第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

 (1) 経営方針

当社グループは、「全ての企業不動産へのソリューションを通じて、日本の経済・産業に貢献する。」という企業理念を掲げ、膨大なストックを有する企業不動産(CRE: Corporate Real Estate)に関する多様なニーズに対して、デジタルテクノロジーを活用したソリューションを提供し、世の中における企業の経営や財務に関する課題を解決することで日本の経済・産業の活性化・成長に貢献することを経営方針としております。

社内に蓄積したCREに関する経験、ノウハウ及び各種書面データを当社グループが開発する各種不動産テックシステム内においてデータベース化することで、あらゆる業務フローのDX化を推進し、不動産業界特有の非効率性や情報の非対称性などの課題を解決しながら、少数精鋭のCREプロフェッショナル集団を構築することで事業の拡大を目指してまいります。

 

 (2) 経営環境

民間法人が所有する不動産は約524兆円(注1)とされ、膨大なストックが存在するとともに、所有する企業においては経営状況や財務状況等の様々な要因から所有不動産に関する多様なニーズを有しております。

 

<日本国内における民間法人の保有する不動産規模>


(注)1. 国土交通省「法人土地・建物基本調査(2018年)」により当社集計。

    2. 2023年1月から同年12月に開示された全上場企業の有価証券報告書において

        「主要な設備の状況」に記載された、土地・建物及び構築物の帳簿価額の合計額を当社集計。

    3. 2022年6月時点で、20億円以上の有形固定資産を保有する企業の土地・建物及び附属設備の

        合計額を当社集計(データ提供元:株式会社東京商工リサーチ)。

    4. 一般社団法人不動産証券化協会「ARES マンスリーレポート」(2024年7月)より。

 

 

不動産市場の中でも企業不動産(CRE)に関する市場は、オフィスやレジデンス、商業施設などの市場と比べて、不動産情報の流通量が少ない市場と言えます。不動産の売買や賃貸に関するニーズの探索に時間がかかり非効率であることを理由として、積極的に時間をかけて探索をおこなう不動産プレイヤーが少ないと考えられ、また企業側にとっても売買や賃貸などのニーズにあった情報、有効活用されていない不動産へのソリューションがなく、適切に相談できる相手もいないといったことが考えられます。その結果、企業が保有する企業不動産(CRE)に関する情報はマーケットに出ることがなく、そのまま保有し続ける潜在的な企業不動産が多くあると考えております。このように、情報の非対称性や秘匿性により難易度の高い市場と考えられるCREマーケットに対して、当社は「3事業の内容 (3) マーケットにおける独自のポジショニング」に記載のとおり、大手不動産会社や中堅・中小の不動産会社が積極的に取り扱わないコンパクトサイズの企業不動産(CRE)にフォーカスして、CREソリューションに関する事業を展開しております。

足元では、地政学リスクの高まり、サプライチェーンの混乱、物価高騰等、企業を取り巻く経営環境は著しく変化し、複雑化するとともにその変化スピードも速まっており、それに伴い企業の重要な経営資源の一つであるCREに対する意識も高まっているものと当社では考えております。

実際に、一般財団法人日本不動産研究所が実施したCRE戦略の必要性に対するアンケート調査(2010年及び2023年実施)によると、2010年時点で調査対象となった企業のうちCRE戦略の必要性を感じていると回答した法人は約52%であったのに対し、2023年時点においては約88%もの法人がCRE戦略の必要性を感じていると回答し、企業経営におけるCRE戦略の重要性は年々増加している状況であると考えております。

 

<CRE戦略の必要性に関するアンケート調査>


出所:一般財団法人日本不動産研究所が、2010年及び2023年に、金融機関や一般企業に対して行った

   アンケート調査(2023年10月11日付「CRE市場に係る成長性調査」)を抜粋し当社にて

   作成(アンケート対象企業数:2010年(N)=67、2023年(N)=95)。

 

 

また、2023年3月に株式会社東京証券取引所より「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が公表されました。これを受けて、資本効率に課題を持つ上場企業、特にPBRが1倍を割れている企業を中心にその改善策の検討や実行が必要となっている状況です。バランスシートに占める割合の大きい不動産に関してもその活用方法や保有方針の見直しが行われることが予想され、すでにCRE戦略を盛り込んだ対策案の開示や具体的な施策を実行する企業も出てきております。日本企業は海外と比較しても依然としてPBR1倍未満の企業が多く、資本効率向上に資するCRE戦略ニーズは今後ますます高まるものと当社では考えております。

 

<資本コストを意識した高度な経営に転換すべく、企業のCRE戦略への意識は拡大>


出所:東京証券取引所 上場部「市場区分見直し後の状況と今後のフォローアップについて」

   (2024年5月21日)より当社作成。

 

 (3) 中期経営戦略

① 基本戦略及び中長期ビジョン

 「全ての企業不動産へのソリューションを通じて、日本の経済・産業に貢献する。」という企業理念の実現のため、「CRE×テクノロジーで世の中を変える」というビジョンを掲げております。当該ビジョンのもと、当社では社内に蓄積したCREに関する長年の経験・ノウハウを活用し、CRE営業支援システム「CCReB AI」や事業用不動産マッチングシステム「CCReB CREMa」、BtoBポータルサイト「CCReB GATEWAY 」等の各種不動産テックシステムの開発を進めてきました。また、システム開発と並行して、企業の経営方針に関する情報や財務状況に関する情報をはじめ、CREソリューションの提供に必要となるあらゆるデータの蓄積も進めております。これらの不動産テックシステムと蓄積したデータを一元的に活用できる総合プラットフォームの構築を推進することで、ターゲット顧客の抽出からCREソリューションの提案・提供、不動産ニーズのマッチングまでのあらゆる業務のDX推進を図り、全ての営業担当者が効率的かつ高い水準でのサービスを提供できる営業基盤を整備してまいります。その上で、優秀な営業人員の採用活動を拡大することで、蓄積したノウハウとデータ及びテクノロジーを駆使する少数精鋭のCREプロフェッショナル集団による組織を構築し、事業の拡大及び収益の成長を目指してまいります。

