文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、1997年の創業以来、インターネットを利用した学習管理システムLMS(Learning Management System)の開発提供及びEラーニングコンテンツの製造販売により、ITエンジニアの研修育成と成長環境の提供を行い、IT業界が抱える「ITエンジニア不足」「持続可能なIT環境の構築」「産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進」といった社会課題の解決に取り組んでまいりました。
しかしながら、昨今のグローバル化、デジタル化、IT技術の高度化を踏まえ、2030年までの経営及び事業戦略に関する長期構想として「ブロックチェーンサービスカンパニー構想」を策定しました。本構想は、「クシムが描く未来」と「向かうべき方向」を明確に示すべく策定したものであり、従来の既存事業に加えて、ブロックチェーンという成長分野へ経営資源の投下を加速し、ブロックチェーン技術領域に立脚するサービスカンパニーへ事業ドメインの転換を図る方針に基づくものであります。これに加えて、現在及び今後の目まぐるしい社会環境の変化を鑑み、「収益力の大幅向上」と「業態のトランスフォーム」の加速に着手しております。
ブロックチェーンサービスカンパニーとしてブロックチェーン領域において、ブロックチェーン技術を活用したサービス・プロダクトの社会実装を推進し、その普及に貢献することで様々な社会的問題を解決に取り組んでまいります。
労働人口減少による人材育成の重要性や、政府が推進する働き方改革、経済産業省が論じるデジタル人材政策など生産性の向上に関する対策の重要性はますます高まる中、欧米を中心とした金融引締めによる世界経済の減速、ロシア・ウクライナ情勢やパレスチナ情勢に起因する世界的な資源価格の高騰や円安による物価上昇等、不透明な状況が継続しております。このような経営環境の変化は、当社グループを取り巻く事業環境にも影響する一方、岸田内閣や経済産業省Web3.0政策推進室が掲げる政策の持続的な推進活動と税制・法制面のルールの整備を前向きに捉え、Web3ビジネスの拡大に意欲を示す新たな企業も確認されております。すなわち、政策面においては、ブロックチェーン上の決済においてなくてはならない役割を果たすステーブルコインについてその発行要件を明確化、国内での発行を可能とした改正資金決済法が2023年6月に施行され、税制面においても自社発行暗号資産が一定の要件下において期末時価評価における課税対象外となるなど、日本におけるWeb3ビジネスを取り巻く環境の整備が急速に進められており、当社グループの強みであるブロックチェーン技術に対する社会的認知やマーケットの成長への期待は高まりつつあることから、今後多方面の業界・業種に展開を行い、技術面での一定の参入障壁と独自性を発揮できるように推進してまいります。
当社グループは、当連結会計年度において子会社であるチューリンガム株式会社のトークンエコノミクスのコンサルティングの受注案件の収益化の遅延による影響及び市場における暗号資産のボラティリティの影響による暗号資産の評価減により、売上高が前連結会計年度比で著しく減少しました。また、チューリンガム株式会社ののれんの減損損失950百万円、親会社株主に帰属する当期純損失1,658百万円を計上する結果となり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものと認識しております。
このような状況の下、当社グループは、当該重要事象等を解消するために、下記①~④に記載した対処すべき課題に重点的に取り組み、収益性の改善及び組織基盤の強化により持続的な収益体質を確立し、企業価値を向上させ継続的に安定した成長を続けていくよう努めてまいります。
なお、当連結会計年度末において現金及び預金7,748百万円(現金及び現金同等物1,528百万円)を保有しており、財務面における安定性は十分に確保されているものと考えており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
当社グループは、Web3.0の中核とされるブロックチェーン技術を背景としたサービスを提供するユニークな事業を展開しており、目下成長途上のマーケットにおいて、ストック型のプロジェクトの獲得とブロックチェーンによる課題解決を提供する事業基盤を構築することが重要であると認識しております。このような課題に対処するため、ブロックチェーンの技術革新に関する研究活動、エンジニア等の育成のための投資を継続的に行いテクノロジーの発展への追求を常々行ってまいります。また、当社グループが提供するサービスは、その大半がインターネットを利用したサービスであるため、システムの安定稼働や、各種情報資産の適切な管理、サービス品質の維持・向上は不可欠であると認識しております。このように、事業投資とインフラ整備を並行して行うことで売上高の更なる拡大と安定した収益基盤の確立を図ってまいります。
当社グループが継続的に企業価値を拡大していくためには、より高いサービスの提供と新たなプロダクトの開発が不可欠であると考えております。そのためには、自律的成長が可能な優秀な人材の採用と育成が重要であります。労働条件の改善や当社グループ全体で導入しているテレワークの推進による一段の効率化と多様な労働環境の整備・提供を図るといった新しい雇用形態の導入を図り、働きやすい魅力ある職場作りに取り組むとともに、定期的に社内勉強会や外部研修を実施し、社員一人一人のスキルアップ強化を図り、バランスの取れた組織体制の構築に引き続き努めてまいります。
