文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
国内経済においては、回復の兆しが見えつつあり勤労世帯の可処分所得は緩やかに増加傾向にあるものの、不安定な世界情勢や気候変動の影響、金利・為替相場の変動から物価高騰が続いており、消費支出については引き続き慎重な姿勢がみられる傾向にありました。
上述のような市況において、当連結会計年度の連結業績は、売上高185,566百万円(前年同期比13.1%増)、営業利益6,880百万円(前年同期比11.5%増)、経常利益6,903百万円(前年同期比6.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,260百万円(前年同期比29.2%減)となりました。
当社は、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について、以下の3施策を実施いたします。
①成長戦略の着実な実行
グローバル(東南アジア)、リカレント・リスキリング領域、介護周辺事業への積極投資など新規事業開発を加速いたします。また、グループのトランスフォーメーションと成長に資するM&Aを戦略的に実施いたします。
②資本効率向上
不採算事業のモニタリングを実施し、成長領域へのリソースシフトを実施いたします。また、WACCやIRRを意識した投資判断を行います。
③株主還元
配当性向は30%以上を維持し、機動的な自己株式取得を実施いたします。
「Gakken2025」の最終年度にあたる2025年9月期には売上高2,000億円、営業利益70億円、親会社株主に帰属する当期純利益35億円を目指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
当社グループの理念「すべての人が心ゆたかに生きることを願い 今日の感動・満足・安心と 明日への夢・希望を提供します」で掲げる社会・環境に対する配慮や人権尊重の精神は、誰一人取り残さない持続可能な社会の実現に向け努力すること、すなわちサステナビリティそのものであると考えています。教育・医療福祉事業を通じて価値を提供し、社会や環境の諸課題を解決することは、同時に当社グループにおける経済的価値を生む活動となり、事業創出や持続可能な成長につながるとの認識を持っています。
新しい価値観や生活様式の定着、ESG・サステナビリティ関連テーマへの関心の高まりなど、日々変わる外部環境に対応するために、2022年にマテリアリティの見直しを行いました。取締役会での議論などを経て、サステナブル・マテリアリティとフィナンシャル・マテリアリティを両立するマテリアリティを新しく特定しました。また、事業活動によってマテリアリティを解決し、6つの経営資本を増強させていくことを説明した「学研グループ価値創造プロセス」にしたがって、社会的価値創造を実現するCSVへの挑戦を今後さらに推進していきます。
(価値創造プロセス図)
学研グループでは、サステナビリティ経営を推進するため、2021年10月に「サステナビリティ委員会」を設置、2022年10月には「サステナビリティ推進室」を設置しました。
ESGの非財務情報開示については、環境分野では、2022年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同し、具体的な削減計画等の開示・実行に向けた動きを加速、2023年7月には、Scope1・2についての具体的な目標も定めています。また、2024年3月に環境方針を改定しました。
社会・ガバナンス分野では、2023年3月に人権方針を改定し、新たに調達方針、腐敗防止方針、タックスポリシーを、2024年3月に調達ガイドラインを策定しています。また、従業員に関する情報も非財務データとして開示を始めています。
また、2004年から環境活動をマネジメントに落とし込むためのEMS(環境マネジメントシステム)活動を行ってきましたが、これをさらにサステナビリティ全般について広く対応し、事業戦略と結びつけるために、2023年よりSMS(サステナビリティ・マネジメントシステム)の運用を開始しました。サステナビリティ推進室がハブとなり各部署と連携しながら、一連の活動をより迅速・強力に進めます。
・学研グループ統合報告書2024
(https://www.gakken.co.jp/ja/sustainability/report.html)
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社は、サステナビリティを推進するために、2021年10月、最高レベルの意思決定機関である取締役会の直下に、「サステナビリティ委員会」を設置しました。同委員会は、学研ホールディングスの代表取締役を委員長とし、同常勤取締役で構成され、年2回以上開催するなかで、グループ全体のサステナビリティの方針、行動指針の決定、戦略の決定、取組のモニタリング・評価と監督を行っています。