 

②  経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの重要視する経営指標であるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、「売上高」、「営業利益率」を、「売上高」及び「営業利益率」の両経営指標を達成するために、売上の源泉を創出する「CCReB CREMa」(マッチングシステム)の「ユーザー数」及び「情報登録数」を設定しております。

 「売上高」に関しては、業界におけるプレゼンスをより高めるために拡大を目指してまいります。

 「営業利益率」に関しては、不動産テックを活用することで、CRE戦略に関する効率的かつ有効な提案、案件成約に至るまでの業務工数の大幅な低減を図ることで、一定の高い営業利益率水準の維持を目指してまいります。

 マッチングシステムの「ユーザー数」、「情報登録数」に関しては、両数値が増加することにより、マッチングの機会が増加することで当社の取り扱う案件数も増加し、新規案件の組成・成約に至る可能性が高まっていくと当社では考えております。

 なお、マッチングシステムは当社の業務において中心的な役割を果たしており、当社で案件組成に至った案件の大部分がマッチングシステムの活用によるものとなります。同マッチングシステムから創出される案件組成件数を増やしていくことで、「売上高」と「営業利益率」の両指標の達成を図ってまいります。

 

<収益と主要KPIの構造イメージ>


 

③ マッチングシステムの活用による収益拡大

  マッチングシステム「CCReB CREMa」は、2020年10月にプロトタイプ版をリリースし、ユーザー数、情報登録数を徐々に拡大してまいりました。2023年9月からはこれまでのユーザーの声なども取り入れ、インターフェースの大幅な刷新に加え、システム内の一部を改良し、サブスクリプションサービスとして提供を開始しました。サブスクリプションサービスを開始して以降は、従前に比べユーザー数とともに情報登録数が増加しております。

 

<マッチングシステムユーザー数の推移と潜在案件数の拡大>


(注)1.情報登録から2年経過した物件及びニーズはカウントから対象外としているため、2022年

          8月期から2023年8月期にかけて減少しておりますが、情報登録数は拡大傾向にあります。

 

 実際に、「ユーザー数」「情報登録数」の増加に伴い、マッチングシステムによる売上高は増加し、当社グループ全体の売上高も増加していることから、マッチングシステムは案件組成のドライバーであり、「ユーザー数」、「情報登録数」の拡大が当社の事業の拡大につながっていくものと当社では考えております。

 

<マッチングシステムの登録案件数の増加による収益拡大>


(注)2.CREソリューションビジネスにおいて発生した収益のうち、マッチングシステムを活用する

    ことで成約・収益発生に至ったものを指します。

 

マッチングシステムのユーザー数及び情報登録数の拡大が重要と考える中、当社としては、まずは金融機関、特に地方銀行やリース会社を中心にユーザー数を増やしていく方針としております。地方銀行、リース会社においては、取引先の不動産に関する売買・賃貸などの情報、遊休地活用や拠点進出などのニーズなど、不動産に関する様々なニーズに関する情報を把握していると考えられます。当社としてはこれらのニーズに対してマッチングシステムを活用したソリューションを提供していくことで、金融機関においては取引先へのニーズに対するソリューションの提供、当社においてはユーザー数や情報登録数の拡大とともにCREソリューション事業に関する潜在案件の拡大が見込めるものと考えております。2024年8月末日における「CCReB CREMa」の会員における金融機関は約9%、金融機関数に対する導入企業数を踏まえても、営業開拓の余地が大きく、金融機関の導入を進めていくことで、更なる潜在案件数、ひいては成約件数の拡大を目指してまいります。

 

<マッチングシステムユーザー数と潜在案件数の拡大に関する戦略>


(注)3.2024年8月末日時点における「CCReB CREMa」会員の業種属性。

   4.金融庁「銀行免許一覧(都市銀行・信託銀行・その他)(令和6年8月21日現在)」より。

     リース会社数については公益社団法人リース事業協会ホームページ(2024年10月1日現在)

     より。

   5.無料/有料会員を含む。

 

④ 成長性と安定性の両立を目指す収益構造の構築

 当社グループでは、開発した不動産テックシステムをサブスクリプションサービスとして外部に販売することで月額使用料を収受する不動産テックサービスを展開しております。また、CREソリューションビジネスでは、月額報酬型のCREアドバイザリー契約によるコンサルティング報酬、自社所有の不動産からの賃貸収入や、組成ファンドの運用に伴うアセットマネジメント報酬やプロパティマネジメント報酬を受領しております。これらの収入は中長期で安定的に収受できる固定収入であるため、当社グループの財務安定性に資するものとして、今後も更なる積み上げに取り組んでいく方針です。

 これに加え、個別案件の相談によるアドバイザリー報酬、CREソリューションの一環として発生する不動産売買・賃貸の仲介報酬、バランスシート活用による不動産投資、コンパクトCREファンド組成関連収入のうち取得時報酬や売却時報酬及び出資によるリターンは、1案件に対して大きな収入が期待できることから当社グループの売上及び利益の成長に資するものと考えております。今後、不動産テックシステムによる営業プラットフォーム構築の推進と営業人員体制の拡大を進めることで、獲得案件数及び1案件当たりの収入拡大に取組み、安定的な固定収入を得ながら、成長ポテンシャルの高いビジネス分野への投資を行い、安定性と成長性の両立を目指す収益構造の構築を進めてまいります。

