当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
ミッション(Mission)
「お客様のビジネスにプラスアルファの価値を創造します。」
世の中にあふれる膨大な文章、数値、画像、音声等の情報を「見える化」し、お客様のビジネスに役立つ「気付き」を提供することで、お客様に+α(プラスアルファ)の価値を創造します。
ビジョン(Vision)
「見える化プラットフォーム企業を目指します。」
あらゆる分野でデジタル化が進み、情報量が爆発的な増加を続ける中、人が持つ創造力や生産性を向上させるソリューションを提案し、お客様、社員、パートナーと共に様々な業界の仕組みを変革するプラットフォーム企業を目指します。
企業理念
・私たちは、プラスアルファの価値を生み出すことで、「つきぬける感動」と「広がる可能性」を提供します。
・私たちは、互いに「勇気」「情熱」「思いやり」、そして、「地道な努力」を大切にします。
・私たちが優先するのは、強みが活かせ、自らが成長し、社会に貢献できる仕事であり、常に「ポジティブな姿勢」でやり遂げます。
これらの理念、ミッションの下、当社グループは、あらゆる分野におけるデジタル化の進展に伴い増加する情報量を「見える化」する技術をコアとして、多様なビジネス領域で価値のある事業を展開してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を目指しており、主な経営指標として売上高、営業利益、営業利益率を重視しております。
(3)経営環境
当社グループの属する国内ソフトウェア市場は、2023年度において2兆5,133億円に達し、うちSaaS市場は1兆7,328億円と全体の68.9%を占めており、今後も堅調に推移する見通しであります(出所:株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2024年版」)。システム導入期間の短期化や導入コストの低減を図れること、API(注)連携による他システムとの連携が容易であることから、国内ソフトウェア市場の中でも特にSaaS型サービスが市場の成長を牽引している状況にあります。当社グループの事業領域であるテキストマイニングツール分野、CRM分野及びHRテック分野においても、企業のデジタル化シフトによる働き方の見直しや業務の自動化・効率化などへの取り組みが続いており、それらを支援するソフトウェア(特に当社グループが手掛けるSaaS型クラウドサービス)については需要が維持され、いずれも市場拡大が見込まれるものと予想されております(出所:同上)。
(注) API:Application Programming Interfaceの略。ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様又はインターフェースの総称で、アプリケーションの開発を容易にするためのソフトウェア資源のこと。
(4)経営戦略等
当社グループは、このような経営環境の下、今後の新たな分野での事業展開を見据え、また既存事業の基盤強化を図るために以下の戦略を進めていく方針であります。
① タレントマネジメント領域への積極投資とHR分野への本格展開
働き方改革や労働人口減を背景に人材活用の質的向上や効率化を目指した人事系ソフトウェアの需要が拡大しております。急拡大する需要に対応するため、タレントマネジメント領域へ積極投資を行い、当社グループが推進する「科学的人事」を実現する機能強化を図るほか、HR分野へのサービス進出を積極的に進めたいと考えております。具体的には、人材情報プラットフォームに蓄積された情報やデータ分析結果を活用することで、既存の人事分野の業務(「人材紹介・採用」「研修・育成」「福利厚生・イベント」「ヘルスケア」など)において、一例としては、精度の高い採用手法や社員教育の効率化手法などを開発し、より実効性の高いサービスとして事業展開を図っていく予定です。
② ビッグデータと分析テクノロジーのプラットフォーム戦略
当社グループでは、様々なデータソースや分析機能をワンストップで取り扱えることで、サービスの付加価値が向上し、顧客にとっての魅力が更に高まると考えております。当社グループでは、サービスが取り扱うデータ種類の拡充を図るとともに、顧客の利用シーンに合わせた豊富な分析機能を用意することを継続して推進する予定です。
③ コンサルティング力強化による高付加価値化と大型案件創出
当社グループでは、コンサルティング業務を通じて顧客とともに課題解決に取り組んでおり、そのプロセスの中で顧客業界の市場特性や課題解決に直結する分析などの知識や経験が蓄積されております。これらの知見を活かして、新たなサービス開発につなげるほか、高付加価値のコンサルティングを合わせて提供することで、大型のソリューション案件の創出につなげていきたいと考えております。
④ 事業分野ごとの経営方針
<マーケティングソリューション>
見える化エンジンは、「顧客体験フィードバック」のコンセプトのもと、企業が顧客に提供したい顧客体験と、顧客の感じ方のギャップを分析する仕組みを提供し、企業の商品・サービスの改善に対するソリューションとして事業展開を図っております。
顧客の声をマーケティングに活かす取り組みが着実に浸透してきていることから、当サービスへの引き合いも堅調に推移しており、ツール単体としての提供だけでなく、分析ノウハウや分析結果の活用方法などをコンサルティングとして提供しつつ、顧客内の幅広い部門での活用を促す取り組みを強化していく予定です。
当社グループでは、コンサルティング業務を通じて顧客とともに課題解決に取り組んでおり、そのプロセスの中で顧客業界の市場特性や課題解決に直結する分析などの知識や経験が蓄積されております。これらの知見を活かして、新たなサービス開発につなげるほか、高付加価値のコンサルティングを合わせて提供することで、大型のソリューション案件の創出につなげていきたいと考えております。
カスタマーリングスは、「実感型デジタルマーケティング」のコンセプトのもと、データの効率的な活用にとどまらず、オンライン施策が顧客行動に与える影響を見える化し、次の施策決定の際に分析結果を直接活用できるソリューションとして事業展開を図っております。
電子商取引市場の拡大により、顧客とのデジタル接点から収集した情報を次のマーケティング施策に活かす取り組みが広がっていることから、新規顧客の獲得に加えて、既存顧客の利用度拡大によるプランアップなどを推進していく予定です。
<HRソリューション>
働き方改革や労働人口減を背景とした人材活用プロセス(採用、教育、配置、評価)の質的向上や効率化を目指した人事系ソフトウェアの市場は急拡大しております。当サービスについては、顧客基盤の拡大に向け、先行的に積極的にマーケティング投資を実施するほか、分析的視点での人事戦略を実現する「科学的人事」のコンセプトのもと、継続的にサービスの機能強化を図り、また導入企業へのコンサルティングを通じて蓄積された分析ノウハウや活用方法などをサービス強化に結び付けていく予定です。
⑤ AI・テキストマイニング、技術力強化による機能差別化
IT業界は変化が激しく、新しい技術やトレンドには常にキャッチアップしていくことが不可欠と考えております。特に、当社グループが関わる情報分析の領域においては、近年、機械学習やAIなど新しい技術の枠組みが台頭しております。当社グループでは、他社に先駆けて最新技術を取り入れることで、サービスの差別化や新市場の開拓につなげていく方針です。
⑥ 経営基盤の強化、社員の戦力強化
事業が拡大し社員数が増えていく中で、スピードを落とすことなく成長を継続するため、それを支える経営基盤の強化が不可欠と考えております。社員一人ひとりのレベルアップのため、研修・教育などの制度充実を図るほか、組織拡大に合わせバランスを取りながら経営管理体制を強化してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが対応すべき主な課題は、以下の項目と認識しております。
① 優秀な人材の確保
当社グループでは、持続的な成長のために優秀な人材を確保することが不可欠と考えております。当社グループビジョンに共鳴できる人材獲得のため、積極的な採用活動を推進するだけでなく、入社後に定着して能力を発揮できるよう研修の充実を図るなど職場環境を整備してまいります。
② サービスの付加価値創出
SaaS型サービスは、導入費用の低さや導入までの期間の短さから認知度が高まっており、今後も成長が継続すると予想しております。一方で、新規参入者や競合事業者が参入してくることで、今後はサービス提供者が増え、価格競争が進むものと考えております。当社グループでは、顧客ニーズに合わせてサービスを進化させるとともに、新機軸のサービスを取り入れ差別化を図ってまいります。
③ 認知度向上とマーケティング強化
当社グループでは、インターネットへの広告や展示会への出展等を通じて顧客獲得を進めてきましたが、更に顧客基盤を拡大させるため、サービスの認知度を一層高めることが不可欠と考えております。幅広い顧客層にリーチするため、新しいマーケティング手法を取り入れるほか、マス広告等のメディア活用も取り入れながら、更なる認知度の向上に努めてまいります。
