第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針・経営戦略等

当社グループは、国内航空輸送網の拠点である羽田空港における旅客ターミナル等を建設、管理・運営する企業として、「公共性と企業性の調和」を経営の基本理念としております。

この基本理念の下、今後とも、旅客ターミナルにおける絶対安全の確立、お客様本位の旅客ターミナル運営、安定的かつ効率的な旅客ターミナル運営に努めることにより確実に社会的責任を果たしてまいります。

また、グループ全体の継続的な企業価値の向上を図るため、戦略的かつ適切な投資の実行及び投資管理によるさらなる旅客ターミナルの利便性、快適性及び機能性の向上や顧客ニーズの高度化・多様化に的確に対応するとともに、航空会社、空港利用者、取引先、株主等関係者への適切な還元を心がけることを経営の基本方針としております。

経営戦略では、サステナビリティを戦略推進の中核と位置づけ、「サステナビリティ基本方針」のもと、持続可能な社会の実現及び持続的な当社グループの成長を追求します。

 

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2022年度から2025年度に係る中期経営計画において、以下の目標指標を定めております。

[連結当期純利益]

計画最終年度の2025年度において、2021年3月の増資による希薄化を考慮し、1株当たり利益で、前中計の2020年度目標を上回る収益力を確保する。

[コスト削減策]

コロナ禍におけるターミナル運営の抜本的な見直し等によりコストのリバウンドを抑制し、効率性・生産性向上の目標として、前中計の2020年度営業利益目標250億円の1割相当をコスト削減により創出する。

[ROA(EBITDA)]

旅客ターミナルや駐車場を保有し、施設整備をしながら事業展開する特性を踏まえ、引き続きSKYTRAX TOP10空港の最新の平均値を参考値としつつ、前中計を上回ることを設定。

[自己資本比率]

コロナ禍で低下したが、引き続き、格付(A+)の維持と財務基盤の早期安定化を図ることとして、40%以上の回復を目指す。

[配当性向]

株主に対する利益還元を重要課題と位置付け、大規模投資等を考慮し内部留保を確保すると同時に安定した配当を継続することを基本方針として、自己資本の蓄積と経営成績に基づく株主還元を重視する観点から「配当性向」を指標とし、配当性向30%以上を目途とする。

[SKYTRAX評価順位]

World's Best Airports TOP3を獲得するとともに、より一層の高品質・高効率なオペレーションを目指す。

 

各指標及び目標値は以下のとおりです。

分類

指標

2025年度目標値

収益性(総合)

連結当期純利益

200億円以上 ※

収益性

コスト削減策

25億円
(前中計の営業利益目標250億円の10%相当)

効率性

ROA(EBITDA)

12%以上

安定性

自己資本比率

40%台への回復を目指す

株主還元

配当性向

30%以上

空港評価

SKYTRAX評価順位

World's Best Airports TOP3

 

 

※ 現中期経営計画では、2025年度に旅客数がコロナ前の計画水準に回復することを前提に、親会社株主に帰属する当期純利益 [160億円以上] を目標収支としておりました。

今般、旅客数回復状況等の外部環境の変化や、2025年度を予定していた第1ターミナル北側サテライト新設工事竣工時期の変更等を踏まえ、目標を見直しました。

旅客数予想を国内線・国際線ともに下方修正したことに加え、物価高騰に伴う人件費や各種費用の増加は、大きな減益要因となります。一方で、好調な商品売上高をはじめ、商業エリアのリニューアルや事務室誘致により、家賃収入などでも増収を図り、目標収支を営業利益で40億円、当期純利益でも40億円、増額修正しました。

これに伴い、連結当期純利益の2025年度目標値を、計画策定時の[160億円以上]から[200億円以上]に変更しております。

 

 

(3) 経営環境・対処すべき課題等

羽田空港におきましては、首都圏空港の機能強化として2020年3月に国際線の発着枠が約1.4倍に拡大され、当社グループでは発着枠拡大に対応する施設整備を実施しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、航空需要は著しく減退しましたが、当連結会計年度は水際対策の撤廃により国際線旅客数が回復し、インバウンド需要の好調により当社業績は過去最高益を更新しました。当連結会計年度末において、羽田空港国際線では中国方面や欧州方面などで未就航路線がありますが、今後も発着枠拡大後の水準に向けて発着便数は段階的に増加する見込みです。

一方で、旅客数の急激な回復に伴い、航空業界全体で人手不足の問題が顕在化しました。当社グループでは、国や航空会社などと協力した保安検査等の混雑緩和や、直営店舗の営業正常化に取り組んでまいりました。また、物価と賃金の上昇によりターミナル運営コストが増加しているほか、為替の円安進行は収益と費用の両面で業績に影響を及ぼしています。

このような中、当社グループは中期経営計画「To Be a World Best Airport 2025~人にも環境にもやさしい先進的空港2030に向けて~」において、2025年度の収益目標を達成するべく、サステナビリティを戦略推進の中核とし、空港事業の成長、再成長土台の確立、収益基盤の拡大、経営基盤の強化に取り組んでおります。

サステナビリティについては、サステナビリティ中期計画に基づき、マテリアリティごとにKPI(重要業績評価指標)及び目標を設定し、進捗を管理してマテリアリティの解決に向け全社横断的に取り組んでおります。今般新たに、自然関連の取り組みについて、本年5月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示を行いました。今後もサステナビリティ経営の高度化と具体的な対策に取り組んでまいります。

ターミナル運営においては、人手不足や物価上昇等の課題に対し、高品質と利益向上の両立を果たすべく、ロボット等の技術活用やオペレーションの見直しを継続して維持管理コストの増加を抑制しながら、事務室誘致を進め賃料等の増収を図ります。また、2030年の訪日外客数6,000万人の政府目標に向け、空港インフラとしての機能強化を推進します。その一環として、将来の航空需要の拡大への対応や旅客利便性のさらなる向上を見据え、第2ターミナル北側サテライト-本館接続工事、第1ターミナル北側サテライト建設工事を着実に推進します。新設する第1ターミナル北側サテライトは、木造・鉄骨ハイブリッド構造及び木質化を採用し、建物のライフサイクル全体を通じた環境負荷の低減を図るとともに、空港脱炭素化の推進に寄与すべくZEB Orientedの認証取得を目指します。(ZEBはNet Zero Energy Buildingの略称で、ZEB orientedは快適なターミナル施設の環境を実現しながら、年間の一次エネルギー消費量を30%以上低減する建物)

営業面では、円安やインバウンドの増加により免税店売上が好調ですが、今後は為替等の市況の変化により購買単価が低下する可能性があります。引き続き、免税エリアの店舗リニューアルや買上率向上に向けた施策を進めるほか、第3ターミナルに比べて免税店舗面積が比較的小さい第2ターミナル国際線では、事前予約販売やヴァーチャルブティックでの取扱商品の拡充に取り組みます。また、総合免税店の混雑解消や店舗・倉庫業務の効率化に向けて、RFIDの導入や倉庫業務の自動化を推進します。さらに、消費動向の変容に対応すべく、羽田空港公式アプリに導入した「HANEDAポイント」等により、One to Oneマーケティングを強化し、顧客ニーズの発掘に取り組みます。

