第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針

 当社グループは、「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」というミッションのもと、全てのビジネスパーソンのためのプラットフォームとしてビジネスSNS「Wantedly(ウォンテッドリー)」を運営しております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは持続的な成長を通じた企業価値の向上を目指しており、営業収益及び営業利益を重要な経営指標と位置づけ、企業価値の向上を図ってまいります。

 

(3)経営戦略等

 当社グループは、中長期的な企業価値の向上を目指し、主力プロダクトである「Wantedly Visit」の継続的な開発・改善を行いながら、新規事業領域の「Engagement Suite」を積極的に推進していく方針であり、以下の点を重点的に行ってまいります。

1.Visit事業の提供価値強化

 当社グループの2024年8月末における国内企業ユーザ数は4.2万社であり、2012年のサービス開始以降堅調に増加してきました。「採用」サービスはサブスクリプション型のビジネスモデルであるため、新規の有料企業数の増加、解約企業数の減少及び顧客あたりの利用単価の向上が営業収益の成長につながります。推薦アルゴリズムの改善を行うなど機能改善を通じて企業や個人ユーザへの提供価値を高め、新たな価値提供により利用単価を向上させ、また中長期的には有料企業数の増加を図ることで、継続成長を目指してまいります。

2.新規事業領域への投資を加速

 現在、当社グループの収益の大部分は「Wantedly Visit」の国内市場における「採用」サービスから生み出されております。主力プロダクトである「Wantedly Visit」の継続的な開発・改善を図る一方で、「Wantedlt Visit」で獲得した利益を、新規事業である「Engagement Suite」と「Wantedly Hire」に投資し、中長期的に当社の成長を牽引する事業となるよう推進してまいります。

 

(4)経営環境

 我が国の経済は、緩やかな景気回復に加え、物価高と賃金上昇の傾向は継続する見通しです。一方で、世界的な金融引き締め局面からの転換期を迎える中、米中対立やウクライナ紛争の長期化といった地政学リスクを抱えており依然として先行き不透明な状況が継続しております。他方、国内における有効求人倍率は堅調に推移しております。また、就労者の転職活動や学生の就職活動は多様化しており、様々な採用手法を用いた採用活動が行われております。労働人口の減少等による構造的な人手不足が生じていることに加え、人材の流動性についても益々高まっており、企業の採用需要は継続して強まるものと認識しております。

 

(5)対処すべき課題

 当社グループでは、下記の事項を対処すべき課題として取り組みを進めております。

① 収益機会の拡大及び新たな収益機会の創出

 当社グループはビジネスSNSプラットフォームとして「Wantedly」を運営しており、企業ユーザ、個人ユーザのための様々なサービスを提供しております。

 現在は主に「Wantedly Visit」のサービスにて収益を得ておりますが、「Wantedly Visit」及び「Engagement Suite」の継続的な開発・改善による提供価値の拡大及び顧客獲得力の強化、加えて、新規事業領域の「Wantedly Hire」を積極的に推進してまいります。

 

② システムの安定性の確保

 当社グループは、インターネット上でサービス提供を行っており、アクセス数の増加を考慮し、サーバー設備の強化、負荷分散システムの導入等を継続的に行い、システムの安定性確保に取り組んでまいります。また、品質保証体制を整備するための人材の確保や、サーバー等のインフラ費用の抑制を目的とした最適な調達に取り組んでまいります。

 

③ 事業組織体制の強化

 今後の事業拡大及び収益基盤の強化を図るにあたり、優秀な人材の採用及び育成に注力し、これまで同様、生産性が高く効率的な事業運営を意識しつつ、事業規模に応じた組織体制の整備を進めてまいります。

 

④ 情報管理体制の強化

 当社グループは個人情報を含む多くの機密情報を保有しており、情報管理の重要性を強く認識しております。社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、セキュリティシステムの整備等により、情報管理体制の強化を図ってまいります。また、ソフトウェアの設計と開発において、運用ルールの見直しやセキュリティ対策に関する教育を実施するとともに、外部業者による脆弱性診断の実施などを通じて、技術的な安全管理の強化を図ってまいります。

 