また、当社の事業活動を支える労働力の確保に関しては、即戦力である中途採用の推進を強化してまいります。
当社グループは、M&Aに伴う取得後の連結子会社・連結孫会社の事業運営にかかる管理部門の強化が課題となっております。引き続き、連結子会社・連結孫会社の管理統括機能を強化し、当社としてグループを横断的に管轄できる体制にするほか、即戦力である管理人材の採用を進めて、各社の管理部門の強化を図ってまいります。
当社グループが持続的に成長を遂げるためには、事業運営とガバナンスのバランス、並びに経営上のリスクを適切に掌握しコントロールするための内部管理体制の強化が重要であると認識しております。そのため、社外取締役や監査等委員への報告体制の強化、監査等委員と内部監査室並びに会計監査人による実効性のある監査体制を推進するとともに、コンプライアンス研修の実施等を通じた個々人への意識づけ並びに内部監査室による定期的監査を実施してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のコーポレート・ガバナンス体制及びリスク管理体制を構築しております。取締役会は、サステナビリティに関連するリスク及び機会についても、このコーポレート・ガバナンス体制の中で監視及び管理等の統制を行っております。
なお、当社は、当社グループの中長期的な企業価値の向上のため、今後、サステナビリティに関する取組みを拡充・充実させていく必要があると認識しており、取締役会においてサステナビリティを巡る課題について、その重要度の判定を含めて検討を進めてまいります。
当社グループは、「ブロックチェーン技術の社会実装を推進し、その普及に貢献する」とする当社の企業理念のもと、ブロックチェーンサービスカンパニーとしてブロックチェーン領域において、ブロックチェーン技術を活用したサービス・プロダクトの社会実装を推進し、その普及に貢献することで様々な社会的問題を解決することを存在意義としております。当社グループは、「人と組織」の成長を支援するソリューションの提供を通じて、社会及び顧客の継続的成長に貢献し、より豊かな社会の実現に向けた責任を果たすことで、持続的な成長及び企業価値の向上に努めてまいります。
当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成は、「人と組織」の成長を支援するソリューションの提供を実施するうえで重要であるとの認識のもと、性別、年齢、性的指向、性同一性、人種、国籍、宗教等を問わず、多様な人材が活躍できる職場環境や企業風土の醸成に取り組んでおります。また、働きがいのある環境づくりのため、従業員が多様かつ柔軟な働き方ができる組織を目指し、従業員個人の意思を尊重し、適材適所の配属、子育て等のライフイベントや従業員のライフスタイルと仕事の両立、従業員一人一人の自己能力を高めることができるように研修受講等の教育制度等を整備しております。あわせて、従業員が健康であることが重要と考えており、健康診断の参加率向上など、従業員の健康管理に努めてまいります。
当社グループは、リスク管理が持続的な成長及び企業価値の向上に不可欠であると考えることから、リスク管理規程を制定しており、所管部署であるリスクマネジメント委員会を通じて、リスクの識別、優先的に対処すべきリスクの絞り込みについて協議し、取締役会に報告を行い、当社グループの経営戦略及び計画に反映しております。また、必要に応じて顧問弁護士、顧問税理士、社会保険労務士等の外部専門家からアドバイスを受けられる体制を構築するとともに、内部監査及び監査等委員会による監査を通じて、潜在的なリスクの早期発見に努めております。
当社グループにおいて、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する実績を長期的に評価、管理及び監視するために用いられるKPIについては、下記の人材に関するものを除いて現在検討中であり、当社グループが事業を展開する業界における環境の変化や年次で行っているリスク項目の見直しにおいて必要と認められた場合には、適時に必要な指標を定めるものとしております。
上記(3)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する当社グループの目標及び実績は、次のとおりであります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項は、以下のとおりであります。また、リスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、投資判断に関連するリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意下さい。
