

本社所在地を東京都港区虎ノ門に移転

2017年3月

シンガポール法人(ABEJA Singapore PTE. LTD.)を設立

2017年5月

技術パートナーとして、NVIDIA Corporationと資本業務提携

2017年9月

独自AIの開発・運用プラットフォーム「ABEJA Platform」のベータ版を提供開始

2017年12月

「ABEJA Platform」にアノテーション機能を追加し提供を開始

2018年2月

自社AIカンファレンス「ABEJA SIX 2018」を初開催

2018年2月

「ABEJA Dashboard」を「ABEJA Insight for Retail」としてリニューアル

2018年2月

AIの実装・運用を支える「ABEJA Platform」をリリース

2018年3月

本社所在地を東京都港区白金に移転

2018年11月

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より「プライバシーマーク」付与の認定

2019年3月

自社AIカンファレンス「ABEJA SIX 2019」を開催

2019年7月

AIの倫理・法・社会的課題を討議する有識者委員会「Ethical Approach to AI(EAA)」発足

2019年10月

米国法人(ABEJA Technologies, Inc.)を設立

2020年9月

本社所在地を東京都港区北青山に移転

2021年1月

米国法人(ABEJA Technologies, Inc.)を清算

2021年4月

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進を目的に、SOMPOホールディングス株式会社と資本業務提携

2021年7月

シンガポール法人(ABEJA Singapore PTE. LTD.)を清算

2021年10月

DX推進を目的に、ヒューリック株式会社と資本業務提携

2022年7月

自社AIカンファレンス「ABEJA SIX 2022」を開催

2022年9月

本社所在地を東京都港区三田に移転

2023年6月

東京証券取引所グロース市場に株式を上場

2024年2月

NEDOが公募した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」に、LLM開発事業が採択

2024年10月

NCGMが公募した戦略的イノベーション創造プログラム(第3期)「統合型ヘルスケアシステムの構築における生成AIの活用」に共同研究開発機関として参画

2024年10月

経済産業省が立ち上げた「GENIAC」の元、NEDOが公募した「競争力ある生成AI基盤モデルの開発(助成)」に採択

 

3【事業の内容】

(1)企業理念

 当社は「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念に掲げ、ミッションクリティカル業務へのAI導入支援のため、基盤システムとなるABEJA Platformの開発・導入・運用を行っております。

 また、当社は一般社団法人日本ディープラーニング協会の設立を支援し、正会員としてディープラーニングをはじめとしたAI技術の普及に取組むとともに、最先端技術の動向把握や先進的な取組事例の創出に努めております。

 2019年3月には約5,200名が参加した自社リアルカンファレンス「ABEJA SIX 2019」を、2020年5月、2022年7月には自社オンラインカンファレンス「デジタルトランスフォーメーション2020」、「ABEJA SIX 2022」を開催しており、マーケットの醸成、AIに関するリテラシーの向上、IT人材の育成を推進しております。

 

(2)事業概要

 当社は、デジタルプラットフォーム事業の単一セグメントとなります。ABEJA Platformを核に事業展開しており、AIの導入支援と周辺サービスの提供を行う「トランスフォーメーション領域」と、その後の人とAIの協調による運用を行う「オペレーション領域」に区分しております。

 これらを含めた当社の事業全体像は図1のとおりであります。

 

0101010_001.png

 

図1:当社の事業全体像

 

 

デジタルプラットフォーム事業として展開する当社のビジネスモデルは、EMS(Electronics Manufacturing Service)に近い形態となります。

当社は、これまでの多種多様な業界・業態300社以上のAI導入を支援する上で培ったナレッジ(EMSにおける製造プロセスノウハウ)を活かし、顧客のニーズにあわせ、ABEJA Platformを核にデジタル版EMSとして、コンサルティングからABEJA Platform上でのオペレーションまでを一括支援しております。顧客はこのデジタル版EMSを採用することで、ABEJA Platformの最先端の技術・ノウハウを活用することができます。