⑤ 当社サービスの認知度向上

 当社グループはこれまでWebマーケティングの有効活用により、企業及び個人ユーザ等の獲得を図ってまいりました。

 収益機会の拡大のため、当社サービスの認知拡大が重要であると認識しており、各事業毎に効果的なマーケティングチャネルを見極めながら、サービスへの流入拡大施策や広告宣伝及びプロモーション活動を継続的に行うことにより、「Wantedly」並びに「Wantedly Visit」をはじめとした個別サービスの認知拡大を図ってまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」というミッションのもと、仕事に熱中して仕事を心から楽しめる状態(“シゴトでココロオドル”)になれる環境作りに取り組んでおります。当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

 当社グループのサステナビリティに関する方針及び取組は、経営会議で協議・報告を行うとともに、重要なものについては取締役会に報告をいたします。

 当社グループはサステナビリティに関連するリスクも含め、当社グループを取り巻くあらゆる業務や取引における潜在的なリスクを正しく認識し、適切に管理することを経営の最重要課題の一つとして捉え、そのリスク評価及び管理機能の強化を図っております。また、コンプライアンス、個人情報管理、情報セキュリティ管理等においても継続的に改善を行い、従業員に対して研修を実施しております。

 

(2)戦略

1.サステナビリティに関する戦略

 仕事はお金を稼ぐためだけのものではなく、自己実現の手段であると考えており、当社グループでは、自律・共感・挑戦のある適材適所を、一時的でも、局所的でもなく、構造的に生み出し続けることによって、あらゆる人がシゴトに没頭し成果を上げ、その結果成長を実感できるような「はたらくすべての人のインフラ」を構築していきます。当社グループと主たる事業との関連性やステークホルダーとの関係性に鑑みて、以下のような取り組みが重要と考えております。

 

① 働きがいのある仕事とのマッチングとイノベーションへの貢献

 当社グループが展開する、会社訪問アプリ「Wantedly Visit」は、ビジョンを掲げる会社とそうしたビジョンに共感する個人との新しい出会いを提供するマッチングサービスであります。当サービスでは、募集要項に関して給与や福利厚生といった条件面ではなく会社のビジョンや価値観による訴求を推奨しており、個人ユーザは、従来の給与や福利厚生面などの条件面でのマッチングを提供してきた採用媒体では出会うことができなかった企業と出会うことができます。

 従来の人材採用サービスは大企業が顧客の中心となっている一方、「Wantedly Visit」を利用する企業は、創業直後のスタートアップや中小企業など大手人材採用サービス事業者が顧客としてこなかった従業員数100名以下の層が多数を占めております。知名度によらないマッチングを実現し、新たな技術・産業をもつ企業が採用に成功することを通じて、イノベーションの創出に貢献してまいります。

 また、新卒採用の場においても、「Wantedly Visit」における長期インターンシップの募集の増加や、就活生を対象に「キャリアビジョンサポートプログラム」を実施し、企業の知名度ではなく、ビジョンを軸に会社と出会うという体験を通じて、就活生が自身のキャリアビジョンを発見するきっかけを提供しております。

 

② オープンソースソフトウェア(OSS)の活用と普及に向けた取組

 当社グループは、「オープンソースソフトウェア」(以下、「OSS」という。)の利用を通じてサービスの開発・提供を行っております。OSSやOSSコミュニティはソフトウェアエンジニアにとって非常に重要な文化の一つであり、また企業活動に欠かせない要素の一つでもあります。一方で、提供されているOSSのほとんどは直接的な収益の機会を持っておらず、多くは開発者のボランティアに頼っているという側面があり、OSSの維持・継続のために技術的・経済的な支援を必要とする場合があります。また、有志によって開発・メンテナンスされているOSSを積極的に支援することは、当社のミッションである「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」こととも合致しております。このため、当社グループでは、様々なOSSを運営するコミュニティ活動への参加等を通じた支援を行っております。

 

③ 情報セキュリティに関する方針策定・対応

 当社グループは、ビジネスSNS企業として情報セキュリティ強化をサステナビリティの重要な項目に掲げ、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、各種情報の管理体制を整備しております。当社グループは個人情報を含む多くの機密情報を保有しており、情報管理の重要性を強く認識しております。社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、セキュリティシステムの整備等により、情報管理体制の強化を図ってまいります。また、ソフトウェアの設計と開発において、運用ルールの見直しやセキュリティ対策に関する教育を実施するとともに、外部業者による脆弱性診断の実施などを通じて、技術的な安全管理の強化を図ってまいります。

