当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針・経営戦略
当社グループは、設立初期から大切にしている “Creating Life of Your Dreams“ ~半歩先の技術で人々の生活を豊かに~ を実現することで、未来社会が抱える課題を解決し、貢献したいと考えております。
そして、人々の生活の便利を実現するために、“世の中のニーズを敏感に察知し、半歩先のソフトウェア技術で「未知の課題」を解決すること”が、当社グループの使命であり、存在意義であると考えております。
この使命を達成するために、当社グループは社会に存在するニーズを適時、的確に察知し、そのニーズに応えるために必要なソフトウェア技術の習得や高度化を実践するとともに、役職員が誇りを持ち活躍し続けられるような「社員が幸福を実感できる企業」を目指し、その実現に向けて努めてまいります。
また、未来社会に貢献し企業を持続的に発展させていくには、より一層のソフトウェア技術の発展と、ソフトウェアの価値向上が重要であると認識し、“ソフトウェアの価値を高め、収益構造を変革する企業”として活躍できるよう努力いたします。
中長期的な経営戦略といたしましては、将来的に必要とされるソフトウェア技術の高度化に加え、近年のエンジニア不足と少子化に向けた収益構造の変革に注力してまいります。これまでのモノづくりは当社グループ従業員の労働に対する対価が多くを占めておりましたが、今後は、知財や製品、さらには新たなサービスによる収益の比率を増加させ、労働対価と労働量に依存しないサービス収益の最良なバランスにより、「次世代事業の創生」と「収益性の向上」を実現したいと考えております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは安定的な経営と収益構造の変革を実現するために、目標とする経営指標として自己資本利益率(ROE)、営業利益及び売上総利益率を重要な経営指標としております。
当社グループにとって重要な活動である研究開発費、採用教育費、営業費等を控除した残利益である営業利益は、将来に向けた活動を行いながら安定的な経営が実現できているかを測定するための指標として重要であると認識しています。また、売上総利益率は、収益構造の変革を行うことにより労働力に依存しない高付加価値のサービス事業の成長度合いを測定するための指標として重要であると認識しております。
(3)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
政府は、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会「Society 5.0」を我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱しており、当社グループはこれを実現するために必要な基本技術(シミュレーション、セキュリティ、セーフティ、AI安全など)を保有している点で競争優位性があると考えております。ロボットや自動走行車開発などにおけるシミュレーション技術の活用、安心安全にIoT(モノのインターネット)で人とモノがつながるためのセキュリティ技術、システムが組み込まれた製品が安全に動作するためのセーフティ、AI(人工知能)を自律化システム等に安全に搭載するためのAI安全など、未来社会の実現に向けて当社グループの技術に対する需要は今後も継続拡大するものと見込んでおります。
一方で、開発技術者は不足しており、需要に見合ったリソースを確保することが困難な状況にあります。今後もこの状況は続き出生率低下の傾向と相俟って、人財の確保に関する課題は長期にわたるリスクになると考えております。
このような状況を踏まえ当社グループは、安心、安全で豊かな未来社会の実現に向けて、半歩先の未来で求められる技術に継続的に目を向けながら、組織力・技術力・収益力における課題に対処するとともに、継続的に事業リスクを低減させるためガバナンス体制や内部統制の充実強化に努めてまいります。
①ソフトウェア開発事業およびサービスデザイン事業
1.技術者育成と次世代技術の獲得(技術力)
当社グループの収益の源泉は高い技術力にありますが、当社グループを取り巻く事業環境は、技術の進歩が速く、顧客や社会のニーズも変化しやすい状況にあります。このような環境の下で当社グループが持続的に成長していくためには、需要に応じた技術力強化と未来社会に必要とされる技術を継続的にキャッチアップしていく必要があると考えております。
このような課題に対処するため、当社グループは従業員のスキル棚卸と人財ポートフォリオ管理によりターゲットを絞った育成及び採用に努め、スキル向上のための教育プログラムの確立に取り組みます。
また、エンジニア専門職による後進への技術教育、先行的な技術動向の情報収集・研究を推進し、継続的な技術力強化と次世代技術の獲得を図ってまいります。
2.人的資本の有効活用による収益性の向上(収益力)
当社グループの収益は、SES(ソフトウェア・エンジニアリング・サービス)やソフトウェア受託開発等の労働力提供型の売上が多くを占めております。開発技術者が不足していく事業環境において、このような労働力提供を主とした収益構造はリスクであり、限られた人財を最大限有効に活用し、収益性を向上させる必要があると考えております。
このような課題に対処するため、当社グループは蓄積した知財(技術、ノウハウ、情報等)をサービス・製品として提供・活用し、労働時間ではなく付加価値に応じて対価を得る収益構造へと変革を進めてまいります。また、自社開発の製品・サービスの販売拡大、労働力ではなく付加価値に応じた受注価額の設定等を実行するため営業力の強化に努めます。その他、人財リソースの最適配置、事業ポートフォリオ管理、AI活用・DX化による開発効率の向上等をあわせて推進し、限られた人的資本を有効に活用することで売上高の拡大と利益率の向上に努めます。
②センシング事業
1.非破壊検査技術の高度化による収益性の向上(技術力・収益力)