さらに、旅客に依存しない収益の獲得に向けて、EC事業では直営ECサイトの新基幹システム開発等の環境整備を実施してまいりました。本年5月には国内向けECサイト「HANEDA Shopping」をリニューアルし、収益拡大に努めております。加えて、羽田の価値・ネットワークや空港運営ノウハウを活用して収益向上を図るほか、新しい事業の研究・開拓を目指します。

これらを支える経営基盤として、さらなる航空需要の拡大に対応するため、引き続き人員の充足に努め、待遇改善や人財の多様性確保に取り組んでおります。また、インナーブランディング活動“プラスワンプロモーション”を通じて、自ら考え挑戦する企業風土を構築してまいります。DX分野では、事業変革を進める「攻めのDX」戦略と、既存業務を効率化する「守りのDX」戦略に取り組んでいます。「攻めのDX」では、羽田空港内のあらゆる情報を集約してデータベース化し利活用することで、空港内の機能およびサービスの高度化や、データドリブン経営の実現を目指します。「守りのDX」では、基幹業務システムの最適化を図るとともに、デジタル活用を前提とした業務プロセスへ見直すことで、生産性の向上に取り組んでいます。

 

今後も当社グループは、空港法に基づく羽田空港の旅客ターミナルを建設、管理・運営する空港機能施設事業者としての責務を果たすべく、国土交通省や航空会社をはじめとする関係者と連携し、コロナ禍での学びを活かしつつ、需要の拡大にグループ一丸となって対応してまいります。また、東証が上場企業に対して要請する資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、中期経営計画の目標達成を目指すとともに、資本収益性の向上に取り組んでまいります。そして、利便性・快適性及び機能性の向上を目指し、顧客第一主義と絶対安全の確立に努め、絶え間ない羽田空港の価値創造と航空輸送の発展に貢献することにより、企業価値の向上を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

(サステナビリティ共通関連)

 当社グループは、公共性の高い旅客ターミナルの建設、管理・運営を担う民間企業としての社会的役割を十分認識し、「公共性と企業性の調和」のとれた経営を目指しています。持続可能な空港運営により「人にも環境にもやさしい先進的空港」を実現するため、サステナビリティを戦略推進の中核と位置づけ、ESG関連の取り組みの着実な実行と実効性を強化するためのガバナンス体制を構築しています。

 サステナビリティの推進体制としては、代表取締役社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」及び社長直轄の「サステナビリティ推進室」が各部署と連携し、サステナビリティ計画の立案、実施状況のモニタリング等を担当しています。計画の立案にあたっては、サステナビリティに関する専門的な視点を持つ社外の有識者との対話も実施するなど、外部的な視点も取り入れています。

 「サステナビリティ委員会」では、サステナビリティを推進する基盤としての方針類・計画の策定や、「サステナビリティ中期計画」に定めるマテリアリティ(重要課題)、KPI(重要業績評価指標)など、気候変動や自然資本関連、人財育成をはじめとした課題に対する取り組みの進捗について半期に1回審議・見直しを実施するとともに、必要に応じて随時開催しております。同委員会における審議内容については、経営会議において経営戦略との関係性・整合性を踏まえた審議がなされた後、取締役会に報告、決議されています。

 これら経営トップのリーダーシップ、専門部門の設置、社外有識者との連携を通じて、サステナビリティに対するガバナンス体制を構築しています。

 

 

  図1 サステナビリティ推進体制の全体像

 

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(2)戦略

(サステナビリティ共通関連)

 サステナビリティ中期計画を策定し(2023年5月公表)、以下の戦略を展開しています。

 なお、マテリアリティ及びKPIについては、半期に1度見直し・更新を図る体制としています。

 (詳細)https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/sustainability/medium_term_plan/

 

a)サステナビリティ基本方針の策定

 お客さま、株主/投資家、従業員、地域社会、パートナー、地球環境など、当社が関係するステークホルダーについて、経済社会の発展に貢献しながら持続可能な事業活動を推進するための方針を策定しています。

 

b)マテリアリティの特定

 中期経営計画との整合性を図りつつ、8つのマテリアリティを特定しています。特定にあたっては、

 ①中長期的な視点で当社事業に影響を及ぼす可能性のある社会課題や事業環境について、業界団体(ACI)や

  国際的なガイドライン(GRI、SASB等)の重要項目や事業戦略を踏まえリストアップした候補を、

 ②社会にとっての重要性(公共性)と自社事業にとっての重要性(企業性)の2軸での評価を実施、

 ③社外有識者とのダイアローグによる外部からの期待及び要請を反映しています。

 

c)取り組み及びKPIの策定

 「指標及び目標」記載欄参照

 

(気候変動関連)

 異常気象の頻発化など気候変動が当社グループに及ぼす影響は大きい一方、当社グループは、ターミナル運営における電力消費など多くの温室効果ガスを排出し環境に負荷を与えています。社会の持続可能性と両立する環境にやさしい空港を目指して事業を継続していく上で、気候変動への対策は重要な課題であると認識しており、マテリアリティとして「気候変動への対策」を掲げています。「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、TCFD提言に基づき情報を開示しています。(2024年5月更新)

(詳細)TCFD提言に基づく情報開示(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/tcfd.pdf)

  当社グループの事業に気候変動が与える影響を評価するため、下記の2つのシナリオ(「1.5℃シナリオ」及び「4.0℃シナリオ」)を用いて分析を実施しました。シナリオの設定にあたっては、IEA(International Energy Agency, 国際エネルギー機関)やIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change, 気候変動に関する政府間パネル)が公表するシナリオを参照しています。

 

表1 シナリオ分析の概要

 

名称

1.5シナリオ

4.0シナリオ

シナリオの概要

・抜本的な施策が機能することにより脱炭素

 社会が実現、産業革命時期比で気温上昇が

 約1.5℃未満に留まる

・脱炭素社会移行に関するリスクが

 主に顕在化

・現状を上回る施策を取らないことにより地球温暖化が進展、産業革命時期比で気温が約4℃上昇

・気候変動による物理リスクが主に顕在化

世界観

・カーボンプライシングや航空事業者のSAF

  使用比率規制等により、空港・航空業界は

  カーボンオフセットや再エネ・省エネ投資等の

  対応が必須となる。

・代替移動手段へのシフトも想定されるが、

 SAFの普及につれ、空港ではサプライチェー

 ンを含めたGHG排出削減が着実に進む。

・低炭素化社会への移行のための政策や規制導入

 は限定的。

・気候変動の進行に伴い、気候パターンの変化や

 海面上昇、異常気象の激甚化・頻発化等により

 空港運営への悪影響が生じる。サプライチェーン

 リスク管理やBCPの見直しの重要性が高まる。

 

 

 当社グループの「施設管理運営業」及び「物販・飲食事業」(「物品販売業」及び「飲食業」をまとめた区分)を分析対象とし、上記の2つのシナリオを踏まえたリスクと機会の抽出、影響度評価、リスクへの対応策定義を実施しました。気候関連リスク・機会を評価する際の、時間軸、影響度については下表の通りです。

 

表2 気候関連リスク・機会の評価における時間軸・影響度

時間軸

短期

 ~2025年度(中期経営計画期間)

中期

 ~2030年度(人にも環境にもやさしい先進的空港2030までの期間)

長期

 ~2050年度(ネットゼロ達成時期まで)

影響度

 1億円未満/年

 1億円以上~10億円未満/年

 10億円以上/年

※影響度については、各リスク・機会が損益・資産に与えるインパクトを勘案し評価を行いました。

 

