第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社は「情報(データ)を未来の知恵に変え 夢と感動 楽しい!で社会に貢献する」という経営理念のもと、企業経営を進めております。当社のかけがえのない資産・強みである膨大なデータと、その使い手としての希少なノウハウを駆使し、関わる全てのステークホルダーを「夢」と「感動」と「楽しい」でつなぐ、未来を変える期待感にあふれる存在となり、そして、先進的かつ独創的、何より人間的であることに価値を置き、新たなAI時代をリードする、社会から真に必要とされる企業集団であり続けたいと考えております。

また、当連結会計年度より、企業目標を「CHANGING COMPANY~未来に向けて変化し続ける会社~」へ改定いたしました。かつてないほどの速度で社会が変化していく時代においては、変えること、変わることの勇気を放棄したものから淘汰されていくことは明らかです。当社自身が「未来に向けて変化し続ける会社」、「社会の変化を駆動するイノベーションの導き手」となることで、新たな社会を創出し、その結果、「お客様の満足(有益な情報とサービス)」と「社員の誇り(会社と仕事)」、そして「株主からの信頼(将来と実績)」を得られる存在となるよう努めてまいります。

 

(2) 経営戦略等

当社グループでは、多様化するユーザーニーズや今後の市場環境を踏まえ、「中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)」を策定しております。当該中期経営計画においては、デジタル化対応・AI機能の実装などによるサービスプラットフォームの構築をビジョンとし、これにより、「カーライフのトータルサポート」を実現することで、自動車関連情報サービス事業国内ナンバーワンを目指しております。また、当該計画に基づき、中古車販売店、整備工場、新車ディーラー向けの商品・サービスの拡充を通じて、自動車関連情報分野の事業成長を図るとともに、グループシナジーの具現化ならびにコスト構造の見直しなどを通じて、更なる収益性の改善を図ってまいります。なお、具体的な成長戦略として、次の重点課題を掲げ、持続的な企業価値の向上を図ってまいります。

①新車領域(データベースを活用したサービスを利益創出の柱にする)

②中古車領域(製造原価・販売費及び一般管理費の見直し)

③整備領域(広告事業の事業基盤拡大、予約サービスの構築)

④AI領域への投資(既存事業の底上げ)

⑤新規事業への投資(新規サービスの創出)

なお、上記の重点課題の詳細につきましては、「(4) 経営環境ならびに事業上及び財務上の対処すべき課題」に記載のとおりであります。

また、新型コロナウイルスの感染拡大が当社グループに与える影響は、現時点では一時的なものであると認識しております。しかしながら、感染拡大状況が長期に渡った場合、及び「アフターコロナ」において人々の生活様式に大きな変化が起こった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

新型コロナウイルスの感染拡大が当社グループに与える影響、及びその対策の詳細につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、当社グループの戦略ビジョンである、「デジタル化対応・AI機能の実装などによるサービスプラットフォームの構築」は、このような外部環境の大きな変化の中で更に強みを発揮するものであります。感染終息時期の予測が非常に困難な状況ではありますが、引き続き当該経営戦略の実行により、企業価値の向上に努めてまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、持続的な企業価値向上を目指すにあたり、事業規模拡大に向けた売上総利益・営業利益の成長性とともに、ROE(自己資本利益率)・EPS(1株当たり当期純利益)を重要な経営指標としております。
中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)では、最終年度において、ROE12.0%以上、EPS100.00円、売上総利益年平均成長率6.4%、営業利益年平均成長率9.4%を掲げております。

 

(4) 経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題

自動車流通市場は、近年カーユーザーのニーズやライフスタイルの多様化、MaaS、自動運転技術及びEV化の進展、 中古車販売店、整備工場、新車ディーラー、カー用品店等の事業領域間における相互参入、情報技術の進化に伴う大手IT企業による自動車関連産業への参入など、外部環境が大きく変化しております。また、新型コロナウイルスの感染拡大、及び終息後のいわゆる「アフターコロナ」においても、人々の生活様式に大きな変化が起こることも想定されます。

当社グループはこのような変化に対応するため、「中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)」において次の重点課題を掲げております。

①新車領域(データベースを活用したサービスを利益創出の柱にする)

当社は、「DataLine SalesGuide」の提供を通じて、新車販売市場の営業支援ツールにおいて高い市場シェアを獲得しております。また、新車ディーラーにおける顧客接点強化と生産性向上に資する商品・サービスの開発・提供を通じて、持続的な事業成長を図ります。

 

②中古車領域(製造原価・販売管理費の見直し)

当社は、「グーネット」の運営を通じて、中古車検索市場において高い市場シェアを獲得しております。また、メディア機能に加えて中古車の検査子会社を有しており、メディアに掲載する中古車の状態情報を開示することで、競合との差別化を図っております。なお、中古車領域においては、取引社数拡大による持続的な成長を図るとともに、営業人員の最適化、Webメディアとペーパーメディアのメディアミックス最適化を推進し、製造原価・販売費及び一般管理費の見直しを図ります。

 

③整備領域(広告事業の事業基盤拡大、予約サービスの構築)

当社は、「グーネットピット」の運営を通じて、広告事業の事業規模拡大を図ります。また、カーユーザーと整備工場を結びつける予約サービスの構築を通じて、カーアフターマーケットにおける新たな流通構造の創出を図ります。