当社グループの事業は、インターネットとPCを利用する環境下でサービスを提供しております。インターネットによるサービス提供については、様々なリスクが存在しており、当社グループ内のネットワークの不具合、人為的過失等の原因によりシステムダウンが起こる可能性、その他、コンピューターウィルスの感染やハッキング被害が生じる可能性、地震等の天災や火災、停電等の予期できない障害が起こった場合等の様々な問題が発生した場合には顧客へのサービスの提供が不可能になる可能性もあり、このような事態が発生した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、自己勘定の暗号資産を保有しており、暗号資産の運用を行っております。暗号資産運用のリスクとしては、暗号資産の価格変動や、暗号資産市場の混乱等で暗号資産市場において取引ができなくなる、又は通常より不利な取引を余儀なくされることによる損失リスクや、暗号資産交換所のシステムの障害及び破たん、サーバへの不正アクセスによる盗難等があります。万が一これらのリスクが顕在化した場合には、対応費用の増加、当社グループへの信用の低下等が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、チューリンガム株式会社において、暗号資産の価格変動や流動性により当社グループのブロックチェーン技術を活用したサービスの開発を含む、健全な市場形成を支援するコンサルティング契約にかかる報酬が増減することから、暗号資産の価格の下落や流動性の低下により報酬が減額した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
株式会社カイカエクスチェンジ(2023年11月1日付で株式会社Zaifに商号変更。以下同じ。)は、資金決済法第63条の2に基づいて暗号資産交換業者の登録を行っており、同法及び関係法令による各種規制並びに金融庁の監督を受けております。また、自主規制機関である一般社団法人日本暗号資産取引業協会(認定資金決済事業者協会)、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会、一般社団法人日本STO協会に加入していることから、同協会の諸規則に則り事業運営を行っております。
このため、これらの法令、諸規則及び自主規制ルール等の制定又は改定等(税制変更リスクを含む)が行われた場合、当初の計画通りに事業を展開できなくなる可能性や事業環境の著しい変化や価格変動等をもたらす可能性があり、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を与える可能性があります。
また、現時点において法令違反等による行政処分に該当するような事実はないと認識しておりますが、これら諸法令等に違反する事実が発生した場合には、暗号資産交換業者の登録その他認可業務の取消、業務の全部又は一部の停止等の行政処分を受ける可能性があり、当社グループの風評、事業展開、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、暗号資産の売買取引や貸借取引を行っております。売買においては、取引相手先との決済までの間、相手先の決済能力を含む信用力にかかるリスクが存在します。また、暗号資産の価格が大きく変動し、貸借取引が期限での返済などに応じられなくなった場合、それら債務が履行されないリスクが存在します。これらは、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
株式会社カイカエクスチェンジは、顧客からの預り金銭及び暗号資産は、自己勘定の金銭及び暗号資産と分別して管理しています。分別管理の方法は以下のとおりです。
顧客からの預り金銭は、日証金信託銀行株式会社に金銭信託を行う方法により、自己勘定の金銭と明確に区分して管理しています。
顧客からの預り暗号資産は、インターネット等の外部のネットワークに接続されていないコールドウォレット及び接続されているホットウォレットにて、それぞれ顧客ごとの持ち分がデータ上直ちに判別できる状態で管理しています。株式会社カイカエクスチェンジは、顧客からの預り暗号資産の円評価額の95%以上をコールドウォレットに保管するよう営業日ごとに実施しています。また、コールドウォレットからホットウォレットに暗号資産を移動させる際は、複数部署の承認のもと、2人以上で実施しています。なお、暗号資産の分別管理は株式会社Zaifで実施しています。
顧客からの預り資産について、金銭信託による保全を行う等、法令に則った管理を行っておりますが、今後、これに違反する事実が発生した場合には行政処分等を受ける可能性があり、その場合は、当社グループの風評、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
株式会社カイカエクスチェンジは、管理する電子ウォレットにおいて顧客の所有する暗号資産の預託を受けております。また、当社グループでは、国内外の暗号資産交換所を介して電子取引システムを利用する方法による暗号資産に対する投資、債務の決済等を行っております。
