当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「100億人・100歳時代」の豊かで持続可能な社会の実現を目標に、事業を通じた社会価値の創出、社会課題解決を目指しています。
豊かで持続可能な社会の実現に向けて、社会価値・非財務価値・財務価値、これら3つの価値を循環・拡大させながら、社会課題を解決していきます。社会価値は、事業活動による顧客価値拡大や、様々なパートナーとの共創による社会課題の解決により創出・向上を図ります。この社会課価値の実現を支えているのが、当社グループの競争力の源泉である人的基盤、知的・共創基盤、社会信頼基盤からなる非財務価値です。財務価値は、お客様への価値提供、社会価値の創出によって得られる対価であり、次なる成長に向けて継続的に投資します。
以上の循環によって当社グループ自身が持続的に成長し、社会と自社のサステナビリティを両立させてまいります。
(2)経営戦略
(中期経営計画2026)
当社グループは社会課題解決企業を標ぼうし、差別化を図ることで市場での存在感を確保することを目指しています。そのために、2030年にありたい姿を描いたうえで、実現に向けた「中期経営計画2026」(以下「中計2026」)を2023年10月に策定し、同計画に基づき取り組みを進めています。
「中計2026」は、前「中期経営計画2023」(以下「中計2023」)を起点として、2030年までの9年間を3カ年ずつ3段階に区切り、その中間と位置づけました。3段階を「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」としたうえで、「ステップ」に相当します。「中計2026」では、「中計2023」で第一歩を踏み出した経営理念の実現・価値創造プロセスをさらに進めるとともに、顕在化した課題に対応し、グループ横断の事業領域で独自の価値提供モデルを構築してまいります。そのうえで、「ジャンプ」期間でさらなる領域拡大・収益性向上を目指します。
「中計2026」での成長は、当社グループの経営理念のもと、財務、非財務、社会の3価値の拡大とともに、DX事業の成長による規模拡大と基幹事業の質の改革による収益性向上、次世代事業の育成・拡大による事業ポートフォリオ転換の加速などによって実現する計画です。
そのうえで、基本方針として、①事業戦略、②基盤戦略、③価値創造戦略を定めました。
①事業戦略
デジタル×コンサル×シンクタンク融合のワンストップモデルを構築し、グループ全体でDXへの取り組みを加速し、次世代に向けた事業育成を進めます。
こうした事業戦略をグループ全体で推進するため、「事業」軸中心に戦略領域を定め、「シンクタンク」「社会・公共イノベーション」「デジタルイノベーション」「金融システムイノベーション」の4事業を推進します。
・シンクタンク事業:
研究・提言を通じて未来社会像の実現に向けた社会潮流を形成し、当社グループ全体の社会価値を高める機能を担います。
・社会・公共イノベーション事業:
公共・民間を対象とした当社グループの中核として堅持し、課題解決策の社会実装実現、政策知見を活かし調査研究・DX・コンサルティングサービスを展開します。
・デジタルイノベーション事業:
経営・DXコンサルティングとともに高い市場成長性が見込まれる製造・流通分野向けのDXソリューションを展開するとともに、データ分析・AIを活用したサービスを推進します。
・金融システムイノベーション事業:
既存の金融機関向け事業を中心に、金融コンサルティングの拡充や金融DX領域に展開します。
②基盤戦略
事業成長のための基盤を次の5つの観点から整備・高度化します。
・人的資本経営:
競争力の源泉としての人的資本を拡充し、当社グループ全体としての最適な人材ポートフォリオを実現します。
・営業力強化:
DX事業のマーケティング及びプロモーション機能をグループ連携体制で強化します。
・新事業強化・海外:
人的リソースを過度に制約としないサービス提供型モデルを新事業と位置づけ、当社グループらしい多様な新事業を探索・開発強化します。また、海外顧客やビジネスパートナーのグローバル事業展開及び国内顧客の海外事業展開等をハノイ・ドバイの海外拠点を起点に支援するなど、海外事業も推進してまいります。
・グループ内DX:
生成AIの活用やプロジェクト管理DX等を用いて、当社グループ全体の生産性向上を図り、さらに顧客価値の提供を目指します。
・リスクマネジメント:
当社グループの業容拡大、AI等を活用した事業などの展開に伴い、リスク管理システムのさらなる高度化、システム開発におけるプロジェクト管理体制、法務機能、情報システムセキュリティについても、グループ全体で機能発揮・強化していきます。
③価値創造戦略
上記事業及び基盤戦略に基づき顧客に提供する価値を高め、ひいては財務、非財務、社会の3価値の好循環・拡大によって、当社グループのサステナビリティ経営を推進いたします。ステークホルダーに対するグループ広報・IRを通じ、社会価値及び保有する非財務資本・価値を積極的に説明・訴求し、社会課題解決企業グループとしての認知・信頼を獲得し、当社グループ全体のブランドイメージを確立させます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
①財務価値
経常利益及びROEを重要な経営指標とし、「中計2026」の目標水準を以下のとおり定めました。なお、2030年における一層の事業規模拡大を目指す中間点として、売上高目標も定めております。これら目標達成への取り組みを通じ、企業価値並びに資本効率の向上を図ってまいります。
「中計2026」最終年度(2026年9月期)の目標水準
●売上高 :1,350億円
●経常利益 :140億円
●ROE :12%
②非財務価値
当社グループとして設定したマテリアリティに基づき、「社会課題解決力」を表現する具体的な非財務価値の指標を定め、その達成を目指しています。具体的には、「人的基盤」「知的・共創基盤」「社会信頼基盤」の3要素に区分のうえ、女性採用比率や特許出願数・登録数、再生可能エネルギー比率などを指標として設定し、これらの達成状況を社内取締役の変動報酬(株式報酬)の算定要素の一部に採用し、役員報酬に反映させています。
③社会価値
当社グループとして設定したマテリアリティに基づき、創出を目指す社会価値や当社グループの強みが生み出す社会価値について、当社グループが遂行する関連事業に結び付けて「人材・ヘルスケア事業規模」「GX(*)関連事業規模」「育成したベンチャー企業数」などの指標を定め、社会価値の明確化を図ります
(*)GX:グリーン・トランスフォーメーション(Green Transformation)の略。再生可能エネルギー中心の産業・社会構造への転換や温室効果ガスの削減を成長戦略に据え、環境保全と経済成長の両立を目指す取り組み。
(4)経営環境
当社グループはシンクタンク・コンサルティングサービスセグメント(以下、TTC)の官公庁向け事業、ITサービスセグメント(以下、ITS)の金融・カード向け事業を基盤事業と位置づけ、これらを強みとしています。TTCでは株式会社三菱総合研究所が、ITSでは三菱総研DCS株式会社が各セグメントの中核を担い、2社が連携しながら安定的な事業基盤を維持・拡大し、成長してきました。
社会課題が一層高度化・複雑化するなかで、課題解決を図るための政策立案や制度設計において、幅広く、かつ、高度な専門性や緊急性、機動力がますます求められるようになりました。TTCでは多彩な専門性と総合力で、特に社会的影響や解決の優先度が高い環境・エネルギー、ヘルスケア、交通・移動、通信等の課題に先駆的に対応してきました。その結果、多くの官公庁事業を安定的に受託しております。加えて、社会課題解決には、調査・研究や制度設計のみならず、実際に機能する具体的な解決策の提示や、その効果の実証的な確認、さらには実社会への適用・事業化など、これまで以上に踏み込んだ関与が求められています。こうした変化は、投入する要員による制約が大きい事業モデルから、人的リソースを過度に制約としない事業モデルへの転換という、新しい事業展開の可能性を示すものでもあります。