X線CTスキャン装置による非破壊検査技術は、航空機、自動車、医療機器など部品や製品の欠陥等が生命の危機に直結するようなものを非破壊で検査できるなど、人々の安全・安心な未来社会に貢献できる技術であり、潜在的・将来的なニーズは存在するものと考えておりますが、そのニーズを実現し、利用用途、分野の拡大を進めていくためには高精度化、高速化、自動化など技術的に解決しなければならない課題も多く、実用化に向け、性能を強化するための技術開発が必要であると考えております。
このような課題に対処するため、テスコ株式会社が長年培ってきたX線装置に関する豊富な知識・経験と当社が保有するソフトウェア技術の融合により、非破壊検査技術の利用用途の拡充と価値の向上を図り、事業規模の拡大と高利益率化につなげてまいります。
③人材確保及び連携強化(組織力)
当社グループの最大の経営資源はヒトであると考えておりますが、開発技術者は不足しており今後も出生率低下といった社会的課題と相俟って、人財の確保に関する課題は長期にわたるリスクになると考えております。また、限られた人財リソースで技術進歩の早い事業環境に対応していくためには、部署間やグループ会社間で技術的な連携や人財の流動性を高め、組織一体となって対応していく必要があると考えております。
このような課題に対処するため、当社グループは、経営理念や経営方針の浸透活動を推進し、グループ構成員1人1人が共通の目標の実現に向けて意識・行動する良好な組織風土の醸成に努めます。また、従業員の能力や貢献に応じた公正な評価・報酬制度の整備をはじめ、従業員の心と体の健康を重視した労働環境、福利厚生の充実など従業員の働きやすい環境の整備を通じて、従業員エンゲージメントを高め人財の確保を図るとともに、グループ一体となって企業価値の向上に努めてまいります。
④コーポレートガバナンス及び内部統制の充実強化
当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上のためには、経営戦略や資本政策等の各施策の実行性を担保し、企業経営、企業行動において公正な判断や運営が行えるように監視・統制することで事業リスクを低減していくことが必要と考えております。
このような課題に対処するため、当社グループは、コーポレートガバナンス・コードに則った監督機能の強化、報酬制度の改革、株主権利の確保等のガバナンス体制及び業務に組み込まれたプロセスである内部統制に対して継続的な検討及び見直しを行い、充実強化を図ってまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、現時点において、具体的な取組等は主要な事業を営む提出会社のみ実施しているため、連結グループにおける記載が困難であります。そのため、指標及び目標含め、提出会社における考え方及び取組を記載しております。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会(以下、「サステナビリティ課題」とする。)を識別、評価、管理するためにサステナビリティ委員会を設置しております。当社代表取締役社長は、サステナビリティ課題に係る担当役員として、サステナビリティ委員会を管理し、取締役会へサステナビリティ課題に関する説明、報告等を行うとともにサステナビリティ課題に係る経営判断の最終責任を負っております。サステナビリティ委員会は、当社経営会議のメンバーから担当役員が選任した者で構成されております。
半期に一度開催されるサステナビリティ委員会で検討された取り組み施策、進捗状況等の内容は担当役員に報告され、協議の上決定または管理を行っております。取締役会は、担当役員から協議・決定された内容の報告を受け、サステナビリティ課題への対応方針及び実行計画等について監督を行っております。
なお、経営会議において担当役員は協議・決定された内容を経営方針、経営戦略、予算等の策定に考慮するよう指示しております。
(2)リスク管理
サステナビリティ委員会の各メンバーは、当社を取り巻く外部環境及び内部環境の分析を実施し、サステナビリティ課題の網羅的な識別を行っております。また、各メンバーにおいて識別されたリスク及び機会について、サステナビリティ委員会で協議、検討し、「当社にとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」の2つの評価基準に基づき、その重要性の評価を行っております。サステナビリティ委員会での協議、検討の結果、重要性が高いと評価したサステナビリティ課題について、担当役員に報告、協議、決定の上、取締役会による監督体制の下、当社における企業リスク及び機会の一つとして当社の戦略に反映し、対応しております。
また、重要性が高いと評価したサステナビリティ課題は、経営全般に係る事業リスクを管理しているリスク管理委員会と連携した上で、当社の総合的なリスク管理体制と統合しております。
(3)戦略
当社は持続的な企業価値の向上を実現するため、「世の中のニーズを敏感に察知し、半歩先のソフトウェア技術で解決する」企業集団となることを目指しております。また、当社において最も重要な経営資源はヒトであり、人財の育成、多様性、流動性、健康、安全、従業員エンゲージメントなどに配慮し、すべての社員が最大限の能力を発揮できるように人的資本経営に取り組むことが、企業の目指すべき姿に到達し、持続的な成長を遂げるために必要不可欠と考えております。
そのため、当社は以下の方針を掲げ、その方針に基づいた経営を実践してまいります。
①人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針
会社に所属する全ての者が仕事に意義をもち、自己の成長する喜びや働く楽しさを会社と共に追求することで個人の幸福と会社の成長をともに実現することを方針として、以下の取り組みを実践してまいります。
・新卒・キャリア、性別、年齢、国籍等を問わず、能力や貢献に応じた適正な報酬が得られる公明正大な評価・処遇を行う人事評価制度・賃金制度の改定に取り組み、社員の自律的かつ持続的な成長を支援します。
・新卒入社社員向け社内研修内容の改善、充実に取り組み、配属後の早期立ち上がりを支援します。
・定期的なキャリアビジョンアンケートに基づき、本人の志向と適性を考慮した配置や教育に取り組み、社員の成長を支援します。
②社内環境整備に関する方針
会社に所属する全ての者とその家族が豊かな生活を送れるように、心と体の健康を重視し健康経営に取り組むことを方針として、以下の取り組みを実践してまいります。