④ 情報管理体制の強化
当社グループが運営するサービスにおいては、顧客情報や個人情報を取り扱っており、これらの情報管理体制を強化することが重要であると考えております。プライバシーマークやISO/IEC 27001:2013及びISO/IEC 27017:2015を取得しており、情報セキュリティに関する方針を定め、社内規程の整備や運用の徹底、研修の実施、社内システムの一層のセキュリティ強化等を通じて、これらの情報を厳正に管理するための体制の強化に取り組んでまいります。
⑤ システムの安定的な稼働
当社グループが運営するサービスはインターネットを利用したサービスであり、システムの安定的な稼働が不可欠であります。利用者の増加やデータ容量拡大に対応するため、システム投資、メンテナンス投資及び運用管理体制の強化を引き続き行ってまいります。
⑥ 社内管理体制の強化
当社グループが事業環境に適応しつつ、持続的な成長を維持していくためには、経営上のリスクを適切に把握し、当該リスクを適切にコントロールするための内部管理体制の強化が重要であると考えております。内部統制の実効性を高め、コーポレート・ガバナンスの充実を図るため、監査役と内部監査室が積極的に連携して定期的な監査を実施するほか、役員・従業員に対しては研修の実施等を通じてコンプライアンス体制を強化してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
① ガバナンス
当社グループが中長期的に持続的に成長し、企業価値を向上させるため、サステナビリティに関連する課題への対応は社会的要請へ対応するだけでなく、リスク低下や収益機会にもつながる重要な経営課題と考えておりま す。このため、当社グループでは社会の一員として持続可能な社会の実現に向けた責任を果たすため「サステナビリティ基本方針」を策定し、これを取締役会にて決議しております。また、当社グループは、企業理念にあるように「プラスアルファ」の価値を生み出すことで、「つきぬける感動」と「広がる可能性」を提供し、社会の持続可能な発展に貢献してまいります。
また、当社グループのサステナビリティに関する事項について定め、当社グループが環境・社会課題の解決に向けた企業活動に取り組むことで持続可能な社会づくりに貢献するため、「サステナビリティ委員会」を設置しております。委員会は、代表取締役社長を責任者と定め、取締役、監査役、各事業の本部長、内部監査責任者を構成メンバーにより構成されております。サステナビリティ委員会にてサステナビリティ全般に関するリスク及び機会に対する監督権限を有しており、サステナビリティに関する取り組み状況をグループ全体で監督し、強化することを目的としております。
② 戦略
当社グループの企業理念は「プラスアルファ」の価値を生み出すことで、「つきぬける感動」と「広がる可能性」を提供し、社会の持続可能な発展に貢献してまいります。当社グループが優先的に取り組むべき課題としてE(環境:Environment)S(社会:Social)G(ガバナンス:Governance)B(事業:Business)の観点から8つのマテリアリティを重要なテーマとして設定しました。本マテリアリティに沿って、サステナブルな企業成長、サステナブルな社会の実現を目指していきます。
<マテリアリティ>
当社グループでは、企業理念にあるように「プラスアルファ」の価値を生み出すことで、「つきぬける感動」と「広がる可能性」を提供し、社会の持続可能な発展に貢献してまいります。当社グループが優先的に取り組むべき課題として8つのマテリアリティを重要なテーマとして設定しました。本マテリアリティに沿って、サステナブルな企業成長、サステナブルな社会の実現を目指していきます。
1 |
サステナブルな社会の実現に向けた環境負荷の低減 |
事業活動を通じ、環境負荷の低減や社会への貢献へ取り組み、持続的な社会の実現を目指します。 |
2 |
社員一人ひとりの環境保護への意識 |
社員一人ひとりが環境保護への意識を高め、グリーンポジティブな行動を心がけます。 |
3 |
社員が働きやすい環境づくり |
社員は会社にとっての重要な資本であると認識し、社員が能力を十分に発揮できるように、働きやすい職場環境づくりに尽力します。 |
4 |
社員一人ひとりの挑戦の促進 |
社員一人ひとりの個性ややりたいこと、挑戦を後押しします。 |
5 |
リスク管理とコンプライアンスの徹底 |
コーポレートリスクの管理やコンプライアンスは責務と認識し、これを徹底してまいります。 |
6 |
信頼性・透明性の高い経営の実現 |
社会に必要とされ続ける企業として、持続可能な経営、持続可能な社会を目指し、信頼性・透明性の高い経営を実施していきます。 |
7 |
データを可視化するソリューション提供と新たな価値の創出による社会の高度化 |
データ分析技術を用いたあらゆる情報を見える化するサービスを提供しており、VALUEでも掲げているように、情報の見える化と新たな価値創出による日本社会の高度化に貢献します。 |
8 |
タレントパレットの普及による日本社会の人的資本経営の加速 |
タレントパレットはあらゆる人材データを一元化・分析し、組織の力を最大化させるタレントマネジメントシステムです。本サービスを普及させ、企業の人的資本経営を加速します。 |
当社グループは、5つのStepでマテリアリティを特定しました。Step1課題整理では、外部評価を元に147にわたるESGへの取り組み項目の優先度と重要度をつけ、現状の課題を把握しました。Step2事業環境分析では、自社のESGへの取り組みを整理した上で、優先順位をつけました。Step3マテリアリティマッピングでは、「Step1課題整理」「Step2事業環境分析」で優先順位づけした項目を分類し、マテリアリティマップを作成し、グループにおける重要なテーマをマッピングしました。Step4社内ヒアリングでは、選定した重要なテーマと社内ヒアリング内容をすり合わせマテリアリティを選定しました。最後に、当社グループにおける重要な8つのマテリアリティを決定しました。
③ リスク管理
当社グループのリスクについては、組織における他のリスクとともにリスク管理制度の下で管理、統合されます。既存のリスク管理制度では、社内全体で組織リスクの発見・予見に努め、リスク・コンプライアンス管理担当者(各部署長)を通じてリスク・コンプライアンス管理責任者(各部門を統括する執行役員)に報告し、同責任者がリスク・コンプライアンス管理委員会に報告します。リスク・コンプライアンス管理委員会は、リスク管理の重要事項を協議・決定し、必要に応じて対策本部を設置します。同対策本部は対応策を検討し、各部門のリスク・コンプライアンス管理責任者及び、リスク・コンプライアンス管理担当者を通じ、現場に対応策を指示します。この過程において、リスク・コンプライアンス管理委員会からサステナビリティ委員会に情報を共有し、同委員会と連携することにより、当該リスク管理が当社グループ全体の管理プロセスに組み込まれています。
④ 指標及び目標
当社グループは、環境領域(TCFD提言に沿った情報開示)、人的資本にて指標と目標を設定しています。今
後、マテリアリティに沿ったKPI(指標と目標)をサステナビリティ委員会で議論し、ステークホルダーへのサステナビリティ対応の指標を提供してまいります。
(2) 環境領域(TCFD提言に沿った情報開示)
当社グループは、すべての事業活動が地球環境に依存し、影響を与えているという認識のもと、事業運営における省資源・省エネルギーなどの環境への配慮を徹底してまいります。
また、社員一人ひとりが社会の一員であると自覚し、環境影響を常に認識し、可能な限り環境負荷の低減に取り組みます。気候変動問題に対して適切に対処するため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が推奨しているフレームワーク(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿って、気候関連シナリオに基づき分析・評価した関連情報を開示します。
① ガバナンス
a.気候関連のリスク及び機会に関する取締役会の監視体制
当社グループのサステナビリティに関する事項について定め、当社グループが環境・社会課題の解決に向けた企業活動に取り組むことで持続可能な社会づくりに貢献しつつ、持続的な成長・中長期的な企業価値向上を実現する活動を推進するため、「サステナビリティ委員会」を設置しております。委員会は、代表取締役社長を責任者と定め、取締役、監査役、各事業の本部長、内部監査責任者を構成メンバーにより構成されております。
同委員会は、サステナビリティに関する基本方針の策定、推進体制の整備、事業戦略上の重要課題、具体的な目標と指標、活動計画の策定及び進捗状況のモニタリング等を行っています。気候関連のリスクと機会もサステナビリティに関する重要課題の一つであり、同委員会において、方針や具体策を協議・決定しております。