金融業界では、ICTの急速な普及・発展とともにフィンテックなどの新たな技術への対応が喫緊の課題となっています。加えて、グローバル化の進展とともに顕在化したマネーロンダリングや各種市場リスク管理等の課題に対処するため、新たな国際的金融規制やこれに応じたシステム対応が求められています。ITSでは、こうした金融業界の変化を捉えつつ、重要な基幹的システムに係る開発需要等を捉え、安定的に拡大してきました。一方で、AIやクラウドコンピューティングによる柔軟で低コストのシステムや、フィンテックを活かしたスマートフォン決済など、従来とは異なるシステム要件も急速に求められるようになりました。顧客ニーズに応えるには、よりコンサルティング的な機能を強化することが期待されています。
こうした環境変化に対応し、さらなる成長を実現するために、当社グループ全体での取り組みをさらに強化・加速し、戦略領域を「事業」軸中心に組み立て、取り組んでおります。加えてポートフォリオ改革を推進し、重要な事業への重点的かつ効率的なリソース配分を進めます。これまで蓄積した強みを礎として、より市場規模の大きな民間企業分野における変化を予測・見通し、DXをはじめとした最先端ICTによる解決策を実現する「実装」をさらに推進します。加えて、当社グループの強みの源泉たる人材並びに情報発信力を高め、グループ内外の様々なパートナーとの連携を拡大してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①人的資本経営の強化
人材は、当社グループの競争力や成長の源泉となる重要な資産です。成長シナリオを実現するため、当社グループ全体の事業戦略の視点から必要な人材を確保し、最適な人材ポートフォリオを実現します。人材ギャップ解消のための採用・育成戦略を立案するとともに、処遇改善や成長領域に対応した人材の重点的な強化を行います。
また、グループ経営の観点からグループ全体でのリソース活用によるキャリア形成支援を進めます。
人材育成に当たっては、社員個々の志向に応じた育成・成長を支援する当社独自の「FLAPサイクル(*)」を導入しています。さらに、人員規模の増大、人材の多様化に応じた、計画的かつ継続的な育成・キャリア形成支援研修の重要性の高まりから、2024年4月には「MRIアカデミー」を開校し、経営理念を具現化する人材を輩出するための施策を実施しています。引き続き、働き方改革を推進して健康経営、社員活躍推進、ダイバーシティ向上、従業員のエンゲージメントを強化・向上し、優秀な人材が存分に能力を発揮・活躍できる一層魅力的な環境を備えた企業グループを目指します。なお、同様に三菱総研DCS株式会社においても、DX人材の活用、教育、リスキリング並びに社内認定制度の運用を行う「デジタルアカデミー」を立ち上げ、組織的な人材育成を強化しています。
働き方改革等の取り組みは短期的にはコスト増となりますが、人材が当社グループ最大かつ最重要の資産との考え方に基づき、当社グループの持続的成長にとって不可欠な取り組みと捉えております。ただし、あわせて生産性向上や価格転嫁等にも継続して努めるとともに、品質の維持・向上への不断の取り組みによる顧客価値の増大もあわせて実現してまいります。
(*)FLAPサイクル:自身の適性や業務に必要な要件を「知る」(Find)、スキルアップに必要な知識を「学ぶ」(Learn)、目指す方向に「行動する」(Act)、新たなステージで「活躍する」(Perform)という一連の循環で一人ひとりのキャリア形成を促す当社独自の方法論。
②DX事業、新事業等の加速
当社グループは、基盤事業による収益を拡大しながら成長事業に投資し、中長期的に次代のコア事業を育成していく両利き経営を引き続き推進しています。
「中計2026」の事業戦略に位置づけた「社会・公共イノベーション」「デジタルイノベーション」「金融システムイノベーション」のいずれも、現在の政策・経営課題の潮流であるDX、GX、人材が事業展開・成長の鍵を握る要素となっており、これらを捉えた事業設計を進めています。
また、将来を担う事業を育成し、事業ポートフォリオの転換を急ぐことも重要な課題と捉えています。具体的には人的リソースを過度に制約としないサービス提供型の事業規模の拡大・収益化、PROSRVやmiraicompassなどの既存有力サービスに続く新サービスの開発、海外事業の展開などに取り組んでまいります。
両利き経営の推進に当たっては、常に収益の拡大と成長事業への投資のバランスを最適化する必要があると認識しており、随時見直しを図りつつ取り組んでまいります。
③研究・提言活動強化・積極的な生成AI活用
シンクタンクを中核とする当社グループでは、「研究・提言」から政策・制度策定や事業開発の支援、開発や運用、実際のサービス提供に至る価値の連鎖によって独自性を発揮することを目指しています。研究・提言活動は、この価値連鎖の起点であり、さらなる強化が必要と認識しています。研究・提言を通じて未来社会像の実現に向けた社会潮流を形成し、当社グループ全体の社会価値を高めます。具体的には、時機を捉えた自律的な取り組みと科学的知見(エビデンス)に基づく提言を実践し、官公庁の主要施策や企業戦略立案に貢献していきます。
また、生成AIの登場や飛躍的発展・普及は、多くの産業・職業に影響を及ぼし始めていますが、当社業務も例外ではなく、事業モデルの根本的な転換、想定外の業界からの競合の登場や競争優位性の喪失など、様々な将来的リスクが考えられます。こうしたリスクをむしろ事業機会として活かすため、当社グループでは積極的にグループ内での生成AIの活用を進め、プロジェクト管理DX等を推進しています。こうした取り組みを通じて、当社グループ全体の生産性向上を図り、さらに高度な顧客価値の提供を目指します。
④リスク対応力の強化
業容拡大に伴い、従来にない大型事業や事業形態の案件遂行機会が増加しており、プロジェクトマネジメントの重要性が高まっています。また、新事業の取り組みにおいては、当社グループにとって対応経験・知見の蓄積がないリスクに直面する可能性があり、リスクの早期把握・迅速な対応が求められます。
KRI(Key Risk Indicator)による予兆モニタリングを実施することでリスク増減傾向の把握と予兆管理を高度化するとともに、システム開発におけるプロジェクト管理機能をグループ全体で発揮・体制強化するほか、法務機能や情報セキュリティについてもさらに強化してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
①ガバナンス
サステナビリティは、当社グループの経営の基盤となる考え方であり、社長が務める「最高サステナビリティ責任者(CSO:チーフ・サステナビリティ・オフィサー)」、コーポレート部門長が務める「サステナビリティ経営責任者」を設置し、推進の責任を明確化しています。サステナビリティ活動計画やマテリアリティの設定・見直し、非財務価値・社会価値に関する目標等の策定・管理などは、グループ経営企画部内のサステナブル経営推進室が担います。審議決定事項については、グループ経営企画部長が起案、サステナビリティ経営責任者、CSO及び経営戦略委員会の承認を得た上で、経営会議で決定します。取締役会はサステナビリティにかかる基本方針、定期的な計画の進捗状況などにつき報告を受け、監督いたします。
②戦略
目指す社会の実現・経営理念の実現に向けて、当社グループが重点を置く社会価値・非財務価値、それらの向上の方向性として、サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)を定めました。
当社グループが捉える社会課題は、国際的枠組み・ガイドライン(SDGs、ISO26000、SASBスタンダード、GRIスタンダード等)に基づくものに加え、当社が総合シンクタンクとして社会課題を俯瞰的に分析・整理した「社会課題リスト」、さらに当社50周年を機に実施した長期社会ビジョンに関する記念研究(M50研究)等を踏まえたものです。
事業を通じた豊かで持続可能な社会の構築、当社グループの持続的成長の2つの側面から、計6項目のマテリアリティを設定しました。
マテリアリティ(重要課題)の位置づけ
三菱総研グループのマテリアリティ
(*)レジリエンス:「回復力」「弾力性」を意味し、災害時など危機に直面した際の対応能力や、被害からの速やかな回復力(強靭さ)などを指す。
