文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、「感性に訴える こだわりのもの造りを通じて お客様のライフスタイルを より個性豊かなものに演出する事に 挑戦し続ける」との経営理念に基づき、次の5項目を経営方針としております。
① お客様の立場で行動する
② 全ての品質を向上する
③ 世界的視野で行動する
④ 市場は自ら創造する
⑤ 環境との調和を図る
当社は、収益重視の経営体質を目指しているため、売上高と経常利益を重要な経営指標として位置づけております。
当社グループが主とするアフターマーケットをとりまく環境は、アフターコロナによる消費行動の多様化により、特に海外市場において、ユーザーからの引き合いが減少し、現地代理店の在庫調整が進む状況にあります。これにともない、コロナ禍での需要拡大によって生まれた市場の追い風が、徐々に平常化しつつあります。また、当社の主要ターゲットであるスポーツタイプの車両においても、新型車の車両納期遅延や受注停止が発生しており、これに連動した新規商材の売れ行きに影響が見受けられます。これらの市場環境をふまえ、当社はブランド力の強化に努めるとともに、スポーツタイプ車両向け新商材の開発スピードをさらに高め、市場投入のタイミングを最適化することでお客様とのつながりを深めて、顧客ニーズに即した新商材の企画・開発・販売を推進しました。しかし、海外市場の需要落ち込みの影響を完全には補えず、売上高は前期を下回る結果となりました。
今後の自動車業界においては、カーボンニュートラルの達成に向けた、欧州諸国を中心とする排出規制や燃費基準強化の動きが活発化しており、これに対応した電動化への加速が主要テーマとなっています。国内の各自動車メーカーも、さらなる電動化に向け、EⅤ・HVの開発に注力するとともに、製造から廃棄までの温室効果ガス削減をめざして、再生エネルギーの活用やリサイクル技術の向上を進めております。また、自動運転技術の進歩や車両のコネクテッド化も著しく、各自動車メーカーがコネクテッドサービス対応車種をリリースしております。カーボンニュートラル実現のための研究分野では、内燃機関に使用する脱炭素燃料の研究や、合成燃料に必要な二酸化炭素の吸脱着に関する研究も進んでおります。
このような環境のなか、当社は以下の課題を経営目標として掲げ、その実現に向けた施策を推進してまいります。
① 従業員の力量向上を目指し、eラーニングや動画マニュアルを活用して習熟度を高める取り組みを進めてまいります。これに加え、職場環境の改善を図り、心から感謝の言葉を伝え合える文化の醸成にも努めてまいります。また、評価制度の改定を進めていくとともに、リクルーティングの質を高めるためにダイレクトリクルーティングやSNSを積極活用してまいります。
② 品質管理の強化に向け、品質不良を未然に防ぐ体制の構築を進めるとともに、発生した不具合に対しては迅速かつ的確に対処する仕組みの整備強化を図ります。各部門のTPM活動を促進し、その進捗を年次報告として全部署で共有してまいります。
③ 新規商品の早期展開でお客様を笑顔にすることを目標に、開発部門と営業部門が密に連携し、新商品の価値をより強力に伝えてまいります。開発部門では新規開発と量産後の対応を分業化し、開発効率を向上させてまいります。また、製造部門ではマフラー商材の生産技術を強化し、稼働率向上を図ってまいります。営業部門は、グローバルメディア展開を含む商材ごとの担当者選任体制の強化を進めてまいります。
④ 子会社との連携強化を通じ、新たな市場への挑戦を進めてまいります。米国、英国、中国、タイの各子会社との連携を強化し、現地での商材展開や事業計画の推進を加速してまいります。また、国内子会社である日生工業株式会社や株式会社エッチ・ケー・エス テクニカルファクトリーとも協力し、エンジン部品の共同展開やカスタマイズ車両の拡販を進めてまいります。
⑤ 地域社会への貢献と社会課題の解決に向けた取り組みとして、Advanced Heritageコンセプトの推進やカーボンニュートラルを目指した商材の展開、バッテリーパック事業の成長、新規分野への進出を検討し、推進してまいります。地域との連携や工場見学の実施を通じて、当社の認知度向上にも取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もございます。
(1) ガバナンス
当社グループは、グループ内外の環境認識も踏まえ、中長期的な企業価値向上の観点から、サステナビリティをめぐる課題を極めて重要な経営課題と認識し、グループ全体での戦略的方向性のすり合わせや取り組むべき課題の共有、および課題に向けた業務遂行の指示・監督のために、取締役会が主体となり、各事業部門や子会社からの定例的な業務報告を通じて、業務や計画の進捗状況を確認し、実効的な監督を行っております。なお、当社グループのサステナビリティ関連を含むコーポレート・ガバナンスの状況につきましては、