取締役会は、サステナビリティ委員会から適時報告を受け、その活動を監視・管理しています。また、当社グループでは、組織におけるリスクを適切に管理するため、リスク・コンプライアンス管理委員会を設置しています。リスク・コンプライアンス管理委員会では、気候関連を含め、リスクの発生を防止するための体制整備、業務の遂行を阻害し損失・不利益等を及ぼす事態が生じる要因の識別・評価、進捗状況のモニタリング等を行っています。このリスク・コンプライアンス管理委員会の活動は、取締役会によって管理・監督され、当社グループの全体戦略に適切に反映されています。
b.気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割
当社グループでは、取締役会がサステナビリティ委員会及び、リスク・コンプライアンス管理委員会を監視し、気候関連のリスク及び機会を全体的に管理しています。当社代表取締役は、サステナビリティ委員会の委員長として、気候関連のリスク及び機会を評価し、具体的な対応策の協議・決定に主導的役割を果たします。また、気候関連のリスクに関しても、当社代表取締役がリスク・コンプライアンス管理委員会の委員長として方針策定を主導し、リスク発生時には対策本部を設置して陣頭指揮を執ってまいります。
② 戦略
当社グループは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)、が公表するRCP8.5℃シナリオ(緩和策を取らず産業革命の前と比べて平均気温が4℃前後上昇するシナリオ)、国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)が公表するNZE2050(2050年にネットゼロを達成し気温上昇が1.5℃未満の上昇に抑えられるシナリオ)に基づき、気候変動のリスクおよび機会による組織のビジネス戦略や財務計画への影響を把握するよう努めております。そのうえで、識別したリスクと機会に対する対策を講じる体制を整えることで気候変動に対する強靭性を高めて参ります。
a.短期・中期・長期における気候関連リスク及び機会と組織に与える影響
気候変動に関するリスクには大別して移行リスクと物理リスクがあります。移行リスクとは気候変動に順応するうえで生じるリスクであり、現行の規制に伴うリスク、新たな規制に伴うリスク、法規制に伴うリスク、技術リスク、市場リスク、評判リスクがあります。また、物理リスクは、文字どおり物理的に生じるリスクをいい、急性リスクと慢性リスクに分けることができます。反対に、機会は気候変動によって生じる正の影響であり、市場、レジリエンス、資源の効率性、エネルギー源、製品・サービスに分類することができます。当社グループでは、これらの分類ごとに、当社グループの調達と売上に対する短期(1年未満)、中期(1~3年)、長期(3~10年)の財務的影響を定性的に評価・分析しております。2023年度の分析結果は以下のとおりであります。
<1.5℃シナリオ>
気温が1.5℃上昇するシナリオでは、カーボンプライシング制度(炭素税、GX-ETSなど)、温室効果ガスを多く排出する産業やエネルギー源への規制強化、技術革新の進展、新たなエネルギーへの転換といった移行リスクがより顕著になると想定されています。特に、当社グループの調達先の業界においても、電力使用量の多い通信・放送業界において、カーボンプライシングの影響や技術開発の投資失敗など長期的に大きな変化が起き、当社グループが購入する商品のコストが増加することが考えられます。さらに長期的には、こうした市場価格の変化が当社グループの顧客の運営にも影響を与え、当社グループの財務に対するリスクになる可能性も示唆されます。
機会については、気候変動に適応した新たな技術やエネルギーを利用することで環境負荷の少ない製品開発などが進み、調達面ではコスト減にもつながると予測しています。また、これが当社グループの製品・サービスの売上にも好影響をもたらし、長期的には売上面でも当社グループの財務に好影響を与える可能性が大きいと分析しています。
<4℃シナリオ>
4℃シナリオでは物理リスクとして、自然災害や気温上昇の影響が強く生じると想定されています。当社グループの調達先においても各種経費の高騰、災害時における通信障害やコスト増等を原因として、長期の急性では影響が高く、慢性においても中期・長期ともに中程度のリスクが発生する可能性があります。売上につきましても、気候変動がある場合、自然災害や気温上昇による影響が長期に及び、長期的なリスクが生じると認識しております。
b.組織戦略のレジリエンス
当社グループでは、このような組織に対するリスクと機会の分析結果を踏まえ、気候関連のリスクを低減し、機会を最大化する観点から、組織戦略を柔軟に見直し対応する体制とプロセスを整えています。先述のとおり、サステナビリティ委員会では、リスク・コンプライアンス管理委員会と連携し、気候変動のリスクと機会を識別し、財務への影響度を評価したうえで、組織目標や具体策を盛り込んだ活動計画を協議・決定しています。特に、上記のリスクと機会の中でも、気候変動に伴う規制、新たな技術や製品、市場ニーズなどは変化が激しく、財務的インパクトも大きいことから、組織戦略において、これら新技術や主要機材の導入、社内リソースの配分見直しを行い、レジリエンスの確保に努めています。
具体的には、1.5℃シナリオにおける気候変動のリスクに対し、購入する製品のCO2排出量を把握し、気候変動の影響を受けやすい製品の特定とその代替品の検討を行っていく予定であります。また、顧客についても、業種別に気候変動の影響を分析し、負の影響がより少ない業種や企業への営業努力を行う予定であります。加えて、気候変動による正の影響については、新たな技術、製品、市場の把握に努め、当社グループの調達コストの低減につなげてまいります。4℃シナリオにおけるリスクに対しては、自然災害の影響による調達コストの増大に備え、代替製品の検討を行う予定であります。このように、当社グループでは、シナリオ分析の結果を組織のレジリエンス強化に役立てております。
③ リスク管理
a.気候関連リスク及び機会を識別・評価・管理するプロセス
気候関連のリスク及び機会は、サステナビリティ委員会において、識別・評価されています。まず、サステナビリティ委員会が社内から情報収集を行い、気候関連リスク及び機会の現状把握に努めます。サステナビリティ委員会では、同事務局がとりまとめた内容を踏まえ、2℃以下シナリオや4℃シナリオにおけるリスクと機会を識別します。また、当該リスクと機会の評価にあたっては、識別したリスクと機会が当社グループの調達及び販売に与える財務的影響を分析し、その影響度を評価します。そして、この評価結果に基づき、リスクを低減し機会を最大化するための目標や具体策を盛り込んだ活動計画を協議・決定しています。サステナビリティ委員会の決定は、取締役会に報告されるとともに、当社グループ内各部に指示伝達され、実行されています。
b.組織のリスク管理における気候リスクの統合
気候関連のリスクについては、組織における他のリスクとともにリスク管理制度の下で管理、統合されます。既存のリスク管理制度では、社内全体で組織リスクの発見・予見に努め、リスク・コンプライアンス管理担当者(各部門の長)を通じてリスク・コンプライアンス管理責任者(各部門を統括する執行役員)に報告し、同責任者がリスク・コンプライアンス管理委員会に報告します。リスク・コンプライアンス管理委員会はリスク管理の重要事項を協議・決定し、必要に応じて対策本部を設置します。同対策本部は対応策を検討し、各部門のリスク・コンプライアンス管理責任者及び、リスク・コンプライアンス管理担当者を通じ、現場に対応策を指示します。この過程において、リスク・コンプライアンス管理委員会からサステナビリティ委員会に情報を共有し、同委員会と連携することにより、当該リスク管理が当社グループ全体の管理プロセスに組み込まれています。
④ 指標と目標
a.気候関連リスク及び機会の評価指標
気候関連のリスクと機会の評価指標は表の通りであります。当社グループでは、シナリオ分析において用いたリスクと機会の分類ごとに指標を設定し、これら指標をモニタリングして当社グループの財務に対する影響度を評価しております。
リスクに関しては、移行リスクと物理的リスクに大別していますが、特に、CO2排出規制、市場リスクにおけるコスト増、さらに評判リスクにつきましては、当社グループへの影響が大きいと予測されるため、特に注視しています。また、機会に関しては、資源の効率性、エネルギー源、製品・サービス、市場、強靭性がありますが、特に、交通の効率性、新エネルギー、新製品、新市場の動向による影響が大きいと認識しており、これらの指標の動向を把握し、その分析に努めております。
b.スコープ別温室効果ガス(GHG)排出量と関連リスク
当社グループの温室効果ガス排出量に関し、今回、2023年(2022年10月~2023年9月)を対象期間とし、東京オフィスにおけるScope1、2のCO2 排出量を算定しております。
その結果、Scope1である自社の直接排出はなく、Scope2である電力の使用による間接排出において、
(注)本算定は、GHGプロトコルに基づき、外部専門組織であるカーボンフリーコンサルティング株式会社の監修により実施しました。
