独立監査人の監査報告書
2024年12月20日
株式会社プロトコーポレーション
取締役会 御中
指定有限責任社員 業務執行社員 |
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公認会計士 |
大北 尚史 |
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指定有限責任社員 業務執行社員 |
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公認会計士 |
杉浦 章裕 |
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監査意見
当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている株式会社プロトコーポレーションの2020年4月1日から2021年3月31日までの連結会計年度の訂正後の連結財務諸表、すなわち、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、その他の注記及び連結附属明細表について監査を行った。
当監査法人は、上記の連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、株式会社プロトコーポレーション及び連結子会社の2021年3月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。
監査意見の根拠
当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「連結財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社及び連結子会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。
強調事項
重要な後発事象に関する注記に記載のとおり、会社は2021年5月10日開催の臨時取締役会において、連結子会社である株式会社プロトメディカルケアの全株式を株式会社ベネッセホールディングスに譲渡することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結した。
当該事項は、当監査法人の意見に影響を及ぼすものではない。
監査上の主要な検討事項
監査上の主要な検討事項とは、当連結会計年度の連結財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、連結財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。
自動車関連情報セグメントの広告関連の売上高 |
監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由 |
監査上の対応 |
株式会社プロトコーポレーション(以下「会社」という。)の連結損益計算書の売上高において、自動車関連情報セグメントに含まれる広告関連の売上高(21,512百万円)が計上されており、連結損益計算書の売上高の36.0%を占めている。
広告関連の取引は、主に会社の情報発信メディア(情報誌・PC・スマホ)を通じて、顧客である中古車販売店等が所有する商品在庫データを消費者に提供することで顧客の販売機会を拡大し、対価として顧客からサービス利用料を領収する取引である。会社では顧客との契約に基づいて算定される月額のサービス利用料を広告関連の売上高として計上している。
個々の取引金額は売上高の全体に比べて少額であるが、顧客数・契約口数は多く、処理される取引件数も膨大なものとなっている。
また、広告関連の売上高の計上プロセスは、契約管理システムに登録された契約内容に基づき、販売管理システムによって集計され、会計システムへ連携し処理される仕組みとなっており、契約管理から売上高の計上に至る一連の業務プロセスはITシステムの整備・運用状況に依拠している。
以上から、当監査法人は、広告関連の売上高は当連結会計年度の連結財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項の一つに該当するものと判断した。 |
当監査法人は、広告関連の売上高を検討するにあたり、主に以下の手続を実施した。
(1) 内部統制の評価
監査手続の基礎データは販売管理システムから出力されたものである。基礎データの信頼性を確かめるため、広告関連の売上高に関する会計処理過程を把握するとともに、関連するITシステムの全般統制及び業務プロセス(契約、売上高の計上の一連の業務プロセス)に係る主に次の内部統制の整備状況及び運用状況の検証を実施した。なお、ITシステムの信頼性を検討するため、監査法人内のITの専門家を利用している。
● 契約管理システムの契約内容および登録情報の正確性に関する内部統制の検証
● 関連するITシステムにかかるユーザーアクセス管理、システム変更管理、システム運用管理等のIT全般統制の検証
(2) 広告関連の売上高の検討
広告関連の売上高の検討に関連して、主に以下の監査手続を実施した。
● 広告関連の売上高を取引の内容別に細分化した。その上で過年度の実績と比較し、主な変動理由について経営者へ質問するとともに、回答内容の合理性を評価した。
● 顧客との契約内容に基づいたサービス利用料が、販売管理システムに売上取引として記録・集計されて、売上高として計上される。販売管理システムに記録されている売上取引データを母集団として、統計的手法によって抽出したサンプルを対象に、以下の手続を実施した。
・販売管理システムに記録されている売上取引データが、契約管理システムに登録されており、その契約内容についてシステム上で顧客の承認を受けていることを確認した。
・販売管理システムに記録されている売上取引データと入金証憑を突合した。
● 契約管理システム、販売管理システム及び会計システムのデータを突合し、ITシステム間のデータの整合性を確認した。 |
株式会社プロトコーポレーションにおいて不正に計上された売上高及び売上原価の修正処理の適切性 |
監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由 |
監査上の対応 |
注記事項(追加情報)に記載のとおり、株式会社プロトコーポレーション(以下「会社」という。)において、2024年5月に一部の取引について売掛金の回収遅延が発生した。社内調査の結果、当該取引を担当していた会社元社員が架空取引(役務提供の裏付けが確認できないままに取引先等と送受金がなされている取引。以下「本件不正取引」という。)を行い、特定の取引先に対する架空の売上高及び売上原価が計上されている疑いがあることが判明した。
これを受けて、会社は、2024年10月18日付で会社と利害関係を有さない弁護士及び公認会計士からなる特別調査委員会を設置し、本件不正取引の全容の解明、同種又は類似事案の存否、連結財務諸表等への影響等について更に調査を行い、2024年12月10日付で特別調査委員会から調査報告書を受領した。
特別調査委員会による調査の結果、一部の取引において、会社の牽制機能に不備があったことにより、取引の実在性が会社で十分に検証されないまま取引先等と送受金がなされ、その結果、2014年8月から2024年3月までの期間において架空の売上高1,795百万円及び架空の売上原価1,951百万円がそれぞれ計上されていたことが判明した。会社は、当該取引により不正に計上された売上高及び売上原価の修正が必要であると判断し、過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を2024年12月20日に提出している。これらの修正処理により、当連結会計年度の連結財務諸表においては、実在性を確認できない売上高271百万円及び売上原価296百万円を取り消している。