権限のない第三者による電子ウォレットに対する不正アクセスのリスクを軽減するためのサイバーセキュリティ対策等を講じておりますが、電子ウォレットに対して不正アクセスが行われた場合には、権限のない第三者により当該ウォレットに保管の暗号資産が消失させられるとともに、当社グループがこれらの暗号資産を取り戻せない可能性があります。顧客の暗号資産の消失及び当社グループが保有する暗号資産の消失により顧客に対する多額の弁済が生じる可能性があるとともに、当社グループの業績、財政状態及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、2023年10月末現在、従業員79名(内、契約社員3名)と小規模組織であることから、業務が属人的であるために人材の流出時に業務に支障をきたす可能性があります。また、今後の当社グループの成長のためには優秀な技術者等の人材を確保していく必要がございます。現時点においては人材確保に重大な支障を生じておりませんが、適時十分に確保できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、当社グループの企業価値を最大化するためには、コーポレート・ガバナンスの充実を経営上の重要課題の一つであると位置づけております。また、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、法令遵守の徹底が必要と認識しており、当社グループではコンプライアンス規程を制定し、内部管理体制の充実に努めております。しかしながら、M&A等による事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じた場合には、適切な業務運営が困難となり当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、当社グループのサービスを利用する顧客等に個人情報の登録を求めており、当社グループのデータベースサーバには、氏名、住所、電話番号、メールアドレス等の個人情報がデータとして蓄積されております。これらの情報については、当社グループにおいて守秘義務があり、また、データへアクセスできる人数の制限及び外部侵入防止のためのセキュリティ等の採用により当社グループの管理部門及びシステム部門を中心に漏洩防止を図っております。しかし、社内管理体制の問題又は社外からの侵入等によりこれらのデータが外部に漏洩した場合、当社グループへの損害賠償請求や信用低下等によって当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、Web3.0時代の到来によるパラダイム・シフトに備え、成長分野であるブロックチェーン領域に経営資源の投下を加速し、ブロックチェーン技術に立脚するサービスカンパニーへと事業ドメインの転換を図り、各種サービスを提供しております。当社グループの予想を超えるような革新的な最新技術又はサービスへの対応が遅れる場合、当社グループの技術的優位性やサービス競争力の低下を招き、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)業務提携、戦略的投資、M&Aに関するリスクについて
当社グループは、企業価値向上を目的とした飛躍的成長の実現の有効な手段の一つとして、引き続き、資本業務提携、戦略的投資及びM&Aを検討していく方針であります。しかしながら、業務提携においては提携先の経営状況により提携の維持が困難になる可能性、戦略的投資については投資先の財務状況等により期待する成果が得られない等により保有株式の評価減処理を行う可能性があります。M&Aについては、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等、事前調査で把握できなかった問題が生じた場合や、事業計画どおりに進まずのれんの減損処理を行う必要が生じた場合には、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。また、企業買収等により、当社グループが従来行っていない新規事業が加わる際には、その事業固有のリスク要因が加わります。
当社グループは、当連結会計年度において子会社であるチューリンガム株式会社のトークンエコノミクスのコンサルティングの受注案件の収益化の遅延による影響及び市場における暗号資産のボラティリティの影響による暗号資産の評価減により、売上高が前連結会計年度比で著しく減少しました。また、チューリンガム株式会社ののれんの減損損失950百万円、親会社株主に帰属する当期純損失1,658百万円を計上する結果となり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものと認識しております。
このような状況の下、当社グループは、収益性の改善及び組織基盤の強化により持続的な収益体質を確立し、企業価値を向上させ継続的に安定した成長を続けていくよう努めてまいります。
なお、当連結会計年度末において現金及び預金7,748百万円(現金及び現金同等物1,528百万円)を保有しており、財務面における安定性は十分に確保されているものと考えており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