2022年10月からは、新設したサステナビリティ推進室が、事務局機能を果たしています。
(サステナビリティ委員会組織図)
各部会の役割は、以下の通りです。
(部会)
ア.統合ディスクロージャー部会
・財務情報と非財務情報を統合した情報開示の検討(統合報告書の企画・制作、外部評価への対応、中期経営計画との連携、コーポレートガバナンス対応、ステークホルダーとの対話・連携など )
イ.サプライチェーンマネジメント(SCM)部会
・当社グループの責任ある調達及びサステナビリティに関する重点課題(気候変動、生物多様性、人権等)への対応、推進、統括
ウ.人的資本部会
・人的資本の情報開示対応、エンゲージメントスコアに関するPDCAサイクルの検討、DE&Iへの対応など
また、事業会社各社に、サステナビリティ担当取締役とサステナビリティ・リーダーを置き、その責任のもとに、サステナビリティ委員会・取締役会での決定事項を受けて、サステナビリティに配慮した事業活動を実行する体制としています。
学研グループでは、リスクを「当社グループにおける一切の損失発生の危険」と定義しています。それらリスクを18種類に分類・特定し、発生頻度によるリスクと損失想定規模によるリスクに分けて評価し、ランクごとに点数化して各社で管理しています。気候関連リスクも事業に大きな影響を与えるリスクとして、内部統制委員会とサステナビリティ委員会によって統合的に管理しています。また、リスク管理にあたる統括組織として、内部統制委員会のもとにリスク管理部会を設置し、年2回実施している内部統制委員会において取締役への報告を行い、取締役が監督しています。
「戦略」と「指標及び目標」は、以下の重要な個別テーマごとに記載します。
(2)重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりです。
①気候変動への対応
②人的資本への対応
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
① 気候変動への対応
当社グループは、2022年8月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同しました。株主・投資家などのステークホルダーとの気候変動対応に関する積極的な対話を実施し、TCFD提言の4つの項目に沿った情報開示を行っていきます。
・ガバナンス
気候変動対応の最高責任者として、代表取締役は、気候変動に伴うリスク管理方針や、戦略のレビュー及び指導、対応策の評価・監督、重大施策の最終判断などに責任を負っています。2024年9月期のトップマネジメント・コミットメントとして「2050年カーボンニュートラルへの挑戦」も発し、その削減に向けた行動計画の策定も進めています。
教育・医療福祉事業のセグメントごとに、リスクと機会を分析しました。
(各事業における気候変動によるリスクと機会の概要)
・戦略
TCFDで開示した気候変動に関連する戦略としては、物理的リスク・機会として、温暖化シナリオ(4℃)と、移行リスク・機会として、脱炭素シナリオ(1.5℃)を作成し、そのシナリオに基づく戦略を検討しています。
<物理的リスク・機会 :温暖化シナリオ(4℃)>
医療福祉事業では、全国550拠点で15,000人の高齢者や認知症患者が生活する施設を運営しています。4℃上昇した世界においては、2030年には極端な高温日が約9倍、大雨は2.7倍になることが予測されており、現在のトレンドとしても気候変動による自然災害は頻発化しています。短期的及び中長期的にも、当社グループにとって焦点となる課題は、豪雨、洪水、台風などによる施設破損や運営停止による営業損失、高齢者への健康被害、物流網の被害による供給チェーンの混乱による必需品の不足といった物理的リスクです。この課題に対応するため、ハザードマップをもとに拠点ごとの浸水リスク把握に取り組んでいます。浸水リスクの低い土地に施設を建設するとともに、浸水リスクの高い拠点では、居住スペースを2階以上とするなどの基準を設けて中長期的に開発計画を策定しています。短期的には、受電・変電設備の浸水対策のほか、リスクに応じて被害対策・安全対策を講じています。入居者・利用者の健康・身体・生命を守る機能を優先的に維持するための対応策を作成し、必要品を備蓄するなどリスク対応しています。
これらをステークホルダーに伝えることで、安心・安全なサービスの提供を担保し、事業拡大へと繋げています。
<移行リスク・機会:脱炭素シナリオ(1.5℃)>
