第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」をビジョンに掲げ、「農業に情熱を」を合言葉に、日本から世界から農業がなくならない仕組みを構築することを目的としております。そのためにまずは、ミッションである「ビジネスとして魅力ある農産業の確立」を実践しております。具体的には、当社の主な事業のうち「農家の直売所事業」において、生産者とスーパー等の産直コーナーをつなぐプラットフォームを構築しております。また、「産直卸事業」では、商品の付加価値の見える化をしてスーパー等の「青果コーナー」で販売しております。今後も、両事業を日本全国や海外に広げ、企業価値及び株主価値の向上を目指してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社の売上高は流通総額の手数料が主であることから、流通総額及び流通総額成長率を重要な経営指標と定めております。流通総額を向上させる参考指標として、スーパー等への導入店舗数と登録生産者数も重視しております。

 流通総額成長率10%を継続的に維持していくことを目標とし、企業価値及び株主価値の向上を目指してまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社は、ビジョンである「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」を達成するため、中長期的な視点で事業に取り組んでいくことが重要であると考えております。ビジネスとして魅力ある農産業の確立に向けて、農家の直売所事業においては、当社が展開しているプラットフォームをソフト面及びハード面での改善を徹底し、それらの仕組みを重層化させます。また、産直卸事業においては、全国の産地との連携拡大により商品供給を強化し、当社の強みであるブランディングを通じて販売力向上を目指します。これらにより、安心・安全な農産物を提供するとともに、適正な収益の獲得を心掛けて、事業を進めてまいります。

 この基本方針のもと、以下の3点をプラットフォームのさらなる拡大・強化のために取り組んでまいります。

 a.仕入力強化

生産者や大規模生産法人のみにとどまらず、全国の産地との連携拡大を進めてまいります。全国の青果市場と連携し、販路及び産地を相互活用し、特に産直卸事業での仕入力を強化いたします。さらに、拡大が見込まれる有機農産物について、農家の直売所事業及び産直卸事業での取扱いを拡充いたします。

 b.物流機能の拡充

大田市場(東京都大田区)内の当社の物流センターと大田市場近郊に開設した当社の流通加工センターを始めとするセンター機能を活用し、中・大規模生産者からの集荷拡大を狙い、物量の安定化、調達の効率化、取引先の拡大を図ります。また、他の地域への展開や他社とのアライアンスを積極的に進めることで、物流プラットフォームのさらなる機能強化と物流効率の向上に取り組みます。

 c.ITプラットフォームの高度化

蓄積された生産・販売データからなるビッグデータとAI等の先端技術を活用し、受発注業務のシームレス化と需給バランスの最適化を図っていきます。消費者動向等の情報を分析・予測し、需給調整機能の高度化により、全国の農産物流通全体を支えるプラットフォームの構築を目指します。

 

 今後もスーパー等を中心とした小売店での展開を軸としつつ、流通総額のさらなる拡大と成長スピードを加速していくため、ECやドラッグストア販売等、新規事業への応用も見据え、物流、IT及び人材への投資を積極的に整備・拡充してまいります。

 

(4)経営環境及び対処すべき課題

 当社が展開している農家の直売所事業及び産直卸事業は、食の安心・安全への生活者の意識の高まりもあり、今後も引き続き高い成長が続くと見込んでおります。

 そのような環境の中、当社は、持続的かつ安定的な成長を維持すべく、以下の事項を対処すべき課題として事業を進めてまいります。

 

 

① 新規販売先の獲得と既存販売先の取引拡大

 当社は、農家の直売所事業及び産直卸事業において、特定の販売先に対する依存度が高い傾向にありますが、当社が継続的に成長・発展していくためには、既存販売先との取引の維持・拡大に努めるとともに、新規販売先の獲得が必要と考えております。

 このため、営業体制の強化を図るとともに、販売先のニーズに合った農産物の供給等のサービス強化も図ってまいります。

 

② 登録生産者へのサービスの拡充と仕入力の強化

 当社は、登録生産者に対して、日々の売上情報や農産物ごとの相場情報等を提供しておりますが、今後、新規の生産者の確保や既存の生産者の離反を防ぐためにもさらなるサービスの拡充を図ってまいります。また、農家の直売所事業においては、集荷場を開設し営業活動を行うことで、新規登録生産者を獲得してまいります。産直卸事業においては、主要産地と連携し、仕入力の強化を図ってまいります。

 