c.気候関連リスク及び機会を管理する目標
上記温室効果ガス排出量の算定結果を踏まえ、当社グループでは、2030年までにスコープ1及び2の温室効果ガス排出量(CO2相当量)を2023年比で50%まで削減することを目標としております。この目標達成のため、環境負荷低減の施策として、事業所の省エネ化や、環境配慮型のサービス、具体的には100%再生可能エネルギーへのシフトを目指しているデータセンターの利用しており、同時に使用電力の再エネ化や非化石証書の購入などを通じてさらなるCO2排出削減策を講じていく予定であります。
このように、当社グループでは気候変動のリスクおよび機会を管理するため、サプライチェーン排出量の削減目標を掲げるとともに、サプライチェーンの内外において、その目標を達成するための対策を実施しております。今後も、これらの取組を積極的に推進していく所存であります。
(3) 人的資本
① ガバナンス
当社グループでは、持続可能な事業成長や新しい価値創出を実現していく上で、人材を最も重要な経営資本の1つに位置付けており、人材の多様性を受け入れ、多岐にわたる経歴や職歴をもつ一人ひとりが高い意欲を持って働ける環境を整備することが重要であると捉えています。
このような考え方の下、当社グループでは、「人権方針」「ダイバーシティ&インクルージョン方針」の策定及び、働き方に関する制度の拡充、自己実現を支援する取り組み、および人的資本への投資を実施しております。
人的資本に関しては、代表取締役社長を責任者と定めたサステナビリティ委員会でも議論した上で、具体的な取り組み内容を検討しています。本検討内容を含む人的資本に関する取り組みについては、定期的に取締役会が報告を受けて監督しており、重要事項については、取締役会で審議し、決定しています。
② 戦略
当社グループでは、人的資本に関して、主に次の通り取り組みを行っています。
なお、人的資本に関する戦略について、当社においては具体的な取り組みは行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、次の戦略において記載した実績は、提出会社のものを記載しております。
a.中途社員の管理職登用
当社グループでは、多様なバックグラウンドをもった中途社員の採用を強化しております。採用においては、高い専門性やスキルを保有しているだけではなく、職種・年次に関わらず、フットワーク軽く主体的にチャレンジできる人材を重視しており、現在、中途社員者が増加しています。その結果、当社の社員全体に占める中途社員の比率は62.5%、管理職に占める中途社員の比率は74.1%となっております。
b.人材の育成・活躍推進
当社では社員一人ひとりの活躍と成長を促進できるよう、次のような制度や研修を行い、人材育成の強化を行っております。
・自己啓発支援制度
社員個人の判断により、業務の知識習得や効率向上に必要な書籍やツールの購入、外部研修への参加費用等に必要な費用を補助する制度を社員の自由な学びを推奨しております。
・資格取得制度
当社では、業務に関わる資格取得に関して、資格受験料を全額補助しております。
・文化研修
当社の創業理念から現在に至るまでの沿革、現在ある様々な制度やルール、コーポレートカルチャーの背景を理解することの重要性を全社に波及させることを狙いとした文化研修を実施しております。研修を通して、今後の企業文化の継承を担う人材を育成し、社員全員で共有すべき価値観である「PACWAY」の理解促進を図っております。
c.女性の活躍推進
経歴や性別といった特定の属性によることなく、積極的に優秀な人材を採用、登用する方針の下、全ての従業員に対して公平な評価及び登用の機会を設けています。その結果、当社の社員全体に占める女性社員の比率は32.6%、管理職に占める女性社員比率は13.0%となっております。今後も働きやすい環境を実現するための制度の充実や育成を通じ、特定の属性によらないフェアな評価運用を継続していきます。
d.外国籍、障がい者雇用の推進
新卒中途ともに国籍を問わない採用をしているため、現状特別な支援を設けてはおりません。当社の外国人の管理職登用について、社員全体に占める外国籍社員比率は3.0%、管理職に占める外国籍社員比率は1.9%となっております。今後、海外での事業展開を志向する上で、外国籍をもつ従業員の採用そして育成施策の強化に努めてまいります。
③ リスク管理
当社グループでは、人的資本に関するリスク等については、経営や事業に重大な影響を及ぼす可能性があるリスク等と同義あるいは密接な関係にあると捉えており、分析や把握については、全社的なリスク管理の一環として実施しております。リスク等の内容については、「
また、当社グループでは、このような組織に対するリスクの分析結果を踏まえ、人的資本関連のリスクを低減し、組織戦略を柔軟に見直し対応する体制とプロセスを整えています。先述のとおり、サステナビリティ委員会では、リスク・コンプライアンス管理委員会と連携し、人的資本関連のリスクを識別し、組織目標や具体策を盛り込んだ活動計画を協議・決定しております。
④ 主な取り組み
a.従業員エンゲージメント向上への取組
当社では、エンゲージメントスコアを経営上の重要な指標とし、全従業員を対象に年に1度の頻度で社員意識調査を実施しております。そのサーベイ結果は経営にフィードバックされ、改善を要する事項を分析し、その後の人事施策に反映することでエンゲージメントの向上に取り組んでおります。サーベイ結果は全社へ周知・公開しております。
b.多様性の確保
当社グループでは、人材の多様性(ダイバーシティ)が経営や事業に変革を生み、多様な経験・技能・属性を有する中核人材を確保することが当社グループの中長期的な成長につながるとの認識のもと、人材の多様性確保に取り組んでおります。
c.コンプライアンス教育の徹底
当社では、コンプライアンス教育の一環として、毎年全社員を対象に情報セキュリティ研修、法務研修(不当要求、収賄、下請法等)、インサイダー取引研修などを実施しております。
d.フレックスタイム制と在宅勤務制度の導入
働く時間と場所を柔軟にすることは、各個人のライフスタイルを尊重しつつ、成果を上げるための選択肢の一つであると考えております。そのため当社では、1日の所定労働時間を6時間とすることができるフレックスタイム制や職種ごとに決められた日数の範囲内で出社回数を選択できる在宅勤務制度を導入しております。社員が長く安心して働き続けられるよう短時間勤務制度を設け、出産や育児、介護をはじめとするライフイベントに合わせて活用できる制度の整備を進めております。
⑤ 指標と目標
当社は、人的資本に関する取り組みについて、主に次の通り評価指標を定め、進捗をモニタリングしております。
なお、評価指標については目標を設定しておりません。また、当社においては関連指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、評価指標に関する実績は、提出会社のものを記載しております。
重要課題 |
評価指標 |
実績 |
社会育成・活躍促進 |
サンクスポイント制度の利用率(注) |
100.0% |
新卒採用の女性比率 |
34.9% |
|
年休取得率 |
73.4% |
|
ダイバーシティ・エクイティ・ インクルージョンの促進 |
女性管理職比率 |
13.0% |
女性従業員比率 |
32.6% |
|
外国籍従業員比率 |
3.0% |
(注)サンクスポイント制度とは、社員同士が感謝の気持ちを伝えやすくするために、気持ちをポイントとして送りあえる制度となります。タレントパレットの機能で送りあえ、溜まったポイントは様々な施策で社員へ還元しております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループといたしましては、これらのリスクを認識し、リスクの予防、回避及び発生時の適切な対応に努める所存であります。なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
以下の各事項において、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化したときに当社グループの経営成績等の状況に与える影響について合理的に予見することが困難な場合には、その可能性の程度や時期・影響についての記述は行っておりません。なお、当社グループはリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク管理規程」において定め、リスク管理の基盤としての内部統制システムと代表取締役を委員長とするリスク・コンプライアンス管理委員会において、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスク顕在化の予防を図っております。
(1)市場動向について