当社の事業を製造業に例えた場合のイメージは図2のとおりであります。

 

0101010_002.png

 

図2:当社の事業を製造業に例えたイメージ図(デジタル版EMS)

 

トランスフォーメーション領域で設計し、ABEJA Platform上に構築したビジネスプロセスを、オペレーション領域で運用する事業モデルとなります。このため、運用におけるフィードバックがビジネスプロセスの精度向上やオペレーションの高度化に結びつくなど、2領域は密接に連携しております。

 

 

 

① ABEJA Platform

a.ABEJA Platform概要

 ABEJA Platformは、ミッションクリティカル業務における堅牢で安定的な基幹システムとアプリケーション群であり、生成AIをはじめとする最先端技術を人とAIの協調により運用するプラットフォームとなります(図3)。

 ABEJA Platformは、大きく6つのレイヤーで構成されております。顧客企業は必要なデータをABEJA Platformに蓄積することにより、コンピューティングリソースの管理やセキュリティを担保した環境の中で、データ加工等を行い、当該データとAIを組み合わせることにより、ミッションクリティカル業務におけるアプリケーションを構築し、人とAIの協調によって運用することができます。

 

0101010_003.png

 

図3:ABEJA Platform

 

また、ABEJA Platformの強みとして、数多くの導入・運用実績から安定した品質を素早く提供できる点などが挙げられます。

ABEJA Platformにおけるコア技術については、特許(「機械学習又は推論のための計算機システム及び方法(PCT/JP2018/3824)」)を取得しており、競合他社への牽制、優位性の一要素になっているものと考えております。また、2023年5月には、「ABEJA LLM Series」をリリースし、生成AI、特にLLMとその周辺領域の機能・技術の提供を開始しております。

 

ABEJA Platformの強み

開発速度の向上・早期運用開始

・既に実装されたモジュールを即座に提供することが可能

高い品質安定性

・過去の案件で実際に使われ、品質安定性について個別の検証を必要としないテスト済みのモジュールを利用可能

最先端の技術をいつでも利用可能

・最新のMLライブラリ、最新技術を用いたMLモデルなど、常に最新で最適な技術を利用可能

AutoMLをベースに本番適用

・AutoMLをベースに本番適用できる先進的なシステム

運用コスト・負荷の低減

・フルマネージドサービスとして提供されているため、MLエンジニア以外の運用人員が不要

堅牢なセキュリティ

・医療、金融、自治体でも実績のある高いセキュリティ

・システムダウンが大規模事故につながるような案件での実装経験

 

 

b.ABEJA Platform上でのHuman in the Loopの仕組みについて

 従来、AIを活用した運用を行うためには、PoC(Proof of Concept:実証実験)を繰り返し行い、AIの精度を継続的に向上させていました。しかし、企業にとってPoC期間は投資期間であり、精度の保証が難しいAIの開発において、継続して投資の意思決定を行うことがボトルネックとなる等、PoCに留まっている企業の割合は63%にものぼります(出所:アクセンチュアニュースリリース「アクセンチュア最新調査―AI活用において、60%以上の企業が概念実証に留まる」2022年6月23日)。

 一方で、ABEJA Platform上で、Human in the Loopの仕組みを利用することにより、PoCを行わず、初期からAIを導入・運用することが可能となります(図4)。

 

0101010_004.png

 

図4:導入プロセスの比較

 

 当社の提供するHuman in the Loopとは、ABEJA Platform上にビジネスプロセスの運用ノウハウや知識をデータとして蓄積するとともに、人が判断や意思決定を補うことで効率的にAIを構築していく仕組みとなります。例えばデータ量が少なく、AIが効果的に学習することができない、高い精度を発揮できない初期段階においても、人が補うことでAIの運用サイクルを成立させることができ、人とAIの協調(人とAIの相互補完)により、当初より実運用を可能としています。また、最終的には、AIが全体のプロセスに導入されることで、AIによる改善を行うことが可能となり、オペレーションの高度化を実現することができます。