気温の上昇を1.5℃以下に抑えた世界においては、脱炭素移行に伴う炭素税(温暖化対策税等)、温室効果ガスの排出を抑制する政策導入や規制強化が進むと考えられます。それによる事業運営にかかる燃料費や電力コストは2030年までに最大8.4億円※ 程度増加する可能性があると見込んでいます。当社グループでは、エネルギー効率を高めることに加え、2024年10月より学研東京本社ビルで再生可能エネルギーを導入しています。また事業拠点での太陽光発電設備によるエネルギー創出などの対策も強化していきます。
規制強化のタイミングと内容については不確実性が高いため、短期的には市場の需要の変動や、消費者の紙媒体から電子媒体へのニーズの変化を見極めながら、紙の調達計画を立てています。供給量の不足による調達コスト上昇が見込まれることに加え、中長期的には自然災害が頻発化すれば、製造拠点や物流網が影響を受け、現在の供給チェーンを維持できなくなることも想定されます。供給チェーンの脆弱性を減らすため、調達先の製紙メーカーや代理店の多様化を進めリスク分散を図っています。さらに、持続可能なビジネスモデルへの転換を図るため、顧客のニーズを調査しながら、発刊し返本された商品を、古紙として自社商品に再生させるクローズドリサイクルやおむつのアップサイクルなどにも取り組み始めています。このように当社グループでは、気候変動のシナリオ分析をもとに、短期、中期の視点から顧客のニーズや環境負荷軽減を踏まえて戦略を策定し、レジリエントなビジネスモデルの構築に向けて対応を進めています。
また、脱炭素社会への移行に伴う消費者の環境意識の高まりにより、SDGs、自然環境をテーマとする出版コンテンツの需要増加が想定されます。当社グループにとって重要な機会であると考え、消費者の多様なニーズに寄り添いながら、より多くの価値創出に取り組みます。
※当社グループの2023年9月期排出実績値5.6万t-CO2と、NZE2050に基づく2030年度推定炭素税($90、1$=153.34円 2024年11月11日為替レート)を用いて推定。
・指標と目標
指標:売上単位当たりGHG排出量(Scope1+Scope2 )
目標:2030年までに2022年比50%減
実現のための取り組み
●エネルギー性能の高い拠点開設
-太陽光発電導入等による創エネ
-新規拠点のZEB Ready 及びZEH
※ZEB Ready : 再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から、50%以上の一次エネルギー消費量を削減した建築物
ZEH:住宅で使う一次エネルギーの年間消費量が概ねゼロの住宅
●既存拠点のLED照明導入等の省エネ化
●DX推進による紙等資材の効率的な使用
●再生エネルギーへの切り替え
上記取組をスタートし、2023年には、2030年までに削減すべき排出量の22%を削減しました。
(2030年までの削減目標と現状)※単位:t-CO2/百万
②人的資本への対応
教育・医療福祉事業を営む当社グループの従業員は、社会的使命感を持って、日々の業務に邁進しています。学研グループならではの特長ある商品・サービスは、さまざまなバックグラウンドを持つ人材や、専門的な技能・知識を有する人材といった多様性の中から生まれます。また、従業員が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、健康経営、多様な働き方に取り組み、働きがい、働きやすさを追求しています。
「明日を創る人を創る」を人事ポリシーとする基本方針は以下のとおりです。
(人事ポリシー「Gakken Group HP Policy 明日を創る 人を創る」)
・戦略
中期経営計画Gakken2025「SHIFT」においては、従業員の可能性を拡げるために、①~⑤の5つの重点人材育成施策を推進しています。
(5つの重点人材育成)
特に以下のテーマについて、人的資本部会を構成する人事戦略室と、2024年3月に新設されたダイバーシティ&インクルージョン室が連携して、具体的な取り組みを進めています。
<人材の多様性>
・女性管理職比率の向上
・育児・介護との両立支援
・若手・シニア・外国籍従業員の活躍
・経営層の年齢構成の多様化
・障がい者雇用の推進
・LGBTQへの理解
<知識・技能の高度化>
・経営幹部の選抜・育成
・編集者・塾講師・介護士・保育士などの専門人材の育成
・グループ内人材交流
・グループ内コンテンツを活用したリスキリング
・DX・ICTスキル向上による業務効率化
・高度スキル人材採用
<従業員のエンゲージメント向上>
・健康経営の推進
・多様な働き方
・エンゲージメントサーベイの実施
・経営懇談会(経営層と従業員とが直接意見交換する場)の実施
・指標・目標