 

④AI領域への投資(既存事業の底上げ)

当社は、AI領域への積極的な投資により、中古車・整備・新車の各領域における商品・サービスの開発を推進いたします。また、既存事業へのAIの導入を通じて生産性向上を図り、収益性の改善に努めます。

 

⑤新規事業への投資(新規サービスの創出)

当社は、引き続きM&Aを重要な経営戦略に位置付けるとともに、2019年4月に設立したコーポレートベンチャーキャピタルを通じて、広く自動車関連分野、AI・ITテクノロジー分野、東南アジアのベンチャー企業を投資対象とし、ビジネスの育成、支援、協業によって当社グループの競争力強化と、更なる企業価値の向上を推進いたします。

 

また、当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。なお、運転資金及び投資を目的とした資金調達につきましては、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。また、大規模な設備投資が必要となった場合には、資本市場との対話を通じて、最適な資金調達方法を検討いたします。

 

(5) 株式会社の支配に関する基本方針について

当社は、買収防衛策を導入しておりません。

当社の「財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は以下のとおりであります。当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、自動車関連情報をはじめとする当社グループの事業の全体に係る幅広い知識と豊富な経験を有し、また当社を支える株主、従業員、ユーザー、取引先、地域社会等の様々なステークホルダーとの信頼関係を十分に理解した上で、企業価値及び株主共同の利益を中長期的に最大化できる者が望ましいと考えております。上場会社である当社の株主は、当社株式の自由な取引を通じて決定されるものである以上、特定の買付者等による買付等に応じるか否かについても、最終的には株主の判断に委ねられるべきものと考えております。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項につきましては、以下のようなものがあります。

当社グループといたしましては、以下の記載事項が必ずしも事業上のリスクとは考えておりませんが、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動についてご理解を頂く上で重要と考えられる事項につきましては、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 自動車関連情報への依存について

当社グループにつきましては、当社及び連結子会社15社により構成されており、主に新車、中古車、パーツ用品などクルマ・バイクに関わる情報サービスの提供を行うとともに、介護・医療・福祉関連情報、カルチャー情報、生活に関わる情報サービスの提供を行っております。

2020年3月期における自動車関連情報の連結売上高につきましては、グループ売上高全体の89.4%を占めており、現状におきましては、当社グループの収益は自動車関連情報に大きく依存していることとなります。

このため、生活関連情報におきまして、介護・医療・福祉関連の領域において更なる事業拡大を図ることで、自動車関連情報に依存しない事業展開を推し進めてまいりますが、自動車関連業界における市場環境の変化や他社との競合激化等により、自動車関連情報の業績が大幅に変動した場合、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 印刷用紙の市況変動について

当社グループの主要商品であるクルマ情報誌「グー」をはじめ、各媒体の印刷・製本には、印刷用紙が必要となっておりますが、当該印刷用紙の仕入価格につきましては、市況価格の変動の影響を受けることとなります。

 

このため、当社グループの情報発信メディアにつきましても、情報誌を中心としたものからインターネット・モバイルメディアを中心としたものへとシフトさせていくことにより、リスクの低減を図っていく方針でありますが、今後、印刷用紙の市況価格が大幅に高騰し、印刷コストが上昇した場合、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、公表されている印刷用紙(A2コート紙)の相場につきましては、下記のとおりであります。

A2コート紙 相場(代理店卸価格 (円/kg))

 

2019年3月

2019年6月

2019年9月

2019年12月

2020年3月

価 格

144~163

144~163

144~163

144~163

144~163

 

出典:日経市況

 

(3) 特定外注先への依存について

当社グループの主要商品であるクルマ情報誌「グー」をはじめ、主要媒体の印刷につきましては共立印刷株式会社に委託しております。同社を選定した理由といたしましては、安定供給の体制が整備されていること、納期面での信頼性が高いこと、当社グループの技術的ニーズに適宜対応していること等があげられますが、当社グループの主要媒体の印刷は同社に依存していることとなります。

同社からの媒体供給体制ならびに取引状況は安定していることに加え、印刷全般のリスクの分散を図ることを目的として他社への印刷委託も実施しておりますが、何らかの理由により同社との取引に影響が生じ、媒体供給に支障をきたした場合、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 特定仕入先への依存について

当社グループの主要商品であるクルマ情報誌「グー」をはじめ、主要媒体の印刷用紙につきましては、東京紙パルプ交易株式会社より調達しております。同社を選定した理由といたしましては、継続的かつ安定的な用紙供給体制が整備されていること、当社グループのニーズに適宜対応がなされていることなどがあげられ、更に調達先を1社に集約することで仕入コストの削減を図っております。同社からの用紙供給体制ならびに取引状況は安定しておりますが、何らかの理由により用紙調達に支障が生じた場合、用紙の仕入先を変更・分散することとなる結果、これまでと同等水準の仕入コストの削減効果が期待できなくなる可能性があります。

 

(5) 法的規制及び許認可に係るリスクについて

①コンテンツに対する法的規制について

インターネット上のコンテンツにつきましては、プライバシーの保護、公序良俗ならびに知的財産権を犯すコンテンツ等、様々なコンテンツが登場してきております。当社グループにおきましては、これらインターネット上のコンテンツに関する問題はこれまで発生しておりませんが、万一、現在の法的規制に違反した場合、又は今後何らかの法的規制が加えられた場合には、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②中古車の売買に対する法的規制について