 具体的には次のステップにより、ABEJA Platform上でHuman in the Loopの仕組みを実現しております(図5)。

0101010_005.png

 

図5:ABEJA PlatformにおけるHuman in the Loopの仕組み

 図5におけるABEJA Platformの導入と運用について、ステップ2で人が行うビジネスプロセスにABEJA Platformを導入することで、人とAIが協調してオペレーションを実行する環境が創出されます。これにより、運用ノウハウや知識がデータとしてABEJA Platformに蓄積できるようになります。当該環境のもと、日々のオペレーションにより、運用ノウハウや知識のデータ蓄積と活用が進み、ビジネスプロセスのAI化が進んでいきます。また、ステップ4では人とAIが協調しながらオペレーションの高度化を実現、ステップ5まで進むとAIが全体を改善するフェーズに入ります。

 

ステップ

状況

ステップ1(取組前)

 人が実行

・人が、リアル空間で、ビジネスプロセスを行っている

・運用ノウハウや知識は個々人等に分散

ステップ2

 人が実行

・人が行うビジネスプロセスに、ABEJA Platformを導入

・人が、ABEJA Platform上で、ビジネスプロセスを行っている

・運用ノウハウや知識がデータとしてABEJA Platformに蓄積される

ステップ3

 人が実行・AIが支援

・人が、ABEJA Platform上で、ビジネスプロセスを行っている

・ABEJA Platformに徐々に蓄積される運用ノウハウや知識がデータとして活用され、AIが支援、人の負荷が軽減される

・日々のビジネスプロセスにより、データの蓄積と、ABEJA Platformでの活用が進み、さらにAIの支援内容が高度化する

ステップ4

 AIが実行・人が支援

・AIが、ABEJA Platform上で、ビジネスプロセスを行っている

・人が支援(監督・監査)しており、負荷がさらに軽減される

・運用ノウハウや知識がデータとしてABEJA Platformで活用され、さらに実行内容が高度化する

ステップ5

 AIが実行・AIが改善・人が支援

・AIが、ABEJA Platform上で、ビジネスプロセスを行っている

・AIが様々なビジネスプロセスに導入されており、全体の改善を行うことが可能となる

・人が支援(監督・監査)しており、最終的な改善の意思決定などの重要事項は人とAIが協調して行う

 

 具体的なHuman in the Loopの仕組みを利用した取組事例として、プラント事業者において工場内配管の腐食度の定常的な検査・モニタリングにAIを活用し、人とAIが協調しながらAIが成長する仕組みを構築しております(図6)。

 

0101010_006.png

 

図6:Human in the Loopの仕組みを利用した具体例

c.適用領域の拡大について

 AI、特にディープラーニングは日進月歩の技術進化を辿っており、2012年での画像認識適用から、2023年における自然言語コミュニケーション適用に至るまで、技術の適用領域が拡大されています。それに伴い、当社の提供サービスも適用領域が拡大している状況にあります。

 

d.取組範囲の拡大について

 一顧客において、単一のビジネスプロセスから、複数のビジネスプロセスに取組範囲を広げることにより、重層的に顧客企業のAI導入を推進できます。ABEJA Platformに蓄積済みの連携データを再活用することで、サービス提供の速度を上げていくことが可能となります(図7)。

 

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図7:重層的なデジタルトランスフォーメーションの推進

 

 

② トランスフォーメーション領域とオペレーション領域

 a.トランスフォーメーション領域

 顧客ニーズに対応したABEJA Platformの導入支援とその周辺サービスを提供しており、仕組みづくり・構築フェーズに位置づけられます。なお、仕組みづくり・構築は段階的に進めていくため、多くの収入はフロー型(都度契約)の契約となりますが、一方で長期間にわたる計画的なプロセスとなるため、継続顧客の割合は高くなっております。

   ・継続顧客からの売上比率(注) 81.2%(2024年8月期)