・組織、性別、年齢、役職、国籍等を問わず、役職員が交流できる機会を増やし、一人ひとりがフラットにコミュニケーションを図れる環境を整備します。
・有給奨励日の設定及び取得の促進、残業時間モニタリングによる長時間残業者の抑止等を推進し、健康的な働き方ができる環境を整備します。
なお、安全衛生委員会のメンバーで構成した健康経営推進グループにて健康経営活動の浸透及び推進を図っております。
ヴィッツ健康経営推進体制
(4)指標及び目標
当社では、上記「(3)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
指標 |
中長期目標 |
実績(当事業年度) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
(注)1.女性エンジニア比率とは、エンジニア職従業員における女性従業員(正社員のみ)の割合を指す。
2.離職率とは、期初における全従業員(正社員のみ)に対する期中退職者(定年退職者を除く)の割合を指す。
3.有給消化率とは、全従業員(正社員のみ)の期中の有給付与日数に対する有給消化日数を指す。
4.現在のエンジニア職における男女比率の状況を鑑み、女性管理職比率から女性エンジニア比率に指標を変更いたしました。
5.採用強化による社員の増加状況を鑑み、従業員のエンゲージメント向上を図る指標を平均勤続年数から離職率に変更いたしました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断において重要であると考えられる事項については積極的に開示しております。
当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、本株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項目以外の記載事項を、慎重に検討したうえで行われる必要があると考えられます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、当社グループの事業又は本株式の投資に関する全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)関連市場及び顧客経営状態に関連するリスクについて
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
当社グループの顧客層は、自動車、産業機械メーカ、建設機械メーカ、デジタル家電メーカなど様々な分野に及んでおります。
大幅な為替変動や、グローバルな政策要因、地政学的要因等によって、それらの産業全体が業績に悪影響を被る場合があります。当社の主たる事業である組込ソフトウェアの開発は、顧客企業の数年先に発売される製品や研究試作に関する開発案件が大半を占めるため、足元の景気動向に左右される可能性は比較的低いと考えております。しかしながら、数年先に向けた顧客企業の投資計画に影響を与えるほどの事象が発生した場合、当社グループの財政状態および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクは毎期顕在化する可能性があるものと認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループは、それら顧客企業の個別の経営状態の変動に関しては、様々な産業セクターへの営業活動を行ってその影響をできるだけ小さくすることによって、関連市場及び顧客経営状態に関するリスクの低減に努めております。
(2)特定取引先及び特定産業分野への依存について
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
当社グループの主たる売上は自動車分野であり、その多くは、トヨタ自動車株式会社および株式会社アイシン及び当該グループなどからの受注となっております。この自動車関連市場はCASEなどに代表される技術革新により今後も拡大していくと予測されます。
しかし何らかの要因により拡大予測が想定を下回る場合、特定取引先の経営状態の悪化や経営戦略の変更があった場合、当社グループの財政状態および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
自動車産業は電動化及び、カーボンニュートラル対応に関わる大きな技術革新を迎えており、ソフトウェアの重要性はさらに高まると考えております。このような技術革新環境においては、当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。
しかし、グローバル環境下において、自動車産業の収益構造に大幅な変化が認められた場合、当該リスクが顕在化する可能性があると認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループは、景気の変動や環境変化への耐性を高めるため、特定産業分野に集中した事業構造を脱却するよう尽力して参ります。具体的には半導体関連装置開発やソフトウェアを活用したサービス事業分野などの事業拡大を実現したいと考えております。
(3)品質不良による損害賠償のリスクについて
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
ソフトウェア開発およびエンジニアリングサービス、自動運転/先進安全シミュレータ事業、各種コンサルティング事業において、品質不良や納期遅延による損害賠償が発生する可能性があります。特に自動車向け開発は品質や納期に関する要求が厳密であり、瑕疵対応や損害賠償を求められる可能性があります。当社グループの責による品質不良や納期遅延による損害賠償請求が発生し、当社が加入しているIT賠償保険では賠償額を十分にカバーできなかった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクに常に晒されておりますが、下記に示すリスク対応策を適切に実施することにより、顕在化する可能性は低く管理されていると認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループは、業務受注前から受注審議会による審査を行い、開発時には品質保証室による品質、進捗の管理を実施しており、品質不良による損害賠償のリスクの低減に努めております。