2024年9月期は、当社および連結子会社における女性管理職比率は32.9%、男性育児休業取得率は43.3%、男女間賃金格差は75.7%となっており、いずれも統計調査*の平均値を超えています。それぞれの指標の向上は、当社グループの持続的成長にとって重要であると認識しており、ひきつづき、平均値以上の実績を維持・伸長していきます。
*厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」、「令和5年度雇用均等基本調査」を参照。
数値目標を定める重点施策は次のとおりです。
●女性役員比率
人材の多様性こそが当社グループの競争力の源泉と認識しており、2030年までに当社女性役員比率30%以上を目標と掲げることで、当社グループ全社での人材育成をさらに推進していきます。
●男性育児休業取得率
教育、医療福祉事業を営む当社グループにおいては、若い世代が安心して子育てができる社会の実現に率先して取り組む必要があると認識しており、こども未来戦略方針に掲げられる男性育児休業取得率2030年85%を目指して、環境整備をすすめていきます。
以上
参照
「令和5年度雇用均等基本調査」…男性育休取得率30.1%(前年17.13%)女性は84.1%
管理職等に占める女性の割合は、部長相当職では7.9%(令和4年度8.0%)、課長相当職では12.0%(同11.6%)、係長相当職では19.5%(同18.7%)となっている。
「令和5年賃金構造基本統計調査」…一般労働者の賃金(月額)
男女間賃金格差(男=100) 74.8(前年差0.9ポイント低下)
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のようなものがあります。なお、記載内容のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
①法的規制等に関するリスク
当社グループは教育・医療福祉に関する事業を中心に様々な事業を展開し、それぞれの事業分野において各種法令・諸規則等の適用を受けており、これら法令・諸規則の改正もしくは解釈の変更、法的規制の新設によっては当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、コンプライアンス経営の確立に努め、全従業員への定期的な研修をはじめ、法的規制の順守および取り組み強化を進めております。
②自然災害や感染症に関するリスク
当社グループの本社および主要な事業所は東京を中心とした都市部に、高齢者住宅事業や認知症グループホーム事業、教室・塾事業では全国で事業所や施設等の運営をしており、当該地域において、地震、津波、台風、洪水等の自然災害、火災、停電、感染症の蔓延等、予測の範囲を超える事態の発生により、事業活動の停止や事業運営への重大な支障が生じた場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの設備やシステムが被害を免れた場合においても、取引先の被害状況によっては、上記同様のリスクが発生する可能性があります。そのため、地震や風水害等の自然災害や火災などの災害発生に備え、対策マニュアルや事業継続計画(BCP)を整備し、緊急時の被災状況等の情報収集体制の確立、お客様や従業員等の安全確保と事業継続に向けた体制の構築に努めております。
③個人情報の管理に関するリスク
当社グループでは、商品・サービスの企画、制作、販売のあらゆる過程において多くの個人情報を有しており、今後不測の事態により個人情報が流出する事態になった場合、当社グループの信用失墜は免れず、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、個人情報の適正な取り扱いをすることは、事業活動の基本であり、社会的責務であるとの認識のもと、これらの個人情報の取得、保存、利用、処分等にあたっては、関連法令の順守はもとより、社内規程、ガイドライン、マニュアル等を制定し、外部からの不正アクセスには防止対策を強化するなど必要な措置を講じるよう努めております。
④情報システムの障害に関するリスク
当社グループは事業の多くにおいて、情報システム・通信ネットワークに依存しておりますが、予測の範囲を超える停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセスなどにより、情報システムの停止、情報の消失、漏洩、改ざんなどの事態が発生した場合には営業活動に支障をきたし、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、システムトラブルの発生可能性を低減させるために、安定的運用に向けたシステム強化、セキュリティ強化及び安全性の高いデータセンターでのサーバー運用、クラウドサービス利用によるサーバーの分散化等の対策に努めております。