③リスク管理
当社グループにおけるサステナビリティに関連するリスクは、「
詳細は、「
(2)気候変動
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、「
②戦略
カーボンニュートラル社会の実現を含む気候変動問題への対応は当社グループの脱炭素化だけでなく、リサーチ・コンサルティングの知見を活かし社会価値向上に貢献できる重要な分野と認識しています。当社グループでは、気候関連リスク・機会の特定や当社グループへの財務的影響についてシナリオ分析を実施しています。具体的には、厳格な対策(炭素税、環境規制等)が導入され、社会全体が積極的に気候変動対策に取り組みシナリオ(1.5℃シナリオ)と、厳格な対策は導入されず、自然災害が激甚化・頻発化するシナリオ(4℃シナリオ)を前提に、2030年時点の財務的影響を分析しています。なお、参考としたシナリオは、1.5℃シナリオについては当社が2021年9月7日に公表したカーボンニュートラル提言に加え、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)1.5℃特別報告書(SR15)、国際エネルギー機関(IEA)WEO NZE2050、4℃シナリオについては政府間パネル(IPCC)RCP8.5等をそれぞれ参照しています。
また、シナリオ分析に当たっては当社グループが、その事業領域に再エネ、脱炭素、電池技術などの気候変動に対する緩和プロジェクト並びに、防災・レジリエンス、インフラ強化などの気候変動に適応するための適応プロジェクトといった気候変動関連領域を含むことを勘案し、現状の当社グループの事業を気候変動関連領域/その他戦略領域に分類し、2030年時点のそれぞれの事業規模を想定した上で、新たに創出される新領域の事業拡大、炭素税等の対応コスト等を考慮して財務影響を算出しました。
2つの気候変動シナリオに加え、気候変動関連領域の事業戦略を2とおり(成長/標準)設定することにより、計4とおりのシナリオをもとに財務影響を分析しております。
シナリオ分析に基づいた2030年の当社グループの気候関連リスク・機会の財務影響は以下のとおりです。
1.5℃シナリオでは、当社グループのGHG排出量や電力使用量が少ないため炭素税導入の影響や電力価格の上昇等の財務に与える影響は軽微であり、成長戦略における事業機会の取り込みが当社の事業により大きな影響を与えると見込まれます。
4℃シナリオでも、自然災害の激甚化による経済減速の影響を緩和する観点から、事業機会の取り込みが重要であることが明らかになりました。なお、当社グループが保有するデータセンターについては、その立地と建物強度を勘案し、2030年時点での自然災害による物理的リスクは極めて僅少と評価しました。
(気候変動にかかるリスクと機会への対応策)
当社グループにとっての気候関連の主なリスクは炭素税導入による損益への影響等であり、主な機会はカーボンニュートラルに向けた事業環境の転換であることが明らかとなりました。リスクと機会への主な対応策は以下のとおりです。
(機会を伸ばす対応策)
カーボンニュートラルに向けた事業環境の転換への対応策は、2021年9月に当社がカーボンニュートラル提言において示した3つのキーポイント(①電力部門の早期ゼロエミッション化、②戦略的なイノベーションの誘発、及び③需要側の行動変容)について、関連分野での政策検討支援や民間企業へのコンサルティング業務を拡大していくことであると考えます。
(リスクを低減させる対応策)
当社グループのGHG排出量は7,686tCO2(2023年9月期)と少なく、かつデータセンターやオフィスでの電力使用に起因するScope2が大半を占めます。炭素税等のカーボンプライシングの検討が進む中で、GHG排出量の削減を通じて財務影響を最小化する取り組みは不可欠です。このため、当社グループとして再生可能エネルギーの導入を積極的に推進、特にデータセンターの再生可能エネルギー比率向上等を進めるほか、業務効率化や生産性向上、ワークスタイル改革、オフィスのLED化等を進め、電力由来のGHG排出量削減を図ります。さらに炭素排出量を取引する市場の制度設計への貢献で蓄積した知見を踏まえ、国内外のCO2等の排出削減プロジェクトから生じた削減実効性の高い炭素排出権(クレジット)の活用も視野に入れ排出削減に取り組みます。また自主事業として進めるメガソーラー事業での再生可能エネルギー由来の発電事業に取り組むことで 排出削減に貢献します。
③リスク管理
当社グループにおける気候変動に関連するリスクは、「
TCFDの枠組みに沿った開示の検討過程で抽出された気候関連リスクと事業及び財務影響分析の結果は、当社事業に影響を及ぼすリスクとして、経営会議、取締役会に報告しています。
④指標及び目標
当社グループは企業活動に伴って発生する環境負荷の軽減のためGHG排出量並びに再生可能エネルギー(再エネ)比率に関して、次の目標を掲げ取り組んでまいります。
|
実績 |
目標 |
|||||||
19/9期 |
20/9期 |
21/9期 |
22/9期 |
23/9期 |
24/9期 |
26/9期 |
2030年 |
2050年 |
|
GHG排出量(tCO2e) |
|
|
|
|
|
7,200 |
6,400 |
4,800 |
0 |
再エネ比率 |
0% |
0% |
0% |
7.3% |
30.7% |
35% |
45% |
65% |
100% |
(注)2024年9月期実績は集計中のため記載しておりません。
(3)人的資本・多様性
①戦略
人的資本経営の実現に向けて、経営戦略に基づく人材戦略を推進するため、2021年4月に現在職務における役割及び成果に基づくジョブ型の人事制度へ抜本的な制度改定を行うとともに、キャリアパスを充実させ社員各人のキャリア構築の多様化を進めています。あわせて「中計2026」で掲げた事業戦略を達成するために必要なあるべき人材ポートフォリオを策定し、現状の人材ポートフォリオとのギャップを明らかにすることで、事業戦略に沿った人材戦略の検討を進めています。
シンクタンク・コンサルティング事業を基盤とするVCP経営には、これまで以上に専門性を有する多才な人材が必要になっています。そのため、社員個人のキャリア自律を支援し、社員一人ひとりが成長し続けることを目指す仕組みとして「FLAPサイクル」を導入しています。FLAPサイクルとは、自身の適性や業務に必要な要件を知る「Find」、スキルアップに必要な知識を学ぶ「Learn」、目指す方向に行動する「Act」、新たなステージで活躍する「Perform」の4つの頭文字をとった一連のサイクルを意味します。能力・適性・志向性等を踏まえながら個々のキャリア形成を支援していきます。
また、2024年4月には「MRIアカデミー」を開校し、経営理念を具現化する人材を計画的・継続的に輩出するための施策を実施しています。当社の強みである最先端の科学技術やAI、イノベーション創出に関する知見など、「当社ならでは」の研修体系を構築するとともに、増加傾向にあるキャリア入社者に対するシンクタンク/コンサルティングスキルに係るプログラムを充実させ、お客様への提供価値を向上させていきます。将来的には、FLAPサイクルに基づく、リスキリング研修等を行うことなどの検討も進めています。
三菱総研DCS株式会社においても、DX人材の活用、教育、リスキリング並びに社内認定制度の運用を行う「デジタルアカデミー」を立ち上げ、組織的な人材育成を強化しています。顧客接点となる営業やプロジェクト・マネージャー、ITコンサルタントの拡充・育成に注力するとともに、技術やビジネスの変化への対応力をより強化するため、テクニカルスキルに加え、様々な活動の基礎となる思考力、対人力などのポータブルスキル研修の強化など、網羅的に育成体系の見直しを行いました。これらを社員のリスキリングにも活用していきます。
また、経営理念である「豊かで持続可能な未来の共創」を実現するための原動力は、当社においては人材に他なりません。人材一人ひとりが最大限の力を発揮していくためには、女性比率、外国人採用、キャリア採用といった狭義のダイバーシティに留まらず、多様な発想、能力をもった人材が活発な議論を交わす職場環境や企業風土が必要不可欠です。また、活発な議論を行うためには、社員の多様性を高めるだけでなく、互いの違いを尊重し、助け合うことで生き生きと働ける組織を育むことが必要です。