当社グループが提供するクラウドを利用したSaaS型サービスについては、現在、企業が業務の自動化や効率化を進めており、それらを後押しするシステム投資へのマインドが上向いていることから、企業規模を問わず高い需要が継続しております。このような環境の中、当社グループでは、複数の事業領域へ参入することにより、外部環境の変動に強いビジネスモデルの構築を推進しております。しかしながら、今後経済情勢や景気動向等が変化し、顧客企業の投資マインドが減退するような場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合について
当社グループは、大量の情報を簡易な操作で分析・可視化できるSaaS型サービスを複数の領域で展開しております。当社グループでは、独自の可視化技術の活用により顧客ニーズに合わせたサービスを展開するほか、これまでの経験・実績及び社内ノウハウ等を強みとして製品力を強化することで差別化を図り優位性を高めております。しかしながら、事業展開する領域によっては、資金力、ブランド力を有する競合事業者が存在するほか、新規に参入者が出現する可能性があります。これらの企業との競争が激化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)技術革新への対応について
当社グループがサービスを提供するインターネット業界においては、新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が頻繁に行われ、変化の激しい業界となっております。当社グループでは、新しいトレンドには柔軟に対応していく必要があるため、最新の技術動向や環境変化を把握できる体制を構築するほか、優秀な人材の獲得及び社員教育等に努めております。しかしながら、何らかの理由で技術革新等への対応が遅れた場合、当社グループが提供するサービスの競争力が低下する可能性があります。また予定していない開発費等の投資が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)システムトラブルについて
当社グループのサービスはインターネット経由で提供されており、サービス基盤は社内外のネットワークやシステムに依存しております。このため当社グループでは、安定的なサービス提供のため、サーバー設備の増強や情報セキュリティの強化を行うなどのシステム管理体制を強化しております。
しかしながら、自然災害や事故等により、電力供給の停止等の予測不可能な様々な要因により、ネットワークやシステムが停止した場合には、サービスを提供することが不可能となる場合があります。またアクセスの一時的な増加による負荷増大でサーバーが停止する場合や大規模なプログラム障害でサービス提供に支障が出る場合があります。さらに、外部からの不正な手段によるコンピュータ内への侵入等の犯罪や当社グループ担当者の過誤等によりシステムに重大な影響が出る場合があります。これらの場合、当社グループのサービスへの信用度が著しく低下し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)新規事業への投資について
当社グループでは、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するため、新規事業を開発するための取り組みを積極的に進めていく方針であります。
新規事業が安定して収益を生み出すまでには、一定期間、研究開発等への投資を要することが想定され、全社の利益率を低下させる可能性があるため、新規事業への投資については市場動向を充分に観察・分析し、事業計画等を慎重に検討した上で実行判断をするほか、既存事業の収益とのバランスを勘案しながら、許容できるリスクについて判断しております。しかしながら、将来の事業環境の変化等により、新規事業が当初の計画どおりに推移せず、投資に対して十分な回収を行うことができなかった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)特定サービスへの依存によるリスクについて
当社グループは、マーケティングソリューション事業とHRソリューション事業の2つのセグメントによる事業展開を行っており、複数の事業領域へ参入することにより、外部環境の変動に強いビジネスモデル構築を推進しております。しかしながら、HRソリューション事業における売上が相対的に大きく、2024年9月期の売上比率は72.8%と大きくなっております。このためHRソリューション事業における事業環境の変化等が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)M&A、組織再編について
当社グループは、M&Aの実施にあたり、企業の財務内容や契約関係等の事前調査を十分に行っておりますが、対象会社の業績が悪化し、のれんの残高について、相当の減額を行う必要が生じることで当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。なお当連結会計年度末におけるのれんの残高は1,925百万円であります。
(8)広告宣伝費について
当社グループでは、マス媒体やオンライン媒体等に広告を掲載し、サービス認知を高めることが効率的な集客につながることから、積極的な広告宣伝活動を実施しております。広告宣伝活動の実施にあたっては、蓄積した知見を基に広告宣伝効果を分析し、最適な効果を得られるよう努めておりますが、市場動向等により広告宣伝費に対する費用対効果を期待通り得られない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(9)内部管理体制について
当社グループでは、継続的な成長のために適切なコーポレート・ガバナンスを整備し、内部管理体制の充実を図ることが重要であると認識しております。このため業容拡大や従業員の増加に合わせ、内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図る方針となっております。しかしながら、事業成長に比べて内部管理体制の構築が遅れるなど、適切な経営管理がなされない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)人材の確保について
当社グループでは、今後更なる業容拡大に対応するため、優秀な人材を確保し、継続して育成・定着させることが重要な課題であると考えております。このため採用活動を強化するほか、入社後の研修等の充実を図るなど、各種施策を推進しております。しかし、当社グループが求める人材を十分に確保できず、また社内における人材育成が計画通りに進まない場合、適正な人員配置が困難となり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(11)特定人物への依存について
当社グループの代表取締役社長である三室克哉及び取締役副社長である鈴村賢治は、当社グループの主要株主であるとともに、事業に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定などの事業活動全般において重要な役割を果たしております。
当社グループでは、業容拡大とともに権限委譲を進め、両名に過度に依存しない経営体制の整備や人材の育成など、リスクの軽減に努めております。しかしながら、何らかの理由により両名による当社グループ業務の遂行が困難となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(12)情報管理体制について
当社グループは、提供するサービスに関連して顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。当社グループでは、個人情報の取り扱いに関する重要性を十分に認識しており、「個人情報の保護に関する法律」や「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」の要求事項の遵守に努めております。これらの情報資産を保護するため、プライバシーマーク、ISO/IEC 27001:2014及びISO/IEC 27017:2015を取得しているほか、情報セキュリティに関する方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。
また、個人情報の取り扱いについては、国内の法令のみならず、EU一般データ保護規則(GDPR)をはじめとする海外における法令や規則(以下、「海外法令等」という)の適用を受けることがあります。当社グループでは適用可能性のある地域について現地法律事務所等を通じて必要な調査を実施し、加えて海外法令等の動向調査レポート等を利用するなどして、海外法令等の情報を適宜収集し、これらを踏まえた必要な対策を講じております。
しかしながら、このような対策にもかかわらず重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(13)知的財産権について
当社グループが開発した知的財産については適切に登録等を行い、財産の保全を図っております。また、他社の保有する知的財産を侵害しないよう、サービスの開発段階において採用する技術等について、必要に応じて弁理士等を通じて調査を行うこととしております。