 

<成長性と安定性の両立を目指す収益構造の構築(イメージ)>


 

 (4)  優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 

① 優秀な人材の採用と育成による組織体制の強化

 当社グループは、これまでに蓄積してきたデータや知見を一元的に活用できる総合プラットフォームとしての不動産テックシステムを構築することに注力して事業を進めてきましたが、システムの構築が一定程度進捗し、今後の事業拡大においては優秀な人材の確保が重要な課題であると認識しております。不動産テックシステムを活用することで、CRE営業の経験が浅い担当者であっても顧客へのソリューションの提供が可能となったため、今後の事業拡大のためにそれらのシステムを早期に使いこなして知識等を吸収し、そのうえで顧客との良好な関係性を構築することができる優秀な人材の採用を図ってまいります。それにより、テックシステムと優秀な人材から成る模倣困難な組織体制を構築してまいります。なお、2023年12月よりCREソリューションの提案におけるこれまでのノウハウと開発済みのテックシステムを連携した社内チャットボットシステムである「CCChat」の試験運用を開始しております。本システムに提案先の企業名を入力することで、当該企業への最適な提案方法をボットシステムが回答する仕組みを開発し、一部生成AIとの連携も行っております。これにより、経験の浅い社員でも早期に一定レベルのCREソリューション提案を行うことが可能となります。

②  案件進捗の適切な管理

 当社グループの提供するCREソリューションビジネスは、案件の規模等に応じて売上・収益が異なり、現状においては一つの案件から得られる売上が全体の売上に占める割合が大きくなる場合があることから、その案件の成否や成約時期によって業績が大きく変動する可能性があります。そのため、案件ごとの進捗を適時に把握し、管理することが重要であると認識し、営業部門のみならず経営会議及び取締役会においても主要な案件についての進捗状況の管理・報告を定期的に実施し、当初見込みから成約時期が大きく変動した場合等には原因と対策を全社で共有することで、より精度の高い案件進捗管理を進めてまいります。

 

③  認知度・信用度の更なる向上

 当社グループの主要メンバーは、CRE関連ビジネスにおいて長年の経験と知見を有し、企業との幅広いネットワーク・リレーションを有しております。一方で、世の中の企業数を考慮した場合、営業開拓の余地が残っており、また、企業においてもCRE戦略という概念や取組みが十分に浸透しているとは言えない状況であると考えております。今後、営業活動の推進・広告戦略の実行等により当社グループ自体の認知度や信用度の向上に努めるとともに、CRE提案活動やセミナーを通じて企業のCRE戦略に対する意識の向上を図ってまいります。

 

④  財務基盤及び資金調達力の強化

 当社グループでは、あらゆる業務のDXの推進に向けてより強固な総合営業プラットフォームの構築を進めていくため、今後も継続的に不動産テックシステムの開発・投資を行っていく方針です。また、企業に対するCREソリューションの提供にあたっては、当該企業が所有する不動産を当社グループ等で取得することが顧客にとって最適解となる場合があり、これらの実現のために機動的な資金の確保が必要となることから、手元資金の確保や金融機関からの借入余力の拡大を進めていくことが課題であると認識しております。このため、資金の内部留保や金融機関との良好な取引関係の構築を行い、財務基盤及び資金調達力の強化を図ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社グループにとってのサステナビリティとは、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むことであり、当社グループの持続的な成長が社会の持続的な発展に貢献できることにあると考えております。

 「全ての企業不動産へのソリューションを通じて、日本の経済・産業に貢献する。」という企業理念のもと、不動産テック等の新しい技術を活用しながら、企業不動産へのソリューションを通じた事業活動を進めていくことで、サステナブルな社会の構築を目指してまいります。

 これらの社会課題解決への継続的な取組みを実現するために、当社の持続的な成長を可能とするサステナビリティへの取組みは、経営上の重要な課題として捉えております。

 

(2)具体的な取組み

① ガバナンス

  当社グループのコーポレート・ガバナンスは、企業経営の透明性と公正性を高め、持続的な成長、発展を遂げ、さらには社会的な責任を果たしていくことが重要であるとの認識に立ち、全てのステークホルダー(利害関係者)から信頼を得ることにより、企業価値の最大化を目指す重要な経営課題と位置付けております。

  具体的には、当社取締役会においては変化の激しい事業環境に対して、課題の検討、業務意思決定を行っており、持続的な成長に関する課題・取り組み等についても適宜議論できる体制となっております。業務執行の監督に関しては、取締役会において各取締役から業務執行状況の報告を適時に受け、取締役の業務執行を監督するほか、監査役は取締役会に出席し議事の内容や手続き等を確認し、必要に応じて意見を述べるほか、監査役会において監査役間での意見交換・情報共有を行う体制としております。

  また、コンプライアンス・リスク管理委員会は、サステナビリティに関連するようなリスク事項の顕在化を防止する機能を有しており、原則として四半期に1回、又は臨時に開催することとしております。

 

  当社グループのコーポレート・ガバナンスの詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。

 

② 戦略

  社名の由来となっている”Re Born”のコンセプトのもと、企業へのCREソリューションを提供する中で、事業拠点の再編や保有資産の有効活用など「今あるものを活かしながら」経済成長を目指す取組み、また工場や研究所等の事業用不動産に対する土壌汚染などを含む「環境汚染への適切な措置」を講じていく取組みを進めてまいります。また、自社のみならず同業界・他業界の幅広い企業との業務提携によって取組みの効果を広げ、より高い目標を達成できるよう努めることで、サステナブルな社会の実現を目指し、事業の運営を通じてサステナビリティへの取組みを進めてまいります。