こうした考えをもとに、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針として、当社では「中計2026」の重要施策の一つに「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進」を掲げています。2022年11月に策定した「DE&I行動指針」に基づき、全社員が議論に参加する職場ディスカッションやDE&Iに関する研修の実施、有識者と社長による対談、社員同士がキャリアを語り合う場を設置し、それぞれのアーカイブ動画やセミナーを社内に向け配信しています。経営層から若手、またキャリア入社者や育児休職取得者など、それぞれの立場からの意見や実体験を集約し、社内に広める取り組みを進めています。
②指標及び目標
当社グループは、中計2026では、最終年度である2026年9月期の目標に以下を掲げ取り組んでまいります。なお、当該指標については、連結グループの主要な事業を営む当社及び一部の子会社において、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、その他子会社については、データ収集体制を構築中であり、連結グループとしての記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む当社、エム・アール・アイリサーチアソシエイツ株式会社及び三菱総研DCS株式会社が対象となります。
2026年9月期目標
・1人当たり研修受講回数 2.7回(2023年9月期2.1回/人比30%増加)
・女性採用比率 34%(2023年9月期32%からの着実な向上)
・エンゲージメントスコア 70以上(2023年9月期実績74並み高水準の維持)
2024年9月期実績
・1人当たり研修受講回数 2.68回
・女性採用比率 28.2%
・エンゲージメントスコア 72.1
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。但し、全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループは、以下(1)(2)に記載のリスクマネジメント体制・方法により、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループ全体のリスクマネジメントのため、リスクマネジメントの最終責任者である社長がリスクマネジメント担当役員を任命するとともに、リスクマネジメント統括部署としてリスク管理部を設置しています。
リスクマネジメント統括部署は、グループ企業のリスク管理部署と連携して、リスク予兆の把握及び緊急時のリスクマネジメントを実施しています。下記のリスクマネジメント方法により、月次でリスク予兆を全社から把握した上で経営会議に報告していることに加え、内部統制・リスク管理委員会(委員長:社長)を 年4回開催し、総括と年度方針・計画を年1回以上、経営会議に付議した上で取締役会に報告しています。
(2)当社グループのリスクマネジメント方法
① リスク把握とアセスメント
リスクマネジメント統括部署は、当社グループの事業に係るリスクを継続的に調査・把握しています。把握したリスクは発生確率及び影響規模に応じて評価のうえ、当該評価により優先度が高いとされたリスクについては重点的に事前対策を講じています。
② リスクモニタリングと対策
リスクマネジメント統括部署は、リスク顕在化の早期把握及び未然防止のために、月次でリスクの状況及び予兆を全社から収集した上で、適切なリスク対応をしています。また、リスクマネジメントの進捗管理のために、リスクモニタリングの結果をとりまとめ、経営会議に月次報告を行っています。
③ 顕在化したリスクへの対応
リスクが顕在化した場合、リスクマネジメント統括部署は、影響の最小化のため適切な対応を検討し実施します。規則に定めた危機警戒時又は危機発生時に該当するときは、速やかにリスクマネジメント担当役員又は社長を筆頭とする危機管理の体制に移行し、迅速なリスクへの対応を行います。
(3)特に重要なリスク
① 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、個人情報やお客様の機密情報等を多く取扱っており、情報管理やセキュリティ管理は、企業の信頼に直結する重要な事項であります。そのため、コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の外部からの不正アクセス、自然災害の発生、リモートワークの増加、海外拠点の整備に伴う情報管理の不徹底等により、情報漏洩、紛失、破壊等の事態が発生した場合には、お客様等からの損害賠償請求や当社グループの信用失墜等につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、居室への入退室管理、情報・ネットワーク機器のセキュリティ対策、メール送信時の運用ルール整備、社員等を対象とした定期的な教育、情報漏洩を想定した事故対応訓練、海外営業所での現地個別対策等の情報管理の強化・徹底を図っております。また、リモートワークの増加に伴い、これに対応した情報取り扱い方法の規則化を行っています。
② プロジェクトに関するリスク
当社グループのシンクタンク・コンサルティングサービスの主な業務、ITサービスにおけるシステム開発は、仕様や業務内容がお客様の要求に基づき定められ、プロジェクト単位で遂行されております。契約ごとの個別性が高く、お客様要望の高度化、案件の複雑化や完成までの事業環境の変化等によって、受注時に採算性が見込まれる案件であっても、作業工数の増加により採算が確保できない可能性があります。特に、新技術を活用した案件や新規のお客様・業務分野の受注においては、受注時の想定以上に作業が発生することがあります。また、管理が不十分で品質が低下した場合あるいは予想外の事態の発生により採算が悪化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、入口管理においてプロジェクトに対する全社共通の基準に基づくリスクチェックを実施しています。遂行管理においては、注視すべきプロジェクトに対するモニタリング、採算性等に係る自動アラートの仕組みやプロジェクトリーダーによる日々の管理に加えて、ラインマネージャーによるチェックを実施しています。
③ 官公庁との取引に関するリスク
当連結会計年度の官公庁向け売上高は、連結売上高の27.8%を占めております。
官公庁においては、DX推進を見据えた成長戦略に基づく積極的な財政出動や、より複雑で高度な事業推進が予想されます。
当社グループにとって、実績が豊富で強みが発揮できる領域に政策の重点がシフトすることは追い風になりますが、複雑・高度化する事業内容への対応遅れや、競合他社との受注競争激化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、各種情報の収集と結果の要因分析による提案段階での改善活動、より一層のお客様価値を提供できるよう遂行段階並びに成果品質の改善活動を継続的に取り組んでいます。
また、官公庁との取引においては、競争阻害行為の禁止や会計手続の透明性がより一層求められるようになっております。この点において不適切な対応等があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、マニュアル等の整備や社員向け研修を継続的に実施するなどコンプライアンス遵守の徹底に取り組んでいます。
④ 新事業に関するリスク