⑤医療福祉分野に関するリスク
高齢者住宅事業や認知症グループホーム事業では、「サービス付き高齢者向け住宅」および「認知症グループホーム」などの事業を展開し、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができる社会を支える仕組みづくりに取り組んでおります。また、子育て支援事業では、認定こども園や保育所、学童保育などの運営を行い、子どもを安心して預けられる環境整備と待機児童問題の改善に向けた取り組みを推進しておりますが、利用者の安全・健康管理という側面において、ご利用者が高齢者や乳幼児等であることから、生命に関わる重大な問題(事故、食中毒、集団感染等)が生じる可能性があるため、これらの問題に基づき、訴訟が提起された場合や風評被害が生じた場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、高齢者福祉事業、子育て支援事業共に各事業所、施設等の運営において、ガイドラインやマニュアルの制定や研修などを通し、安全・安心な環境の整備などに努めております。なお、高齢者福祉事業は、介護保険法、高齢者住まい法、老人福祉法などの関係法令に従い展開しておりますが、今後の社会保障制度や法令の改正によっては、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥教育分野に関するリスク
教室・塾事業では、主に幼児から高校生を対象として全国で教室や塾を運営しており、利用者の安全を脅かす事態が発生した場合は、信頼性が低下する可能性があり、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、利用者が安全に通っていただくために交通・防犯指導や緊急時対策等、体制の整備に努めております。
出版コンテンツ事業では、子どもの知的好奇心を満たす図鑑や知育教材、学習ニーズに対応した学習参考書や辞典をはじめ、医療者向け等の専門書のほか、料理・健康・教養など様々なライフスタイルに向けた出版物を提供しており、電子書籍等、更なるコンテンツの充実に努めておりますが、出版市場では、書籍及び雑誌等の販売減少傾向が続いており、また、広告収入においても景気変動の影響を受けやすい状況にあるため、急激な市場変化によっては、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。製作・販売している出版物などのコンテンツには、著作権・肖像権など様々な無体財産権が存在しており、今後権利者からの出版差し止め、損害賠償などの係争に発展するリスクを完全に回避することは困難であり、係争に発展した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、公正取引委員会の2001年3月23日公表「著作物再販制度の取扱いについて」において、著作物再販制度の廃止の考えがコメントされておりますが、同制度の廃止に反対する意見も多く、当面廃止が見送られております。将来において同制度が廃止された場合、出版業界全体への影響、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、出版業界の慣行として委託販売(返品条件付販売)制度がありますが、想定以上の返品の増加となった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、市場予測の精度の向上や、返品率の改善などに取り組むとともに、電子書籍や出版物以外の事業拡大など、収益の最大化を目指してまいります。
園・学校事業では、今後の少子化の影響は甚大ですが、「こども家庭庁」の設置に象徴されるように、保育環境設備や幼児教育の質的向上ニーズに対応すべく商品・サービスの開発に努めてまいります。学校教育では急速なDX化への対応が課題ですが、大学入試改革による入試形態の多様化で、探究学習などの非教科型・教科横断型学習が広がりを見せており、強みを生かしたコンテンツの開発を進めてまいります。
⑦海外への事業展開に関するリスク
当社グループは、海外においても商品の生産・販売をはじめとして、出版・学習塾・介護・ODAコンサルタントなどの事業を行っており、事業展開する国・地域における政治的・社会的・経済的不安定要因、自然災害、感染症・伝染病、法律や規制の新設・変更などの顕在化により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当該国・地域での法制度の改正や解釈の変更、行政の動向等に係る情報収集及び状況把握を行い、体制の強化に努めております。
⑧株式の評価損やのれんの減損損失に関するリスク