緊急性を有する課題に対しては、週1回、定例で実施しております取締役ミーティングにて、迅速な意思決定を行います。
① 環境への取組
当社グループでは、サステナビリティを意識した取組として、アフターマーケットの視点からエンジン車両を電動化するためのアプローチや、旧型エンジン車両の燃焼効率の向上に関する開発を進めるとともに、クローズドサーキットでのレース走行にも使用可能なスペックをもつカーボンニュートラル燃料の開発にも注力しております。特に、旧型エンジン車両の燃焼効率の向上に関する開発では、「Advanced Heritage」というコンセプトのもと、旧車をレストアしながら最新の車両以上の魅力を引き出したいと考えるオーナー様向けに、環境性能に配慮した製品の開発を進めております。この取組では、排ガスやCO2排出量を削減するため、現行の最新技術に加え、将来的に自動車業界で採用されると見込まれる最先端技術をチューニングパーツに取り入れ、より環境性能を高めた選択肢を提供することに努めております。
② 人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
当社グループでは、事業をより充実させ、かつ持続的に成長していくためには、従業員への教育推進と、従業員満足度の向上がもっとも重要であると認識し、人的資本経営に積極的に取り組むとともに、従業員のモチベーション・専門性の向上をはじめ、働きやすい職場環境、意見を出し合える闊達な組織づくりに向けた各種施策を通じて、「従業員と会社がともに成長する」ことで、労働生産性の向上や新機軸の発展を通じ、企業価値の向上に努めてまいります。
社内環境整備に関する方針では、主に技術的なテーマを取り上げ、セミナー形式で従業員のテーマへの理解と興味を促す「HIPER SEMINAR」の定期開催や、ベテランの持つ技術の伝承、およびベテランと若手との活発な交流をはかるための動画マニュアル作成ツールの展開、マネジメントスキルやビジネススキル獲得の推進等を通じ、自己研鑽、自己実現を推進するためのeラーニングアプリの展開等を行っております。
今後の当社グループの人的資本、人材戦略については、
サステナビリティ課題のリスクと評価、および機会の識別については、取締役会が統括し、リスク評価の見直しや、リスクの軽減をはかるとともに、毎月定例の取締役会に加えて、毎週定例の取締役ミーティングを設けることで、リスクの発見時に迅速に対応できる管理体制を構築しております。また、必要に応じて弁護士や公認会計士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家にもアドバイスを受けられる体制を整えております。
当社グループは小規模な組織体制であり、自社のサステナビリティに関する指標および目標については、重要と定めた項目がないことから記載を省略しておりますが、人材の育成に関する方針に関しましては、従業員とその家族が安心して生活できるよう、ワークライフバランスや社員一人ひとりのやりがい、キャリア志向に合わせた学びの場の提供等が企業価値向上には欠かせないことから、当社をとりまく環境も踏まえ、今後、目標値の設定および必要な指標についての検討を進めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。当社グループでは、これらのリスクを認識したうえで、当該リスクの発生に伴う影響を極力回避するための努力を継続してまいります。
当社グループは、アフターパーツの総合メーカーとしての高いブランド力を背景にした事業を展開しておりますが、個々の製品分野ごとに競合他社が存在しており、厳しい競争にさらされております。また近年は、自動車メーカーがアフターパーツ市場にも積極的な姿勢を示しており、さらに競争が激化する可能性があります。当社は、お客様のニーズを敏感にとらえ、魅力ある製品をタイムリーに提供することにより、ブランド力の維持・向上を図っておりますが、これができない場合には、売上高および販売シェアが減少するリスクがあります。また、急激に価格競争が進んだ場合には、利益率の低下を引き起こすリスクがあります。
当社グループは、自動車メーカーの販売する自動車に取り付けるパーツの販売を主体とした事業を行っているため、自動車メーカーの展開する商品カテゴリーの変化により、当社グループのユーザー層が変化することがあります。近年では、自動車メーカーが当社グループの得意とするスポーツカーのラインアップを充実させてきており、当社にとって、より付加価値の高いスポーツカー向け製品のラインアップ拡充による売上・利益獲得への追い風となっておりますが、過去にはスポーツカーのカテゴリーが減少し、エコカー・ミニバン・ワゴン・軽自動車が増加したことにより、販売モデルや価格帯が変化し売上高が減少したケースがありました。このように、自動車メーカーが商品戦略を急激かつ大規模に変化させた場合には、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