 

③ 人的資本経営の取組み

  当社グループは、CREソリューション、不動産テックを主要なビジネスとしておりますが、いずれのビジネスも、サービスや役務の提供が主たるものであり、これらの業務提供こそが収益の源泉となっております。そのため、当社グループの競争力の源泉は人材であるとの考え方から、優秀な人材の確保と育成を図っていくとともに、従業員一人ひとりが成長意欲を高め、最大限能力を発揮し、自己実現できる環境を提供できるよう努めてまいります。

(人材育成方針)

  最新のテクノロジーを組み込んだ不動産テックツールを活用しながら、CREソリューションビジネスにおける必要なスキルなどが身につく仕組みを構築していくとともに、リスキリングの実施を各従業員の人事目標に組み込み業務に直接または間接に必要な知識の習得に向けた自己研鑽を促進していくことで、継続的な人材育成に取り組んでおります。

(社内環境整備)

  各種保険制度や資格取得支援制度などの福利厚生制度、会社負担の社員交流会やクラブ活動など、従業員のモチベーションの維持・向上を企図した施策を継続して講じております。また、優秀かつ多様な人材の確保を目的として女性管理職の登用や外国籍従業員の雇用も行っており、性別、国籍、年齢等にかかわらず、多様な人材が、その個性を活かせる環境の整備を進めております。併せて、従業員の健康増進が個人と組織のパフォーマンスの向上につながるものであると捉え、健康経営を推進しております。

 

 (3) リスク管理

  当社グループでは、経営または事業に関するリスクやサステナビリティに関連するリスクを適切に認識、管理、対処できるように、コンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、全社的なリスクの評価、管理、対応策の検討及び実施状況のモニタリングを行っております。また週次で開催している経営会議にて外部環境の変化に伴うリスクや事業上の個別のリスクについて議論、検討し、リスクを積極的に予見することにより、会社に及ぼす影響を最小限に抑えるための体制作りを推進しております。

 

 (4)指標及び目標

    上記「(2)具体的な取組み ③人的資本経営の取組み」において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について重視している指標、並びに、2024年8月末日時点の実績は以下のとおりです。今後、女性を含む多様な人材の活躍を目指し、女性役員の割合を増やしていくことなどを検討しておりますが、具体的な数値目標については、今後の課題として検討してまいります。

 

2024年8月末日時点の実績

全従業員に占める女性の割合

50.0

管理職に占める女性の割合

40.0

役員に占める女性の割合

0.0

健康診断の受診率

100.0

有給休暇の消化率

57.4

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 不動産市況の動向

①   景気変動リスク

  (発生頻度:高/影響:中)

当社グループが属する不動産業界は、景気動向、金利動向及び地価の変動等の不動産市場の動向に影響され、当社グループにおいてもこれらの経済情勢の変化により、一般的にはCREソリューションビジネスへの影響が懸念されます。一方で、企業側の行動として景況感の良い時には積極的な新規出店や設備投資が行われ、景況感が悪い時には、撤退や工場閉鎖等のアクションが起こり、好不況いずれに際しても不動産の取得や売却、賃貸や賃借、資産の有効活用などの取引が発生することから、当社グループが得意とするCREビジネスには様々な収益獲得機会があると考えております。このように不動産市況そのものの影響を直接受けにくいビジネスではあるものの、景気動向に合わせた経営戦略を常に立案しながら、かかる影響が最小限になるようコントロールしていくこととしております。

 

②   不動産価格の高騰

  (発生頻度:高/影響:中)

近年、不動産投資市場の活発化に伴い、不動産価格が高騰しております。土地価格が高騰している局面において、収支計画に見合った価格で購入できない場合は、当社の組成するファンドの賃借先となる企業も一般的に積極的な投資を控える場合があります。企業が望む価格や立地等の条件に合致する用地が確保し難い状況が続いた場合、開発計画に影響が及び、案件そのものの組成が難しくなることにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、前述のとおりCREビジネスは収益獲得機会が多様であることから、投資物件を厳選するとともに、投資に伴うリスクをヘッジするために、共同出資等により投資額をコントロールしていくこととしております。

 

③   物価全般の高騰

  (発生頻度:高/影響:中)

近年、世界的な資源高騰と国内においては人材不足の影響などにより建築コストが上昇しています。建築コストが高騰している局面において、収支計画に見合った価格で建築ができない場合は、当社の組成するファンドの賃借先となる企業も一般的に積極的な投資を控える場合があります。企業が望む価格やスペックに合致する開発が難しい状況が続いた場合、開発計画に影響が及び、案件そのものの組成が難しくなることにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、当社がリノベーション活用による提案を行うことで、既存建物の有効活用によるコスト抑制の実現など、当社の得意とするソリューションを活かしたCRE提案により新たな収益機会を創造していくこととしております。
 

 

(2) 自然災害・事故等

 (発生頻度:中/影響:中)

火災、地震等の災害や暴動、テロ活動により、当社グループ資産が、毀損、焼失あるいは劣化した場合には、一定期間において事業運営に支障をきたす可能性があります。当社では、当該リスクへの対応策として、社内においては部署間の情報・運営の連携、並びに外部機関からの情報収集及び初動対応の連携を進めていくことで、適宜情報収集に努めておりますが、状況によっては当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、資産取得時に、行政の発行するハザードマップの確認、保有資産への保険の付保検討などにより取得資産のリスクを適正に査定し、リスクとリターンのバランスを考慮して投資判断を行うとともに、当社で策定したBCP計画に基づく迅速な措置により、災害発生時の被害を最小限に抑えることとしております。

 

(3) 固定資産の減損会計

 (発生頻度:低/影響:低)