当該取引により不正に計上された売上高及び売上原価を適切に修正するためには、その事実関係を確認し、不正取引の手口や動機・機会等の原因分析を行った上で、不正取引が行われた期間や範囲及び金額を正確かつ網羅的に把握するとともに、同種又は類似した取引の有無を把握して、連結財務諸表に与える影響を検討する必要がある。これには不正調査に関する専門的な知識及び経験と慎重な判断が必要となる。
以上から、当監査法人は、株式会社プロトコーポレーションにおいて不正に計上された売上高及び売上原価の修正処理の適切性が、当連結会計年度の連結財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項の一つに該当するものと判断した。
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当監査法人は、株式会社プロトコーポレーションにおいて不正に計上された売上高及び売上原価の修正処理の適切性を検討するために、当監査法人が属するネットワークファームの不正調査の専門家を関与させた上で、主に以下の監査手続を実施した。
(1) 特別調査委員会の調査結果の検討
● 特別調査委員会について、調査委員の専門性及び客観性を評価した。
● 特別調査委員会が実施した以下の主な調査手続の範囲の適切性及び調査結果の信頼性を検討するため、特別調査委員会による調査の過程において各調査委員から調査状況の説明を受け、質問するとともに、調査報告書及び関連資料を閲覧した。
・関係する役員及び従業員に対するヒアリング
・関係する取引先等に対するヒアリング
・関係する役員及び従業員に対するデジタルフォレンジック調査
・会社の役員及び従業員を対象としたアンケート調査
(2) 本件不正取引により計上された売上高及び売上原価の検討
● 本件不正取引が正確かつ網羅的に把握されていることを主として以下の手続により検討した。
・本件の不正な売上について、会社が不正取引として集計した結果と販売管理システムに記録されている不正取引の実行者が関与した取引情報及び本件取引先等からの全ての入金に対する入金証憑とを照合した。
・本件の不正な仕入について、会社が不正取引として集計した結果と会社が取引先から入手した会社との取引に関する記録等とを照合した。
・本件取引先との売上及び仕入取引のうち、上記手続で不正取引と特定されたもの以外の取引について、その実在性を確かめるため、財又はサービスの提供の事実を示す根拠資料とを照合した。
(3) 同種又は類似した不正な売上及び仕入取引の有無の検討
● 本件不正取引の実行者及び当該実行者以外の者により、同様の不正取引が行われていないかどうかを検討するため、本件不正取引と同種又は類似した特徴のある取引を抽出し、その実在性を確かめるため、財又はサービスの提供の事実を示す根拠資料とを照合した。 |
その他の事項
有価証券報告書の訂正報告書の提出理由に記載されているとおり、会社は、連結財務諸表を訂正している。なお、当監査法人は、訂正前の連結財務諸表に対して2021年6月30日に監査報告書を提出しているが、当該訂正に伴い、訂正後の連結財務諸表に対して本監査報告書を提出する。
連結財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任
経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して連結財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。
連結財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき連結財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。
監査役及び監査役会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。
連結財務諸表監査における監査人の責任
監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての連結財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から連結財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、連結財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。
監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。
・不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。
・連結財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。
・経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。
・経営者が継続企業を前提として連結財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において連結財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する連結財務諸表の注記事項が適切でない場合は、連結財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。
・連結財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた連結財務諸表の表示、構成及び内容、並びに連結財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。
・連結財務諸表に対する意見を表明するために、会社及び連結子会社の財務情報に関する十分かつ適切な監査証拠を入手する。監査人は、連結財務諸表の監査に関する指示、監督及び実施に関して責任がある。監査人は、単独で監査意見に対して責任を負う。
監査人は、監査役及び監査役会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。
監査人は、監査役及び監査役会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。
監査人は、監査役及び監査役会と協議した事項のうち、当連結会計年度の連結財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。
利害関係
会社及び連結子会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。
以 上
(注) 1.上記は監査報告書の原本に記載された事項を電子化したものであり、その原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しております。
2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。 |