地震、噴火等の自然災害の発生により、当社グループの生産拠点が損害を受ける可能性があります。当社の生産拠点は静岡県富士宮市に集中しているため、予想される東海地震が発生した場合、施設の損害や復旧費用のほかに、生産活動ができなくなることにより事業活動に障害または遅延をきたす可能性があります。大規模または長期間の障害または遅延が発生した場合には、当社グループの業績と財務状況に悪影響が及ぶリスクがあります。
新たな感染症が世界に蔓延した場合、拡大の規模や収束の時期を見通すことは難しく、業績に与える影響を予測することは困難です。これら感染症による影響が続き、製造受託や開発受託の受注が減少するような場合には、当社グループの業績と財務状況に悪影響が及ぶリスクがあります。
当社グループは、海外で販売している製品の大半が日本国内で生産され輸出されております。急激かつ大幅な円高が発生した場合には、海外における価格競争力を失い、当社グループの業績と財務状況に悪影響が及ぶリスクがあります。
当社グループは、事業活動を行っているそれぞれの国において、安全性、騒音、排気ガス等の環境規制、その他の法規制を受けております。法律の改正により、当社グループの費用負担が大幅に増加するリスクがあります。
当社グループは、当社グループの営業所を通して販売活動を行っているとともに、量販店に対する販売や自動車メーカーに対しての部品・技術の供給を行っております。これらの自動車メーカーや大手量販店に対する売上は、当社グループが管理できない要因により影響を受けることがあります。
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、一部に弱めの動きがみられるものの、景気は緩やかに回復しました。今後も海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融政策などを背景に、所得から支出への前向きな循環メカニズムが徐々に強まることから、景気は緩やかな回復が続くとみられていますが、海外の経済・物価動向や資源価格の動向、あるいは企業の賃金・価格設定行動の積極化による影響等、わが国の経済・物価をめぐる不確実性は引き続き高い状況にあります。また、ウクライナや中東情勢の状況次第では、海外経済への下押し圧力が高まり、わが国経済にも影響するリスクがあります。
海外経済は、総じてみれば緩やかに回復しています。米国では景気は拡大し、先行きにおいても拡大の継続が期待されますが、物価上昇率の下げ止まりにともなう景気下振れリスクには留意する必要があります。中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態となっており、今後も足踏み状態が続くと見込まれています。さらに、不動産市場の停滞や物価下落の継続による影響等に留意する必要があります。タイ王国では、景気の持ち直しに足踏みがみられています。英国では、景気に持ち直しの動きがみられますが、高い金利水準の継続にともなう景気の下振れリスクに留意する必要があります。また、中東地域をめぐる情勢にも留意する必要があります。
このようななか、当社主力であるアフターマーケット事業におきましては、アフターコロナにともなう消費行動の多様化の影響等から、当社最大の海外マーケットである米国市場を中心に、実需の減少、および現地代理店の在庫調整による引き合いの減少がみられました。消費行動の変化に対し、当社では、東京オートサロンをはじめとした国内各種イベントへの出展や、オリジナルイベントへの取り組みを進めるとともに、米国のSEMAショーやPRIショー、中国のGTショー等、各国で開催される主要なイベントでもデモカーや新製品の積極的な露出を試みたほか、新製品の上市による需要の掘り起こしにも注力し、結果国内市場では、前期比増収を確保いたしましたが、米国市場、および景気の足踏みが続く中国市場をはじめとする一部地域向けの売上高の落ち込みをカバーしきれず、海外市場では前期比で減収となりました。以上の結果、アフターマーケット事業における売上高は前期を下回りました。
アフターマーケット以外の分野につきましては、コロナ禍の影響が薄まったことによる、委託企業からの製造受託売上や開発受託売上の増加はありましたが、ガソリンとガス燃料とを併用させるBi-Fuel事業の縮小等が影響したこと等から、売上高全体では前期を下回りました。以上の結果、当連結会計年度における連結売上高は9,004百万円(前期比2.6%減)となりました。