当社グループは、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、VCP(価値創造プロセス)経営を積極的に進め、研究・提言から社会実装までを視野に入れた展開を行っております。こうした展開に伴い、当社グループでは新事業や、業務や資本の提携を必要とする事業も増えてくると見込んでおります。しかしながら、予想以上の事業環境の変化、事業パートナーの状況変化、サービス利用者の不評やクレームの増大、システム障害等によるサービスの停止等が生じた場合には、当該事業の中断や利用者等からの損害賠償請求、当社グループの信用失墜が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、AI等を活用した事業では、AI等の活用で求められる公平性や透明性、安全性及びそれらの説明責任への対応が不十分だった場合、同様に業績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、現場作業を行う新事業では、労働安全衛生に十分注意して業務を行っておりますが、管理不十分により事故が発生する可能性があります。
当該リスクに対応するため、このような事業においては、事業予測、投資の収益性、総合的なリスク等を社内審査プロセスに則り確認したうえで、実施の判断を行っております。
また、「新事業創造プロセス基準」及び「AI事業推進の指針」等の関連規則を定め、これに基づく事業開発とサービス運用を行っております。
⑤ 人材に関するリスク
当社グループが、社会やお客様の多様なニーズに応え、持続的な成長を遂げるには、高度な専門性、独自性、 創造性を持つ人材を確保・育成し、活躍の機会を提供することが極めて重要であります。
しかしながら、採用難や労働市場全体の流動性の高まり、あるいは当社グループの就業環境の悪化等により、高い専門性を持つ人材を十分に確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、当社グループは、採用・育成の充実、ダイバーシティの推進、育児支援制度をはじめとする福利厚生の充実、勤務時間を含む就業環境の整備、ハラスメント防止等の多面的な人材施策により、ゆとりと活力を創造する働きやすくかつ働きがいのある環境の確保に努めております。
また、海外へ滞在して業務を行う場合は、安全対策の強化、情報収集の複線化、渡航者・駐在者への注意喚起等の対策に取り組んでおります。
(4)重要なリスク
① グループガバナンスに関するリスク
当社は、三菱総研DCS株式会社(DCS)をはじめ子会社、関連会社を有しております。当社グループとしての企業価値の向上と業務の適正を確保する体制を整備しておりますが、子会社の統治が十分に機能せず、発生したインシデントの対応の遅れなどが生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり、グループ内部統制を整備するとともに、中期経営計画における重要課題として、人材育成も含めた連結経営高度化・組織風土改革などのガバナンス向上を位置づけ、人事交流やコンプライアンス意識啓発策の相互連携など、当社グループ間の連携を意識した組織・風土改革を推進してまいります。
(子会社DCSと同社非支配株主(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG))との関係)
当社グループのITサービスセグメントの中核を担うDCSの株主構成は、当連結会計年度末において、当社80.0%、MUFG 20.0%となっております。MUFGの子会社である株式会社三菱UFJ銀行は、DCSにとって主要かつ重要な取引先であります。
当連結会計年度におけるDCSと同行(同行の情報システム子会社である三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社を含む)との取引は、DCS売上高の約4分の1を占めております。DCSは同行の基幹系システムの開発・運用・保守関連業務を長年にわたって受託してきた実績を有し、今後とも良好な業務取引関係が維持されると見込んでおります。
当連結会計年度末において、DCSの取締役及び監査役14名のうち、当社の役職員を兼ねる者は5名、当社出身者は1名、株式会社三菱UFJ銀行の役職員を兼ねる者は1名、同行出身者は2名であります。
当社の役職員を兼ねる者を任命することにより一層のグループガバナンスの向上に努めております。あわせて、今後とも社内外から事業の専門知識や経営経験を有する有能かつ適切な人材を登用すべく取り組んでまいります。
② 知的財産権に関するリスク
当社グループは、事業競争力確保の観点から、知的財産を重要な経営資源と捉え、その保護に積極的に取り組むとともに、第三者の知的財産権を尊重し侵害することがないよう努めております。しかしながら、他人の知的財産権その他の権利を侵害する結果となった場合には、損害賠償請求や当社グループの信用失墜等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、著作権に係る社内規則を整備しているほか、毎年、各種教育研修を実施しています。また、納入前の成果品チェック等を実施しています。
③ 生成AIの利活用に関するリスク
生成AIは、AI によりWEB 検索結果の要約や文書作成等ができる自然言語処理ツールであり、その特性を見極めつつ、適切に活用することで当社の価値を高めることが期待されます。しかしながら、現段階では間違った結果となることも多く、また秘密情報の入力による情報漏洩、出力結果の著作権侵害等、利用方法を誤ると当社の調査結果の信頼性を毀損する可能性があります。一方で、生成AIが普及することにより、当社グループが受託して行っている調査業務や分析業務をお客様ご自身で行えるようになると、当社の事業機会や競争力が喪失する可能性もあります。
当該リスクに対応するため、「生成AIガイドライン」を定め、これに基づく生成AIの効果的な利用を推進しております。また、最新の生成AIの普及状況や技術の進展を注視し、生成AIを最大限に活用するプロジェクトをお客様にご提案・ご提供することで、競争優位を維持するよう努めております。
④ 外注に関するリスク
当社グループは、外部専門家の知識・ノウハウの活用あるいは生産性向上のため、業務の一部を外部委託しております。
ITサービスセグメントのシステム開発でプログラム作成業務を委託しているほか、シンクタンク・コンサルティングサービスセグメントでは、各種調査・データ入力業務等を委託しております。
しかしながら、委託先において予想外の事態が発生した場合には、品質保持のためのコスト増、納期遅れに伴うお客様への損害賠償等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、当社グループは、委託先に対して品質水準及び管理体制に関して定期的な審査を実施し、必要に応じて改善指導を行う等、優良な委託先の安定的確保に努めております。
⑤ 情報サービス産業に関するリスク
a. 情報サービス産業における事業環境
当社グループが属する情報サービス産業は、事業競争力の強化へ向けたIT投資等の拡大が期待される領域への異業種参入や、ITリソースの調達の低コスト化が一段と進んでおり、業界内の価格競争や熾烈な技術開発競争が一層加速しております。このため、価格競争の激化、品質の低下や技術革新への対応の遅れ等が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用、BPOまで一貫したサービスを提供できる体制を整え、企画提案力並びに品質・生産性のさらなる向上にも取り組んでおります。
b. 情報処理サービス
当社グループが提供する情報処理サービスは、データセンターに係る運用機器及びシステム等への更新投資及び新規投資が必要であり、投資額は情報処理サービス契約により複数年にわたって回収することになります。このため、予想以上の経済環境の変化、お客様の経営状況の変化等が生じた場合には投資額の回収ができず、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、投資実施に当たってはお客様ニーズ、事業予測、投資の収益性等を総合的に検討したうえで決定しております。
⑥ 金融業界との取引に関するリスク
当社グループの当連結会計年度の金融業向け売上高は、連結売上高の45.3%を占めております。