しかしながら、万が一、第三者の特許権や著作権等の知的財産を侵害した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(14)訴訟等について
当社グループは、法令及び契約等の順守のため「コンプライアンス規程」を定めて社内教育やコンプライアンス体制の充実に努めており、本書提出日現在において訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、将来何らかの事由の発生により、訴訟提起を受ける可能性があります。その訴訟の内容及び結果によっては、当社グループの事業及び業績、並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
(15)自然災害について
当社グループの事業活動に必要なサービス基盤については、自然災害等が発生した場合に備え、データセンターやクラウドを利用しております。
これらサービスの利用にあたっても、自然災害や事故等に備え、システムの二重化、定期的なバックアップ、稼働状況の監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めております。しかしながら、火災、地震等の災害によりサービス基盤が被害を受け、情報資産の消失又はサービスの提供が維持できない状態に至った場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
あらゆる情報がデジタル化されビッグデータ化する中で、当社グループは「見える化プラットフォーム企業」のビジョンのもと、先進的なテクノロジー活用によるデータを可視化する技術を武器に、ビッグデータ活用による企業の業務効率化や意思決定を支援するサービスを展開しております。
当連結会計年度の経営環境においては、企業のデジタル化シフトや働き方の見直しに伴う業務の自動化・効率化などへの取り組みが続いており、それらを支援するソフトウェアについては高い需要が維持されております。特に当社グループが手掛けるSaaS型クラウドサービスは、イニシャルコストを抑えて短期での導入が可能であることや、システム更新などの運用負荷を軽減できることから導入へのハードルが低く、企業規模や業種を問わず投資意欲が高く、市場成長をけん引しております。
当社では、2008年5月にスタートした見える化エンジンにより高収益を確立しながら、2011年7月に立ち上げたカスタマーリングスでは安定成長を継続し、2016年9月に参入したタレントパレットで高成長を続けながら、2023年10月には新規事業となるヨリソルを立ち上げております。いずれも継続収益が大部分を占めるSaaS型サービスであり、それぞれの事業による収益が上乗せされる形で成長を継続しております。ヨリソルを除く全ての事業は黒字化しておりますが、高収益の安定事業、安定成長事業、高成長事業の組み合せにより、全社ベースで高い成長率と利益率を同時に実現しております。
新規顧客を獲得するための活動としては、マス広告やWeb広告等によるオンラインマーケティング、展示会やWebセミナー等へのイベントへの参加により、当社グループのサービスに関心をもつ顧客を集客し、導入を検討する企業にはサービス説明や分析手法の紹介などのデモを実施しながら、顧客の導入意欲を高めながら受注を獲得しております。またインサイドセールスやアウトバウンドなどの手法も活用し、潜在的な顧客に対して積極的に提案を行うことで、新たな顧客層の開拓を推進しております。
なお、2022年10月からは株式会社グローアップ、2024年3月からはAttack株式会社、2024年6月からはディー・フォー・ディー・アール株式会社、2024年7月からはオーエムネットワーク株式会社が連結子会社となり、タレントパレットとの連携を図りながらグループの成長に寄与しております。
以上の取り組みの結果、当連結会計年度における売上高は13,914,489千円(前年同期比24.6%増)となり、前年の高成長を継続しております。また将来の大きな市場獲得を見据えた人材採用やマーケティング投資などの積極的な成長投資を継続した結果、営業利益は4,540,535千円(前年同期比22.4%増)、経常利益は4,540,957千円(前年同期比23.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,093,779千円(前年同期比18.0%増)となっております。
セグメント別の経営成績は次の通りであります。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
a.マーケティングソリューション
当セグメントは「見える化エンジン」および「カスタマーリングス」に関わる事業により構成されております。
見える化エンジンでは、コールセンターやマーケティング部門に集まる顧客の声に加え、近年拡大してきたソーシャルメディア上での口コミを分析できるツールを提供しております。当サービスでは「顧客体験フィードバック」のコンセプトのもと、企業が顧客に提供したい顧客体験と、顧客の感じ方のギャップを分析する仕組みを提供しており、企業の商品・サービスの企画および改善を支援するソリューションとして事業展開を図っております。
主力顧客の製造業からの受注は引き続き堅調であるほか、サービス業などでも顧客の声をマーケティングに活かす取り組みは着実に浸透しつつあることや、コロナウイルス感染で抑制されていた観光・レジャー業などの活動が回復していることなどにより、見える化エンジンへの引き合いは堅調に推移しております。またツール単体としての提供だけでなく、分析ノウハウや分析結果の活用方法などをコンサルティングとして提供しつつ、顧客内の幅広い部門での活用を促す取り組みを強化した結果、受注案件の大型化が進んでいるほか、既存顧客についても活用シーンの拡大とともに顧客単価は堅調に推移しております。
カスタマーリングスでは、主にEC事業者や通信販売事業者向けに、顧客の属性、購入履歴、メール配信への反応等の情報に基づき、最適なキャンペーンを実施できる統合マーケティング・ツールを提供しております。当サービスでは「実感型デジタルマーケティング」のコンセプトのもと、データの効率的な活用にとどまらず、オンライン施策が顧客行動に与える影響を分析・見える化することで、次の施策決定を支援し、また分析した結果を直接マーケティング施策に活用できるソリューションとして事業展開を図っております。
電子商取引市場の拡大により、顧客とのデジタル接点から収集した情報をマーケティング施策に活かす取り組みが広がってきている一方で、成長市場であるデジタルマーケティング分野は新規参入も多く、競争環境は厳しくなってきております。そのような環境の中で、多様な条件設定によりリアルタイムに有望顧客を抽出・可視化することで顧客に合わせたきめ細かなマーケティング・シナリオ構築と最適アクション実施を実現できるツールとして差別化を図っております。
当サービスへの引き合いは堅調に推移しており、顧客数の増加に加え、既存顧客の利用度拡大に伴うプランアップ従量課金の増加により顧客単価は上昇傾向にあり、収益拡大に寄与しております。
以上の結果、当連結会計年度におけるセグメント売上高は3,784,080千円(前年同期比8.0%増)、セグメント利益は1,622,432千円(前年同期比10.9%増)となりました。
b.HRソリューション
当セグメントは「タレントパレット」と「ヨリソル」に関わる事業、子会社の株式会社グローアップ、Attack株式会社、ディー・フォー・ディー・アール株式会社およびオーエムネットワーク株式会社により構成されております。
タレントパレットでは、企業内に散在する社員スキル、適性検査結果、職務経歴、人事評価、従業員アンケート、採用情報などの人材情報を集約して分析・見える化できるプラットフォームを提供しております。働き方改革や労働人口減を背景とした人材活用プロセス(採用、教育、配置、評価)の質的向上や効率化を目指した人材管理のソフトウェア市場は急拡大しております。当社グループでは、顧客基盤の拡大に向け、先行的に積極的な人員採用やマーケティング投資を実施しており、導入社数は急速に増加しております。
タレントパレットは、人材情報をデータで見える化し、分析的視点での人事戦略を実現する「科学的人事」のコンセプトのもと、継続的にサービスの機能強化を図っているほか、導入企業へのコンサルティングを通じて蓄積された分析ノウハウや活用方法などをサービス強化に結び付けております。足元では「ジョブ型雇用機能」「健康経営機能」「人的資本管理機能」などのサービス強化を図るほか、展示会への出展やセミナー開催などリアルの場を活用したマーケティング施策により引き合いが増加しております。新規に導入する顧客において、従業員数が多い大手企業が増えているほか、オプション機能の導入やプランアップによるアップセルを推進していることから、全体の顧客単価は上昇傾向にあり、収益拡大に寄与しております。