当社グループでは、株式会社キングスオート(現株式会社グーネットエクスチェンジ)において中古車輸出事業を行っており、中古車の売買に係る古物商許可を受けております。当該古物商許可につきましては、偽りその他不正の手段により許可を受けていた場合等、古物営業法第6条に定められた事由のいずれかに該当する場合には、許可が取り消しとなります。当社グループでは、こうした許可の取り消し事由はこれまで発生しておらず、今後におきましても、法令違反等により許可が取り消しとなることのないよう努めてまいりますが、万一、許可が取り消しとなった場合、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③人材紹介・人材派遣事業に対する法的規制について

当社グループでは、主に株式会社プロトメディカルケアにおいて人材紹介及び人材派遣事業を行っており、有料職業紹介事業許可及び労働者派遣事業許可を受けております。有料職業紹介事業許可につきましては、有料職業紹介事業者が許可の欠格事由に該当する等、職業安定法第32条の9に定められた事由のいずれかに該当する場合には、事業停止又は許可が取り消しとなります。また、労働者派遣事業許可につきましても、派遣元事業主が許可の欠格事由に該当する等、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第14条に定められた事由のいずれかに該当する場合には、事業停止又は許可が取り消しとなります。当社グループでは、こうした事業の停止又は許可の取り消し事由はこれまで発生しておらず、今後におきましても、法令違反等により事業の停止又は許可の取り消しとなることのないよう努めてまいりますが、万一、事業の停止又は許可が取り消しとなった場合、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、株式会社プロトメディカルケアの有料職業紹介事業許可及び労働者派遣事業許可の有効期限は2023年2月28日となっております。

 

④福祉用具等の貸与・販売事業に対する法的規制について

当社グループでは、主に株式会社プロトメディカルケアにおいて福祉用具等の貸与・販売事業を行っており、指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者として同社が展開する各都道府県より指定許可を受けております。当該指定許可につきましては、指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者が当該指定条件を満たすことができなくなったとき等、介護保険法第77条又は第115条の9に定められた事由のいずれかに該当する場合には、指定許可が取り消しとなります。当社グループでは、こうした指定許可の取り消し事由はこれまで発生しておらず、今後におきましても、法令違反等により指定許可が取り消しとなることのないよう努めてまいりますが、万一、指定許可が取り消しとなった場合、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、株式会社プロトメディカルケアの指定特定福祉用具販売事業所及び指定特定介護予防福祉用具販売事業所の指定及び、指定福祉用具貸与事業所及び指定介護予防福祉用具貸与事業所の指定ならびに、指定居宅介護支援事業所の指定に係る有効期限は2026年4月30日となっております。

 

(6) システムセキュリティ及びシステム・ネットワークダウンによるリスクについて

当社グループは、各種サービスを行うためにインターネットを利用したコンピュータシステムを構築し、適宜新しいシステム、セキュリティ関連技術を取り入れながら、継続的な設備投資ならびに保守管理を行っております。

しかしながら、ハードウエア又はソフトウエアの不具合、アクセスの急激な増加、人的ミス、ネットワーク回線のトラブル、コンピュータウイルス、停電、自然災害、その他の予測困難な要因によって当社グループのシステムに被害又は途絶が生じた場合、当社グループ全体の業績に影響を与える可能性があります。

 

(7) 個人情報の保護について

昨今、多くの企業による個人情報の流出が社会的な問題となっておりますが、当社グループにおきましては、2005年4月より施行された「個人情報保護法」の趣旨に沿った対応を図るよう、代表取締役社長による個人情報保護方針のもと、「個人情報保護規程」を制定し、個人情報の適切な保護に努めております。

しかしながら、当社保有の個人情報の外部流出、不正使用等が発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求や社会的信用の失墜等によって、当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8) コンテンツの内容に対する企業責任について

当社グループでは、各種メディアを通じて情報サービスの提供を行っておりますので、社会に与える影響につきましては、他のマスコミと同様であると考えております。従いまして、当社グループが提供する情報コンテンツに万一誤った記載があった場合、特定個人及び法人に対し、有形・無形の損害を与え、損害賠償訴訟等が発生する場合も想定されます。

当社グループといたしましては、複数のチェック機能を設け、厳重に情報コンテンツの管理を施すよう対処しておりますが、万一の場合、社会的信用の失墜ならびに当社グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 中古車輸出事業におけるリスクについて

当社グループでは、株式会社キングスオート(現株式会社グーネットエクスチェンジ)において中古車輸出事業を行っており、当社の主要顧客である中古車販売店又はオークション会場より、それぞれ仕入れた中古車を主にアジア諸国へ輸出しております。

中古車輸出事業におきましては、輸出対象国の政府による関税政策の変更ならびに輸入規制の変更等や海上輸送中の船舶・港湾施設の事故等予測困難な要因による損失が発生した場合には、当社グループ全体の業績に影響を与える可能性があります。

 