④ 気候変動に対する考え方及び取組

 当社グループは、インターネットを通じてサービスを展開していることもあり、気候変動による直接的影響は僅少であると考えております。しかしながら、当社グループは、「はたらくすべての人のインフラ」として、未来世代に向けた地球環境保全への取組を継続的に実現してまいります。

 具体的には、オンライン上で履歴書に代わるプロフィールを作成することで従来の紙媒体が主流の工程のぺーパレス化を行い、環境負荷低減に貢献しております。また、事業上の契約締結を原則電子契約とし、社内資料の電子化を進めることで廃棄物の削減を遂行しております。

 

2.人的資本への取組

① 人材の多様性の確保と成長支援

 当社グループでは、様々な知識と技能を持つ人材に対して、性別や国籍を問わず門戸を開いており、多様な従業員が個々の強みを活かし成長することが、当社グループとしての長期的な成長につながると考えております。半期ごとの人事評価では、従業員一人ひとりの成果や行動について、直属マネージャーによる評価のみではなく、取締役(社外取締役であるものを除く)と執行役員等で構成される評価会議で多面的に議論を行うことに加え、部下や他部門の従業員からの評価も得られるなど、今後の成長に向けたフィードバックやキャリア形成を支援しております。また、取締役(社外取締役であるものを除く)と執行役員等で構成される人材育成会議を定期的に開催し、経営層や管理職のサクセッションプランを作成・実行しております。加えて、原則週に一回の1on1面談を直属マネージャーと実施し、日常的に成長の支援を実施しております。

 

② 社内環境整備

 当社グループは、個々のライフスタイルにあわせて活躍できるような環境を実現し、従業員エンゲージメントの向上を図るため、フレックスタイム制・在宅勤務の導入、出産・育児・介護休暇制度、各種学習・研修支援制度(書籍購入補助手当・語学学習支援・カンファレンス登壇発表支援制度)といった制度を整備しております。また懇親会費用の補助制度、オンラインの社内報発行といった施策を通じた従業員同士のコミュニケーションの活性化や育児休業からの復職後又は子育て中の従業員を対象としたフォロー体制の強化といった取組を行っております。

 

(3)指標及び目標

 当社グループは、上記において記載した戦略の中でも、「2.人的資本への取組」が特に重要であると考えており、取組に関する指標及び目標と実績は、次のとおりであります。

指標

目標

第13期

2023年8月

第14期

2024年8月

育児休業復職率

100

100%

100

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.リスク管理体制

 当社は、リスク・コンプライアンス管理規程を整備し、これに基づきリスク・コンプライアンス委員会を設置しております。代表取締役が委員長を務めており、組織的なリスク管理を推進しております。

 

2.重要な事業等のリスク及びその対応策

(1)特定サービスの収益依存について

 当社グループの主な収益は「Wantedly Visit」への募集掲載などを管理するサービス利用料であり、収益依存度が高い状況であります。求人市場における他の媒体との競合激化等により、「Wantedly Visit」の利用による収益が減少した場合には、当社グループの業績に大きく影響を与える可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、当該サービスへの依存度を低くするため、収益源の多様化を企図しております。

 

(2)採用市場の動向による業績変動について

 当社グループの主な収益は「Wantedly Visit」への募集掲載などを管理するサービス利用料であり、利用企業の採用計画や雇用情勢等の動向により業績変動の影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、取締役会等において定期的に市場動向や顧客ニーズの変化等についての情報収集に努めており、新たなサービスの開発や営業戦略をはじめとする経営判断を迅速に行うことで、引き続きこれらのリスクの軽減に努めるとともに、新規事業等による収益源の多様化を企図しております。

 

(3)個人情報保護について

 当社グループは、求職者の応募情報や名刺に記載される個人情報を取得しているため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を課されております。

 当社グループは、個人情報の外部漏洩の防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、個人情報の管理を事業運営上の重要事項と捉え、アクセスできる社員を限定すると共に、個人情報適正管理規程等を制定し、全従業員を対象として社内教育を徹底する等、同法及び関連法令並びに当社に適用される関連ガイドラインを遵守し、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。