損益面では、円安の進行により、外貨建て売上高の円換算値での増加が売上総利益を押し上げた部分はありましたが、物価高による原材料や消耗品等の仕入コストの増加に加え、賃上げの影響等もあり、売上総利益率は40.6%と、前期を0.4ポイント下回りました。販売費及び一般管理費では、主に北米向けの売上の減少や運賃相場の下落により、販売運送費が前期比で大きく減少しましたが、昇給にともなう人件費の増加や、販促活動の推進にともなう広告宣伝費の増加、設備投資にともなう減価償却費の増加等により、販売費及び一般管理費全体では前期比89百万円の増加となりました。以上のことから、営業利益は418百万円(前期比34.5%減)となりました。
また、経常利益は476百万円(前期比34.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は347百万円(前期比22.9%減)となっております。親会社株主に帰属する当期純利益の減益幅が営業利益や経常利益の減益幅を下回った要因には、特別損益において製品補償引当金の戻入益が発生したことや、前期にて特別損失に計上した製品補償費がなくなったこと、および車両等の売却を通じ、固定資産売却益の計上があったこと等があげられます。
b.財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ5百万円減少し、13,340百万円となりました。このうち流動資産は、前連結会計年度末に比べ615百万円増加し、6,912百万円となりました。これは主に、お客様をお待たせしない体制を作るための政策的な在庫の積み増しにより棚卸資産が173百万円、売掛金が171百万円、有価証券が127百万円、それぞれ増加したことによるものです。固定資産は、前連結会計年度末に比べ620百万円減少し、6,428百万円となりました。これは主に、投資有価証券が667百万円減少したことによるものです。なお、有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ115百万円増加しており、これは主に建設仮勘定と、機械装置及び運搬具の増加によるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ333百万円減少し、3,022百万円となりました。このうち流動負債は、前連結会計年度末に比べ358百万円減少し、2,085百万円となりました。これは主に、その他流動負債が334百万円増加したものの、電子記録債務等の振り出しから満期日までの期間を短縮したことにより、電子記録債務が301百万円、短期借入金が132百万円、未払法人税等が127百万円、支払手形及び買掛金が100百万円、それぞれ減少したことによるものです。固定負債は、前連結会計年度末に比べ25百万円増加し、937百万円となりました。これは主に、長期借入金の増加によるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ328百万円増加し、10,318百万円となりました。これは主に、配当金の支払が113百万円ありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益が347百万円あったことによる利益剰余金の増加によるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)残高は、前連結会計年度末に比べ127百万円増加し、1,522百万円となりました。
なお、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果取得した資金は380百万円(前期は694百万円の取得)となりました。これは主に、仕入債務の減少額412百万円、法人税等の支払額290百万円等の資金の減少要因がありましたが、減価償却費666百万円、税金等調整前当期純利益525百万円等の資金の増加要因があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は12百万円(前期は822百万円の使用)となりました。これは主に、有価証券の償還額1,073百万円等の収入に対し、有形固定資産の取得額615百万円、投資有価証券の取得額304百万円等の支出があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は243百万円(前期は329百万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額112百万円、借入金の減少額108百万円等の減少要因があったことによるものです。