③ 農産物の安全性

 当社は、登録生産者等が持ち込む農産物の安全性については、登録生産者との間で、「農産物は、新鮮でかつ農薬安全使用基準を守って栽培されたもの(栽培履歴の明示ができるもの)であること」、「食品加工物についてはJAS法、食品衛生法等関連法規を守っていること」、「商標法等法令に抵触する商品でないこと、また、当社の事業理念や企業イメージに抵触する商品でないこと」といった規定を設けておりますが、スーパー等や生活者に、より「安心・安全」であることを訴求するために、今後さらなる農産物の安全性管理の強化を図っていく方針であります。

 

④ 海外展開

 当社は、農家の直売所事業において、現在は日本国内を中心として展開しておりますが、少子高齢化の問題により、日本国内の市場は今後縮小していくものと予想されております。また一方で、「安心・安全」な日本産農産物の需要は海外でも高まっております。当社が継続的に成長・発展していくために、関連会社の株式会社世界市場を通じて、海外への事業展開を推進してまいります。

 

⑤ 経営管理体制の強化

 当社では、コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理体制の強化、災害対策及び事業継続計画等、経営管理体制の強化が重要であると考えております。

 このため、社員教育、組織体制や規程の整備・見直し等を定期的に実施することにより、経営管理体制の強化に努めてまいります。

 

⑥ 人材の確保と育成

 当社は、事業の継続的な拡大のために、事業の規模や質に合わせた優秀な人材の確保、組織体制の整備及び従業員のモチベーションの維持・向上に努めていく方針であります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(サステナビリティ基本方針)

 当社は、「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」というビジョンに基づき、日本や世界から、農業がなくならない仕組み、未来永劫農業が持続する仕組みを構築することを目指しております。当社は、「(3)戦略」のマテリアリティに記載のとおり、継続的な事業成長を実現することが、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献及びESG(環境・社会・企業統治)活動につながると考えております。

 

 

(1)ガバナンス

 当社では、2023年7月にサステナビリティ検討委員会を設置し、サステナビリティに関する活動を全社的な視点から統括し、推進するためのガバナンス強化を進めてまいりました。2024年3月には名称をサステナビリティ推進室とし、代表取締役社長を最高責任者とする組織へと変更いたしました。今後、サステナビリティ課題に対する対応方針や諸施策の立案、各種施策の進捗・実績管理、情報開示などについて検討・協議した結果を取締役会に報告及び提案する予定です。

 

(2)リスク管理

 当社のリスク管理体制に関しては、「第4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 ロ.リスク管理体制の整備の状況」に詳細を記載しております。

 サステナビリティ関連のリスク管理については、今後サステナビリティ推進室を中心にリスクと機会を特定し、リスクを軽減するための対策、取り組みを各事業部と協働して対策を検討・実行し、進捗状況を管理するとともに、経営層への報告、提言を行う体制に変更してまいります。

 

(3)戦略

 当社は、中長期的に会社の業績に大きな影響を与える3つの重要課題(マテリアリティ)を抽出しています。マテリアリティの抽出に当たっては、当社の事業が社会に与える影響についてバリューチェーン全体で評価した上で、SDGsの17の目標の中で当社ビジネスモデルとの関連性の高いものを選定し、ビジョン・事業戦略に紐づけて整理いたしました。3つのマテリアリティについての主な取組テーマ及び具体的な取組は以下のとおりです。

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 また、当社の事業では、人的資本が価値創造の源泉であると考えております。当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は次のとおりであります。

 

(採用方針及び人材育成方針)

①採用方針

 当社のビジョンを共有できる有能な人材確保のために、新卒採用を積極的に行い、多様性のある組織を目指しております。様々な経験、スキルを有し、即戦力となる中途採用も同時に積極的に行っております。

②人材育成方針

 当社のビジョンに共感し、自らが持続的に成長できる人材の育成のために、従業員の向上心に応え、成長を支える教育制度を提供し、様々な知識や経験をもった人材が自律的に成長できる環境を創ります。

 

(多様な人材が活躍できる環境整備方針)