当社グループが所有する固定資産において、急激な経済情勢の変化や金融情勢の悪化等により事業の収益性の著しい低下や保有資産の時価の著しい下落が認識された場合、減損損失を計上することで当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、資産取得時に、テナントの属する産業自体や当該産業におけるテナントのポジショニングなど徹底した事業分析・与信分析を行うことにより厳選した資産取得を進めるとともに、取得時に、取得資産のキャッシュ・フローの精査を経済情勢・金融情勢による影響の観点から行うこととし、当該リスクの発生を最小限に抑えることとしております。

 

(4) 販売用不動産の評価

  (発生頻度:低/影響:低)

当社グループが保有する販売用不動産については、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2019 年7月4日改正分)を適用しております。期末に保有している販売用不動産については、減価償却を考慮した簿価と正味売却価額を比較し、正味売却価額が簿価を下回っている場合には評価損を計上することとしております。今後、経済情勢や不動産市況の悪化等により、当初計画どおりに販売が進まない場合、販売用不動産が在庫として滞留する可能性があり、滞留期間が長期化した場合等は、期末における正味売却価額が簿価または取得価額を下回り、評価損を計上することも予測され、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、不動産売買市場の動向を注視し、業績への影響の把握と事業の進捗管理や精度の向上に努めております。また、一定程度の利益が確保できるよう、仕入れ時には仕入価格を厳正に精査し決定することとしてまいります。また、CREに関しては、企業との間で長期の賃貸借契約を締結する事例が多く、安定的に収入を享受し得る資産も多いことから、長期在庫となった場合には、適切な時期に売却を進めていくことで簿価または取得価格を上回る価格で売却するよう努めてまいります。

 

(5) 取引先の信用リスク

(発生頻度:低/影響:低)

当社グループが保有する不動産の賃借人等の取引先の倒産等により、滞納賃料や原状回復費用が発生する可能性、リース料等の回収が困難になる可能性、及び明渡訴訟等の訴訟費用が発生する可能性があります。

これに対しては、前述のとおり資産の取得前にテナントの与信調査を複合的に行うことを徹底するとともに、テナントとの良好なコミュニケーションを保ち、テナントの事業状況を継続的にモニタリング(有事兆候の早期把握)することとしております。なお、当社グループにおける取引先について、倒産等が発生した実績はございません。

 

(6) 大型案件集中リスク

(発生頻度:高/影響:高)

  CREソリューションビジネスにおいては案件ごとの規模により取引金額が異なり、大型案件の有無により、業績が大きく変動するほか、特定の取引先への売上高が多くなることがあります。また、大型案件の売上計上のタイミングにより、業績が特定の四半期に偏る可能性があります。当社グループの想定どおりに計画が遂行しない場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

  これに対しては、事業規模拡大により顧客ごとの相対的な売上高比率を低減させることでリスク分散を図っていくとともに、KPI管理に基づく案件進捗管理を精緻にし、案件変動の早期発見、次善策及び代替案の立案・実行を行うこととしております。

 

(7) 業績変動リスク

(発生頻度:高/影響:高)

当社グループの提供するCREソリューションビジネスは、譲渡希望企業に対しては完全成功報酬制であるため、成約時に報酬の大部分を受領することとなります。そのため、案件の成約時期によって業績が大きく変動する可能性があります。また、受託する案件の規模により成功報酬も異なるため、案件成約数の一時的な変動や成約案件規模の大小により、業績が大きく変動する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、事業規模拡大により顧客ごとの相対的な売上高比率を低減させることでリスク分散を図っていくとともに、KPI管理に基づく案件進捗管理を精緻にし、案件変動の早期発見、次善策及び代替案の立案・実行を行うこととしております。

 

(8) システム障害リスク

(発生頻度:低/影響:中)

  当社グループの不動産テックサービスは、外部のサーバーや通信ネットワークシステムを利用し、事業を運営しております。従って、サーバーのシステムダウンや外部からの不正アクセス、サイバー攻撃等により、当社グループのテックシステムに何かしらの問題が発生した場合には、サービスの運営に支障を来たし、当社グループに対する信用の毀損を通じて、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

  これに対しては、セキュリティ体制が構築されている大手クラウドサービスの利用を継続することとし、併せて、当社グループのシステム人材の確保、BCP(事業継続計画)に基づいた訓練、見直し等を含む有事対応の強化を進めることとしております。

 

(9) 技術革新

(発生頻度:低/影響:低)

  不動産テック事業が属しているIT技術分野は技術進歩が速く、当社グループが想定する以上の技術革新により、当社グループの技術やサービスが競争力を失うような事態が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

  これに対しては、最新のIT技術、AI技術(生成AIなど)の動向などの把握に努め、顧客へのサービス提供可否について検討を進めてまいります。

 

(10) 競合リスク

(発生頻度:低/影響:中)

不動産テック事業に関し、資金力、ブランド力のある企業の新規参入によって、シェアの低下、受注単価の下落などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響する可能性があります。

これに対しては、知財戦略として特許を取得するなど類似のビジネスの展開に対する対策を講じております。CREビジネスは、企業の多様なニーズ、手法の多様さと専門性から参入障壁が高いマーケットであり、そもそも同様のビジネスを展開するプレイヤーも少ないものと認識しておりますが、継続的にCREマーケットの裾野拡大を図り、企業の多様なニーズの把握、新たなサービスの開発などに努めることとしております。

 

(11) 顧客ニーズに応じたサービスの提供

(発生頻度:低/影響:高)

  不動産テックシステムにおける顧客ニーズに応じたサービスに関し、顧客ニーズにあったサービス提供の遅れやニーズと相違したサービスの提供などがサブスクリプションサービスの解約につながることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響する可能性があります。