当社グループは、事業領域の拡大及び事業運営の円滑化等の目的で、有価証券を保有しておりますが、近時の経済環境、市場環境は、引き続き不透明な状況となっていることから、業績への影響も懸念され、当該株式価値の急激な下落に伴う当該株式の評価損の可能性があります。また、買収後の事業環境の変化等により、当初想定した事業計画通りに進まなかった場合、のれんの減損損失や株式の評価損が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、M&Aの実施に際しては、対象会社の財務・法務・事業等について詳細な事前調査を行い、リスクの把握や正常収益力を分析した上での決定など、リスクの顕在化の可能性の低減に努めております。
当連結会計年度の連結業績は、売上高185,566百万円(前年同期比13.1%増)、営業利益6,880百万円(前年同期比11.5%増)、経常利益6,903百万円(前年同期比6.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,260百万円(前年同期比29.2%減)となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度の財政状態は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
※1 有利子負債=借入金+社債+リース債務
※2 自己資本比率=自己資本÷総資産
※3 DEレシオ=有利子負債÷自己資本
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ5,613百万円減少し、130,714百万円となりました。主な増減は、現金及び預金の減少450百万円、商品及び製品の減少361百万円、有形固定資産の増加763百万円、無形固定資産の増加2,370百万円、投資有価証券の減少10,066百万円などによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ4,232百万円減少し、77,061百万円となりました。主な増減は、短期借入金の減少2,509百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少4,953百万円、長期借入金の増加2,592百万円などによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ1,381百万円減少し、53,653百万円となりました。主な増減は、利益剰余金の増加1,181百万円、自己株式の増加1,872百万円、その他有価証券評価差額金の減少233百万円などによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、18,768百万円と前連結会計年度末と比べ325百万円の減少となりました。各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、7,158百万円の資金増加(前連結会計年度は5,459百万円の増加)となりました。主な増減は、税金等調整前当期純利益の計上5,634百万円、減価償却費の計上3,073百万円、のれん償却額の計上1,210百万円、法人税等の支払額1,562百万円などによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,842百万円の資金増加(前連結会計年度は4,760百万円の減少)となりました。主な増減は、有形及び無形固定資産の取得による支出3,955百万円、投資有価証券の取得による支出1,427百万円、投資有価証券の売却による収入10,295百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出3,614百万円などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、9,375百万円の資金減少(前連結会計年度は6,203百万円の減少)となりました。主な増減は、短期借入金の純減少額2,519百万円、長期借入れによる収入9,549百万円、長期借入金の返済による支出11,982百万円、自己株式の取得による支出2,012百万円、配当金の支払額1,079百万円などによるものです。
当社グループが扱うサービス・商品は広範囲かつ多種多様であり、生産実績の画一的表示が困難であることから、記載を省略しております。