(4)不採算プロジェクトの発生について
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
当社グループのエンジニアリングサービスで不採算プロジェクトが発生する可能性があります。不採算プロジェクトの発生要因として、発注側の大規模または頻繁な要求仕様変更や、見積もりが適切になされず、開発に要する工数が大幅に増加した場合などがあげられます。
大規模な要求仕様変更に対応しなければならない場合、見積もりから逸脱した開発工数の増加や外注費が発生した場合、当社グループの財政状態および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクに常に晒されておりますが、下記に示すリスク対応策などを適切に実施することにより、顕在化する可能性は低く管理されていると認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループでは全てのプロジェクトにおいて、予算管理、スケジュール管理、品質管理を実施しております。
また、受注前に内在するリスク(技術難易度、採算性、人的リソース)について十分に検討し、必要に応じて受注審議会に諮り、事業の将来性、リスク内容などを勘案し受注可否を判断しております。
(5)人材の確保と人件費、外注費の高騰について
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
当社グループの事業継続及び拡大のため、新技術の獲得および既存技術の発展を支える技術部門のエンジニアを中心に、各部門で活躍できる十分な人材の確保が必要であります。
しかしながら、計画した正社員の採用やパートナーの確保が十分にできない場合、退職者が続出した場合、また近年の採用難や働き方改革を背景にして人件費、外注費、オフショア費用高騰が起こった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクに常に晒されておりますが、下記に示すリスク対応策などを適切に実施することにより、顕在化する可能性は低く管理されていると認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループは、社員のエンゲージメント向上を目的とした人事・給与制度の見直しや教育研修の実施、福利厚生の拡充など労働環境の改善のほか、新卒・中途採用のための活動強化、新たなパートナー企業の確保に努めております。また、コストの高騰や付加価値に応じた販売価格の継続的な見直しを実施するとともにエンジニアの人数や労働時間に基づいた収益構造から、それらに依存しないサービスや製品を開発・販売する収益構造にシフトすることも図りながら、当該リスクの低減に努めてまいります。
(6)研究開発および製品化投資に関するリスク
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
技術優位性の向上や新たなサービス事業の創生のために、研究開発投資および製品化投資を実施しております。
研究開発等の対象とする技術分野やサービス分野における技術進歩は著しく、当社事業の優位性を確保するためには相応の投資が必要であります。事業収益が研究等の投資額を下回る場合、研究開発及び製品化の進捗が想定より遅延した場合、または想定通り実現できなかった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当社グループの未来想定とソフトウェア技術進歩が大きく乖離している場合、当該リスクが顕在化する可能性があります。
(リスクへの対応策)
研究開発投資は自己資本による実施と公的資金を活用した投資があります。短期的な投資回収が可能と判断できる研究には自己資本を活用し、基礎研究要素が高いものは公的資金を活用し、当該リスクの低減に努めております。
また、製品化投資は、研究事業および試作等により得られた成果を活用し、市場技術動向、社会動向を勘案し投資の可否を判断しております。これにより当該リスクの低減に努めております。
(7)のれんの減損リスクについて
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
企業結合により発生したのれんは、被取得企業の今後の事業展開によって期待される超過収益力として、取得原価と被取得企業の識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価との差額で計上し、その効果の及ぶ期間にわたって定額法により償却しております。今後、事業環境の急激な変化等により関係会社の業績が当初の想定を下回り想定していた超過収益力が低下した場合、当該のれんについて減損損失が発生し当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクに常に晒されておりますが、下記に示すリスク対策などを適切に実施することにより、顕在化する可能性は低く管理されていると認識しております。
(リスクへの対応策)
対象となる被取得企業について、定期的な報告をもとに協議する機会を設け、経営の効率化・グループ間シナジーの創出等を進めることで収益力強化に努めております。
(8)企業買収に関するリスクについて
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
当社グループが企業買収を行う際には、対象企業の状況・将来性・シナジー・リスクなど様々な視点から十分に議論を重ねた上で、投資額を決定し実行しておりますが、事業環境の変化等により、対象企業の業績が当初の想定を下回った場合には、投資金額の回収が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクに常に晒されておりますが、下記に示すリスク対策などを適切に実施することにより、顕在化する可能性は低く管理されていると認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループから役員を派遣し定期的に経営会議を実施することで、対象企業の事業及び業績の状況をモニタリングし、状況に応じて計画達成に向けた対策を講じる体制を整えております。