ヨリソルでは、教育DXと教育データの見える化を実現する統合型スクールマネジメントシステムを提供しております。志願者、在校生、卒業生、保護者、教職員など、散在している教育に関する情報を一元管理できるほか、収集したデータを豊富な分析機能により見える化することで、教育機関でのデータに基づく施策の企画から実行の支援を行っております。
2022年からトライアルの形で運営を開始し、事業化の可能性を検討してきましたが、2023年10月より改めて新規事業として展開をスタートし、既に大学、中学・高等学校、塾・専門学校など、先進的な教育機関を中心に幅広く導入が進んでおります。
株式会社グローアップでは、企業と学生を結びつけるプラットフォーム「キミスカ」を提供しております。学生は無料でデータベースにプロフィールを登録し、利用企業は登録された学生プロフィールを閲覧しながら求人ニーズにマッチする候補者に直接アプローチする「逆求人」型のサービスを展開しております。利用企業にとっては、就職ナビ等を経由して企業に応募する「エントリー型」の応募では出会えない学生へのアプローチが可能となるほか、学生にとっては、自分の強みやスキル、価値観、経験などを評価してくれる企業からのオファーを得られるサービスとなっております。タレントパレットの導入企業がキミスカを通じて効率的に新卒学生とのマッチングを図るための連携機能を強化しており、グループ連携を通じて利用企業の開拓を推進しております。少子化に伴う労働力不足で採用の難易度が高まる環境下で、本サービスに対する引き合いは堅調に推移しております。
Attack株式会社では、企業向けに採用コンサルティング事業を展開しており、主に採用支援サービスである
「TARGET」を運営しております。TARGETでは、顧客企業の採用活動に関して「プロジェクトマネジメント」「候補者日程調整」「ダイレクトリクルーティング支援」「採用広報」など、幅広い業務のアウトソースを請け負うプロジェクトマネジメント型の採用支援サービスを提供しております。TARGETとタレントパレットの連携を通じて、人事の採用領域においてサービス範囲を拡大するとともに、相互サービスの連携により付加価値向上を図るほか、営業活動の連携等を推進し、更なる成長力の向上を図りたく考えております。
ディー・フォー・ディー・アール株式会社では、企業の戦略企画、事業創発、組織活性化、マーケティング支援およびリサーチ等、幅広い分野でのコンサルティング・サービスを提供しております。大手企業を中心に安定した顧客基盤を有しており、特に、技術変化やライフスタイル・価値観の変化といった軸で、10年、20年先の未来社会に向けた重要テーマを扱う「未来戦略コンサルティング」において、多くの経験とノウハウ蓄積を背景に、顧客企業のシンクタンク的な機能も果たしております。
オーエムネットワーク株式会社では、主力事業として、小売・サービス業向けの月額課金型クラウドサービス(店舗社員/パート社員等の業務シフトの自動作成・管理システム:「R-Shift」)を提供しております。R-Shiftは、顧客企業での店舗や業務ごとの必要人員と、従業員の勤務可能日・時間、スキル・経験などを数理最適化エンジンによりマッチングするサービスであり、800を超える標準機能により店舗の実態や特性に合わせた運用が可能であることから、幅広い業種・業態で採用されております。特に大手のドラッグストア、スーパー、量販店などで採用されており、導入社数は約100社を超えて拡大し、従業員1,000名以上の小売・サービス業におけるシフト管理システムの導入実績でトップシェアとなっております。また、勤怠管理システム(「R-Kintai」)も提供しており、R-Shiftとの組み合わせにより、シフト計画のデータをR-Kintaiにリアルタイムに取り込むことで、予算管理や給与計算に反映できるなど、導入企業の業務効率化に貢献しております。
2024年7月1日をみなし取得日としてオーエムネットワーク株式会社は当社の連結子会社となり、2024年9月期第4四半期より連結しております。
以上の結果、当連結会計年度におけるセグメント売上高は10,130,723千円(前年同期比32.1%増)、セグメント利益は4,083,623千円(前年同期比28.2%増)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は12,077,001千円となり、前連結会計年度末に比べ2,374,918千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が1,911,714千円、受取手形及び売掛金が370,152千円増加したことによるものであります。
また固定資産は3,190,548千円となり、前連結会計年度末に比べ876,591千円増加いたしました。これは主に、のれんが758,274千円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は3,166,164千円となり、前連結会計年度末に比べ595,858千円増加いたしました。これは主に、未払法人税等が355,569千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は12,101,385千円となり、前連結会計年度末に比べ2,655,651千円増加いたしました。これは主に、利益剰余金が2,539,518千円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は10,189,718千円と前連結会計年度末に比べ1,911,714千円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は3,318,821千円(前年同期は3,307,907千円の獲得)となりました。これは主に、法人税等の支払額として1,176,694千円の資金の減少があったものの、税金等調整前当期純利益の計上が4,440,870千円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は950,668千円(前年同期は644,708千円の使用)となりました。これは主に保険積立金の解約による収入265,462千円があったものの、有形固定資産の取得による支出が146,427千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が1,056,941千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は456,438千円(前年同期は136,184千円の獲得)となりました。これは主に、配当金の支払額が551,329千円あったものの、新株予約権の行使による株式の発行による収入が94,920千円あったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
b.受注実績
当社グループは、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年10月1日 至 2024年9月30日) |
前年同期比(%) |
マーケティングソリューション(千円) |
3,783,765 |
107.9% |
HRソリューション(千円) |
10,130,723 |
132.1% |
合計(千円) |
13,914,489 |
124.6% |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
2.セグメント間取引については、相殺消去しております。
3.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比(%)については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で算出しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり、決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(固定資産)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(のれん及び顧客関連資産)
連結子会社を取得した際に識別したのれんは、超過収益力として取得原価と被取得企業における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価との差額で算定しております。また、顧客関連資産は、既存顧客との関係及び受注残により生み出されることが期待される超過収益力の現在価値として算定しております。これらは、その効果が及ぶ期間にわたり償却を行い、減損の兆候があると認められる場合には、割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって、減損損失の認識の要否を判定することとしております。