表3 気候変動に関わるリスク・機会及び影響度

リスク・機会の種類

概要

セグメント

時間軸

主に

関連する

シナリオ

影響度

施設

物販

飲食

移行

リスク

GHG排出量

削減施策

(政策と法律/技術)

カーボンプライシング※導入にともなう、ターミナル運営コストや原材料仕入・物流コストの増加

短期~中期

1.5℃

気候変動関連法規制によるコストの増加(環境関連規制にともなう建設コストの増加等)

 

短期~長期

1.5℃

気候変動関連法規制によるコストの増加(プラスチック等の資源循環や自然資本に配慮した調達等)

 

短期~中期

1.5℃

再生可能エネルギー及び新エネルギーの導入等による気候変動対策投資コストの増加

短期~中期

1.5℃/4.0℃

その他

(市場/評判)

 

航空需要にネガティブに影響する政策措置による、空港利用者数の伸びの鈍化

短期~長期

1.5℃

環境対応の遅れによる、テナント・パートナー・顧客・取引先・従業員からの評判低下

短期~中期

1.5℃/4.0℃

物理

リスク

慢性

海面上昇による、空港アクセス交通への影響

中期~長期

4℃

気候パターンの変化にともなう、感染症発生等による影響

長期

4℃

急性

異常気象の激甚化・頻発化による利用者数への影響

短期~中期

4℃

異常気象の激甚化・頻発化によるサプライチェーン分断

 

短期~中期

4℃

異常気象の激甚化・頻発化による設備損壊、浸水被害等

中期~長期

4℃

機会

GHG排出量削減施策(エネルギー源)

高効率なエネルギー利用や新技術等の普及によるコスト低減

 

長期

1.5℃

脱炭素への貢献と新しい収益源の確保

 

中期~長期

1.5℃/4.0℃

その他

(資源効率性/製品・サービス/市場)

脱炭素取り組みを通じたブランド価値向上

中期~長期

1.5℃

低炭素を実現する企業への政策支援の活用

 

中期~長期

1.5℃

当社を中心とした循環型システムの構築

 

短期~中期

1.5℃/4.0℃

物理リスク

ステークホルダーや地域との連携によるレジリエンス強化

 

中期

1.5℃/4.0℃

※カーボンプライシングについては、2030年時点での予測排出量(5.7万t-CO2)をベースに以下の仮定を用いて試算

  ■排出量:57,000t-CO2(2030年時点排出量)

  ■炭素価格:21,000円(IEA WEO2023 1.5℃シナリオ(NZE)2030年時点140USD/t-CO2×1ドル150円で計算)

  ■影響度:57,000×21,000=約12億円

 

 

表4 対応策 ※一部抜粋

リスク・機会の種類

概要

移行リスク

関連

GHG排出量

削減施策

照明のLED化、空調機器更新、AI空調の導入を含めた省エネ施策

メガソーラー等の再生可能エネルギー導入、調達電源構成の見直し及び熱源使用効率化の推進

施設のZEB化、建物の木造木質化、放射冷却素材「ラディクール」の使用等による環境配慮性能向上

新エネルギーの利活用に向けた調査及び検討

その他

資源の有効活用(羽田空港の資材設備を地方空港や運営参画空港へ提供等)及び廃棄物抑制の事業化(廃油の回収とバイオ燃料への活用等)

物理リスク関連

東京国際空港A2-BCPへの対応強化、BCP体制構築と定期訓練の実施

感染症対策の徹底、ロボットやデジタル技術を活用した非接触販売の実施

サプライチェーンの冗長化等、調達生産物流の全体最適化

 

 

(自然資本関連)

 年間8,000万人が利用する空港ターミナルを運営する上では、建材やプラスチック、水など多くの資源を利用・調達している一方で、建設廃材、食品残渣、回収ごみなどの廃棄物を排出しているため、「人にも環境にもやさしい先進的空港」の実現に向け、自然資本関連の取り組みを重要な経営課題に位置づけています。現在、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言に基づく、評価・分析を進めており、賛同するとともに、下記の通り、TNFD提言に関する情報を開示いたします。当社グループの事業と自然環境との関係性(依存・影響)を整理するにあたっては、自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのLEAPアプローチを用いて分析を実施しました。

 (詳細)TNFD提言に関する情報開示(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/tnfd.pdf)

 

図1 当社事業の全体像

 

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表1 当社事業と主な環境との接点と影響(ヒートマップ)

※濃い色の部分はより環境との関連性(依存・影響)が強いことを示しています。今後、依存及びインパクトについて個別に評価することも検討しています。

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≪施設管理運営業≫

 2023年度は、羽田空港を使用する航空機の発着回数は約40万回あり、羽田空港の旅客ターミナルビルを利用した旅客数は約8,000万人となっています。当社(直接操業)に関し、施設内の快適な空間を維持するため、電力等のエネルギーを消費し、CO2を排出しており、下流にあたる航空機・旅客の移動に関して、エネルギー使用に伴う温室効果ガスの排出量及び温室効果ガス以外の大気汚染の影響があります。

 当社の管理運営するターミナルビル(直接操業)及び下流にあたる旅客の移動において、約8,000万人の利用者による廃棄物の排出及びその処理を実施しており、処理量は羽田空港エリア全体の廃棄物の約4割に及ぶことから、一定の影響があります。

 日本国内の自然環境(大気、水質・水量、生態系の状態)は世界全体からみて比較的良好な環境にありますが、空港施設の特性上、夜間の照明による光害や騒音について、羽田空港周辺で一定の影響があります。

 羽田空港における3つのターミナルビル内では、水消費量は年間約700,000㎥であり、羽田空港エリア全体で使用する水の約5割を占めることから、水の使用につき一定の依存及び影響があります。

≪物品販売業・飲食業≫

 当社の取り扱う物品及び食材・加工品等は多品種にわたり、これらの原材料の生産、製造・加工における水使用・土地利用・大気汚染等、一定の依存及び影響があります。

 物品販売・飲食業における使い捨て容器や梱包材等が一定量あります。

 当社事業活動の直接操業及び上流・下流工程における自然との関係性(依存及び影響)について、上記の通り、現段階で入手可能な情報をもとにヒートマップを作成し、重要な領域を確認・評価しました。このような評価を踏まえ、当社グループ事業における自然関連リスク・機会につき、「ネイチャーポジティブ」の実現に向けて移行していく社会への対応と、自然の劣化とそれに伴う生態系サービスの喪失から生じる物理的な損害を想定し、項目の抽出を実施、自然関連リスク・機会に対する戦略の3つの方向性を確認しました。今後、リスク・機会の分析を深化させると共に、同戦略を重要な経営課題として、実現に向けた対応策を、多くのステークホルダーと連携しながら、策定・実施していきます。

 

表2 戦略の3つの方向性(柱)

自然関連リスク・機会に対する戦略

エコエアポートの実現

国の掲げる方針や脱炭素計画に基づき、関係するステークホルダーと連携して、空港運営に伴う地球環境・地域環境への影響を低減させる取り組みを推進します。

サーキュラーエコノミーの確立

空港内で発生する廃棄物のリサイクル・リユース等を推進して、最終処分量を低減し、空港全体のサーキュラーエコノミーの進展を進めます。

サステナブル調達の推進

物品販売・飲食業における原材料・製造加工段階の環境や人権への配慮を推進し、サプライチェーン全体における自然環境への負荷の低減を進めます。

 

 

(人的資本・多様性関連)