 年齢、性別、国籍、障害の有無に関係なく、全ての従業員が持てる能力を発揮し、活躍できる職場環境の構築を目指しております。

①研修制度

a.将来の経営層を担う人材開発のために、幹部社員を中心とした研修の開催

b.将来の幹部候補生を育成するために、若手社員を中心とした、会長による理念研修、農業研修の開催

②人事制度

 当社のビジョンに沿って求める行動を明確にし、持続的な正社員の成長を支え、それを適切に評価していくことを目的に人事制度を見直しております。

a.ビジョンに沿って求める行動を明確にするため、新たに行動指針に基づく行動要件を加えた人事評価制度を導入

b.行動要件に基づくランク及びクラスを再設定し、正社員の成長指標を明確化

c.求める行動を明確にし、正社員の成長の度合いに合わせて評価反映できる報酬制度を導入

③健康経営

 従業員の健康を重要な経営資源と捉え、健康管理、安全管理に重点を置いた取組を推進し、健康維持増進につなげます。具体的な取組は以下のとおりです。

a.定期健康診断、ストレスチェックの実施による体調、メンタル不調の未然防止

b.「ハラスメント相談窓口」の設置

c.リモートワーク制度の導入

 

(4)指標及び目標

 当社では上記「(3)戦略」において記載した、人材の多様性確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については次の指標を用いております。

 当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

 

指標

目標

実績(当事業年度)

女性管理職比率

2025年8月までに                30

2030年8月までに                40%

35.7

男性育休取得率

2030年8月まで           100を維持

50.0

男女の賃金差異

2030年8月までに 正社員    90

パート社員    -

正社員    76.8

パート社員 101.4%

 

 

3【事業等のリスク】

 以下において、当社の事業、経営の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる事項を記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①当社の事業について

 当社は、スーパー等に産直コーナーを設置いただき、登録生産者に「委託販売システム」を提供することを主たる事業としており、登録生産者の出荷額に応じた出荷手数料等とスーパー等での販売額に応じた販売手数料を主な収益源としております。

 当社の事業拡大のためには、既に産直コーナーを設置いただいているスーパー等の店舗数拡大や新規スーパー等の獲得が必要になります。また、店舗数拡大に伴い、農産物を出荷していただく登録生産者の拡大も合わせて必要になります。従いまして、スーパー等の導入店舗数の増加と登録生産者の増加が当社の事業拡大のための前提条件になります。これらの前提条件が順調に行われない場合、または、スーパー等の方針変更によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②特定取引先への依存について

 当社は、2024年8月期において、株式会社ライフコーポレーションにおける販売実績が全体の14.5%となっており、特定取引先への依存度が高くなっております。当社の事業拡大のためには新規スーパー等の獲得が必要であり、この依存度は解消されていくと考えておりますが、順調に新規スーパー等の獲得が進まない場合、依然としてこの依存度が高い状態が継続する可能性があります。このため、これらの特定取引先の方針変更によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社はスーパー等で農産物が販売された事実がある場合には、スーパー等から入金が無かった場合においても、登録生産者へ販売代金の支払いを行う方針であります。

 

③食品の安全性について

 当社は、登録生産者との間で、「農産物は、新鮮でかつ農薬安全使用基準を守って栽培されたもの(栽培履歴の明示ができるもの)であること」、「食品加工物についてはJAS法、食品衛生法等関連法規を守っていること」、「商標法等法令に抵触する商品でないこと、また、当社の事業理念や企業イメージに抵触する商品でないこと」といった規定を設けております。

 しかしながら、登録生産者による表示の偽装や虚偽の情報提供等が行われる可能性は否定できません。また、食品の放射能汚染問題については、その安全性に関する社会通念上の見解が未だ明確でないことに加えて、今後当該問題に関する何らかの法規制が設けられた場合、当該法規制が求める対応等が即時に実施できない可能性があります。このような事象が発生した場合、行政機関からの指摘又は処分並びに消費者からのクレーム又は損害賠償等が生じる可能性があり、ブランドイメージの悪化や対外信用力の低下等により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④「委託販売システム」による農産物の販売について

 当社の「委託販売システム」では、スーパー等に設置いただいている産直コーナーの運営において、登録生産者がスーパー等で委託販売をする仕組みを提供している立場であり、原則として当社は売買の当事者とはなりません。

 しかしながら、スーパー等の産直コーナーで農産物を購入された消費者との間で何らかトラブルが発生した場合、当社が法的責任を問われる可能性があります。また、当社が法的責任を負わない場合においても、ブランドイメージの悪化等により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤天候不順等の自然災害による影響について