(注)継続顧客からの売上比率は、既存顧客(前事業年度に売上が発生した顧客)の当事業年度の売上高/当事業年度の売上高。

 導入支援にあたっては、経営レベル、全社レベルのビジョンの策定・共有から、ビジョンを具現化するためのプランニング、ビジネスプロセスにあわせたABEJA Platformの導入を伴走型で支援しております。

 また、当社では顧客企業のAI研修等を通じて、企業内のデジタル人材の育成も推進しております。

 

 b.オペレーション領域

 ABEJA Platform上で人とAIの協調による運用を行う運用フェーズに位置づけられます。このため、主な収入はストック型の継続収入となります。

 現状では、小売業、不動産業、製造業、金融業などが対象となり、複数の業界にわたってABEJA Platform上で人とAIの協調による運用を行っております。

 また、オペレーション領域主体の具体例として、ABEJA Platform上に構築したABEJA Insight for Retailを、小売業中心に提供しております。ABEJA Insight for Retailでは、店舗に設置したカメラなどデバイスを通して消費者の動線分析や年代・性別の推定を行い、入店から購買に至る消費者行動をデータとして可視化・数値化することで、店舗の課題を客観的に把握し、運営の改善に繋げることが可能となります。

 

 

 c.具体例

 具体的な取組事例は以下のとおりとなります。

 

顧客業種

取組内容

想定する効果

小売

販売データに基づく販売在庫の自動発注最適化システムの構築・運用

食品サプライチェーンの最適化

プラント

画像データに基づきプラントインフラの定期的検査・モニタリングを行うシステムの構築・運用

保守人員の削減

製造業

トラブル等のデータに基づき対処方法を選定するシステムの構築・運用

トラブル対応コストの削減

電力

稼働データに基づく電力需要予測システムの構築・運用

電力量の効率的コントロール

医療

画像データに基づく疾患検出システムの構築・運用

予防医療と関連疾患の早期発見

介護

介護データに基づく被介護者の自立支援システムの構築・運用

介護従事者の効率性向上、サービス品質向上

金融

アンダーライティング(引受業務)の高度化を行うための支援

引受工数削減、リスクマネジメントの高度化、収益向上

情報

購入データに基づくコンテンツレコメンドシステムの構築・運用

利用者の利便性の向上、購入率の向上

不動産

ハイブリッドワーク(オフィス出社とリモートワーク)下における情報・コミュニケーション格差が発生しないためのオフィス環境の構築・運用

入居者ターゲットの拡充

中間流通

効率化のためにDX化すべきオペレーションを予測するシステムの構築・運用

中間工数の削減

 

 d.ABEJA Platformと2領域の連携

 当社では、トランスフォーメーション領域とオペレーション領域で得た知見を基盤であるABEJA Platformに還元するとともに、2つの領域間でも相互に連携をとる、シナジー効果の高い事業モデルとなっております。2領域で獲得した知見をABEJA Platformに蓄積することで、継続的な効率化や安定性の向上、ユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンスなどの改善を行っております(図8)。

 

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図8:ABEJA Platformと2領域の連携

 

[事業系統図]

 

0101010_009.png

 

用語集

用語

内容

デジタルトランスフォーメーション(DX)

データとデジタル技術を活用することで製品・サービス・ビジネスモデルの変革を行い、新たな競争優位性を作り出すこと。

人工知能

(Artificial Intelligence/AI)

人工知能。学習・推論・認識・判断などの人の知能的な作業・活動を行う人工的な仕組み。

機械学習

(Machine Learning/ML)

コンピュータが、大量のデータから反復的に学習することでルールやパターンを見つけ出し、それをもとに分類や予測を行うアルゴリズムやモデルの総称。

深層学習

(Deep Learning/DL)

機械学習の一種。人間の脳神経回路を模したニューラルネットワークを多層にしたアルゴリズムの総称。

従来は人が行っていたデータから潜在的な特徴を抽出する作業をコンピュータが行うことが特徴。

生成AI

(Generative AI/GAI)