≪人的資本に関する基本的な考え方≫

 当社グループが事業基盤とする羽田空港(東京国際空港)は、人、産業、文化が行き交う日本の空の玄関口であり、訪日外国人6,000万人に向けたターミナル機能強化など、今後、更なる発展・進化が求められています。

このような背景のもと、当社グループにおける中期経営戦略の柱の一つ“経営基盤の強化”では「人財のプロ集団化・組織力の最大化」を掲げ、サステナビリティ中期計画においては「人財育成」及び「DEI(Diversity,Equity,Inclusion)の推進」をマテリアリティ(重要課題)に選定し、取り組みを推進しています。

 当社グループでは、空港運営全般に係る高度な専門性と知見を備え、常に変化し続ける航空業界においてフロンティアスピリットを発揮し続ける人財を、最重要資本(人的資本・知的資本)と認識しており、空港のリーディングカンパニーを目指す長期ビジョン"To Be a World Best Airport"は、このような人財の力で実現していくものと考えています。

 

≪人財戦略の基本的な考え方≫

 中期経営戦略の柱の一つ“収益基盤の強化”では、成長ドライブとしての「空港事業の成長」に加え、コロナ禍を踏まえた変革・イノベーションの推進による「再成長土台の確立」、新たな領域への事業展開による「収益基盤の拡大」を目指しており、この実現に向け、以下の人財戦略を進めています。

 

(1)人財の採用・育成

 経営戦略の実現には、これまで以上に幅広い専門知識や技術が求められることに加え、新しい発想や異業種との連携などによる空港機能強化や新たな領域への事業拡大を実現しうる人財が必要であることから、人財育成方針として「自ら考え挑戦する人財」の育成を掲げています。

この方針に則り、新卒採用において建築・理工系などの専門性や海外人財にも着目するとともに、異なる経験・能力を有する人財の中途採用も適宜実施し、多様性を持つ中核人財の強化を図っています。

研修体系においては、手上げ制のプログラムなど自律的な学びをサポートする制度を導入するなど、全員一律の研修から、DX人財育成など専門性向上や選抜型の教育研修に重点をシフトさせています。

また、社員の意識・行動改革として、現在の業務における新たな改善や変革を考えワークエンゲージメントを高める「プラスワンプロモーション」をグループ全体で展開するとともに、新たな発想の習得の機会として、社外出向の機会や産産・産学連携プロジェクトへの参加者増を図っています。

 

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(2)社内職場環境の整備

 当社事業は、日本各地・世界各国との様々な人の往来に支えられていることから、世界各国から訪れるお客さまに安心して快適にご利用いただけるよう、従業員一人ひとりが多様な文化や価値観を受容し、お互いを尊重し合える包摂性の高い組織風土の醸成が必要であり、また、グループ全体のグローバル化・事業拡大を図っていく上でも、多様性を認め高め合う環境が必要不可欠であるため、社内環境整備方針として「多様な人財が互いを高めあう企業風土」の構築を掲げています。

 この方針に則り、女性管理職比率の高水準維持や外国人・障がい者雇用などDEIの推進、若手社員による働き方改革推進活動など、多様な人財が活躍できる、働きやすく、働きがいを感じられる社内環境整備を進めています。

 

(3)人員の確保と生産性の向上

 経営戦略の実現に向け、異業種連携の研究開発拠点運営(terminal.0)やノウハウ事業、産産・産学連携プロジェクトなど新たな領域への人員配置を適切に行います。これらの人員確保を含め、コロナ禍で減少した人員について、採用による増員および適切な待遇改善による定着を図りますが、能力やエンゲージメントの向上、DX等を通じた効率化による生産性向上により、効率的な人員体制での経営戦略実現を図ります。

 今後、従業員サーベイなどを通じ、人財育成や社内環境整備の施策効果をPDCAサイクル管理し、人的投資が人的生産性向上を通じて、収益・利益の増大や新規事業領域の拡大などの経営成果に結びつく好循環を目指していきます。

 

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(3)リスク管理

(サステナビリティ共通関連)

旅客ターミナルの建設、管理・運営を担う当社グループにとっては、事業の継続性確保は社会的使命であり、新たなリスクが顕在化する不確実な社会において、事業を取り巻くリスクを把握し、対策を講じることは組織のレジリエンス確保において重要な課題であると認識しております。

グループ全体でのリスク管理体制として、代表取締役社長を委員長とし、副社長以下の全執行役員から構成される「リスク管理委員会」を設置しており、重要性が高いと評価されたリスク(優先リスク)については、その対応を決定し、半期に1度、対応状況の確認と効果検証を繰り返し見直す体制としています。

気候変動や人的資本を含むサステナビリティ関連のリスクのうち、「サステナビリティ委員会」において、当社の事業や業績に与える影響が大きいと判断されたものは、優先リスクとして「リスク管理委員会」による全社的リスク管理体制において統合管理されています。

「リスク管理委員会」での審議内容については、適宜取締役会へ報告され、リスク管理に関する監督を受ける体制となっています。

 

 

 

 

(4)指標及び目標

(サステナビリティ共通関連)

サステナビリティ中期計画において「環境」、「社会及び人」、「ガバナンス」の3領域における各マテリアリティについて、指標と目標を設定し、27項目に関する進捗状況を開示しています。

(詳細)サステナビリティ中期計画

(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/sustainability/medium_term_plan/)

 

(気候変動関連)

GHG排出量スコープ1及びスコープ2(注)に関し、 2030年までに2013年対比で46%削減、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを長期目標に掲げています。

 

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(注)対象範囲:羽田空港内における当社グループの CO2排出量(当社グループ保有の空港内車両による排出を

        除く)

   排出範囲:事業の運営により自家で消費したエネルギー起源 CO2、廃棄物焼却に伴う非エネルギー起源 CO2

  ※国土交通省東京航空局による「東京国際空港脱炭素化推進計画」と目標値の整合を図るため、排出係数

   と対象範囲の見直しを実施いたしました。そのため基準年度排出量と2030年度目標値が増加しています。

  ※なお、2050年の長期目標(ネットゼロ)については、当社グループの業務用車両、空港外物件、その他

   非エネルギー起源CO2を含むすべての活動を対象といたします。

 

(詳細) TCFD提言に基づく情報開示

(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/tcfd.pdf)

 

 

(自然資本関連)

 マテリアリティ「限りある資源の有効活用」に関し、ターミナルから出る廃棄物のリサイクル率70%、当社グループ機内食事業における機内食製造時の食品残渣のリサイクル率95%をKPIとして設定しています。また、TNFD提言に関する指標と目標については、自然との取り組みにおいて決定した大きな3つの戦略をもとに、今後目標及び指標を設定していきます。TNFD提言に関する情報開示では、現段階で開示できるコア指標を開示しています。

 

(詳細)TNFD提言に関する情報開示(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/tnfd.pdf)

 

 

 

 (人的資本・多様性関連)

人財育成方針「自ら考え挑戦する人財の育成」に関する指標

指標

目標年

実績

産産・産学連携等プロジェクト参加者数

毎年向上

2023年度:延べ24

外部出向者数

毎年向上

2023年度:21

社内アカデミー「学びROOM」参加者数

毎年向上

2023年度:延べ114

社内知識習得セミナー参加者数

毎年向上

2023年度:延べ370

ITパスポート取得率100

2024年度

31.0%(累計取得者数:60名)