当該のれん及び顧客関連資産は、将来の経営環境の変動等に伴う事業計画の進捗状況に影響を受ける可能性があり、事業計画に反映された主要な仮定である契約獲得数及び顧客数に関する予想伸び率が減少し、超過収益力が低下したと認められた場合には、翌連結会計年度の連結財務諸表において、のれん及び顧客関連資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産及び法人税等調整額に影響を及ぼす可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・結果内容
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、13,914,489千円(前年同期比24.6%増)となりました。セグメント別の売上高については下記のとおりとなっております。
マーケティングソリューション:当セグメントは「見える化エンジン」および「カスタマーリングス」に関わる事業により構成されております。
見える化エンジンでは、コールセンターやマーケティング部門に集まる顧客の声に加え、近年拡大しているソーシャルメディア上での口コミを分析できるツールを提供しております。顧客の声をマーケティングに活かす取り組みが着実に浸透してきていることから、コンサルティングを行いつつ、顧客内の幅広い部門での活用を促す取り組みを強化しており、契約単価の上昇が売上拡大に結び付いております。
カスタマーリングスでは、導入企業が顧客属性、購入履歴、メール配信への反応などにより、最適なキャンペーンを実施できる統合ツールを提供しております。顧客とのデジタル接点から収集したデータを次のマーケティング施策に活かす取り組みが広がっており、顧客数の増加と既存顧客の利用度拡大による契約単価上昇が売上拡大に結び付いております。
当連結会計年度におけるセグメント売上高は3,784,080千円(前年同期比8.0%増)となっております。
HRソリューション:企業内に散在している社員スキル、適性検査結果、職務経歴、人事評価、従業員アンケート、採用情報などの人事情報を集約して分析・見える化ができるプラットフォームを提供しております。積極的なマーケティング投資により導入社数が急速に増加しているほか、導入企業の大型化に伴い契約単価も上昇していることが売上拡大に結び付いており、当連結会計年度におけるセグメント売上高は10,130,723千円(前年同期比32.1%増)となっております。
(営業費用及び営業利益)
当連結会計年度の売上原価及び販売費及び一般管理費を合算した営業費用は、9,373,953千円(前年同期比25.6%増)となりました。これは主に販売促進費及び広告宣伝費の増加によるものであります。この結果、営業利益は、4,540,535千円(前年同期比22.4%増)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当連結会計年度において、有価証券利息を3,088千円計上し、営業外収益が4,326千円(前年同期比9.5%増)、保険解約に伴う解約損3,357千円を計上し、営業外費用が3,904千円(前年同期比89.2%減)となりました。この結果、経常利益は、4,540,957千円(前年同期比23.4%増)となりました。
(特別損益、法人税等及び当期純利益)
当連結会計年度において、特別利益は固定資産売却に伴う売却益を計上し、43千円(前年同期比59.2%減)となりました。
特別損失は、投資有価証券の減損損失を計上したことによる投資有価証券評価損を99,999千円計上、固定資産売却に伴う売却損を131千円計上し、100,130千円(前年同期比173.1%増)となりました。また法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合算した法人税等は1,345,649千円(前年同期比31.7%増)となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、3,093,779千円(前年同期比18.0%増)となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、その大部分を運転資金が占めており、その内訳としては人件費、広告宣伝費等の営業費用となっております。当該資金需要に必要な資金は自己資金を中心としながら、必要に応じて金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としておりますが、今後の資金需要の額や使途に合わせて資金調達方法は柔軟に検討を行う予定です。
なお、当連結会計年度末において、現金及び現金同等物は10,189,718千円であり、十分な資金の流動性を確保しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針に関して
当社グループは、「プラスアルファの価値を生み出すことで『つきぬける感動』と『広がる可能性』を提供します。」を企業理念に掲げ、事業を拡大してまいりました。
当社グループがこの理念の下、長期的な競争力を維持し持続的な成長を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対して、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、最善の経営方針を立案していくことが必要であると認識しております。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑦ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、主な経営指標として売上高、営業利益、営業利益率を重視しております。当連結会計年度における各指標の前年同期比の増減率は以下のとおりであり、引続き対処すべき経営課題の改善を図りながら、経営戦略を推進してまいります。
|
2023年9月期 (前連結会計年度実績) |
2024年9月期 (当連結会計年度実績) |
前年同期比増減率 |
売上高 |
11,171,752千円 |
13,914,489千円 |
124.6% |
営業利益 |
3,711,007千円 |
4,540,535千円 |
122.4% |
営業利益率 |
33.2% |
32.6% |
0.6ポイント減 |
(1) 当社は、2024年2月14日開催の取締役会において、Attack株式会社の発行するすべての株式を取得し、完全子会社化とすることを決議いたしました。また、同日付で株式譲渡契約を締結し、株式を取得しております。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
(2) 当社は、2024年6月14日開催の取締役会において、ディー・フォー・ディー・アール株式会社の発行する株式の80%を取得し、子会社化とすることを決議いたしました。また、同日付で株式譲渡契約を締結し、株式を取得しております。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
(3) 当社は、2024年7月31日開催の取締役会において、オーエムネットワーク株式会社の発行する株式のすべてを取得し、完全子会社化とすることを決議いたしました。また、同日付で株式譲渡契約を締結し、株式を取得しております。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社グループは、各事業部による既存サービスの新機能開発活動を推進しております。また、各セグメントに関連付けられない全社共通の研究開発活動として、情報技術・イノベーション本部によるテキストマイニング技術及びAI活用に関する研究開発活動、経営企画部主催の全社員を対象とした新規事業開発活動に取り組んでおります。
毎年、新規事業創発のためのコンテストを開催しており、事業現場、技術部門、企画部門が連携することで、テキストマイニング、CRM・MA、タレントマネジメントに続く、「世の中を「見える化」する新サービス」の開発に努めております。
<マーケティングソリューション>
見える化エンジンについて、顧客内での幅広い利用者による情報活用を可能とするためのプラットフォーム構築や大量データを可視化するための機能開発を行っております。
カスタマーリングスについて、市場変化に迅速に対応するため、業務の自動化、高速化、機能追加及びシステム安定化など、サービス基盤を強化するシステム開発を行っております。
<HRソリューション>
タレントパレット、ヨリソル、キミスカ、R-Shiftについて、時代変化が顧客にもたらす課題を解決するための新機能開発やサービス品質向上を図るためのシステム開発を行っております。
<全社共通>
大量の日本語を分析処理するテキストマイニングの基盤技術である自然言語処理エンジン「Waters」の機能強化や精度向上のためのシステム開発を行っております。また新規事業創造への取り組みとして、新規事業開発活動を行っております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発体制は、マーケティングソリューション4名、HRソリューション3名、情報技術・イノベーション本部1名であります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は、