金融業向け業務は、法規制・制度対応に関連した情報化投資、情報セキュリティ投資が活発化していることに加え、内部データの解析による商品開発やリスクマネジメント等に関連するコンサルティング業務を継続的に受注しており、今後とも金融業界との取引は順調に推移するものと見込んでおります。しかしながら、事業環境の急変、お客様の経営状況の変化や情報システム投資方針の変更が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、グループの強みを活かした領域への事業展開を強化し、提供価値の向上とともに、成長性・収益性を高めるべく、中期経営計画に沿った事業の持続的な成長を目指してまいります。
⑦ 大規模な災害等に関するリスク
新型コロナウイルスをはじめとする大規模な感染症や地震等の大規模な災害によって、従業員の出社が制限されるなど、企業活動に影響を及ぼす可能性があります。
また、情報処理サービスは、システムの安定稼動が重要な要素であり、天災、事故、人的ミス等何らかの要因によるシステムの不具合・故障等が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、前掲のリスクマネジメント体制及び手順によりリスクへの対応を迅速に行うことにより、影響の最小化のため適切な対応を検討し実施します。
⑧ その他想定されるリスク
a. 退職給付債務に関するリスク
当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上設定した前提条件に基づいて算出されており、年金資産の時価の下落、金利環境の変動等により、退職給付費用が増加した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
b. 業績の季節変動
当社グループでは、主要な取引先である官公庁の会計年度の関係により、例年第3四半期に受注し翌第2四半期に納期を迎えるプロジェクトが多いことから、第1、第2四半期の業績が他の四半期と比較して良く、特に第2四半期は完了を前に業務遂行のピークを迎えることもあり、会計年度を通して最も営業利益が大きくなる傾向があります。また、売上高の小さい第3、第4四半期においては、人件費や販売費及び一般管理費等の経費は毎四半期ほぼ均等に発生するため、営業赤字となることがあります。
なお、最近2年間の当社グループの四半期毎の業績の概要は以下のとおりであります。
|
2023年9月期 |
|||||
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
年度計 |
||
売上高 |
(百万円) |
27,459 |
45,865 |
23,553 |
25,247 |
122,126 |
営業利益又は営業損失(△) |
(百万円) |
2,358 |
6,933 |
△905 |
302 |
8,688 |
|
2024年9月期 |
|||||
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
年度計 |
||
売上高 |
(百万円) |
27,668 |
38,865 |
23,720 |
25,108 |
115,362 |
営業利益又は営業損失(△) |
(百万円) |
2,037 |
6,564 |
△1,542 |
1 |
7,060 |
(1)経営成績の状況
当連結会計年度(2023年10月1日~2024年9月30日)の世界経済は、底堅い成長を維持しました。米欧ではインフレが落ち着きつつあり、中銀は利下げに転じました。中国における不動産市況の低迷は続いていますが、政府の景気刺激策が経済を下支えしています。一方、中東情勢が悪化するなど地政学リスクが高まっており、世界経済に与える影響には警戒が必要です。
わが国経済は、持ち直しの動きがみられます。物価高で抑制されていた消費は、24年春闘を受けた高水準の賃金上昇により回復しつつあります。また、企業の設備投資計画は、海外経済の不透明感が高まるなかでも、DXやGX、人手不足対応を背景に高めの計画を維持しています。
当連結会計年度は「中期経営計画2026」(中計2026)の初年度です。当社グループの経営理念のもと、財務、非財務、社会の3価値の拡大とともに、DX事業の成長による規模拡大と基幹事業の質の改革による収益性向上、次世代事業の育成・拡大による事業ポートフォリオ転換の加速などによって中計2026目標の達成を図っています。
事業戦略においては、「社会・公共イノベーション」「デジタルイノベーション」「金融システムイノベーション」の3つの事業軸で戦略領域を定めました。あわせてグループ内の連携を強化し、公共向けには行政DXの推進、民間向けにはDXコンサルティングとクラウド移行を組み合わせた支援やビッグデータ分析を採り入れたデジタルマーケティング、金融向けには事業領域や顧客層拡大などに取り組んでおります。
戦略領域としては、AIを活用したサービスをはじめとするDX、GX・環境エネルギー分野、医療・ヘルスケア関連等を定め、各種の取り組み、協業等を進めながら着実な実績の積み上げを図っています。その成果は、当連結会計年度を通じ、政府関係のデジタル化推進、クラウドや通信・放送関連事業等、さらに民間企業のDX推進支援やスマートモビリティ関連事業等の実績として顕在化してきました。
一方で、中計2026で目指す事業ポートフォリオ転換への先行投資を進めましたが、一部に収益化の遅れがみられます。加えて、物価と賃金上昇の好循環を目指す潮流のなかでのベースアップによる人件費増加等により、期初想定以上の費用増も生じており、当連結会計年度の業績は期初計画には届きませんでしたが、事業の選択と集中や人的リソースの再配置などによる、事業収益力の強化を図ってまいります。
引き続き当社グループは、適正な価格転嫁やお客様に提供する付加価値の一層の向上等に努め、適切な利益の確保・向上に取り組みつつ、中計2026の実現を目指しております。
このような結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高は115,362百万円(前年度比5.5%減)となりました。一方、将来成長のための先行投資を積極的に進めたことから、営業利益は7,060百万円(同18.7%減)、経常利益は8,147百万円(同18.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,003百万円(同20.4%減)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(シンクタンク・コンサルティングサービス)
当連結会計年度は、官公庁のアナログ規制見直しやデジタル化関連案件、エネルギー・運輸関連の民間企業向けのシステム、事業戦略支援関連業務等が貢献し、売上高(外部売上高)は45,419百万円(前年度比10.0%減)となりました。前期比減収は前連結会計年度に計上した複数の通信関連の大型実証案件等の終了によるものですが、減収による利益影響は限定的でした。経常利益は、持分法による投資利益(営業外収益)の減少により4,237百万円(同4.3%減)となりました。
(ITサービス)
当連結会計年度は、産業・公共分野のシステム更改案件等の伸長はあったものの、金融・カード向け大型システム関連案件の減少などにより、売上高(外部売上高)は69,942百万円(前年度比2.4%減)となりました。減収影響に加え、システム基盤更改や人材育成、採用強化等の先行投資に取り組んだ結果、経常利益は3,909百万円(同29.7%減)となりました。
(2)財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて1,723百万円増加し、119,732百万円(前年度末比1.5%増)となりました。内訳としては、流動資産が74,282百万円(同4.4%増)、固定資産が45,449百万円(同3.0%減)となりました。流動資産は、主に大型案件の終了により契約資産が2,764百万円減少した一方、法人税等の支払額の減少や満期保有目的債券の償還等により、現金及び預金が5,700百万円増加しております。固定資産は、主に満期保有目的債券の償還により、投資有価証券が1,716百万円減少しております。