 当社の取り扱う農産物については、集荷場を業務提携先を含めた日本全国各地で運営することで産地を分散させ、特定地域の天候不順等の自然災害による収穫不能・品質劣化時も別産地から商品の供給ができる体制を取っております。しかしながら、想定以上に天候不順等が深刻化、長期化並びに広域化した場合、流通量の減少による欠品や品質劣化等の問題の発生により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥農産物相場の変動について

 当社が取り扱う農産物については、極端な豊作や不作によって需要と供給のバランスが崩れると、相場が想定以上に変動する可能性があります。豊作により相場が下落すると、物流効率が悪化し営業利益率を悪化させ、不作によって相場が上昇すると、当社の「委託販売システム」を通さず、既存の農産物市場で販売する登録生産者が増えることで、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦季節変動について

 当社は、初夏の5月から7月、初秋の10月から11月にかけて、果物等の収益性の高い商品の収穫期に該当することや農産物の収穫高自体が多くなることにより、売上高や利益が増加する傾向にあります。このため、当該時期の業績如何によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧システム障害について

 当社が運営する集荷場で発券するスーパー等のバーコード発券システムは、通信ネットワークに全面的に依存しており、自然災害や事故等によって通信ネットワークが切断された場合や、その他予測不可能な様々な要因によってシステムがダウンした場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、システム開発や保守については外部委託しておりますが、運営会社のサービスの低下、自然災害の発生によるサーバーのダウン等によりインターネットへの接続及びシステムの稼働が円滑に行えない状態になった場合においても当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨個人情報管理に関するリスクについて

 当社は、登録生産者の個人情報を保有しております。個人情報漏洩による企業経営・信用への影響を十分に認識し、個人情報保護規程の整備、アクセス制限、社員への周知徹底など、個人情報の管理体制の整備を行っておりますが、万が一、個人情報が漏洩した場合は、損害賠償費用の発生、社会的信用の失墜などにより、当社の経営成績や財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩売上高計上基準について

 当社は、農家の直売所事業の「委託販売システム」を積極的に拡大していく方針ではありますが、スーパー等との契約によっては、「委託販売システム」での取引ではなく、「卸販売」での取引になる可能性があります。また、農産物の安定的な供給等を行うために、当社が登録生産者から買い取りを行う「買取委託販売」が、当社の想定以上に構成割合が高まる可能性があります。

 「委託販売システム」では受領する手数料(純額)を売上高としており、仕入計上はありません。一方、「卸販売」及び「買取委託販売」ではスーパーや消費者等への販売高(総額)を売上高とし、仕入高を売上原価として計上しております。そのため、「委託販売システム」での取引の売上総利益率は「卸販売」及び「買取委託販売」での取引に比べ高くなります。

 「委託販売システム」での契約を見込んでいた取引が「卸販売」での取引となった場合や「買取委託販売」の構成割合が想定以上に上昇した場合、計上基準の違いにより「委託販売システム」での取引と比べ、全体の売上高が増加し、売上総利益率が低下する恐れがあります。

 

⑪経営陣への依存について

 当社の現経営陣は、経営方針や経営戦略等、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしており、現経営陣に対する当社の依存度は高くなっております。

 そのため、現経営陣に過度に依存しない経営体制を構築すべく、従業員への権限委譲等を進めておりますが、何らかの理由により現経営陣の業務遂行が困難となった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫人材の確保と育成について

 当社が実施するサービスにおいては、優秀な人材の確保と教育体制の充実による継続的な人材育成が必要不可欠であると認識しております。このため、事業の拡大に見合った人員の確保・育成ができなければ事業の拡大が進まない可能性があります。さらに、その場合、提供サービスの質が低下し、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性もあります。

 また、人材の確保・育成が順調に進んだとしても、その人材が外部流出することにより、人的戦力の低下、ノウハウの流出、知的財産その他の機密情報も流出する可能性があります。当社では、人材の流出を防ぐための施策として、透明性の高い人事考課の徹底、従業員持株会制度を導入しております。ただし、これらの施策が効果的に機能する保証はなく、今後人材流出が進んだ場合、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬配当政策について

 当社は、剰余金の配当につきましては、内部留保とのバランスを保ちながら、収益の増加に連動した配当を行うことを基本方針としております。

 しかしながら、現時点では配当を実施しておらず、今後の配当実施の可能性及び実施時期等については未定であります。

 