  これに対しては、顧客ニーズの把握(潜在的なものを含む)に努めつつ、最新のIT技術、AI技術(生成AIなど)の活用を含めて、利用顧客の声に耳を傾け、顧客が欲するサービスの把握を常時行いながら付加価値の提供について検討を進めることとしております。

 

(12) 人材確保・流出リスク

  (発生頻度:中/影響:高)

  当社グループが、当社グループの事業に関する高度な知識と経験に基づく競争力のあるサービスを継続的に提供していくためには、優秀な人材の確保が不可欠となります。当社はこのような認識のもと必要に応じて優秀な人材を採用していくことが、最も重要な経営課題の一つであると考えております。しかしながら、雇用情勢の変化等により人材を適時に獲得できない場合、人材が大量に社外流出してしまった場合、育成が計画どおりに進展しない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

  これに対しては、生成AIを活用した高度な知識や経験の可視化、言語化等により、未経験者でも即戦力化できる仕組みの構築をさらに進めてまいります。また、福利厚生制度の充実、ストックオプション制度などの施策により労働意欲を高めていくことで従業員満足度を高める施策などを継続して行い人材の定着化を図ってまいります。

 

(13) 特定人物への依存

  (発生頻度:低/影響:高)

  当社創業より事業化並びに事業推進を進めてきた代表取締役社長宮寺之裕は、CRE、不動産及び不動産金融に関する豊富な経験と知識を有し、経営方針や事業戦略の決定等、当社グループの事業活動全般にわたって重要な役割を果たしております。何らかの理由により同氏による当社グループの業務遂行が困難になった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

  これに対しては、不動産テックシステム開発による同氏のノウハウの共有を進めつつ、今後も同氏に過度に依存しない経営体制の構築を目指し、優秀な人材の登用とともに幹部社員の育成などに努めてまいります。

 

(14) 小規模組織

   (発生頻度:高/影響:高)

  2024年8月31日現在で従業員は12名と小規模組織であるため、役職員一人ひとりが担う業務の質及び貢献度は相応に高く、事故・災害等、また上場に伴い法定開示などの開示業務、IR業務など、今後の事業規模の拡大により業務遂行に支障をきたす可能性があります。

  これに対し、当社グループの主力業務であるCREソリューションビジネスについては、「CCReB AI」や「CCReB CREMa」など不動産テックシステムが既に完備されており、分析業務を自動化することで特定の人材に依存した業務体制をヘッジしております。また、CRE提案における生成AIを活用した高度な知識や経験の可視化、言語化により、特定の人材へのノウハウの集中などのリスクもヘッジしております。また、今後、人材採用を強化し人員確保することで本リスクの影響度を軽減していくとともに、BCP施策の点検・見直しなど、有事の被害を最小限に抑える施策、外部の人材を効率的に活用する施策などを継続して進めてまいります。

 

(15) 外注・業務委託

 (発生頻度:高/影響:高)

  当社グループは組織の柔軟性や固定費の圧縮のため、少数精鋭によるファブレス経営を特徴とし、特に不動産テックサービスの開発業務については外注・業務委託契約による開発を行っております。しかしながら、適時適切に外部協力会社が確保できない場合、外部協力会社の不正や当社グループの外注先管理が不十分であった場合には、開発したサービスの瑕疵や開発スケジュールの遅延等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

  これに対しては、業務委託先との良好な関係を強化するとともに、有事の際の業務委託代替先に関しても定期的に選定を行うことにより影響度を軽減する対策を取っております。今後においても、システム担当者の採用など、不動産テック部門のインハウス化も含め検討を継続して進めてまいります。

 

(16) 法的規制

 (発生頻度:低/影響:高)

  当社グループの行う事業は、宅地建物取引業法、金融商品取引法、建築基準法、都市計画法、資産の流動化に関する法律(資産流動化法)、景品表示法など多くの法的規制を受けております。当社グループではこれらの法的規制を遵守するように努めておりますが、法令違反が発生した場合や新たな法令の制定・法令の改正等が行われた場合、当社グループの事業活動が制約を受け、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

  これに対しては、法令遵守のマニュアルを作成し、内部監査の実施などにより実務定着化を徹底するとともに、研修等の開催により既存役職員及び新規採用人材のコンプライアンスに関するリテラシーを維持・向上させることとしております。

 

(17) 個人情報の管理

 (発生頻度:低/影響:高)

  当社グループは事業活動を通じて、顧客・取引先の機密情報や個人情報を取得・保有しております。個人情報の取り扱いについては、細心の注意を払っておりますが、不測の事態によって当社グループが保有する個人情報が外部流出した場合、賠償責任を課せられるリスクや当社グループに対する信用が毀損するリスク等があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

  これに対しては、個人情報関連のマニュアルを作成し、内部監査実施などにより実務定着化を徹底するとともに、研修等の開催により既存役職員及び新規採用人材の個人情報保護に関するリテラシーを維持・向上させることとしております。

 

(18) 内部管理体制

 (発生頻度:低/影響:高)

  当社グループでは、コンプライアンス及びコーポレート・ガバナンスの徹底が企業価値を長期的、継続的に向上させていくために非常に重要であることを理解し、その浸透を図るために様々な制度設計やポリシーの制定、施策の実施等を行っております。また、業務の適正化及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、各事業及び連結ベースでの予算管理・資金管理・業務プロセス等内部管理体制の構築が追い付かないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