負債は、前連結会計年度末と比べて264百万円減少し、43,359百万円(同0.6%減)となりました。これは、未払費用が1,487百万円増加、未払法人税等が1,150百万円増加した一方、買掛金が564百万円減少、1年内返済予定の長期借入金が500百万円減少、未払金が1,161百万円減少、受注損失引当金が627百万円減少したこと等によるものであります。
純資産は、主に利益剰余金が2,516百万円増加したことや自己株式が868百万円増加したことにより、前連結会計年度末に比べ1,988百万円増加し、76,373百万円(同2.7%増)となりました。自己資本比率は、56.5%となっております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ5,700百万円増加し、30,627百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、13,535百万円の収入(前連結会計年度は5,695百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益7,981百万円及び減価償却費3,749百万円のほか、大型案件の終了による売上債権及び契約資産の減少2,198百万円、未払費用の増加1,487百万円、法人税等の支払1,373百万円によるものであります。
前連結会計年度との比較においては、税金等調整前当期純利益が1,638百万円減少、未払費用の増減額が2,069百万円減少した一方、売上債権及び契約資産の増減額が6,898百万円減少、法人税等の支払額が3,992百万円減少したこと等により、7,839百万円の収入増となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、2,906百万円の支出(前連結会計年度は2,411百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,357百万円、無形固定資産の取得による支出2,769百万円、投資有価証券の償還による収入2,000百万円、敷金及び保証金の差入による支出987百万円によるものであります。
前連結会計年度との比較においては、有形固定資産の取得による支出が1,246百万円減少、投資有価証券の取得による支出が1,945百万円減少した一方、債券の償還による収入が3,000百万円減少、敷金及び保証金の差入による支出が958百万円増加したこと等により、494百万円の支出増となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、4,938百万円の支出(前連結会計年度は6,199百万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額2,485百万円、自己株式の取得による支出1,034百万円によるものであります。
前連結会計年度との比較においては、リース債務の返済による支出が569百万円減少、自己株式の取得による支出が850百万円減少したこと等により、1,260百万円の支出減となりました。
(4)生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年10月1日 至 2024年9月30日) |
前年同期比 (%) |
|
シンクタンク・コンサルティングサービス |
(百万円) |
45,378 |
△10.0 |
ITサービス |
(百万円) |
62,945 |
△2.7 |
合計 |
(百万円) |
108,323 |
△5.9 |
(注)金額は販売価格によっております。なお、セグメント間の取引は、相殺消去しております。
② 受注状況
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年10月1日 至 2024年9月30日) |
||||
受注高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
||
|
シンクタンク・コンサルティングサービス |
43,133 |
△1.3 |
25,801 |
△8.1 |
|
ITサービス |
72,322 |
0.8 |
49,605 |
5.0 |
|
システム開発 |
43,631 |
0.4 |
21,651 |
6.0 |
|
アウトソーシングサービス |
28,690 |
1.4 |
27,954 |
4.3 |
合計 |
115,455 |
0.0 |
75,406 |
0.1 |
(注)1.セグメント間の取引は、相殺消去しております。
2.継続的に役務提供を行い実績に応じて料金を受領するサービスにつきましては、翌連結会計年度の売上見込みを受注残高に計上しております。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年10月1日 至 2024年9月30日) |
前年同期比 (%) |
||
|
シンクタンク・コンサルティングサービス |
(百万円) |
45,419 |
△10.0 |
|
ITサービス |
(百万円) |
69,942 |
△2.4 |
|
システム開発 |
(百万円) |
42,410 |
△6.4 |
|
アウトソーシングサービス |
(百万円) |
27,532 |
4.5 |
合計 |
(百万円) |
115,362 |
△5.5 |
(注)1.セグメント間の取引は、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年10月1日 至 2024年9月30日) |
||
金額 (百万円) |
割合(%) |
金額 (百万円) |
割合(%) |
|
三菱UFJニコス㈱ |
19,911 |
16.3 |
17,182 |
14.9 |
(5)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績の状況につきましては、「(1)経営成績の状況」に記載したとおりです。
当連結会計年度の連結売上高は115,362百万円(前年度比5.5%減)、経常利益は8,147百万円(同18.5%減)と減収減益となりました。当連結会計年度は、前中計期間中牽引役となっていた基盤顧客である官公庁、金融・カードの大型案件のピークアウトを迎えるなか、人材課題への対応や将来成長に向けた先行投資を積極的に進めました。具体的には、人材投資として、人材育成や採用強化、ベースアップ等を進め、システム基盤更改や次の収益源となる事業開発に取り組みました。減収要因に加え、こうした先行投資負担が減益の要因になりました。
② 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中計2026では、最終年度である2026年9月期の財務目標水準として、経常利益140億円、ROE12%を定めております。中計初年度である当連結会計年度は、期初の目標として経常利益100億円を定めましたが、シンクタンクコンサルティングサービスセグメントでの受注未達やサービス提供型事業の収益化遅れ等により、経常利益実績は81億円と計画未達となりました。ROEは7.5%でした。
引き続き、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、人的資本経営の強化を進め、DX事業、新事業等の拡大を加速することにより、企業価値並びに資本効率の向上を図ってまいります。
③ 財政状態、キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度の財政状態、キャッシュ・フローの分析につきましては、「(2)財政状態の状況、(3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要は、運転資金に加え、データセンターの設備・機器装置への投資、ソフトウェア開発費用、成長分野への事業投資や研究開発投資などで構成されます。これらの資金需要に対して、主に自己資金を充当し、必要に応じて金融機関からの借入等により調達する方針としております。