「プラスワンプロモーション」参加者数(連結)

毎年向上

2023年度:252

社内環境整備方針「多様な人財が互いを高め合う企業風土の醸成」に関する指標

指標

目標年

実績

女性管理職比率40の維持

2027年度

2023年度実績:38.8

男性育児休業取得率100

2027年度

2023年度実績:88.9

男女間賃金格差(全労働者)

毎年削減

2023年度実績:84.7

男女間賃金格差(正規雇用労働者※1)

毎年削減

2023年度実績:87.2

男女間賃金格差(非正規雇用労働者※2)

毎年削減

2023年度実績:48.2

障がい者雇用率6.6

2025年度

2023年度実績:3.6

外国人社員比率

実績管理

2023年度実績:2.4

中途採用社員の管理職登用率

実績管理

2023年度実績:35.3

 集計対象:日本空港ビルデング株式会社単体(※一部記載のあるものについては連結)

 ※1 出向者を除く

 ※2 部長級の嘱託社員・審議役と中途採用社員(障がい者雇用含む)の合算値

 

≪男女間賃金格差の要因≫

 当社において、同一労働における男女間賃金格差はありません。上記格差の主な要因と対応策は以下のとおりです。数値はいずれも2023年度末時点のものです。

1.正規雇用労働者

平均年齢(男40.2歳、女36.6歳)、平均勤続年数(男14.7年、女14.1年)の差異による賃金格差への影響は大きくないと考えられます。一方、管理職層への登用を進め、女性管理職の比率は約40%となっておりますが、部長級における比率は20%程度であり、上位管理職への登用の差が賃金格差に影響しています。この改善を図るべく、課長級(男女共)管理職への上級役員による1to1のメンター制度を導入し、上位管理職への育成を強化してまいります。

2.非正規雇用労働者

非正規労働者の内、中途採用社員(障がい者雇用含む)は約半数(47.3%)が女性であり、男女間の賃金差はありません。一方、外部から招聘する部長級の嘱託社員・審議役は、ほぼ男性となっています。後者の賃金が職務内容や責任の重さなどにより、前者の約2倍の水準となっているため、双方の男女構成の差が賃金格差に影響しています。

 

 

 

(その他の関連非財務データ)

(単位:百万円)

年度

 

2019

2020

2021

2022

2023

社員数(単体)

290

264

251

272

293

人員数(連結+臨時+派遣)※1

5,379

4,031

3,299

3,595

4,565

営業収益(連結・旧基準)※2

249,756

52,572

67,380

139,037

276,995

営業利益(連結)

9,892

△59,020

△41,255

△10,579

29,527

単体一人当たり営業収益

③/①

861

199

268

511

945

単体一人当たり営業利益

④/①

34

△224

△164

△39

101

連結一人当たり営業収益

③/②

46

13

20

39

61

連結一人当たり営業利益

④/②

2

△15

△13

△3

6

※1 臨時雇用者・派遣社員については、年度末1か月間の労働時間を基に計算した人数

※2「収益認識に関する会計基準」等を2021年度の期首から適用していますが、経年比較のために旧基準で計算した営業収益とそれに係る指標を記載しています。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されていない他の事項が影響を及ぼす可能性もあります。また、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 当社グループの営業基盤について

当社グループは、羽田空港において空港法に基づく空港機能施設事業者としての指定を受けており、旅客ターミナル3棟及び立体駐車場2棟を建設・所有し、管理・運営する企業として、事務室等の賃貸のほか、空港内店舗における物品販売(食料品を含む)、飲食店舗の運営、機内食の製造・販売や旅行サービスの提供等を行っております。

また、成田空港等の拠点空港においても、物品販売や機内食の製造・販売等の飲食サービスの提供を行うほか、空港外に保有する社有地を有効活用した不動産賃貸等を行っており、長年培ってきた経験を生かして空港内外における新たな事業展開についても取り組んでおります。

 

(2) 当社グループのリスク管理体制について

公共性の高い旅客ターミナルの建設、管理・運営を担う当社グループにとって、事業の継続性を確保することは社会的使命であり、新たなリスクが顕在化する不確実な社会において、事業を取り巻くリスクを把握し、対策を講じることは組織のレジリエンス確保において重要な課題であると認識しております。

当社の事業にとって重要性が高いと評価されたリスク(優先リスク)については、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会をはじめとしたマネジメントプロセスの中で、対応状況の確認と効果検証を繰り返し見直す体制としています。リスク管理委員会では、全社的に収集したリスク情報をもとに優先リスクを定期的に更新し、リスク管理委員会での審議内容は、必要に応じて取締役会へ報告され、リスク管理に関する監督を受ける体制となっています。

 

(3) 当社グループの事業等のリスクについて

リスクの影響度及び頻度(拡大速度)の二軸評価により、18項目の優先リスクを選定し、リスクの性質により分類しております。

これらのリスクとして想定した事項が発生、拡大した場合においても、当社グループの経営に対する影響を最小限に留めるよう、地域別(羽田空港、成田空港等)、業種別(施設管理運営業、物品販売業、飲食業)に売上構成を多様化することによりリスクの分散を図るとともに、新規事業への取り組みを強化しております。さらに、各事業分野における運営諸費用の増加への対策強化等により当社グループの企業体質の強化と総合力の向上に努めております。

分類

優先リスク

 

①危機管理(外的要因)

・テロ・破壊活動

・空港機能の著しい低下(自然災害・事故)

・重大な感染症のまん延

・サイバーセキュリティ対策不備

②業務プロセス(内部要因)

・商品管理不備(食の安全・過剰在庫)

・サプライチェーンマネジメントの不備

 

③経営基盤

・人財不足・育成不足、エンゲージメント低下

・グループガバナンスの不足

・DEI推進・人権尊重の不足

・財務制限条項抵触

・同意なき買収

④事業環境変化

・環境課題への対応

・行動様式変化・技術革新への対応

・政策(公的規制)の変更

・新規事業・買収・設備投資の実施

・市況の急激・大幅変動

・売上構成多様化(航空依存緩和)

・国際情勢の変化

①危機管理(外的要因)、②業務プロセス(内部要因)

「危機管理(外的要因)」「業務プロセス(内部要因)」には、事業運営上、顕在化を抑止する必要のあるリスクを分類しております。

当社グループは、旅客ターミナルを安全かつ快適にご利用いただけるよう防災、防犯、事故防止に全力を傾注し、商品管理やサプライチェーンマネジメントについては日頃より細心の注意を払い、事業運営を行っておりますが、以下のような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・テロ行為・破壊活動等により、空港又は旅客ターミナルに人的・物的損害が発生するような事態が生じた
場合。

・自然災害や事故により、空港又は旅客ターミナルに人的・物的損害が発生するような事態や航空便の欠航が生じた場合。

・重大な感染症のまん延により、航空需要が著しく減少する事態が発生した場合。

・個人情報の漏洩や、当社グループの運用する情報システムあるいは通信ネットワークに重大な障害が発生した場合。

・飲食店舗や物販店舗等において食中毒、異物混入等の品質保証問題が発生し、企業イメージの失墜や行政処分等が生じた場合。

・外国製資材の入手困難化や物流の途絶、不適切な調達活動でのレピュテーションの悪化などの事態が生じた場合。

 