(10) M&Aに係るリスクについて

当社グループでは、主に自動車関連情報における事業領域の拡大ならびに商品・サービスの拡充を目的として、M&Aを活用する方針であります。M&A実施前には、対象企業の財務内容や契約関係等に関するデューデリジェンスにて把握したリスクの回避策ならびに投資回収可能性等を充分検討することにより、リスクの低減を図っております。

しかしながら、M&A実施後の事業環境・競合状況の急変、偶発債務の発生や未認識債務の判明等事前の調査で把握できなかった問題の発生等により、当初期待していた投資効果が得られない場合、のれん等の固定資産の減損損失が発生する可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 子会社の業績について

当社グループでは、事業領域の拡大ならびに商品・サービスの拡充を図るため積極的なM&Aを推進するとともに、新規子会社の設立を行っております。当該子会社におきましては、グループシナジーの追求及び経営効率化の推進による収益性の向上を図り、早期に事業化を進める方針であります。

しかしながら、その進捗に遅れが生じた場合には、子会社において営業損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 技術革新への対応に係るリスクについて

インターネット関連分野においては、業界内での技術革新の進捗が著しく、当社グループとしても、こうした技術革新に応じたシステム拡充及び事業戦略の修正等を迅速に行う必要があるものと考えております。今後、こうした技術革新への対応が遅れた場合、当社グループの提供するサービス及び設備等の陳腐化により、競合他社に対する競争力の低下を招き、その結果、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13) 人材の獲得及び育成に係るリスクについて

当社グループにおいて、今後、事業を更に拡大し、持続的な成長を図っていくためには、優秀な人材の確保及び育成が重要であると考えております。しかしながら、当社グループの求める人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材の流出が進んだ場合には、競争力の低下や事業の拡大の制約要因が生じる可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 海外事業に係るリスクについて

当社グループでは、海外事業の展開を中長期的な成長の機会として位置づけております。しかしながら、各国の経済情勢及び政治情勢の悪化、法律・規則、税制、外資規制等の差異及び変更、商慣習や文化の相違等の要因により、特定の国での事業の遂行及び推進が困難になる場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 新型コロナウイルスの感染拡大に係るリスクについて

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、現時点では、新型コロナウイルスの感染拡大が当社グループに与える影響は一時的なものであると認識しております。しかしながら、感染拡大状況が長期に渡った場合、及び「アフターコロナ」において人々の生活様式に大きな変化が起こった場合には、下記のようなリスクが当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

①外出自粛等の影響による収益の減少

感染拡大下の外出自粛に伴い、自動車関連市場へのマイナス影響が長期化した場合、取引先の業績悪化及び消費者の消費活動が停滞すること等により、当社グループが扱う商品・サービスの販売収益にも影響が出ることが考えられます。具体的には中古車領域及び整備領域における広告サービス、新車領域における営業支援ツール、物販領域におけるタイヤ・ホイール販売などについて、収益が減少する可能性があります。また、アフターコロナにおいて、人々の行動様式が大きく変化した場合、既存の対面取引を前提とした商品・サービスでは、競争力が低下する恐れがあります。当社グループといたしましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおり、各領域において、IT化・デジタル化の推進による、非対面による商談システムのリリースや、AIを活用した営業支援商品の提供などにより、人々の行動変化による新たな需要を取り込み、収益の確保に努めてまいります。

 

②従業員の感染による営業活動の停止

当社グループの従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、当該従業員が所属する事業所を中心に、営業活動が停止する可能性があります。このような事態を避けるため、当社グループにおきましては2020年2月末より、営業活動を原則、電話営業・オンライン営業に移行し、また、実店舗を有するグループ会社においては、営業時間の短縮や、マスク着用、消毒の徹底、公共交通機関での通勤者の時差出勤など、感染対策に努めながら営業活動を行ってまいりました。さらに、「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」を作成、運用することで、従業員の感染拡大防止に対する行動及び意識の統一を図っております。

また、緊急事態宣言下においては、就業形態を原則「在宅勤務」とし、会議のオンライン化、都道府県外への出張禁止等の対策も講じてまいりましたが、当該対策下においても業務の遂行に大きな問題が発生しないことが確認できております。また、宣言解除後も、検温管理、マスク着用、職場消毒、3密回避といった感染防止体制を継続しており、引き続き状況に応じた柔軟な対応で、影響を最小限に食い止めてまいります。

 

 

③資金減少

2020年3月末現在の当社の現預金残高は8,548百万円であり、2021年3月期事業計画が当初計画通り進捗した場合には当社の資金繰りに問題はありません。しかしながら、今後、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化した場合には、上記①に記載のとおり、クライアントの広告宣伝費抑制等により当社の資金収支に影響が出る可能性があります。

当社はこのような一時的な資金減に備え、2020年5月に金融機関と総額6,000百万円の当座貸越契約を締結いたしました。万が一資金の不足が発生した場合には、これを活用することで、資金需要に対応してまいります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益に一部足踏み感が見られたものの、雇用・所得環境の改善傾向が続き、緩やかな回復基調で推移いたしました。しかしながら、米中貿易摩擦や中東の地政学リスクに加え、新型コロナウイルスの感染拡大が国内外の経済情勢に大きな影響を与えることも想定されることから、先行きの不透明感はこれまで以上に強まっている状況となっております。