(9)法令違反、法的規制に関するリスクについて
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
当社グループの事業において、税制や商取引、労働問題、知的財産権など様々な法的規制を受けております。万が一これらの法規制、ルールを遵守できなかった場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきましては、現時点では予測困難であると認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループは、コンプライアンス重視のもと、これらの法規制やルールを遵守した経営を行うことによって、法令違反、法的規制に関するリスクの低減に努めております。
(10)その他訴訟等による損害賠償責任に関するリスクについて
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
当社グループの提供するエンジニアリングサービスは、ソフトウェアの開発が主たるサービスとなります。そのため、他社から何らかの知的財産権の侵害についての申し立てを受ける可能性は否定できません。また、当社グループが保有している個人情報やソフトウェア開発に関する仕様並びに顧客企業が保持する技術情報などが社外に流出するリスク、当社製品の不具合等により生命・身体及び財産並びに社会などに損害を与えるリスク、安全衛生上や労務上の問題が発生するリスク等が存在します。
何らかの事由によって訴訟となる事案が発生し、当社が賠償を求められた場合、当社グループの財政状態および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきましては、現時点では予測困難であると認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループは、セキュリティ委員会を設置し、各種情報の管理体制を強化すると同時に、セキュリティ教育、eラーニングによる教育などを行っております。また、品質管理規程等を整備し、これらに従った運用を行うことで、製品の品質管理を行っております。その他、労働基準法の遵守や社員の健康管理に努めており、訴訟等による損害賠償責任に関するリスクの低減に努めております。
(11)災害および感染症に関するリスクについて
(リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容)
大規模地震、自然災害、感染症、災害等の発生により、当社グループ社員およびパートナー企業の社員などの人的被害、業務遂行に必要なITインフラなどの物的被害が生じるリスクがあり、これらのリスクが顕在化し事業の停止、失注、開発遅延などが発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクが顕在化する可能性の程度や時期)
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきましては、現時点では予測困難であると認識しております。
(リスクへの対応策)
当社グループの従業員およびその家族並びにパートナー社員の安全や健康状態を把握するため、安否確認システムを整備するとともに、テレワークやオンライン会議などの活用及びBCPの運用により、事業の継続あるいは早期復旧ができるよう備えております。また、同時に、顧客企業の業績、開発投資の動向などを注視し、業務シフトなど柔軟に対応し、リスク低減に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、感染症による影響も弱まり、経済活動の正常化やインバウンドの回復、所得・雇用環境の改善などにより持ち直しの動きが見られました。一方で、ウクライナ・中東地域をめぐる情勢や米中関係の地政学的リスク、主要各国での金融引き締めによる金利上昇等により、資源・エネルギー価格の高騰や円安基調の為替変動、物価上昇などの影響が見られ、引き続き先行きには十分に注意する必要があります。
当社グループを取り巻く環境においては、引き続き開発依頼は高い需要を維持しております。産業分野では自動車や産業機器製造業向けの売上が大きく伸びております。技術分野では、主力であります組込みソフトウェアをはじめ、セキュリティ及びセーフティの技術分野が好調に推移しました。さらに、第2四半期連結会計期間において株式会社イーガー(以下「イーガー社」という。)を、第3四半期連結会計期間においてテスコ株式会社(以下「テスコ社」という。)を新たに連結子会社とした影響もあり、売上高は前期比増収となりました。
営業利益においては、増収に向けて外部リソース活用割合を増加させている他、給与水準の引き上げ、設立や株式取得による子会社の増加、新規事業の推進・事業の拡大・営業活動の強化などに向けた人員の増強や拠点の整備、コロナ関連の制限緩和による出張経費の増加、人材確保に向けた採用関連コストの増加等による売上原価や販管費の増加があったものの、売上高の増収に加え、下期における受注価額の見直しや高利益率案件の増加等の影響により売上総利益率が前期と同水準で推移した結果、前期比増益となりました。なお、テスコ社においては、事業の特性上9月及び3月付近に売上が集中し利益貢献する傾向にあり、当連結会計年度に取り込まれたテスコ社の財務数値は4月から8月における業績となるため、売上総利益額に比して販管費が多く、連結売上高の増加には貢献しておりますが、営業利益に対しては減少の影響となっております。