③ 生産、受注および販売の実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたり重要となる会計方針等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度は、中期経営計画「51-53rd Tune The Next ~その先に挑め~」(2024年8月期から2026年8月期まで)の初年度にあたります。当社では、同中期経営計画において、インナーブランディングの強化をはじめ、海外販路の拡大と現地車両向け製品の開発体制の強化、バッテリー基礎開発の進展と、エンジン車の電動化やHV化等、当社独自の技術を織り込んだコンプリートカーの事業化、IoT・AI技術を取り入れた電子制御製品の展開、カーボンニュートラル製品への注力をテーマに、各種施策を推進してまいりました。
当期は、連結売上高9,400百万円、営業利益530百万円、経常利益540百万円、親会社株主に帰属する当期純利益360百万円の計画でスタートいたしましたが、連結売上高は9,004百万円(達成率95.8%)と計画を395百万円下回りました。これは主に、巣ごもり特需等の影響から、前年度に想定以上の売上高を記録した米国にて、アフターコロナにともなう消費の多様化等をうけた顧客からの引き合いの減少と、米国販売代理店での在庫調整の動きが重なったことによるものです。また、アジア圏においても、シンガポール市場等では売上が伸びましたが、中国市場における顧客からの引き合いの減少等から、売上高は計画比で減少しました。売上高を地域別で見ますと、国内のアフターマーケットは前期比で3.8%の増加となりましたが、製造受託・開発受託事業につきましては、コロナ禍の影響が薄まったことによる委託企業様からの製造受託、開発受託の増加はあったものの、ガソリンとガス燃料とを併用させるBi-Fuel事業の事業縮小等が影響したこと等から、前期比で0.4%の減少となりました。これらの結果、国内全体の売上高は前期比142百万円の増加(2.4%増)となりましたが、海外の売上高につきましては、北米にて前期比362百万円の減少(23.9%減)、アジア圏にて前期比58百万円の減少(4.1%減)となりました。なお、ヨーロッパの売上高は、前期比18百万円の増加(8.5%増)となりました。
損益面では、円安の進行により、外貨建て売上高の円換算値での増加が売上総利益を押し上げる部分はありましたが、物価高による原材料や消耗品等の仕入コストの増加に加え、賃上げの影響等もあり、売上総利益率は40.6%と、前期を0.4ポイント下回りました。販売費及び一般管理費では、主に北米向けの売上の減少や運賃相場の下落により、販売運送費が前期比で大きく減少しましたが、昇給にともなう人件費の増加や、販促活動の推進にともなう広告宣伝費の増加、設備投資にともなう減価償却費の増加等により、販売費及び一般管理費全体では前期比89百万円の増加となりました。以上のことから、営業利益は418百万円(前期比34.5%減)となりました。また、経常利益は476百万円(前期比34.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は347百万円(前期比22.9%減)となっております。親会社株主に帰属する当期純利益の減益幅が営業利益や経常利益の減益幅を下回った要因は、特別損益において製品補償引当金の戻入益が発生したことや、前期にて特別損失として計上した製品補償費がなくなったこと、および車両等の売却を通じ、固定資産売却益の計上があったこと等があげられます。
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和と社会経済活動の正常化が進展し、旅行や外食、アミューズメントへの支出等、ユーザーの消費行動が多様化しておりますが、この変化が、これまで巣ごもり消費の影響で堅調に推移していた当社の業績に影響を与える可能性があります。また、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢に加え、台湾海峡とその周辺地域における中台関係の緊張感の高まりなどの地政学的なリスクも高まっており、これらに起因する資源価格やエネルギー価格の上昇、あるいは為替の大幅な変動による物価の上昇、半導体の供給不足等も、当社業績のリスクとなりえます。