 しかしながら、当社グループが保有する個人情報等につき漏洩、改ざん、不正使用等が生じる可能性が完全に排除されているとはいえません。従いまして、これらの事態が起こった場合、適切な対応を行うための相当なコストの負担、当社グループへの損害賠償請求又は信用の低下等によって、当社グループの事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得し、社内で運用する他、従業員研修を繰り返し実施する等、これらの情報管理には万全な方策を講じております。

 

(4)組織体制及び人材の確保・育成について

 当社グループは、今後の事業展開に応じて、従業員の育成及び人員の採用を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針であります。しかしながら、人材の確保が思うように進まない場合や、社外流出等何らかの事由によりこれらの施策が計画どおりに進行しなかった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループは、社員が働きやすさとやりがいを持って働けるよう、事業の成長を通して本人が挑戦し成長できる環境を作り、魅力的な人事制度の構築を継続的に推進してまいります。

 

(5)代表取締役への依存について

 代表取締役である仲暁子は、当社グループの創業者であり、創業以来代表取締役を務めております。同氏は、インターネット関連事業及びWebマーケティング等に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において極めて重要な役割を果たしております。

 何らかの理由により同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループは、取締役会等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。

3.その他の事業等のリスク及びその対応策

(1)インターネット関連市場について

 当社グループは、インターネット上においてビジネスSNS事業を提供していることから、PCやモバイル端末等の通信機器の普及、通信ネットワーク回線の増強等により、インターネットの利用環境が引続き整備されていくと共に、同関連市場が今後も拡大していくことが事業展開における前提条件であると考えております。

 当社グループは、今後PCとモバイル端末の両面でより安価で快適にインターネットを利用できる環境が整い、情報通信や商業利用を含むインターネット関連市場は拡大を続けるものと見込んでおります。しかし、今後新たな法的規制の導入、技術革新の遅れ、利用料金の改定を含む通信事業者の動向など、当社グループの予期せぬ要因によりインターネット利用環境の発展が阻害される場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)ソーシャルメディアへの対応について

 当社グループが運営するサイトの利用者のうち一定の割合は、特定のソーシャルメディアからの流入であり、今後につきましてもソーシャルメディアからの流入をより強化すべくソーシャルメディアとのサービス連携強化を実施していく予定でおります。

 しかしながら、ソーシャルメディアによるAPI(ソフトウェアやシステムの連携)制限や各種規約の変更等何らかの要因により、これまでの連携が有効に機能しなかった場合、また、今後の連携が限定された場合、当社グループサイトへの流入が想定を下回り、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当サービスにおいては流入経路の多様化を行ってまいります。

 

(3)競合について

 当社グループは、ビジネスSNS事業を主たる事業領域としておりますが、その中でも主なサービスである「Wantedly Visit」は求人情報メディア、人材紹介会社等が競合となります。当該分野は既に多くの企業が事業展開していることに加え、参入障壁も低く、競争環境が激しい状況にあります。今後において十分な差別化や機能向上等が図られなかった場合や、新規参入等により競争が激化した場合には、当該事業及び当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当サービスにおいては、給与等の条件でのマッチングするのではなく、ビジョンや価値観への共感でマッチングすることにより、そのサービスの在り方そのものから差別化を図ってきております。また登録ユーザのプロフィールの蓄積や採用ニーズの旺盛な高いエンジニア・デザイナーの比率が高いことが優位性につながっております。

 

(4)求人募集の表示について

 利用企業が「Wantedly Visit」への募集掲載にあたり、風紀を乱し犯罪を誘発するような求人募集が掲載されてしまう恐れがあります。違反するような求人情報の掲載が行われた場合や求人募集に対して異なる印象を受ける個人ユーザが増加した場合に、レピュテーション等の影響も含めて、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、「Wantedly Visit」で掲載される求人募集に関して、「表記規程」、「コンテンツ・クオリティ・ガイドライン」を公表しこれらの遵守を求めています。また、「チェックリスト」等の運用ルールを設けており、その徹底を図ることで当社グループのビジョンの浸透、法令遵守及び公序良俗の維持に努めております。

 