学習データをもとに、テキストや画像など新たなデータを生成するAI(人工知能)のこと。

大規模言語モデル

(Large Language Model/LLM)

巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された大規模言語モデルのこと。

Human in the Loop

(HITL)

段階的に運用ノウハウや知識データを蓄積し、人とAIが協調してオペレーションする環境を創出する仕組み。

EMS

(Electronics Manufacturing Service)

電子機器をはじめとした他社の製品の製造を請け負うサービスのこと。

EMSは、規模の経済を働かせ製造コストを抑えるといったモデルで拡大、近年では請け負う製品領域が多様化しており、また、サービス領域も製造のみならず設計、保守運用に拡がりを見せている。

PoC

(Proof of Concept/実証実験)

構想、企画したシステムが意図した結果を生み出すかを確認するために、AIの精度などの不確実性が高い部分に絞り実験的に検証すること。

AutoML

(Automated Machine Learning)

データ収集、データの加工、モデルの生成などの機械学習のプロセスを自動化する技術や手法、概念のこと。

BaaS

(Backend as a Service)

アプリケーションのバックエンド機能を提供するクラウドサービス。

ABEJAでは、属性推定や需要予測等のAIを、一定程度の精度が担保された状態で予め準備し、顧客が簡単に利用できるように提供。

RAG

(Retrieval Augmented Generation)

LLMにプロンプトを入力すると、そのプロンプトをもとに外部データから関連する部分を取り出し、それを元に回答を生成する方法のこと。

Agent

プロンプトで入力した内容をもとにLLMが必要なアクションを考え、コンピュータ上でそのアクションを実行する機能のこと。

Fine-tuning

既に学習済みのモデルに、特定の用途を見据えて再学習を行うこと。

事前学習

 (Pre-Training)

モデルに基本的な言語能力や語彙、知識を習得させるために自己教師あり学習を行う手法のこと。

事後学習

 (Post-Training)

Pre-Trainingしたモデルを、ユーザが使いやすい応答をするように追加で学習を行うこと。

ガードレール

LLMの入力と出力を監視するアルゴリズムのこと。

アノテーション

AIが学習する教師データ(正解データ、ラベル)を作成するため、画像やテキストなどのデータに関連する情報を注釈として付与する作業のこと。

ユーザーインターフェース(UI)

ユーザーがサービスを利用する際に触れる操作画面や操作方法などの、ユーザーとサービスの接点を指す。

ユーザーエクスペリエンス(UX)

製品やサービスを通して、ユーザーが感じる使いやすさや印象といったユーザー体験のこと。

 

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

(百万円)

主要な事業の内容

議決権の所有割合又は被所有割合

(%)

関係内容

(その他の関係会社の親会社)

 

 

 

 

 

SOMPOホールディングス株式会社

(注1)

東京都新宿区

100,045

保険持株会社

被所有

間接18.31

業務提携

役員の受入(1名)

(注2)

(その他の関係会社)

 

 

 

 

 

SOMPO Light Vortex株式会社

東京都新宿区

12,198

デジタル関連事業

被所有

直接18.31

業務提携

役員の受入(1名)(注2)

(注)1.有価証券報告書の提出会社であります。

2.SOMPOホールディングス株式会社及びSOMPO Light Vortex株式会社から当社役員に受け入れている者は、同一の者であります。

 

5【従業員の状況】

(1)提出会社の状況

 

 

 

 

2024年8月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

125

12

36.5

2.5

9,062

(注)1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は、デジタルプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

4.当期中において従業員が22名増加しております。主な理由は、業容の拡大に伴い期中採用が増加したことによるものであります。

 

(2)労働組合の状況

 当社において労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

(3)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 当社は、管理職に占める女性労働者の割合及び労働者の男女の賃金の差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定による公表項目として選択していないため、記載を省略しております。

 男性労働者の育児休業取得率については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組み (3)人的資本に関する指標及び目標」に記載しております。