③経営基盤

「経営基盤」には、構築が不十分な場合にそれ自体がリスクになる項目を分類しております。

当社グループの運営には、旅客ターミナル事業の有する高度の安全性と公共性についての適切な認識及び、当社の企業価値の源泉をなす重要な経営資源(独創性の高い技術・ノウハウ、特定の市場分野における知識・情報、長期にわたり醸成された取引先との深い信頼関係、専門分野に通暁した質の高い人材等)への理解が必要となります。当社グループは中期経営計画に基づき、DX推進、組織・人材・ガバナンスの強化、財務戦略による経営基盤の強化に取り組んでおりますが、以下のような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
 

・人手不足等により、店舗営業や新技術導入、新規事業推進などが制約される事態が生じた場合。

・本社事業部門とグループ会社間における情報連携及び本社方針の浸透が不足する事態が生じた場合。

・個人に合った多様なサービスの提供不足や、仕入先商品における強制労働や児童労働など、多様性確保や人権尊重において企業イメージを失墜するような事態が生じた場合。
なお、人的資本・多様性関連の戦略については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

・当社の信用格付けが一定程度以上格下げされることなどにより、取引金融機関と締結しているシンジケートローン契約に付されている財務制限条項に抵触し、期限の利益を喪失する事態が生じた場合。

・不適切な者によって当社の財務及び事業方針の決定が支配され、当社企業価値を毀損し会社の利益ひいては株主共同の利益を害する事態が生じた場合。

 

④事業環境変化

「事業環境変化」には、外部環境の変化による顕在化が想定され、経営戦略において損失の防止もしくは機会の伸長及び転換が求められるリスクを分類しております。

当社グループの事業の根幹は、主要賃貸先の航空会社や主要顧客である航空旅客への依存度が高く、以下のような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
 

・環境課題への対応において、顧客・取引先からの評判低下や資金調達難に陥るような事態や、温室効果ガス排出量の削減義務や取引制度の創設、課金等費用負担を伴う規制強化が行われる事態が生じた場合。
なお、気候変動関連の戦略及びリスク管理については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

・旅客の行動様式が変化し航空需要が減少するような事態や、技術革新により購買方式が変化し空港店舗での購買意欲が低下するような事態が生じた場合。

・国土交通省が進める空港経営改革については、民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律が施行され一層の進展が図られており、空港の設置管理者である国や行政当局により、空港ビル事業に係る法令や制度、空港運営方針が変更された場合。

・新規事業への投資や設備投資の実施の結果、海外事業における政局不安や投資対効果の想定との乖離などの事態が生じた場合。

・市況の急激かつ大幅な変動により、物価高騰や為替の急変動等が生じた場合。

・主要事業である羽田空港や成田空港での航空旅客が減少した際に、売上構成の多様化が遅れ、航空依存の緩和が進まない場合。

・台湾有事による日中関係の悪化など国際情勢の変化により、国際線の航空需要が減少した場合。

 

※ロシア・ウクライナ情勢の影響について

ロシア・ウクライナ紛争は長期化しており、西側諸国のロシアへの経済制裁等により交易が滞り、世界経済に大きな影響を与えております。また本件発生前から、世界ではコロナ禍からの回復による、原油をはじめとしたさまざまな実需の急激な増加とサプライチェーンの混乱、それに伴う資材価格の高騰や、インフレリスク等が問題視されていましたが、ウクライナ侵攻以降、一層の資源価格や食糧価格の高騰、為替市場における円安の進行等が起きております。当社事業においても、日本-欧州間の航空機の運航に影響を与えているほか、エネルギー価格や食品価格の上昇による水道光熱費や運送費用、飲食原価等の増加や、資材の高騰による設備投資額の増加が懸念されます。なお、当社が参画するハバロフスク国際空港事業については、出資額は僅少であり業績への大きな影響はありません。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

①経営成績等の業績の概要

当連結会計年度における我が国経済は、一部に足踏みもみられますが、緩やかに回復しています。先行きについては、雇用・所得環境が改善するなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっているほか、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等に十分注意が必要となります。

航空業界においては、昨年5月に新型コロナウイルス感染症関連の行動規制が全面的に解除されたことにより、着実な需要回復が続きました。羽田空港の旅客数は、国内線では前期より約15%増加し、コロナ影響前の2019年(暦年)の約9割まで回復しました。国際線は前期の3倍弱を記録し、2019年(暦年)を上回る過去最高の旅客数となりました。

このような中、当社グループは、長期ビジョン“To Be a World Best Airport”の実現に向けて、中期経営計画の各施策を着実に実行しております。

施設面では、昨年7月に供用再開した第2ターミナル国際線施設の運用時間を順次拡大し、国際線旅客の急激な増加に国や航空会社と連携して対応しております。また、大規模災害に備えた改修・耐震工事等を順次行ったほか、第2ターミナル北側サテライトと本館との接続工事や第1ターミナル北側サテライト建設工事などの将来へ向けた投資計画を着実に推進しております。加えて、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、館内各所の空調機の高効率化や照明LED化などによる消費エネルギーの削減を進めているほか、羽田空港における空港車両のEV化や、ENEOS株式会社と連携したCO2フリー水素の利活用に向けた検討を行っております。

営業面では、旺盛なインバウンド需要を取り込むべく、免税店等の営業時間を順次拡大してきたほか、第3ターミナル出国エリア内に地方創生型ラグジュアリーブランドを目指す「JAPAN MASTERY COLLECTION」をオープンし、オリジナル品を含むメイド・イン・ジャパンの日本が世界に誇る技・粋の数々を羽田空港から世界に向けて発信しております。国内線においては、これまでも全国各地の物産イベント等を積極的に展開してきましたが、第1ターミナルに「羽田産直館」をオープンし、地域連携PRコーナーにて継続的に各地の魅力を発信することで、地方創生へ貢献してまいります。さらに、本年3月には羽田空港公式アプリに新しいサービス「HANEDA ポイント」を追加し、アプリ会員の方の利便性・満足度の向上を図っております。

羽田空港以外においても、各拠点空港の国際線旅客数の回復に合わせて、当社直営店舗の営業再開やリニューアルを実施したほか、3月には新たに「JAPAN DUTY FREE 茨城空港店」をオープンしました。また、羽田空港隣接の「HANEDA INNOVATION CITY」では、空港の課題解決に異業種連携で取り組む研究開発拠点「terminal.0 HANEDA」を2月に開業し、今後も参画企業・団体との事業共創に取り組んでまいります。

経営基盤の面では、採用活動を強化し人員確保に努めるとともに、人員定着に向けて待遇改善にも取り組んでおります。さらに、全社員を対象にしたDXリテラシーの向上、インナーブランディング活動“プラスワンプロモーション”、東京大学との産学連携プロジェクトや障がい者採用の拡充等の施策を通じて、「自ら考え挑戦する人財」の活躍、多様な人財が互いを高め合う企業風土の構築を目指してまいります。また、サステナビリティ関連で進めている各種の取り組みについて、昨年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示を行い、11月には統合報告書を発行するなど、継続的に情報発信の充実を図っております。

以上の結果、当連結会計年度の業績については、旅客数の回復に伴いすべてのセグメントで売上高が増加し、営業収益は 2,175億7千8百万円(前年比92.5%増)となりました。旅客数や売上増に伴い営業費用は前期から増加しましたが、売上の増加が牽引し、営業利益は 295億2千7百万円(前期は営業損失 105億7千9百万円)、経常利益は 272億2千5百万円(前期は経常損失 120億6千4百万円)といずれも過去最高となり、親会社株主に帰属する当期純利益は 192億5千5百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失 39億1百万円)となりました。