こうした経済環境の中、当社グループの主要顧客である自動車販売業界におきましては、自然災害による影響が相次いだことなどもあり、登録車、軽自動車ともに新車販売台数が前年実績を下回り、また、中古車登録台数も前年実績を下回る水準で推移いたしました。

このような状況の中、当社グループにおきましては、積極的な事業投資により、主に中古車販売店、整備工場、新車ディーラーを対象としたプライベートブランド商品・サービスの開発及び提供を強化するとともに、コスト構造の見直しなどを通じて収益性の向上を図り、自動車関連情報事業における№1ポジションの確立に取り組んでまいりました。また、当社グループのリソースを活用した新たな事業基盤の構築及びシナジーの具現化による販売機会の拡大、アライアンス強化を通じたユーザー接点の拡大を推進した一方で、連結子会社の吸収合併による不採算事業の廃止も進めてまいりました。

以上のことから、当連結会計年度の売上高は、上記連結子会社の吸収合併による不採算事業の廃止に加え、車両輸出販売の伸び悩みなどが要因となり、58,746百万円(対前年同期比5.3%減)となりました。営業利益は、グーシリーズにおけるコスト構造の見直し、整備工場向けソフトウエアの販売において、消費税増税前の駆け込み需要があったことに加え、Windows7のサポート終了に伴う買替需要があったこと、連結子会社の吸収合併による不採算事業の廃止などが寄与したことにより、5,126百万円(対前年同期比12.7%増)となり、経常利益は5,310百万円(対前年同期比6.8%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、固定資産売却益の計上なども寄与し、4,957百万円(対前年同期比58.3%増)となりました。この結果、当連結会計年度におけるROEは、16.6%(当社中期経営計画の目標値12.0%)となりました。

なお、セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(自動車関連情報)

売上高は52,488百万円(対前年同期比6.2%減)、営業利益は6,572百万円(対前年同期比14.5%増)となりました。減収となった主な要因は株式会社バイクブロスの不採算事業廃止に加え、株式会社キングスオート(現株式会社グーネットエクスチェンジ)における車両輸出販売の伸び悩み、及び、株式会社オートウェイにおけるタイヤ・ホイール販売の減収によるものであります。増益となった主な要因は、グーシリーズにおけるコスト構造の見直しや、株式会社プロトリオスにおいて、消費税増税前の駆け込み需要及び、Windows7のサポート終了に伴う買替需要により、整備工場向けソフトウエアの販売が好調であったこと、株式会社タイヤワールド館ベストにおけるタイヤ・ホイール販売の増収及び利益率改善などによるものであります。

 

(生活関連情報)

売上高は4,168百万円(対前年同期比3.8%減)、営業利益は169百万円(対前年同期比32.2%減)となりました。減収となった主な要因は、2019年2月に「おいくら」を事業移転したことに加え、株式会社プロトメディカルケアにおける看護師派遣事業、及び訪問歯科支援事業の減収等によるものであります。減益となった主な要因は、上記売上減収の影響に加え、訪問歯科支援事業の事業撤退に係る撤退費用の計上等によるものであります。

(不動産)

当社が自社物件の賃貸管理を行っており、売上高は160百万円(対前年同期比17.7%減)、営業利益は135百万円(対前年同期比30.0%減)となりました。

(その他)

株式会社プロトソリューションにおいて外部顧客に対するソフトウエアの開発・販売が伸長したこと、及び人材派遣事業においては、既存連結子会社の業績伸長に加え、2019年10月に子会社化した株式会社アソシエが寄与したことなどから、売上高は1,928百万円(対前年同期比24.2%増)となり、営業利益は58百万円(対前年同期比2.9%増)となりました

 

②財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は44,640百万円となり、前連結会計年度末と比較して、839百万円の増加となりました。資産、負債及び純資産の状況につきましては、次のとおりであります。

ⅰ資産

流動資産につきましては、営業増益に加え、保有不動産の売却などにより現金及び預金が増加したことなどから、28,146百万円となり、前連結会計年度末と比較して、1,141百万円の増加となりました
固定資産につきましては、株式会社プロトベンチャーズにおいて、投資事業有限責任組合に対する出資金の増加を要因とした、投資その他の資産の増加などがあった一方で、土地の売却などによる有形固定資産の減少、のれんの償却及び借地権の売却による無形固定資産の減少により、16,494百万円となり、前連結会計年度末と比較して、301百万円の減少となりました

ⅱ負債

流動負債につきましては、短期借入金の返済などにより、11,268百万円となり、前連結会計年度末と比較して、2,739百万円の減少となりました。
固定負債につきましては、長期借入金の返済などにより、1,524百万円となり、前連結会計年度末と比較して、290百万円の減少となりました。

ⅲ純資産

剰余金の配当が、1,053百万円発生した一方、親会社株主に帰属する当期純利益4,957百万円の計上、譲渡制限付株式報酬制度に係る新株の発行などにより、純資産は31,848百万円となり、前連結会計年度末と比較して、3,869百万円の増加となりました

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物につきましては、前連結会計年度末と比較して、1,980百万円増加し、17,336百万円となりました。主な増加要因につきましては、次のとおりであります。

ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額が、2,081百万円と対前年同期比で増加したものの、税金等調整前当期純利益7,095百万円の計上などにより、6,014百万円の収入となりました。

 

ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出が、1,828百万円、出資金の支払による支出が、760百万円発生するなどした一方で、有形・無形固定資産の売却による収入が、3,862百万円発生したことにより、401百万円の収入となりました。

ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期・長期借入金の減少が、3,330百万円、配当金の支払が、1,053百万円発生したことなどから、4,459百万円の支出となりました。

 

④生産、受注及び販売の実績

ⅰ生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

自動車関連情報

 

5,298

94.9

生活関連情報

 

142

88.1

その他

 

3

110.1

合計

 

5,443

94.8

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3 生産実績については、自動車関連情報、生活関連情報、その他における外注費を表示しております。不動産については、生産実績がありませんので、記載しておりません。

 

ⅱ受注実績

受注後売上計上までの期間が概ね1ヶ月以内であるため、記載を省略しております。

 

ⅲ販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

自動車関連情報

 

52,488

93.8

  広告関連

 

21,121

100.3

  情報・サービス

 

5,539

109.9

  物品販売

 

25,827

86.5

生活関連情報

 

4,168

96.2

不動産

 

160

82.3

その他

 

1,928

124.2

合計

 

58,746

94.7

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3 自動車関連情報の広告関連については、主に情報誌及びウェブサイトへの広告掲載料であります。また、情報・サービスについては、主に法人向けデータ提供料であります。物品販売については、主に中古車輸出、タイヤ・ホイール等の販売に係る売上が含まれております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。また、新型コロナウイルスの感染拡大が当連結会計年度の経営成績、財政状態、キャッシュ・フローに与えた影響は微細であり、今後の影響につきましても、一時的なものであると認識しております。しかしながら、感染拡大が長期化した場合等には影響が大きくなる可能性もあるため、影響内容に応じて対応策を立案、実行してまいります。詳細につきましては「2 事業等のリスク」及び、下記、事業領域別の状況に記載のとおりであります。

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

当社グループの連結財務諸表の作成に当たっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積り、判断及び仮定を必要とします。経営者は、これらの見積り、判断及び仮定について、過去の実績等を勘案し合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っておりますが、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。また、新型コロナウイルスの感染拡大が、長期に渡って国内及び国外の経済情勢に影響を与えた場合、これらの見積り、判断及び仮定と、実際の結果との乖離が大きくなることも想定されます。具体的には、貸倒実績率に基づき見積もられた一般債権に係る貸倒引当金などは、当該影響により実際との乖離が大きく発生する可能性があります。

なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計基準等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績

当連結会計年度におきましては、売上高58,746百万円(対前年同期比5.3%減)、営業利益5,126百万円(対前年同期比12.7%増)、経常利益5,310百万円(対前年同期比6.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,957百万円(対前年同期比58.3%増)という結果となりました

主な減収要因は、株式会社バイクブロスの吸収合併に伴う雑誌出版事業、EC通販事業等の撤退、及び、株式会社オートウェイのタイヤ・ホイール販売の減収、ならびに株式会社キングスオート(現株式会社グーネットエクスチェンジ)の車両輸出販売の減収によるものであります。一方でコスト構造の見直しなどを通じた収益性の向上が営業利益、経常利益の増益につながりました。加えて東京本社の移転に伴う固定資産売却益の計上もあり、親会社株主に帰属する当期純利益も大きく増益となっております。

当社グループが経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標の一つとしているROEにつきましては16.6%となり、当社の中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)上の最終目標値12.0%を大きく上回っております。ただし、当連結会計年度におきましては、前述の固定資産売却益がROEの増加に大きく影響しており、仮にこれを考慮しない場合のROEは12.0%と概算されます。引き続き売上高純利益率の向上に努めることはもちろん、同時に資産の利用効率につきましても改善の余地があると認識しております。

なお、当社グループの事業セグメントのうち、当連結会計年度の売上高の89.3%を占めており、最も重要な事業セグメントである自動車関連情報セグメントの詳細な状況につきましては、以下のとおりであります。

 

 

(自動車関連情報)

取引社数の拡大ならびに顧客当たりの取引単価の維持・拡大に努めるとともに、カーライフにおけるユーザーニーズを網羅したサービスの強化に取り組んだ結果、売上高52,488百万円(対前年同期比6.2%減)、営業利益6,572百万円(対前年同期比14.5%増)となりました

株式会社キングスオート(現株式会社グーネットエクスチェンジ)の車両輸出販売の減収、株式会社オートウェイのタイヤ・ホイール販売の減収の他、株式会社バイクブロスの不採算事業撤退も減収の大きな要因となっておりますが、当該事業撤退は同時に利益率の向上にもつながっており、当初の目的であった経営資源の集約、グループ経営の効率化、コスト低減による収益力の向上は達成できたものと考えております。

なお、各事業領域別の状況は次のとおりであります。

ⅰ中古車領域

「グーネット」のコンテンツ量最大化、「グーネット」のバックグラウンドシステムである「MOTOR GATE」の提供及び機能向上を通じた、取引社数の拡大と生産性の向上、情報誌とウェブサイトの役割最適化、コスト構造の見直しなどに取り組んでまいりました。自然災害の頻発などにより中古車登録台数が減少するなど、中古車業界の不振があったなか「中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)」において年平均成長率+4.0%を目標として取り組んでいたグーネットの取引社数については、残念ながら、対前年同期比△5.1%の減少となりました。