  これに対しては、コア業務の業務オペレーションをマニュアル化し、予算管理、資金繰りなどの業務について、新規人材を確保していくとともに、バックアップ体制を構築してまいります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症流行の社会的抑制が緩和されたことで個人消 費が回復し、またインバウンド需要の回復とあわせて持ち直しの動きが見られました。しかしながら、ウクライナ や中東情勢等の地政学的リスク及び各国の金融政策の変更等により、資源・エネルギー価格の高騰、円安の進行等が国内経済に及ぼす影響が懸念され、先行きの不透明な状況が続いております。

 当社グループの事業ドメインであるCRE(Corporate Real Estate=企業不動産)市場は、民間企業が保有する不動産総額は約524兆円(注1)、そのうち当社の主要顧客とする上場企業が保有する不動産総額は約128兆円(注2)、一定規模以上の固定資産(20億円以上)を有する非上場企業が保有する不動産総額は約49兆円(注3)、Jリートが保有する不動産総額は約23兆円(注4)保有しているとされ、膨大なストックが存在するとともに、所有する企業においては経営状況や財務状況等の様々な要因から所有不動産に関する多様なニーズを有しております。

 実際に、一般財団法人日本不動産研究所が実施したCRE戦略の必要性に対するアンケート調査(2010年及び2023年実施(注5))によると、2010年時点で調査対象となった企業のうちCRE戦略の必要性を感じていると回答した法人は約52%であったのに対し、2023年時点においては約88%もの法人がCRE戦略の必要性を感じていると回答し、企業経営におけるCRE戦略の重要性は年々増加している状況であると考えております。

 また、2023年3月に株式会社東京証券取引所上場部より「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が公表されました。これを受けて、資本効率に課題を持つ上場企業、特にPBRが1倍を割れている企業を中心にその改善策の検討や実行が必要となっている状況です。バランスシートに占める割合の大きい不動産に関してもその活用方法や保有方針の見直しが行われることが予想され、すでにCRE戦略を盛り込んだ対策案の開示や具体的な施策を実行する企業も出てきております。今後も企業におけるCRE活動は活発化していき、企業による国内回帰を含むサプライチェーンの見直しや資本効率向上を意識した保有資産の活用方針の見直しなど、市場として更に進展していく可能性があり、資本効率向上に資するCRE戦略ニーズは今後ますます高まっていくと当社では考えております。

 このような事業環境のもと、当社は「全ての企業不動産へのソリューションを通じて、日本の経済・産業に貢献する。」との企業理念のもと、膨大なCREの市場に対し、AIを活用した不動産テックツールを自社にて開発・活用し、効率的かつ収益性の高いビジネスを展開してまいりました。

 

 当連結会計年度におけるCREソリューションビジネス、不動産テックビジネスの各ビジネス区分の概要は以下のとおりです。

 

(CREソリューションビジネス)

 CREソリューションビジネスにおいては、有価証券報告書や中期経営計画書等の開示資料を独自のAIエンジンが自動的に分析し、企業の売却動向を把握する不動産テックシステムである「CCReB AI(ククレブエーアイ)」、不動産テックシステムと連携し生成AIを活用して分析や提案ポイントを示唆するチャットボット形式によるテックシステム「CCChat(ククチャット)」、事業用不動産に強みをもつマッチングシステム「CCReB CREMa(ククレブクレマ)」を活用し、不動産戦略に留まることなく、企業の企業経営・財務領域への影響を意識した当社ならではのCRE戦略の提案、アドバイザリーを行ってまいりました。

 当連結会計年度においては、バランスシートを活用した不動産投資案件による売上、不動産仲介案件の受託、遊休地の活用等を含むプロジェクトマネジメント案件、さらには東証プライム上場企業への保有資産の有効活用に関するコンサルティング案件など、CREソリューションに関する多様なサービスを各企業に提供してまいりました。こうした背景から、CREソリューションビジネス関連の売り上げは前連結会計年度比97.5%増で推移しました。

 今後ともバランスシートを活用した不動産投資などによる安定した賃貸事業収入の構築を進め、成長性と安定性の両立を目指す収益構造の構築を進めてまいります。

 

(不動産テックビジネス)

 不動産テックビジネスにおいては、2023年9月に「CCReB CREMa」に関する新たなサブスクリプションサービスをローンチし、ユーザー数並びに案件登録数が大幅に増加しました。「CCReB AI」においては、2024年2月に株式会社トーラスが展開する不動産チェッカーの機能と相互連携することで、ユーザーによる不動産登記情報の取得機能を追加しました。こうした機能向上によりユーザー数は堅調に推移したことから、不動産テックビジネス関連の売上は前連結会計年度比9.3%増で推移しました。

 今後とも不動産テックシステムにおけるユーザー利便性の向上に向けた企画、開発などを継続的に取り組んでいくことで、安定した収益の獲得を目指してまいります。

 

 経費面においては、業容の拡大に伴う人材の採用等を進めたものの、当社独自の不動産テックシステムを活用した営業活動等、効率的な業務推進を行った結果、販売管理費の対前年増加率は26.7%となり、売上高の対前年増加率80.4%を大幅に下回る結果となっております。

 

 以上、これらの取組みの結果、当連結会計年度の当社グループの経営成績は、以下のとおり、売上高及び全ての段階利益において過去最高となりました。

売上高

1,269,627

千円

(前連結会計年度比80.4%増

営業利益

420,954

千円

(前連結会計年度比80.6%増

経常利益

416,408

千円

(前連結会計年度比77.5%増

親会社株主に帰属する当期純利益

288,477

千円

(前連結会計年度比76.6%増

 

 また、売上高のうちサービス区分ごとの売上は以下のとおりとなります。

CREソリューション

1,120,781

千円

(前連結会計年度比97.5%増)

不動産テック

148,846

千円

(前連結会計年度比 9.3%増)

 

 