金額僅少のため、受注実績の記載は省略いたします。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択や適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要といたします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、『第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」(1)「連結財務諸表」「注記事項」(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)』に記載しております。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは『第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」(1)「連結財務諸表」「注記事項」(重要な会計上の見積り)』に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の連結業績は、売上高185,566百万円、営業利益6,880百万円、経常利益6,903百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,260百万円となりました。
また、重要な経営指標と位置付けている売上高営業利益率は3.7%、ROEは4.3%、配当性向47.2%でした。
売上高は、教育分野において語学・社会人事業や学校事業における小学校向け教科書・指導書の売上が伸張したこと、医療福祉分野における施設増と入居率を高位維持したことに加えて、前年第4四半期から市進ホールディングス並びにエヌイーホールディングス、当年第2四半期からグランユニライフケアサービスを連結対象としたことによって前年同期比21,449百万円の増収となりました。
営業利益は、上記増収効果に加えて、不採算事業の見直しにより、前年同期比710百万円の増益となりました。
経常利益は、持分法による投資損益の減少はあったものの、営業利益の増加で、前年同期比425百万円の増益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加はありましたが、第1四半期に計上した株式売却損の影響もあり、前年同期比933百万円の減益となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
〇教育分野
売上高:91,880百万円(前年同期比15.6%増)営業利益:4,121百万円(前年同期より179百万円・4.6%増)
(単位:百万円)
※事業組み換えに伴い、前期の数値を遡及して修正しています。
(教室・塾事業)
売上高:52,848百万円(前年同期比33.0%増)、営業利益:1,959百万円(前年同期より85百万円・4.2%減)
教室・塾事業では、少子化による公立高校全入化や、一般家庭の教育費抑制の影響から顧客離れが生じやすい環境下にありましたが、少しずつ回復の兆しが見えてきました。塾事業では、高校生向けの個別指導が好調であったことに加え、当期後半より小中学生向けの個別指導も回復傾向を示しております。また、退塾防止にも各社が注力し、その成果が現れつつあります。教室事業では、年間980教室の新規開設を実施し、これを原動力として幼児を起点に会員数の回復が進みつつあります。
その中で売上高は、加速する少子化の影響はあるものの、塾事業において、昨年度よりグループインした市進ホールディングスとエヌイーホールディングスが連結対象となったことにより、増収となりました。
営業利益は、上述の新規2社の連結化の貢献はありましたが、教室事業の回復が道半ばであることや、教材出版事業において書店経由での販売が大きく減退したことによる在庫評価減で、減益となりました。
(出版コンテンツ事業)
売上高:26,327百万円(前年同期比3.2%減)、営業利益:2,166百万円(前年同期より124百万円・5.4%減)
出版コンテンツ事業では、書店数の減少や紙媒体の出版数は減少傾向にありますが、一方で、紙以外の媒体やツールを利用した情報取得や学びの機会は増加しております。第3四半期、第4四半期と四半期での返品率は前年よりも改善しており、通年での返品率は改善の傾向にあります。
その中で売上高は、出版事業の「地球の歩き方」で国内地域に特化したJシリーズや人気IPとのコラボレーションなどヒットを継続、語学・社会人教育事業の看護師向けeラーニングでの契約病院数の増加、オンライン英会話「Kimini」の受講者数増加など、順調に伸張している事業はありましたが、出版事業での児童書の販売苦戦や、旧出版外事業にあった知育玩具販売会社を前年第4四半期から持分法適用会社とした影響が大きく、全体では減収となりました。
営業利益は、「地球の歩き方」での増収や語学・社会人教育事業の伸張、知育玩具販売会社の持分法適用会社化による費用負担の減少により増益効果はありましたが、出版事業での在庫評価減により、減益となりました。