 

2017年3月期
(実績)

2018年3月期
(実績)

2019年3月期
(実績)

2020年3月期
(実績)

2022年3月期
(目標)

取引社数(社)

12,611

13,811

14,761

14,011

16,593

 

上記結果を踏まえ、目標達成のためには、時代の変化に対応した新たなサービスの創造が不可欠だと認識しております。「PROTO総研/カーライフ」が行った「プロトカーユーザーレポート2020」によれば、現在、中古車ユーザー全体の約3分の1が実車の確認をせずに車両を購入しているという実態が明らかとなりました。これは、当社グループが行っている、プロの鑑定師による中古車の車両状態鑑定サービスである「グー鑑定」による中古車鑑定台数が過去10年で約4倍に伸長していることも大きな要因と言えますが、このようなユーザーの車両購入意思決定における、時間、距離、場所の制約などを解決するサポートシステムの開発・提供が、今後中古車領域の業容拡大のカギになると考えます。奇しくも新型コロナウイルスの感染拡大により、「在宅」によるサービスが大きな脚光を浴びることとなりました。ユーザーと顧客の双方から、オンラインコミュニケーションニーズがさらに高まっており、今後もこの流れは加速していくものと思われます。2021年3月期においては、車両購入希望者が自宅にいながら車両の確認や商談を行うことができる「オンライン商談予約」システムや、顧客の営業を支援するAI領域の商品開発を推進するなど、市場環境の変化に対応した新たな機能を「MOTOR GATE」に実装することで、取引社数の拡大を図ってまいります。

同時に、当連結会計年度において推進してまいりました、営業人員の最適化、Webメディアとペーパーメディアのメディアミックス最適化による製造原価・販売費及び一般管理費の見直しは、利益効率の改善に大きく貢献をいたしました。本取り組みにおいても、IT化・デジタル化は欠かせない要素であり、引き続き新たな技術・システムの開発、導入により、さらなる効率化に努めてまいります。

 

 

ⅱ整備領域

「グーネットピット」の運営を通じて、広告事業の事業規模拡大、及びカーユーザーと整備工場を結びつける予約サービスの構築を通じて、カーアフターマーケットにおける新たな流通構造の創出に取り組んでまいりました。

「中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)」において、年平均成長率+15.0%を目標としている有料掲載工場数については、当連結会計年度において対前年同期比+5.1%と増加はしているものの目標とする成長率には届かない結果となりました。

 

2017年3月期
(実績)

2018年3月期
(実績)

2019年3月期
(実績)

2020年3月期
(実績)

2022年3月期
(目標)

有料掲載工場数(工場)

1,815

2,868

3,310

3,480

5,000

 

整備領域は「カーライフのトータルサポートの実現」において必要不可欠な領域である一方、当社が想定する対象マーケット数91,788工場のうち当連結会計年度末時点の有料掲載工場数は3,480工場であり、全体の3.8%にとどまるなど、成長余地をまだ大きく残した状況となっております。引き続き認知度の向上に加え、他の領域と同様に商品のデジタル化推進を中心とした利便性の向上により、広く社会に根差したサービスとなるよう努めてまいります。

2021年3月期においては、当社グループのシナジーを活用した営業活動や、自動車整備業を行う有力FC本部への働きかけ強化などによる取引社数の拡大に加え、「グーネットピット」への「AIチャットボット」導入推進による予約サービスの利便性向上など、市場環境変化に対応した新たなデジタルサービスにより、事業規模の拡大を図ってまいります。

 

ⅲ新車領域

新車販売市場の営業支援ツールである「DataLine SalesGuide」について、「AIチャットボット」「DataLine CRM」「DataLine AI査定」といった新しい機能・サービスを提供することにより、導入拠点数の拡大に取り組んでまいりました。
この結果、「DataLine SalesGuide」の導入拠点数は、前年同期比対比で+5.1%となり、「中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)」における目標値である年平均成長率+4.7%を上回る水準で順調に伸長しております。

 

2017年3月期
(実績)

2018年3月期
(実績)

2019年3月期
(実績)

2020年3月期
(実績)

2022年3月期
(目標)

導入拠点数(拠点)

3,935

4,841

5,422

5,697

6,200

 

当領域の想定対象マーケット数14,670拠点に対して、2020年3月時点の導入済み拠点数は5,697拠点、導入率は38.8%であり、引き続き成長余地を残した領域となっております。2021年3月期においては、商談の生産性向上、営業時間外の顧客対応及び集客に寄与する「AIチャットボット」に、オンライン商談予約機能の実装を行うなど、他領域と同様にデジタルサービスの拡充による利便性向上によるシェア拡大を図り、当領域を「データベースを活用したサービスを利益創出の柱にする」という成長戦略の実現に向けて取り組んでまいります。

 

ⅳ物販領域

タイヤ・ホイール等の販売において、主要取扱ブランドの販売強化ならびにタイヤ・ホイールのセット販売の強化に取り組むとともに、当社の「グーネット」、「グーネットピット」、「MOTOR GATEショッピング」等とのシナジーを追求することで販売機会の拡大に努めてまいりました。

 