⑭新たな感染症について

 新たな感染症が流行した場合には、当社の集荷場の人員等の確保が困難となるなど農産物の集荷業務に支障が生じ、当社の業績は影響を受ける可能性があります。また、流行の程度によって、消費者動向が大きく変動する可能性があります。感染拡大防止への取り組みとして、テレワークの積極的な活用や時差出勤の推奨等の施策を実施しています。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の概況

 近年の全国農業総産出額は、米、野菜、肉用牛等における国内外の需要に応じた生産の進展等を背景に、9兆円前後で推移しております。2022年の農業総産出額は、野菜の作柄不良や米の民間在庫量減少による価格の上昇、畜産における豚や鶏の価格の上昇等から、前年に比べ1,630億円増加し、9兆10億円となりました。また、近年の生産農業所得は、全国農業総産出額の増減はあるものの、3兆円台で推移しております。2022年は、国際的な原料価格の上昇等に起因する肥料代や光熱費の高騰等により、前年に比べ2,428億円減少し、3兆1,050億円となりました。(出典:農林水産省「生産農業所得統計」)。他方で、2024年2月時点の農業経営体数88万3千経営体のうち、個人経営体は84万2千経営体で、前年に比べ5.2%減少した一方、団体経営体は4万1千経営体で0.7%増加し、団体経営体のうち、法人経営体は3万3千経営体で前年に比べ1.2%増加しております(出典:農林水産省「農業構造動態調査」)。農業経営体の減少が続く中、法人化や規模拡大の進展が継続し、農業集約化の動きが加速しております。

 当事業年度における青果価格は、猛暑や天候不順の影響により、平年に比べ高い水準で推移してまいりました。一方、当事業年度のスーパーマーケットにおける青果物の販売動向は、円安やエネルギーコスト上昇による消費者心理減退の懸念があるものの、相場高の影響により単価が上昇し、前年に比べ増加いたしました。

 このような環境のもと、より多くの生活者に「おいしい」をお届けするために、当社の主たる事業である農家の直売所事業及び成長事業である産直卸事業を推進いたしました。前事業年度に締結いたしましたハウス食品グループ本社株式会社とのアライアンスを継続するとともに、ドラッグストアへの販路拡大等、新しい農産物流通の創造に向けた取組みの深化を進めてまいりました。各種値上げ等のコスト増が見込まれる環境においても利益が確保できるよう、流通総額の拡大とともに不採算の集荷場の統廃合や手数料等の改定を行い、事業基盤の強化に努めました。

 このような取組みの結果、流通総額は15,719,135千円(前事業年度比17.6%増)、2024年8月末日時点でスーパーマーケット等の国内小売店への導入店舗数は2,106店舗(前事業年度末より111店舗増)、農産物の集荷拠点である集荷場は81拠点(前事業年度末より11拠点減)、登録生産者は10,312名(前事業年度末より66名減)となりました。

 当事業年度の経営成績は、売上高は7,223,458千円(前事業年度比25.9%増)、営業利益は93,630千円(前事業年度比156.4%増)、経常利益は101,739千円(前事業年度比117.7%増)、当期純利益は108,759千円(前事業年度比337.4%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

イ.農家の直売所事業

 農家の直売所事業では、当社及び業務委託先が運営する集荷場で登録いただいた生産者から農産物を出荷し、原則翌日にスーパー等の「産直コーナー」で販売する独自の流通プラットフォームを提供しております。

 当事業年度は、既存委託販売先との取引維持・拡大に加え、集荷場を中心に生産者からの出荷量増加のための営業活動や集荷場運営の効率化を図ってまいりました。また、スーパーでの品揃えを実現するため、品目バランスを考慮した買取委託の増加、不採算集荷場の統廃合、兵庫の集荷場における登録生産者からいただく出荷手数料の改定等、事業基盤の強化に努めました。

 これにより、流通総額は13,315,990千円(前事業年度比14.8%増)、流通点数は62,726千点(前事業年度比1.9%増)、売上高は4,862,294千円(前事業年度比22.4%増)、セグメント利益は699,111千円(前事業年度比10.9%増)となりました。

 

ロ.産直卸事業

 産直卸事業では、当社が生産者から直接農産物を買い取り、商品の「パッケージ」、売場の「POP」、生産者のおすすめ「レシピ」などで商品の付加価値を可視化し、スーパー等の通常の青果売場である「青果コーナー」で販売しております。

 当事業年度は、スーパー等の取引先の旺盛なニーズに対応するため、引き続き、全国の産地や市場との連携により商品供給を強化し、既存取引先を中心に取引を拡大いたしました。