(5)海外展開について

 当社グループは、シンガポールに子会社を有しており、将来的に海外事業を拡大する可能性があります。海外展開に際してはその国の法令、制度、政治、経済、商慣習の違い、為替等の様々な潜在的リスクが存在しております。将来的に海外事業を拡大する際には、当該リスクを最小限にするために、事前に十分な対策を講じてまいりますが、それらのリスクに対処できなかった場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、海外事業のリスク管理は、現地のグループ会社と連携し、状況の的確な把握と速やかな対策の協議等、管理体制の向上に取り組んでおります。

 

 

(6)事業拡大及び新規事業に伴う投資について

 当社グループでは、既存事業のサービスの安定稼働やユーザ数の拡大を図るため、継続的にシステムや広告宣伝費等への投資を行っております。また、企業価値を高めるため新規事業への投資を随時検討しております。事業拡大及び新規事業を進めるに当たっては、事業計画を十分に検討した上で実施することとしておりますが、計画策定時点における予想や仮説に基づく部分も存在するため、計画通りに進まない可能性があります。

 このように、当初の事業計画通りに進捗しない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)システム障害について

 当社グループの事業は、通信ネットワークに全面的に依存しており、自然災害や事故等によって通信ネットワークが切断された場合には、当社グループの事業及び業績に深刻な影響を及ぼします。また、サイトへの急激なアクセス増加や電力供給の停止、外部からの不正アクセス等の予測不可能な様々な要因によってシステム障害が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループは、監視システムの利用に加えて組織的・人的な対策と多層防御による技術的対策に取り組んでおります。

 

(8)知的財産権について

 当社グループは、第三者の知的財産権侵害の可能性については、弁護士等と連携し調査によって確認した限りにおいて現時点で侵害はないものと認識しておりますが、当社グループの認識していない知的財産権等が既に成立している可能性があります。このような場合においては、当社グループが第三者の知的財産権等を侵害したことによる損害賠償請求や差止請求等、又は当社グループに対するロイヤリティの支払い要求等を受ける可能性があります。その際には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、知的財産権に対する体制の整備・強化を図るとともに、社員への教育・研修を通じて意識向上に努めています。なお、当社グループが保有する知的財産権については、重要な経営資源としてその保護に努めています。

 

(9)法的規制等について

 当社グループの事業を規制する主な法規制として、「電気通信事業法」、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下「プロバイダ責任制限法」という。)及び「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(以下「不正アクセス禁止法」という。)があります。

 電気通信事業法については、通信の秘密の保護等の義務が課されております。また、当社グループは、プロバイダ責任制限法における「特定電気通信役務提供者」に該当し、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信による情報の流通において他人の権利の侵害があった場合に、権利を侵害された者に対して、権利を侵害した情報を発信した者に関する情報の開示義務を課されております。

 不正アクセス禁止法については、「アクセス管理者」として、努力義務ながら不正アクセス行為からの一定の防御措置を講じる義務が課されております。

 これら関連法令において、当社グループが想定しない形で損害賠償請求等を受ける可能性があります。

 その他、インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されてきている状況にあり、今後、インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット関連事業を営む事業者を対象として、新たな法令等の制定や、既存法令等の解釈変更等がなされた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループは、これらの法規制を遵守した運営を行ってきており、今後も社内教育の継続的な実施や管理体制強化を推進してまいります。

 

(10)その他訴訟、係争の可能性について

 当社グループでは、今後何らかの事情によって当社に関連する訴訟、係争が行われる可能性は否定できず、かかる事態となった場合、その経過又は結果によっては、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、法令及び契約等の遵守のため、リスク・コンプライアンス規程を定めて社内教育やコンプライアンス体制の充実に努めております。

 

(11)内部管理体制について

 当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しておりますが、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合は、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規程及び法令遵守を徹底してまいります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国の経済は、緩やかな景気回復に加え、物価高と賃金上昇の傾向は継続する見通しです。一方で、世界的な金融引き締め局面からの転換期を迎える中、米中対立やウクライナ紛争の長期化といった地政学リスクを抱えており依然として先行き不透明な状況が継続しております。他方、国内における有効求人倍率は堅調に推移しております。また、就労者の転職活動や学生の就職活動は多様化しており、様々な採用手法を用いた採用活動が行われております。