 

 

                                                 (単位:百万円)

区 分

前連結会計年度
(自 2022年4月1日
  至 2023年3月31日)

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
  至 2024年3月31日)

前年比
増減率
(%)

営 業 収 益

113,050

217,578

92.5

 

(施設管理運営業)

63,280

91,736

45.0

 

(物品販売業)

41,317

111,175

73.5

 

(飲食業)

8,452

14,667

営 業 損 益

△ 10,579

29,527

経 常 損 益

△ 12,064

27,225

親会社株主に帰属する
当期純損益

△  3,901

19,225

羽田空港旅客ターミナルは、英国SKYTRAX社の“World Airport Star Rating”において、世界最高水準である「5スターエアポート」を10年連続で獲得しました。“WORLD AIRPORT AWARDS 2024”においては、「World's Cleanest Airports」部門(9年連続)、「World's Best Domestic Airports」部門(12年連続)、「World's Best PRM / Accessible Facilities」部門(6年連続)で世界第1位の評価をいただいております。また、アジア空港の総合評価「Best Airports in Asia」部門で第3位、空港の総合評価「World's Best Airports」部門で世界第4位を受賞しました。(※ PRMは、Persons with Reduced Mobilityの略。高齢者、障がいのある方や怪我をされた方の意味。)

今後とも引き続き、当社グループは、社会インフラである旅客ターミナルにおける絶対安全の確立に努めるとともに、利便性・快適性及び機能性の向上を目指し、絶え間ない羽田空港の価値創造と航空輸送の発展に貢献することにより、企業価値の向上を図ってまいります。

 

セグメント別の概況

セグメント別の業績は次のとおりです。なお、各事業における売上高はセグメント間の内部売上高を含み、営業利益(損失)はセグメント利益(損失)に該当します。

 

(施設管理運営業)

                                                 (単位:百万円)

区 分

前連結会計年度
(自 2022年4月1日
  至 2023年3月31日)

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
  至 2024年3月31日)

前年比

増減率

(%)

外部顧客への売上高

63,280

91,736

45.0

 

家賃収入

19,852

20,020

0.8

 

施設利用料収入

29,325

52,436

78.8

 

その他の収入

14,102

19,279

36.7

セグメント間の内部売上高

2,391

3,126

30.7

売上高 合計

65,672

94,862

44.4

セグメント損益

△ 3,133

17,880

家賃収入については、水際対策終了に伴い国へ提供していた検疫スペースが返却されたものの、歩合賃料収入が増加したこと等により、前期をわずかに上回りました。

施設利用料収入については、旅客数の回復に伴う旅客取扱施設利用料(PSFC)収入の増加等により、前期を上回りました。

その他の収入については、ラウンジ収入や駐車場収入、館内広告収入の増加等により、前期を上回りました。

費用面では、旅客数の増加や物価上昇に伴い、業務委託費や修繕費などのターミナル維持管理コストが増加しました。

その結果、施設管理運営業の営業収益は 948億6千2百万円(前期比 44.4%増)となり、営業利益は
178億8千万円(前期は営業損失 31億3千3百万円)となりました。

 

(物 品 販 売 業)

                                                 (単位:百万円)

区 分

前連結会計年度
(自 2022年4月1日
  至 2023年3月31日)

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
  至 2024年3月31日)

前年比

増減率

(%)

外部顧客への売上高

41,317

111,175

169.1

 

国内線売店売上

10,372

13,097

26.3

 

国際線売店売上

19,476

70,039

259.6

 

その他の売上

11,469

28,037

144.5

セグメント間の内部売上高

892

1,561

74.9

売上高 合計

42,210

112,736

167.1

セグメント利益

1,640

21,084

国内線売店売上については、国内線旅客数の回復に伴い前期を上回りました。

国際線売店売上については、羽田空港や成田空港等での国際線旅客数の増加及び、円安影響等で免税売店の購買単価が上昇したことにより、前期を上回りました。

その他の売上については、主に他空港国際線向けの卸売売上が増加し、前期を上回りました。

その結果、物品販売業の営業収益は 1,127億3千6百万円(前期比 167.1%増)となり、営業利益は
210億8千4百万円(前期は営業利益 16億4千万円)となりました。

 

(飲  食  業)

                                                 (単位:百万円)

区 分

前連結会計年度
(自 2022年4月1日
  至 2023年3月31日)

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
  至 2024年3月31日)

前年比

増減率

(%)

外部顧客への売上高

8,452

14,667

73.5

 

飲食店舗売上

5,489

7,206

31.3

 

機内食売上

2,487

6,179

148.4

 

その他の売上

475

1,281

169.5

セグメント間の内部売上高

953

722

△ 24.2

売上高 合計

9,405

15,389

63.6

セグメント損益

△ 1,365

65

飲食店舗売上については、主に国内線旅客数の回復により、前期を上回りました。

機内食売上については、羽田、成田における外国航空会社の旅客数の回復により、前期を上回りました。

その結果、飲食業の営業収益は 153億8千9百万円(前期比 63.6%増)となり、人手不足による店舗の営業時間短縮の影響や、食材価格の上昇、人件費の増加等もありましたが、営業利益は 6千5百万円(前期は営業損失
13億6千5百万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ 148億4千5百万円減少し、
753億9千5百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 314億3千5百万円増加(前年比192.5%増)し、477億6千1百万円の収入となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益(前年は税金等調整前当期純損失)を計上したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 323億5千8百万円支出が増加(前年比304.5%増)し、429億8千6百万円の支出となりました。

これは主に、有形固定資産の取得による支出、有価証券の取得による支出によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 70億8百万円支出が増加(前年比55.4%増)し、196億4千9百万円の支出となりました。

これは主に、長期借入金の返済による支出、配当金の支払いによるものです。

 

 

③生産、受注及び販売の状況

当社グループの事業は、「第1 企業の概況 3.事業の内容」において記載したとおりの業種、業態により、生産実績等について、セグメントごとの生産規模及び受注規模を記載することは困難であります。

このため、生産、受注及び販売の状況については、「業績等の概要」における各セグメント業績に関連付けて記載しております。

なお、当連結会計年度の営業収益実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

施設管理運営業(百万円)

63,280

91,736

45.0

 

家賃収入(百万円)

19,852

20,020

0.8

 

施設利用料収入(百万円)

29,325

52,436

78.8

 

その他の収入(百万円)

14,102

19,279

36.7

物品販売業(百万円)

41,317

111,175

169.1

 

国内線売店売上(百万円)

10,372

13,097

26.3

 

国際線売店売上(百万円)

19,476

70,039

259.6

 

その他の売上(百万円)

11,469

28,037

144.5

飲食業(百万円)

8,452

14,667

73.5

 

飲食店舗売上(百万円)

5,489

7,206

31.3

 

機内食売上(百万円)

2,487

6,179

148.4

 

その他の売上(百万円)

475

1,281

169.5

 

合計(百万円)

113,050

217,578

92.5

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.施設管理運営業の家賃収入における貸付状況は、次のとおりであります。

区      分

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

比率(%)

 

比率(%)

所有総面積 (㎡)

970,497

 

970,497

 

貸付可能面積(㎡)

332,856

100.0

332,792

100.0

貸付面積  (㎡)

323,718

97.3

324,519

97.5

 

航空会社    (㎡)