(注)1.国土交通省「法人土地・建物基本調査(2018年)」により当社集計

2.2023年1月から同年12月に開示された全上場企業の有価証券報告書において「主要な設備の状況」に記載された、土地・建物及び構築物の帳簿価額の合計額を当社集計

3.2022年6月時点で、20億円以上の有形固定資産を保有する企業の土地・建物及び附属設備の合計額を当社で集計(データ提供元:株式会社東京商工リサーチ)

4.一般社団法人不動産証券化協会「ARES マンスリーレポート」(2024年7月)より

5.一般財団法人日本不動産研究所が、2010年及び2023年に、金融機関や一般企業に対して行ったアンケート調査(2023年10月11日付「CRE市場に係る成長性調査」)より抜粋(アンケート対象企業数:2010年(N)=67、2023年(N)=95)

 

 ② 財政状態の状況

 当連結会計年度末における総資産は1,511,615千円となり、前連結会計年度末比で501,363千円の増加となりました。これは、主に販売用不動産を取得したことにより販売用不動産が715,658千円増加したこと、土地、建物及び構築物の取得を主因として有形固定資産が全体で150,485千円増加したことなどによるものであります。

 負債は538,852千円となり、前連結会計年度末比で244,835千円の増加となりました。これは、短期借入金が170,000千円、買掛金が42,083千円および未払法人税等が38,627千円それぞれ増加したことなどによるものであります。

 純資産は972,763千円となり、前連結会計年度末比で256,527千円の増加となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上288,477千円、配当金の支払額34,200千円などによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金および現金同等物は、前連結会計年度末に比べ355,275千円減少し、262,425千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、299,354千円の支出(前連結会計年度は278,707千円の収入)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上428,770千円があった一方で、販売用不動産の増加額715,658千円、法人税等の支払額93,190千円があることなどによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、193,971千円の支出(前連結会計年度は87,558千円の支出)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出が183,035千円、敷金の差入による支出が33,018千円あることなどによるものであります。
 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、138,050千円の収入(前連結会計年度は19,220千円の収入)となりました。主な要因は、配当金の支払による支出34,200千円がある一方で、短期借入金の増加による収入170,000千円があることなどによるものであります。

 

 

④ 生産、受注および販売の実績

a 生産実績

  当社グループは生産活動をおこなっていないため、該当事項はありません。

 

b 受注実績

  当社グループは受注生産形態をとらないため、該当事項はありません。

 

c 販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

CREソリューション事業

1,269,627

180.4

合計

1,269,627

180.4

 

 

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

(自 2022年9月1日 

(自 2023年9月1日

  至 2023年8月31日

    至 2024年8月31日

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

エムエル・エステート

株式会社

14,507

2.1

399,644

31.5

天龍ホールディングス

株式会社

78,185

11.1

145,881

11.5

東急リバブル株式会社

362,945

51.6

13,260

1.0

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

また、当社グループはCREソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

  ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。この財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第 5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 ② 経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

 当社グループの主要サービスは、不動産テックを活用することで、CRE戦略に関する効率的かつ有効な提案、案件成約に至るまでの業務工数の大幅な低減を図り、その結果、一定の高い営業利益率水準を維持することができるものであるため、売上高および営業利益率を指標として重視しております。当連結会計年度における売上高は、当社のビジネスモデルであるAIを活用した不動産テックツールと長年のノウハウを結集したCRE戦略提案の結果、土地有効活用案件、拠点再編・新設案件やオフバランス案件に対して、アドバイザリーからファンド組成まで幅広いソリューションを提供してきました。

 

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は 1,269,627千円(前年同期は703,605千円)となりました。

    なお、CREソリューション事業におけるサービスごとの売上高は以下のとおりとなります。

バランスシートを活用した不動産投資

380,205千円

不動産仲介

281,263千円

バランスシートを活用した不動産賃貸

268,982千円

不動産テック

148,846千円

CREアドバイザリー

84,724千円

CREファンド組成

54,654千円

プロジェクトマネジメント

50,950千円

 

 

(売上原価及び売上総利益)

   当連結会計年度における売上原価は420,184千円(前年同期は132,325千円)となりました。これはバランスシートを活用した不動産投資における不動産売却に際して発生した売却原価、保有不動産に関する支払賃料、諸費用等の支払いが発生したことによります。この結果、売上総利益は849,442千円(前年同期は571,280千円)となりました。

(販売費及び一般管理費並びに営業利益)

  当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、428,488千円(前年同期は338,133千円)となりました。これは堅調な売上の増加に伴う業務量の増加等により、人件費や業務委託費等が増加したことによります。

  この結果、営業利益は420,954千円(前年同期は233,147千円)となりました。

(営業外収益、営業外費用および経常利益)

  当連結会計年度における営業外収益は992千円(前年同期は1,632千円)となりました。また、営業外費用は5,537千円(前年同期は140千円)となりました。この結果、経常利益は416,408千円(前年同期は234,638千円)となりました。

 

 なお、財政状態の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載の通りであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  当社グループの主な資金需要は販売用不動産の仕入、賃貸用不動産の購入及び不動産テックシステムの開発費用並びに人件費等であります。運転資金の調達は自己資金及び金融機関からの借入を基本としております。本報告書提出時点において、安定的かつ機動的に運転資金を確保することを目的として、取引金融機関と当座貸越契約を締結しております。主として、販売用不動産の仕入や賃貸用不動産の購入時には多額の資金を要するため、それらの事象が生じた際には投資金額、手元資金、資本コスト等を総合的に考慮して最適な手段により調達することとしております。

  なお、キャッシュ・フローの状況・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 

④ 経営戦略の現状と見通し

  経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境および対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

 該当事項はありません。