このような状況のなか、当社では、引き続きトヨタGR86やGRヤリス、GRカローラ、スバルBRZ、WRX等、当社が重点車種として積極的に新製品の投入を行うスポーツタイプの車両に注力していくとともに、今後の発表が予想されるトヨタGR86やGRスープラ、スバルBRZ、スズキスイフトスポーツ等、ビッグネームのフルモデルチェンジをはじめ、復刻が予想されるホンダプレリュードやスズキカプチーノ、さらにはトヨタGRスターレットやホンダS1000の発表等、アフターマーケットを大いに活性化しうるさまざまな新型車両のリリースに対し、さらなる開発・調達・製造のスピードアップと、お客様をお待たせしないデリバリー体制の強化をもって向きあい、お客様の需要に沿った新商材をタイムリーに上市することで、機会の最大化をはかってまいります。また、スポーツカー以外の車両カテゴリーへの商品展開や、ブランディングの強化を背景とした新たな国・地域への進出等、お客様の裾野をより拡げていく活動も並行して展開し、さらなる売上の伸展にも注力してまいります。このほかにも、お客様と触れ合う機会をより増やすことで、体感、体験に訴えるものづくり、ことづくりに注力し、お客様のニーズをとらえ、お客様の期待を上回る新規商材の迅速かつ積極的な開発・上市に取り組むとともに、売れ筋在庫の積み増しによる、お客様をお待たせしない体制づくりを継続してすすめ、機会損失の最小化を目指します。社内の環境整備におきましては、新たに導入したeラーニングシステムや動画マニュアルを通じ、ベテランと若手が交流する機会を増やすとともに、マネジメントの強化や従業員の自己実現にも力を注ぐことで、より強固かつ効率的な組織づくりに注力してまいります。
当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための原材料購入費用および製造費用、販売費用、研究開発費、生産能力強化のための設備投資費用等であります。
これらの資金需要への対応は、主に自己資金および金融機関からの借入による資金調達を基本としております。
当社の資金状況は、「(1)経営成績等の状況の概況 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高が前連結会計年度末に比べ127百万円増加し、1,522百万円となりました。
流動性の確保に関しましては、当連結会計年度における流動比率は331.5%、当座比率は175.2%となっており、十分な流動性を確保していると認識しております。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
該当事項はありません。
当社グループは、エンジン技術をベースとして、多様化、高度化する顧客ニーズに応えうる製品を提供していくことを基本方針にして研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
なお、当連結会計年度における主な成果としては、以下のようなものがあります。
新規事業に向けた取り組みでは、前連結会計年度に続き、環境省より公募された「令和5年度バッテリー交換式EV開発および再エネ活用の組み合わせによるセクターカップリング実証事業」に、複数のパートナー企業とともに共同実施者として参加し、バッテリー交換式のEVトラック、それらに搭載するバッテリーパック、およびバッテリーパック交換ステーションの開発による商用車のEV化の促進と、物流網の脱炭素化を目指す取り組みを進めてまいりました。また、協業関係にある台湾のXing Mobility社と共同で、液浸バッテリーに関する基礎開発を進め、バッテリー分野の事業化への知見を蓄えてまいりました。これらバッテリーに関する新たな知見と、当社が従来より携わってきたBi-Fuel事業とを組み合わせた新たな取り組みとして、当社は、2024年度の東京オートサロンにて、トヨタハイエースを電動化、ガスハイブリッド化した「HKS e-HIACE “Multi Energy” Concept」を発表しました。こちらは現在開発中のハイブリッド・コンバージョンキットを採用し、電力とモーターで車両を駆動させるとともに、液体燃料、気体燃料の双方で稼働可能なエンジンを発電機として使用するコンセプトモデルです。
アフターマーケット事業における成果としては、当社基幹商材のマフラー商材において、当社独自の薄肉曲げ技術を活かし、ステンレス製マフラー最軽量となる7.8kg(純正重量比52%軽減)を実現した最軽量GR86用マフラー、「Hi-Power Spec LⅡ for CUP」を発売しました。また、同じく基幹商材であるサスペンション商材では、現地車両向け商材開発の一環として、「HIPER MAX S テスラ モデルY用」を発売。エンジン商材では、トヨタGRヤリス、GRカローラ向けのエンジン、G16Eの排気量を1.75Lにアップグレードする「CAPACITY UPGRADE KIT G16E 1.75L KIT LOW-COMP STEP3」と、トヨタGR86、スバルBRZ向けのエンジン、FA24を2.5Lにアップグレードする「SHORT BLOCK FA24 2.5L HIGH COMP」を発売し、電子商材では、ベーシックモデルのブーストコントローラー「EVCーS」の機能を拡張し、操作性を高めた後継機「EVC-SⅡ」を発売しました。
その他の製品分野におきましても、ターボチャージャーASSYのラインアップの拡充や、既存ラインアップの新車種・新グレードへの展開を進めてまいりました。