経常利益においては、Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)に係る補助金収入及び助成金収入等が減少したものの、営業利益の増益に加え、保険解約返戻金が増加した結果、前期比増益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益においては、経常利益の増益に加え、関係会社株式売却益の発生による特別利益の増加、減損損失の減少による特別損失の減少、賃上げ促進税制による税額控除及び評価性引当額の減少に伴う繰延税金資産の計上等により法人税等の負担率が低下した結果、前期比増益となりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高3,477,560千円(前期比39.0%増)、営業利益281,874千円(同50.6%増)、経常利益347,534千円(同54.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益275,081千円(同106.1%増)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度と前連結会計年度の一方もしくは両方がマイナスの金額である場合は、前期比増減率の記載に代えて、前期額を記載しております。また、「センシング事業」は、当連結会計年度より新たに報告セグメントとして追加したため、前期額、増減額及び前期比(%)は記載しておりません。
a.ソフトウェア開発事業
当セグメントにおいては、自動車・産業製品向けの制御ソフトウェアの受託、自動車関連のシミュレーション及びモデルベース開発技術の提案・開発・提供、近年の電子機器装置の安全性を担保するために必要なコンサルティング・安全性分析支援などを行っております。なお、連結子会社である株式会社スクデット・ソフトウェア及び第2四半期連結会計期間に株式取得し、新たに連結子会社としたイーガー社は当セグメントに含めております。
経営成績の状況といたしましてはシミュレータ・仮想空間の技術分野の売上が落ち込んだものの、組込みソフトウェア、セキュリティ及びセーフティの技術分野で自動車及び産業機器向けの売上が好調に推移したため、売上高及びセグメント利益は前期比増収増益となりました。
この結果、当連結会計年度において、売上高は2,879,887千円(前期比21.0%増)、セグメント利益(営業利益)は774,859千円(同12.8%増)となりました。
b.サービスデザイン事業
当セグメントにおいては、組込みシステム開発を通じて獲得した中核技術のノウハウを積極活用した新たな 商品及びサービスの提供などを行っております。なお、連結子会社である株式会社イマジナリー及び第1四半期連結会計期間に新たに設立した子会社である株式会社クリスタライト(以下「クリスタライト社」という。)は当セグメントに含めております。
経営成績の状況といたしましては、事業の開始から間もなく、また、サービス事業創出のための投資を行っている段階でありますが、製造業DXであるデジタルツインなどの提供や自律製品の安全性に関する支援サービスなどにより、シミュレータ・仮想空間やセキュリティ及びセーフティの技術分野で自動車産業や産業機器製造業向けの売上が増加し、売上高及びセグメント利益は前期比増収増益となりました。
この結果、当連結会計年度において、売上高は429,303千円(前期比565.3%増)、セグメント利益(営業利益)は114,799千円(前期は524千円のセグメント損失)となりました。
c.センシング事業
当セグメントにおいては、X線透過・CT装置の製造・販売・保守などを行っております。なお、第3四半期連結会計期間に株式取得し、新たに連結子会社としたテスコ社は当セグメントに含めております。
経営成績の状況といたしましては、事業の特性上9月及び3月付近に売上が集中し利益貢献する傾向にあり、当連結会計年度に取り込まれたテスコ社の財務数値は4月から8月における業績になるため、売上総利益額に比して販管費が多く、連結売上高の増加には貢献しておりますが、営業利益に対しては減少の影響となっております。
この結果、当連結会計年度において、売上高は143,405千円、セグメント損失(営業損失)は47,285千円となりました。
d.その他
当セグメントにおいては、株式会社アトリエ、株式会社ヴィッツ沖縄が含まれております。
経営成績の状況といたしましては、組込みソフトウェア、セキュリティ及びセーフティの技術分野で自動車産業や産業機器製造業向けの売上が好調に推移したため、売上高及び営業利益は前期比増収増益となりました。
この結果、当連結会計年度において、売上高は295,846千円(前期比45.1%増)、セグメント利益(営業利益)は50,289千円(同92.0%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,572,064千円(前期比253,452千円増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
a.営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果増加した資金は355,535千円(前期は248,280千円の収入)となりました。この主な要因は、売上債権及び契約資産の増加額94,273千円、法人税等の支払額67,204千円、仕入債務の減少額65,425千円等による資金の減少があったものの、税金等調整前当期純利益の計上355,662千円、減価償却費の計上43,248千円、賞与引当金の増加額31,478千円、退職給付に係る負債の増加額26,469千円等による資金の増加があったことによるものであります。
b.投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果増加した資金は161,602千円(前期は459,603千円の支出)となりました。この主な要因は、投資有価証券の取得による支出100,000千円、差入保証金の差入による支出83,960千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出82,858千円、無形固定資産の取得による支出65,817千円、有形固定資産の取得による支出60,996千円等に資金の減少があったものの、定期預金の純減額319,629千円、投資有価証券の償還による収入100,000千円、保険積立金の解約による収入93,947千円等による資金の増加があったことによるものであります。
c.財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果減少した資金は263,684千円(前期は128,860千円の支出)となりました。この主な要因は、長期借入金の返済による支出138,760千円、自己株式の取得による支出87,654千円、配当金の支払額32,639千円等による資金の減少があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年9月1日 至 2024年8月31日) |