また、当社グループでは売上債権回収の季節変動が大きく、納期を迎えるプロジェクトが多い第2四半期までは支出が先行し営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになる傾向があります。季節的な資金需要に機動的かつ安定的に対応するため、比較的厚めの手元資金を確保するとともに、当座貸越契約を締結しております。売上高の2~3か月分が安定的な経営に必要な手元資金水準と考えており、それを超える分については、成長のための投資に活用しております。
当連結会計年度に実施した設備投資3,500百万円の所要資金は、自己資金とリースによっております。当連結会計年度末における有利子負債の残高は1,111百万円となっております。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は30,627百万円となっており、また堅調な業績により自己資本も充実しました。持続的な成長を実現するために、人材投資や設備投資、M&A等の事業・投資を積極的に推進していく財務基盤を備えていると考えております。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、期末日における資産及び負債、報告期間における収益及び費用等に影響を与えるような仮定や見積りを必要としております。過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる見積りを行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合には、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、当社グループの連結財務諸表の金額に特に重要な影響を与える可能性のある主要な会計上の見積り及び仮定は以下のとおりです。
(総原価の見積りに基づくインプット法による収益認識及び受注損失引当金)
当社グループが受託する調査研究・コンサルティング及びソフトウェア開発等において、履行義務の充足に係る進捗率を見積総原価に対する実際原価の割合(インプット法)で算出し、その進捗率に基づいて一定期間にわたり収益を認識しております。
見積総原価は、各決算日時点における受注契約ごとの仕様、遂行体制、納期、進捗状況等に基づき、作業内容や工数を主要な仮定として見積っております。
また、当連結会計年度末において将来の損失が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能なものについては、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額に対して、受注損失引当金を計上しております。
当社グループのシンクタンク・コンサルティングサービスの主な業務、ITサービスにおけるシステム開発は、仕様や業務内容がお客様の要求に基づき定められております。契約ごとの個別性が強く、お客様要望の高度化、案件の複雑化や完成までの事業環境の変化等によって、当初見積り時には予見不能な作業工数の増加により総原価の見積りが変動することがあります。総原価の見積りが大幅に変動した場合には、当社グループが認識する収益、受注損失引当金及び売上原価に影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、過去の課税所得水準及び一時差異等のスケジューリングの結果に基づき回収可能性を判断し、将来の課税所得の見込みを主要な仮定として繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、経営環境に著しい変化が生じるなどにより将来の課税所得の見積額が変動した場合には、将来の繰延税金資産及び税金費用に影響を与える可能性があります。
(退職給付債務及び退職給付費用)
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上設定した割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の期待運用収益率などを主要な仮定として算定しております。
年金資産の時価の下落、金利環境の変動等により、数理計算の前提に変化が生じた場合には、退職給付債務及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、「人と組織の持続的成長」を支える中長期的な人材育成、事業拡大に資するため、全社共通の探索や事業開発に資する研究を実施しています。
シンクタンク・コンサルティングサービスセグメントでは、研究・提言委員会を中心に、研究テーマの選定、進捗のフォロー、成果の全社展開・公表発信を進めています。新事業開発については、ストック型事業の拡大、シンクタンクDX(*)の実現に向けて、部門横断の審査委員会を設置し、テーマの選定、進捗フォロー、成果の事業化を進めています。
また、ITサービスセグメントでは、三菱総研DCS株式会社が中心となり、研究開発を実施しています。
(*)シンクタンクDX:生成AIの活用やプロジェクト管理DX等を用いて、当社グループ全体の生産性向上を図り、さらに顧客価値の提供をめざしており、この取り組みをシンクタンクDXと称しています。
当連結会計年度における研究開発費は
セグメントごとの主な研究開発活動は、以下のとおりであります。
(1)シンクタンク・コンサルティングサービス
① 未来社会構想研究
以下4つのテーマに関する研究を進めました。
・AI・ロボティクス研究:2040年のAI・ロボティクス社会像を提示、日本が進むべき道筋を提言
・ウェルビーイング研究:企業経営へのウィルビーイング浸透に向けたフレームワークを提示
・新・未来社会構想研究:デジタルによる課題解決にフォーカスし社会実装に向けた日本の処方箋を提示
・レジリエンス横断研究:人口減少社会における地域レジリエンスのあり方を提言
② シンクタンク基盤研究
シンクタンク基盤研究として、マクロ経済研究と先進技術研究を実施しました。
マクロ経済研究では、世界経済及び日本経済の最新動向を分析し、今後の経済見通しや政策提言等を取りまとめて公表・発信しました。また、マクロ経済に関する知見を他研究(未来社会構想研究、価値創造プロセス連動研究)や各部門事業へ活用することで、研究・提言活動及び当社事業の質向上に貢献しました。
先進技術研究では、以下2つのテーマに関する研究を進め、研究成果を公表・発信しました。
・デジタル行動促進支援技術研究:デジタル技術と行動促進技術の融合・進化による社会課題解決の提言
・光情報技術未来像研究:情報通信・処理における光情報技術進展に関する俯瞰研究
③ 価値創造プロセス(VCP)連動研究
経営の基本方針のひとつである「VCP経営」に基づき、重点領域として取り上げた分野(ヘルスケア、人材、エネルギー・循環、情報通信、食農、レジリエンス)にて政策・経済と科学・技術の知見を融合し、社会課題の深掘りと解決策に関する研究、社会実装に向けた提言を行いました。各分野の研究成果は、官公庁への政策提言や企業向けの提言として発信し、マスメディア等にて多数取り上げられるとともに、当社各部門の事業へ活用しました。
④ 新事業開発研究
新事業開発研究では、ストック型事業の拡大に向けて、当社の強みが発揮出来る領域であるエネルギー分野を中心に、再生可能エネルギーや蓄電池等の「分散型エネルギーリソース」の最適化運用計画を立案するサービス開発等に取り組み、「MERSOL Operations」として正式にサービス提供を開始しました。
また、当社グループのデジタル化、DX化を推進する「シンクタンクDX」の取り組みを加速すべく、生成AIによる情報収集やデータ分析の自動化、効率化、最適化に向けて新たなツール開発を進めています。当社内で効果が確認されたツールのうち、WebサーベイAI「ロボリサ」の提供を開始しました。
(2)ITサービス
情報の多様性・複雑性が増しているデータ管理及び分析が重要視されている中で、AIやタグ情報などを活用した技術研究を継続的に実施しています。その成果として、製造業向け品質安定化AI生成プラットフォーム「Hepaisto(ヘパイスト)」の提供を開始しました。また、一部テーマは大学等との共同研究も実施しており、実用化に向けて進展しています。