当連結会計年度においては、株式会社バイクブロスの不採算事業廃止に加え、株式会社キングスオート(現株式会社グーネットエクスチェンジ)における車両輸出販売の伸び悩み、及び、株式会社オートウェイにおけるタイヤ・ホイール販売の減収により、当領域全体でも減収となっております。

(単位:百万円)

 

2017年3月期
(実績)

2018年3月期
(実績)

2019年3月期
(実績)

2020年3月期
(実績)

売上高
(物販領域)

24,899

29,429

29,847

25,827

 

株式会社オートウェイのタイヤ・ホイール販売減収については、一部販売商品の表示不備に端を発した一部販売チャネルの停止によるものであり、2020年2月より営業は正常化しております。

株式会社キングスオート(現株式会社グーネットエクスチェンジ)の車両輸出に関しましては、具体的な成果が出ない状態が続いておりますが、今後は当社との結びつき強化により独自の中古車輸出の流れを作り、当社取引先の販路拡大に寄与する、グループ全体における輸出機能としてその存在を確立していくよう努めてまいります。また、同業他社とのアライアンスや事業の再構築を図るための戦略見直しも進めてまいります。

一方で株式会社タイヤワールド館ベストのタイヤ・ホイール販売においては、当連結会計年度において黒字転換となりました。引き続き当社グループのシナジーを活用し、ユーザーニーズの更なる獲得と、営業効率の改善に努めてまいります。

 

なお、生活関連情報、不動産、その他の事業セグメントの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

財政状態

(資産)

当連結会計年度末の総資産は44,640百万円となり、前連結会計年度末と比較して、839百万円の増加となりました。当社及び株式会社プロトリオスにおいて、事業所移転に係る建物、土地等の売却があったことで、固定資産は前期末対比で301百万円減少しております。一方で現預金の増加により、流動資産は増加、下記流動負債の減少もあいまって、流動比率は高まっております。また、総資産の増加とともに総資産回転率が低下しています。当連結会計年度においては、固定資産売却益の計上によりROEが上昇しておりますが、これは一時的なものであり、中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)の最終年度においてROE12.0%以上という目標を達成するためには、資産の利用効率も重要な課題であると認識しております。

(負債)

当連結会計年度末の総負債は12,792百万円となり、前連結会計年度末と比較して、3,029百万円の減少となりました。流動負債、固定負債ともに借入金の減少が負債減少の主要因となっております。当連結会計年度の中途において、連結子会社の外部金融機関からの短期借入金につき、一部グループファイナンスへの切り替えによる返済を行ったことが借入金の減少につながっております。これにより、有利子負債は前連結会計年度末と比較して3,314百万円減少し、ネットキャッシュは5,624百万円増加しております。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は31,848百万円となり、前連結会計年度末と比較して、3,869百万円の増加となりました。当連結会計年度末の自己資本比率は71.3%、時価ベースの自己資本比率は77.1%となっております。

 

2016年3月期

2017年3月期

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

自己資本比率(%)

63.6

63.0

58.5

63.8

71.3

時価ベースの自己資本比率(%)

68.5

70.0

75.2

91.6

77.1

 

 

キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、17,336百万円となり、前年同期対比で1,980百万円の増加となりました。各キャッシュ・フロー区分における詳細は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、6,014百万円の収入となり、前年同期対比で2,206百万円の増加となりました。減収の一方でコスト改善などによる営業増益となったことで、営業キャッシュ・フローマージンが10.2%(前年同期比4.1ポイント増)となり、営業収支効率は良化しております。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、401百万円の収入となり、前年同期対比で1,754百万円の増加となりました。当社及び株式会社プロトリオスにおける事業所移転に伴う有形固定資産の売却による収入3,588百万円が大きな要因ですが、一方で、株式会社プロトベンチャーズにおける投資事業有限責任組合への出資金の支払による支出が760百万円あり、重点課題の一つとして挙げている新規事業への投資も合わせて推進しております。

フリーキャッシュ・フローは6,415百万円となり、前年同期対比で3,960百万円増加しております。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、4,459百万円の支出となり、前年同期対比で1,613百万円の支出増加となりました。

短期借入金の返済による支出が2,840百万円と、前年同期対比で1,630百万円増加したことが主な要因で、一部連結子会社の短期借入金につき、グループファイナンスへの切り替えを行ったことが主要因となっております。
上記によりキャッシュ・フロー対有利子負債比率は0.6年(前年同期比1.3年減)となり、支払余力が高まっております。

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。 

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、以下のとおりであります。

a.資金需要

当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、商品の仕入のほか、外注費、製造経費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、無形固定資産投資、設備投資、M&A投資等によるものであります。

b.財務政策

当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

運転資金及び投資を目的とした資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。

なお、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化した場合の資金リスクに対応するため、2020年5月に金融機関と当座貸越契約を締結しております。詳細は「2 事業等のリスク」をご参照ください。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

株式譲渡契約

当社は、2019年11月26日開催の取締役会において、当社の連結子会社である台湾寶路多股份有限公司の株式の全部を売却することを決議し、2019年11月27日譲渡契約を締結しました。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

5 【研究開発活動】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発費は、88百万円であります。

なお、当該研究開発費は、主に、「自動車関連情報」セグメントにおいて、株式会社プロトリオスの新製品の開発、「その他」セグメントにおいて、株式会社プロトソリューションのスマートフォンアプリの開発等により発生したものであります。