前年同期比(%) |
ソフトウェア開発事業 (千円) |
1,924,685 |
122.4 |
サービスデザイン事業 (千円) |
176,497 |
653.2 |
センシング事業 (千円) |
110,030 |
- |
報告セグメント計 (千円) |
2,211,213 |
138.2 |
その他 (千円) |
30,645 |
123.8 |
合計 (千円) |
2,241,858 |
138.0 |
(注)金額は製造原価によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年9月1日 至 2024年8月31日) |
|||
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
ソフトウェア開発事業 (千円) |
2,949,511 |
123.1 |
330,075 |
136.5 |
サービスデザイン事業 (千円) |
414,438 |
446.2 |
59,451 |
161.3 |
センシング事業 (千円) |
438,627 |
- |
710,300 |
- |
報告セグメント計 (千円) |
3,802,577 |
152.7 |
1,099,828 |
394.8 |
その他 (千円) |
74,648 |
119.6 |
23,784 |
174.6 |
合計 (千円) |
3,877,225 |
151.9 |
1,123,612 |
384.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年9月1日 至 2024年8月31日) |
前年同期比(%) |
ソフトウェア開発事業 (千円) |
2,861,173 |
119.0 |
サービスデザイン事業 (千円) |
391,853 |
607.3 |
センシング事業 (千円) |
143,405 |
- |
報告セグメント計 (千円) |
3,396,432 |
137.6 |
その他 (千円) |
64,484 |
118.7 |
合計 (千円) |
3,460,916 |
137.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.販売実績は、当連結会計年度において顧客による成果物の検収が完了した金額を記載しております。そのため上表の金額は、連結損益計算書の売上高とは一致しません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年9月1日 至 2023年8月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年9月1日 至 2024年8月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
アイシン・ソフトウェア㈱ |
590,012 |
23.4 |
891,070 |
25.7 |
レーザーテック㈱ |
354,026 |
14.0 |
494,599 |
14.3 |
トヨタ自動車㈱ |
476,266 |
18.9 |
380,880 |
11.0 |
(注)主な相手先別の販売実績は、顧客による成果物の検収が完了した金額を記載しております。そのため上表の金額は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)関連情報 3.主要な顧客ごとの情報」とは一致しません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、前期末比増減率が1,000%以上となる場合は、前期末比増減率の記載に代えて、前期末額を記載しております。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態
a.資産
当連結会計年度末における資産合計は、3,563,676千円(前期比21.9%増)となり、流動資産合計2,489,162千円(同10.3%増)、固定資産合計1,074,514千円(同61.2%増)となりました。
流動資産の主な内訳は、現金及び預金1,772,064千円(同7.6%減)、受取手形、売掛金及び契約資産374,220千円(同108.3%増)、仕掛品134,408千円(同32.4%増)であります。
固定資産の主な内訳は、のれん225,597千円(同160.3%増)、繰延税金資産203,392千円(同75.8%増)、投資有価証券196,730千円(同2.4%減)、保険積立金123,294千円(同22.3%減)、有形固定資産98,855千円(同134.8%増)であります。
b.負債
当連結会計年度末における負債合計は、1,084,417千円(前期比77.4%増)となり、流動負債合計762,428千円(同117.3%増)、固定負債合計321,989千円(同23.6%増)となりました。
流動負債の主な内訳は、賞与引当金181,745千円(同36.7%増)、未払法人税等131,292千円(同319.3%増)、買掛金74,078千円(同65.0%増)、未払消費税等73,680千円(同90.0%増)であります。
固定負債の主な内訳は、退職給付に係る負債203,549千円(同23.0%増)、長期未払金115,324千円(同26.0%増)であります。
c.純資産
当連結会計年度末における純資産合計は、2,479,259千円(前期比7.2%増)となりました。主な内訳は、資本金612,524千円(前期末同額)、資本剰余金551,971千円(前期比0.9%増)、利益剰余金1,452,418千円(同19.8%増)であります。
② 経営成績
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標として、売上総利益率及び営業利益を重要な指標として管理しております。