158,328

47.6

158,359

47.6

 

一般テナント  (㎡)

62,422

18.8

62,281

18.7

 

当社グループ使用(㎡)

102,966

30.9

103,877

31.2

 

(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

①財政状態の分析

(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べ 57億6千8百万円増加し、1,207億5千6百万円となりました。

これは主に、旅客数の回復に伴い商品売上に係る売掛金が増加したことによるものです。固定資産は、前連結会計年度末に比べ76億9千9百万円増加し、3,396億6千7百万円となりました。これは主に、設備投資に伴う増加によるものです。

この結果、総資産は前連結会計年度末に比べ 134億6千8百万円増加し、4,604億2千3百万円となりました。

 

(負債)

負債合計は、前連結会計年度末に比べ 116億1千7百万円減少し、2,943億8千6百万円となりました。 これは主に、旅客数の回復に伴い商品仕入に係る買掛金が増加したものの、当社及び東京国際空港ターミナル株式会社の長期借入金が返済により減少したことによるものです。

 

(純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ 250億8千5百万円増加し、1,660億3千6百万円となりました。

これは主に、当期純利益により増加したことによるものです。

この結果、自己資本比率は、36.5%(前連結会計年度末は 33.6%)となりました。

 

②経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の経営成績及びセグメント別の売上につきましては、「(1)業績等の概要 ①経営成績等の業績の概要」に記載しております。

当社グループは、2022年度から2025年度の中期経営計画において、指標及び2025年度(最終年度)の目標値を以下のとおり定めております。

 

分類

指標

2025年度目標値

収益性(総合)

連結当期純利益

200億円以上

収益性

コスト削減策

25億円
(前中計の営業利益目標250億円の10%相当)

効率性

ROA(EBITDA)

12%以上

安定性

自己資本比率

40%台への回復を目指す

株主還元

配当性向

30%以上

空港評価

SKYTRAX評価順位

World's Best Airports TOP3

詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。

当連結会計年度における各指標の進捗状況は次の通りです。

[連結当期純利益][コスト削減策]

当連結会計年度の連結当期純利益は192億5千5百万円となりました。

コロナ禍での学びを活かした運用の見直しやポスト削減の継続、ロボット等の技術活用、省エネに向けた設備更新などのコスト削減施策は順調に進捗しております。

[ROA(EBITDA)]

当連結会計年度のROA(EBITDA)は12.7%となっております。

[自己資本比率]

当連結会計年度末時点の自己資本比率は36.5%となっております。

[配当性向]

当連結会計年度の配当性向は32.4%となっております。

[SKYTRAX評価順位]

本年3月の“WORLD AIRPORT AWARDS 2024”において、羽田空港旅客ターミナルは「World's Best Airports」部門で世界第4位となりました。

当連結会計年度においては、旅客数の回復と好調なインバウンド需要に伴い、商品売上高や施設利用料収入が増加し、売上高は全てのセグメントで前期を上回りました。コロナ禍からの急激な需要回復に対し、様々な分野で要員の確保やサービス面での対応に取り組みましたが、コストの増加は抑制され、営業利益と経常利益は過去最高益を更新しました。2024年度は、急激に回復した旅客需要に対応するため、サービス面の拡大や品質向上に係る施設維持管理費用のほか、コロナ禍で必要最小限に絞り込んでいた保守修繕費用等が増加する見込みです。引き続き、中期経営計画の各施策を着実に進めることで、今般新たに見直した2025年度の収益目標の達成及び、空港評価の向上を目指してまいります。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの分析については、「(1)業績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社グループの資本政策につきましては、財務の健全性や資本効率など当社にとって最適な資本構成を追求しながら、平素より旅客ターミナルビル等への大規模設備投資に備えて内部留保の充実と株主への利益還元との最適なバランスを考え実施していくことを基本としております。

運転資金は自己資金を基本としておりますが、不測の事態に対応したコミット期間付タームローン及びコミットメントライン契約を合計90億円の極度額で設定しております。

旅客ターミナルビル等の大規模設備投資資金については、自己資金、金融機関からの長期借入及び社債等による調達を基本としております。さらに、シングルAプラス以上の格付(日本の格付機関)を維持することで資金調達の多様化、安定化及び資金調達コストの低減を図るとともに、設備投資に対応する借入の一部については、過度に金利変動リスクにさらされないよう金利スワップなどの手段を活用しております。連結子会社のうち、PFI事業である東京国際空港ターミナル株式会社につきましては、事業の安定性及び継続性が第一に求められており、旅客ターミナルビル等の大規模設備投資はプロジェクトファイナンスの手法を用いて長期借入金等による調達を実施しております。

また、当社グループは資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的として、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ内の資金調達・管理の一元化を行っております。

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は753億9千5百万円、借入金等を含む有利子負債残高は2,282億8千4百万円となりました。

 

④重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表及び財務諸表は、わが国における一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。これらの財務諸表の作成の基礎となる取引は会計記録に適切に記録しており、棚卸資産評価損については滞留品に対して評価損率を乗じて計算して計上し、繰延税金資産については回収可能性を十分に検討した回収可能額を計上しております。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5.経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

⑤今後の見通し

次期においては、羽田空港の旅客数は着実な回復が続き、国内線・国際線ともに増加する見通しです。国際線はさらなる増便・復便により、2020年3月の発着枠拡大後の計画水準に対して、通期で8割強を見込んでおります。

このような中、当社グループは旅客需要を確実に取り込み、収益を拡大してまいります。第2ターミナル国際線施設では本年3月末の夏ダイヤからさらに運用を拡大し、一部のスポットで時間帯によって国内線と国際線を切り替えるスイング運用を開始しました。また、将来の旅客増への対応や、さらなる旅客利便性の向上を見据え、2024年度末に第2ターミナル本館-サテライト接続部分の供用開始を計画しております。

一方で、当期は国際線旅客数が大幅に増加する中、人手不足の影響やターミナル維持管理・運営の効率化継続によりコストは抑えられましたが、次期においては、原材料や資材の高騰、人件費の継続的な上昇に加え、業務委託料や修繕費、賃借料等のコストの増加を想定しております。

セグメント別には以下のとおり見込んでおります。

施設管理運営業は、旅客数の回復に伴う施設利用料収入の増加等により、売上は当期を上回りますが、ターミナル維持管理費等のコスト増により、減益となる予想です。物品販売業は主に羽田国際線の旅客数増による商品売上の増加により、売上利益ともに当期を上回る予想です。飲食業については、直営飲食店舗の営業時間拡大や、機内食売上の増加等により、売上利益ともに当期を上回る予想です。

 

以上により、次期の連結業績見通しについては、営業収益は2,538億円(当期比 16.6%増)、営業利益は 271億円(当期比 8.2%減)、経常利益 243億円(当期比 10.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益 155億円(当期比 19.5%減)を予想しております。

 

 

2023年度
(実績)※

2024年度
(予想)

増減率
(%)

羽田国内線

6,113万人

6,564万人

7.4

羽田国際線

1,909万人

2,148万人

12.5

羽田空港全体

8,022万人

8,712万人

8.6

営業収益

2,175億円

2,538億円

16.6

営業利益

295億円

271億円

△  8.2

経常利益

272億円

243億円

△ 10.7

親会社株主に帰属する当期純利益

191億円

155億円

△ 19.5

※2023年度旅客数は東京航空局発表の速報値より当社集計

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 特記事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 特記事項はありません。