 このような事業環境の下、当社グループは主力プロダクトである「Wantedly Visit」の継続的な開発・改善を図るとともに、「Engagement Suite」の提供を進めており、2024年8月末時点で登録企業ユーザ数は4.2万社(※)、登録個人ユーザ数は409万人(※)となりました。

 当社グループの営業収益は基本プランの利用料であるストック収益及びスカウトオプション等の販売のフロー収益の2つの種類に分解して認識しております。顧客単価の改善によりストック収益は堅調に増加したものの、フロー収益は低調に推移したことにより、当連結会計年度の営業収益は、4,722,125千円(前年同期比0.5%減)、営業利益は1,594,370千円(同0.3%増)、経常利益は1,579,367千円(同1.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,036,414千円(同4.1%増)となりました。

 なお、当社グループは「ビジネスSNS事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

※ 国内向けサービスのユーザ数を示しております。

 

② 財政状態の状況

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は4,960,062千円で、前連結会計年度末に比べて742,699千円増加しております。現金及び預金の増加820,927千円が主な要因であります。

 

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は308,140千円で、前連結会計年度末に比べて25,707千円増加しております。繰延税金資産の増加35,476千円が主な要因であります。

 

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は1,262,505千円で、前連結会計年度末に比べて84,456千円減少しております。未払金の減少134,649千円及び賞与引当金の増加72,586千円が主な要因であります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は4,005,697千円で、前連結会計年度末に比べて852,862千円増加しております。配当による利益剰余金の減少189,947千円及び親会社株主に帰属する当期純利益の計上1,036,414千円が主な要因であります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末と比べて820,927千円増加し、4,521,960千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動により得られた資金は1,023,819千円(前連結会計年度は864,800千円の収入)となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益1,579,367千円の計上、法人税等の支払額563,548千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動により使用した資金は15,810千円(前連結会計年度は14,692千円の支出)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出16,654千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動により使用した資金は189,242千円(前連結会計年度は92,264千円の収入)となりました。これは、配当金の支払額189,242千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年9月1日

至  2024年8月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

ビジネスSNS事業

4,722,125

△0.5

合計

4,722,125

△0.5

(注)1.当社グループはビジネスSNS事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

2.主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、いずれの販売先についても当該割合が10%未満のため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針及び見積りは後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.営業収益

 当連結会計年度の営業収益は4,722,125千円(前年同期比0.5%減)となり、前連結会計年度と同水準を維持しております。これは主にストック収益が堅調に増加した一方で、フロー収益が低調に推移したことによるものであります。

 

b.営業費用、営業利益

 当連結会計年度の営業費用は3,127,754千円(前年同期比0.9%減)となり、前連結会計年度と同水準を維持しております。これは主に人件費及び外注費が増加した一方で、適切なコストコントロールにより事業効率化を推進した結果、広告宣伝費等が減少したことによるものであります。

 この結果、営業利益は1,594,370千円(前年同期比0.3%増)となりました。

 

c.営業外収益、営業外費用、経常利益

 当連結会計年度の営業外収益は7,994千円(前年同期比65.2%増)、営業外費用は22,998千円(前年同期比24.1%減)となりました。営業外収益は主にその他営業外収益の増加、営業外費用は主に為替差損の減少によるものであります。

 この結果、経常利益は1,579,367千円(前年同期比1.0%増)となりました。

 

d.特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は1,579,367千円(前年同期比1.1%増)となり、法人税等合計542,952千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,036,414千円(前年同期比4.1%増)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの分析の状況・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析につきましては、前記「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 

b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの主な資金需要は、営業や開発の人員拡大、新規事業の開発費用など当社の成長戦略に基づく投資に加え、広告宣伝費、人件費、サーバーの利用料等の営業費用、及び配当金の支払となっております。これらの資金需要は、営業キャッシュ・フローから生じる自己資金によって賄っております。

 なお、当事業年度末における借入金の残高はなく、現金及び預金の残高は4,521,960千円であり、事業運営上必要な資金は確保されていると認識しております。

 また、当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループは、前記「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、サービスの性質、国際事業展開、コンプライアンス等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2024年10月11日開催の取締役会において、本社ビルの建物賃貸借契約の解約合意書の締結及び本社の移転を決議し、2024年10月22日開催の取締役会において、本社の移転先を決議いたしました。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)に記載のとおりであります。

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。