(園・学校事業)
売上高:12,704百万円(前年同期比1.3%増)、営業利益:410百万円(前年同期より590百万円増)
園・学校事業では、園児数や幼稚園・保育所数の減少が続いております。学校教育においては、教科書のデジタル化やGIGAスクール対応など新しい学習要領への対応が求められております。
その中で売上高は、幼児事業では幼稚園・保育所および園児減少要因が大きく、減収となったものの、学校事業において小学校向け教科書が今年度改訂となったことから、教科書に加えて教科指導書・副読本などの販売部数が前年同期より伸張し、全体で増収となりました。
営業利益も、学校事業の教科書改訂に伴う増収と指導書の販売部数が増大したことで、増益となりました。
〇医療福祉分野
売上高:87,513百万円(前年同期比11.4%増)営業利益:4,203百万円(前年同期より383百万円・10.0%増)
(単位:百万円)
(高齢者住宅事業)
売上高:42,495百万円(前年同期比18.0%増)、営業利益:2,427百万円(前年同期より555百万円・29.7%増)
高齢者住宅事業では、建設費の高騰により新規出店については厳しい環境が続いているものの、各地域にてエリア単位で展開している営業活動が自立~介護までの多様な住み替えニーズを着実に捉えており、1棟あたりの戸数大型化やM&A・事業承継等を継続することで、需要増加に応えています。
その中で売上高は、当期末までに12拠点のサービス付き高齢者住宅の新規開設と事業承継を行いながらも、新規施設の早期満室化により入居率は97%超と引き続き高水準を維持できたこと、また第2四半期以後グランユニライフケアサービス(15拠点)を連結化したことにより、大幅増収となりました。
営業利益も、食材や消耗品などの価格や人件費の上昇はあったものの、前述のグランユニライフケアサービスの連結化や高入居率維持により、増益となりました。
(認知症グループホーム事業)
売上高:37,998百万円(前年同期比4.6%増)、営業利益:2,247百万円(前年同期より42百万円・1.9%減)
認知症グループホーム事業では、75歳以上の後期高齢者数は引き続き増加し、認知症介護の重要性は年々高まっております。そのような状況の中で、当期末までに自社開発で10棟、M&Aで5棟の計15棟を新規に開設し、順調に拠点数を拡大してまいりました。
その中で売上高は、拠点数の増加に加え、既存入居率も96%超と引き続き高水準を維持できたことにより、増収となりました。
営業利益は、売上高は増加したものの、食材費等の物価高騰影響や新規事業への先行投資もあり、若干の減益となりました。
(子育て支援事業)
売上高:7,019百万円(前年同期比12.8%増)、営業利益:161百万円(前年同期より31百万円・24.3%増)
子育て支援事業では、出生数の低下や認可保育園の整備促進により、待機児童問題は首都圏以外ではほぼ解消しておりますが、共働き世帯の増加により、「小1の壁」と言われるように学童ニーズは年々高まっております。
その中で売上高は、保育園定員充足率が96%と引き続き高位安定で推移したことに加えて、新規受託した学童施設の運営安定化等により、増収となりました。
営業利益も、園児数の増加や離職率の改善等により、増益となりました。
〇その他
売上高:6,173百万円(前年同期比2.2%増)営業利益:526百万円(前年同期より125百万円・31.3%増)
その他事業では、東南アジアでは、子ども数の増加や教育への投資需要は高まっております。加えて、家庭・塾・学校でのデジタル教材やツールの利用は加速度的に増加しており、商品・サービス開発に向けた体制整備は急務となっております。
その中で売上高は、グローバル事業での新興国向けODAや民間企業の海外進出支援事業が好調に推移しており、増収となりました。
営業利益は、資格ビジネスを中心としたデジタル領域への戦略投資を継続しているものの、前述のODA事業の伸張により前年同期より、増益となりました。
(財政状態)
当連結会計年度の財政状態の詳細は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細は、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要の主なものは、人件費、商品の仕入、製品の製造費、販売費及び一般管理費であり、戦略的投資資金としては、拠点展開の整備等の設備投資、企業買収及び業務資本提携などがあります。また運転資金及び戦略的投資資金は、内部留保資金、金融機関からの借入、社債の発行及び新株式の発行等により資金調達することとしております。
該当事項はありません。
特記すべき事項はありません。