 これにより、流通総額は2,403,144千円(前事業年度比36.3%増)、売上高は2,361,164千円(前事業年度比34.0%増)、セグメント利益は16,250千円(前事業年度はセグメント損失2,519千円)となりました。

 

② 財政状態の概況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べ24,889千円増加し、2,011,076千円となりました。これは主に、現金及び預金の減少295,035千円、売掛金の増加310,520千円、商品の増加9,649千円等によるものであります。

 当事業年度末における固定資産は、前事業年度末に比べ222,404千円増加し、654,356千円となりました。これは

主に、有形固定資産の減少1,461千円、無形固定資産の減少32,897千円、投資その他の資産の増加256,763千円によ

るものであります。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べ143,697千円増加し、1,336,199千円となりました。これは主に、買掛金の増加121,996千円、短期借入金の減少18,326千円、1年内返済予定の長期借入金の減少8,370千円、未払金の増加16,003千円、未払消費税等の増加13,006千円、預り金の増加7,116千円、賞与引当金の増加12,100千円等によるものであります。

 当事業年度末における固定負債は、前事業年度末に比べ5,342千円減少し、296,541千円となりました。これは

主に、長期借入金の減少4,561千円等によるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ108,939千円増加し、1,032,691千円となりました。これは主に、利益剰余金の増加108,759千円、新株予約権の増加180千円によるものであります。

 

③ 当期のキャッシュ・フローの概況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べ295,035千円減少し、779,433千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は23,736千円となりました(前年同期は124,770千円の収入)。これは主に、税引

前当期純利益101,749千円、減価償却費63,082千円、売上債権の増加310,520千円、仕入債務の増加121,996千円、未払金の増加28,091千円、未払消費税等の増加13,006千円及び法人税等の支払額5,706千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は286,879千円となりました(前年同期は28,559千円の支出)。これは主に、有形固定資産の取得による支出14,736千円、無形固定資産の取得による支出26,075千円、投資有価証券の取得による支出196,068千円、関係会社株式の取得による支出50,000千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は31,892千円となりました(前年同期は85,833千円の支出)。これは主に、短期借

入金の純減少額18,326千円、長期借入れによる収入50,000千円、長期借入金の返済による支出62,931千円等によるものであります。

 

(2)生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

② 受注実績

 当社は受注による販売を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

③ 販売実績

 当事業年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

区分

当事業年度

(自 2023年9月1日

至 2024年8月31日)

前年同期比(%)

農家の直売所事業(千円)

4,862,294

122.4

産直卸事業(千円)

2,361,164

134.0

合計(千円)

7,223,458

125.9

 (注)最近2事業年度の主な取引先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、下記金額には、委託販売システムについては、スーパー等での販売実績に応じた手数料を含めております。また、買取委託販売については、スーパー等の委託販売先を通じた売上高を含めております。

取引先

前事業年度

(自 2022年9月1日

至 2023年8月31日)

当事業年度

(自 2023年9月1日

至 2024年8月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社ライフコーポレーション

666,146

11.6

1,044,504

14.5

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

a. 当事業年度の経営成績等

1.売上高

 当事業年度における売上高は7,223,458千円となりました。その主な内訳は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の概況」に記載のとおりであります。

2.売上原価・売上総利益

 売上原価は3,850,907千円となりました。主な内訳としては、スーパー等の需要旺盛に伴う買取委託販売が増加したことによるものであります。その結果、売上総利益3,372,551千円となりました。

3.販売費及び一般管理費・営業利益

 販売費及び一般管理費は3,278,921千円となりました。主な内訳としては、物流費1,000,249千円、給料及び手当433,335千円、販売手数料485,169千円、業務委託費314,464千円であります。これらにより、営業利益は93,630千円となりました。

4.営業外損益・経常利益

 営業外収益は13,022千円となりました。営業外費用は4,913千円となりました。主な内訳としては、補助金収入8,035千円、受取保険金1,617千円、支払利息2,429千円であります。これらにより、経常利益は101,739千円となりました。

 

b. 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績に影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

c. 資本の財源及び資金の流動性の分析

 当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、商品仕入高、物流費、人件費及び業務委託費であります。

 また、設備資金需要といたしましては、集荷場の改修並びに補強やシステム改修等があります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金の活用及び金融機関からの短期借入金と長期借入金によっております。

 

d. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の概況」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。