当連結会計年度の売上総利益は1,224,948千円(前期は892,422千円)、売上総利益率は35.2%(前期は35.7%)となり、売上総利益は前期比増益、売上総利益率は前期と同水準で推移しております。これは、外部リソース活用割合を増加させている他、給与水準の引き上げ等による売上原価の増加があったものの、売上高の増収に加え、受注額の見直しや高利益率案件の増加等の結果であると認識しております。
また、当連結会計年度の営業利益は281,874千円(前期は187,162千円)となり、営業利益は前期比増益となりました。これは設立や株式取得による子会社の増加、新規事業の推進、事業の拡大、営業活動の強化などに向けた人員の増強や拠点の整備等の影響により販管費が増加したものの、売上総利益の増益が牽引した結果であると認識しております。
このほか、詳細な経営成績の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」をご参照ください。
なお、当社が認識している経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載したとおりであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における資金の残高は1,572,064千円(前期比253,452千円増)となり、当面事業を継続していく上で十分な流動性を確保しており、当社の経営戦略の1つである次世代事業の創生のための研究開発資金を十分に確保できているものと認識しております。
また、当社グループは、事業上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、主に営業活動によるキャッシュ・フローを資金の源泉としております。なお、不測の事態においても機動的かつ安定的に経常運転資金を確保するため、複数の金融機関と当座貸越契約を締結しております。
このほか、詳細なキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件や仮定の変化により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度において、新たに締結した重要な契約は次のとおりであります。
テスコ社の株式譲渡契約の締結
当社は、2024年3月25日開催の取締役会において、テスコ社の全株式を取得し、子会社化することについて決議いたしました。また、2024年3月28日付で株式譲渡契約を締結し、2024年3月29日付で全株式を取得いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)取得による企業結合」に記載のとおりであります。
当社グループのビジネスモデルは、積極的に研究開発を実施し、研究から得た知見を活かした開発受託や、コンサルテーション、関連コンテンツのサービスを提供するサイクルで持続的な成長をしております。研究開発活動は当社グループの事業の基盤と位置付け、そのテーマは顧客企業の抱える課題解決や欧州等の法規制対応等、産業分野横断型共通課題解決に寄与すると見込んだものを選択しております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
(1)AIの安全な活用技術
当社グループは令和4年度の「中小企業庁 成長型中小企業等研究開発支援事業」において採択された「機械の潜在能力を持続的に向上させる共進化(Co-evolution)ガイドラインの研究開発」を推進しており、「Human-Machine Co-Evolution System」(人-機械の共進化システム)の頭文字をとりHMCESプロジェクトとしております。
当該研究開発活動の成果であるHMCESガイドライン、HMCESプラットフォームを活用したコンサルティング及び開発支援サービスの展開を計画しており、これらの技術の提供により、AIの品質・安全保証に加え、生活の質(Well-being)や製造業の生産性を向上させることを目指しております。
当事業年度の研究活動では、国際標準化委員会、国際学会および顧客候補に評価いただき、HMCESガイドラインを拡充しました。さらに、ガイドラインに基づいたHMCESプラットフォームに共進化システム検証機能を搭載し、実証アプリケーションによる評価を実施しました。これらの国内外にて未発表の技術と製品を強みに、事業化の準備を進めております。
(2)仮想空間技術
当社では、デジタルツイン技術の発展とともに、製造業および自動車分野向けの仮想空間技術の開発を進めております。製造現場の最適化を支援する「SF Twin」および仮想自動車試験場「WARXSS®」の研究開発を推進しており、「SF Twin」は、製造現場を仮想空間上に再現し、安全性と生産効率の向上を図ることを目的としています。
当事業年度においては、人工知能を活用した自動最適化技術の開発を進め、将来的に自動シミュレーションによって理想的な生産方法を実現するための基礎研究を完了しております。
「WARXSS®」は、当社が開発した高精度CG技術を用いた仮想自動車試験場であり、現実で起こりうる様々な状況を仮想環境上で再現・検証できるシミュレータを提供しています。この技術は、繰り返しの検証が可能であり、自動運転車両のリスク評価においても利用されております。今後は、MaaS事業者やMaaS事業許認可団体への提供を視野に入れ、自動運転車両の安全性向上に寄与する技術としての発展を図ってまいります。
(3)業務効率化を目的とした生成AI技術
当社では、生成AI技術を活用した社内業務の効率化ツール開発を進めております。
コンサル業務の補助、新人育成や、部門間の技術伝達の効率化に寄与するため、既存の資料や教材を元にしたチャットbotシステムを作成しています。
このシステムは、LLM(大規模言語モデル)とRAG(Retrieval-Augmented Generation)を利用しており、社内の技術資料に基づいた知識提供や資料のレビューが可能です。
当事業年度はAzureとOpenAIを活用したRAGのベースシステムを構築しました。また、LLMのパラメータ調整やプロンプト設定、RAGで使用するインデックス構成の調整を実施しました。
今後は、社内でのシステム共有を進め、使用者からのフィードバックを基にさらなる精度向上と多角的な観点によるAIレビューの実現を目指しております。