感染症の流行に伴い、役職員やその家族が感染し、就業不能となった場合には、事業継続が困難となるリスクが生じます。当社グループは、このリスクに対応するため、役職員への啓発を行うとともに、必要な消毒液・マスクの備蓄を行っております。また、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐなか、当社グループでは時差出勤、交代勤務及びテレワーク(在宅勤務)の実施に加えて、社内外の会議への出席についても慎重に対応しております。今後も感染症流行の状況を注視しつつ、機動的に対策を講じてまいります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う行動制限の緩和により、経済活動の正常化に向けた動きが進み、緩やかな回復傾向に向かう動きが見られる一方で、欧米を中心とした金融引締めによる世界経済の減速、ロシア・ウクライナ情勢やパレスチナ情勢に起因する世界的な資源価格の高騰や円安による物価上昇が続いており、今後の景気の先行きは不透明な状況が続いております。
このような経営環境の中、当社グループは中期経営計画に基づいて成長分野であるブロックチェーン領域に経営資源の投下を加速し、ブロックチェーン技術に立脚するサービスカンパニーへと事業ドメインの転換を図ることに加え、収益事業の獲得を目的としたM&A及び資本業務提携の活動を継続しております。
当社グループでは、このような外部環境下においても安定的な総合収益力を獲得すべく、成長性のあるブロックチェーンサービス事業、安定収益のシステムエンジニアリング事業の2事業が相互補完し合う運営体制を構築してまいりました。当該運営体制の狙いは、当社が掲げる「ブロックチェーン技術の社会実装を推進し、その普及に貢献する」というミッションを実践するために、各事業の現在のサービス及び収益基盤を維持しつつ、事業横断的なクライアントやパートナーとの接点を増やし新たなパイプラインや協業体制の開拓であります。また、2023年はブロックチェーンゲームやGameFiのビジネスが広く普及した年でもあり、当社グループはトークノミクスによる収益獲得をお客様の法務、会計等及び規制面をサポートする取り組みにも注力した結果、複数のゲーム会社との協業によるGameFiプロジェクトへ参画し、当該プロジェクトによる収益化が始まりました。
一方で、市場における暗号資産のボラティリティの影響による暗号資産の評価減、連結子会社であるチューリンガムののれん償却費及びのれんの減損等のキャッシュアウトを伴わない損益項目による影響が連結損益上の負担となりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高394百万円(前連結会計年度比1,222百万円のマイナス)、EBITDA△577百万円(前連結会計年度はEBITDA441百万円)、営業損失911百万円(前連結会計年度は営業利益199百万円)、経常損失928百万円(前連結会計年度は経常利益193百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失1,658百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益619百万円)となりました。
(※)EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
当連結会計年度における報告セグメント別の概況は以下のとおりであります。
当社のセグメント別の製品・サービス分類は次のとおりです。
チューリンガム株式会社において、ブロックチェーン技術や暗号理論を用いたR&Dをベースとしながら、ブロックチェーン開発支援や受託開発、トークンエコノミクスと言われる暗号資産をどのようにサービスやプロジェクトの中で利活用するのかというトークンのデザインやマーケットへの供給を行う際に誰にどのように分配を行っていくかといった暗号資産開発に関わる包括的なサービスを提供しています。当連結会計年度については、前期に引き続き株式会社ネクスグループが発行する暗号資産ネクスコインの価値向上の取り組みとしてGameFiプラットフォームの構築支援、株式会社ドリコムと『Wizardry(ウィザードリィ)』 IPを用いたブロックチェーンゲームの制作・運営を行うことを目的とした共同事業契約の締結、株式会社gumiとのハイクオリティなWeb3ゲームを軸としたクリプトエンターテインメントプロジェクト「TOKYO BEAST(トーキョービースト)」の開発運営における共同事業契約の締結、株式会社GALLUSYSとのスマホカメラを活用した全く新しいSnap to Earnサービス「SNPIT」のトークノミクス設計支援を進めております。さらには販路拡大を目的として、株式会社博報堂キースリー、Astar Network、株式会社博報堂DYメディアパートナーズと4社共同で、企業のトークン活用施策を総合的に支援するソリューション「まるごとトークン」の提供を開始し、またSBIデジタルハブ株式会社が主導する「オープンアライアンス」へも参画いたしました。
以上の結果、当連結会計年度のブロックチェーンサービス事業全体における売上高は219百万円(前連結会計年度比272百万円のマイナス)、EBITDAは△34百万円(前連結会計年度はEBITDA354百万円)、セグメント損失は312百万円(前連結会計年度はセグメント利益184百万円)となりました。
なお、ブロックチェーンサービス事業に関するのれん償却額276百万円は当セグメント損失に含めております。
株式会社クシムソフトにおいては、SES事業及びシステムの受託開発事業を担っております。SES事業につきましては、ニーズの高いオープン系を中心としたIT技術者の採用と育成により、顧客システム開発の支援、エンジニア派遣事業を拡充しております。当連結会計年度においては、参画中のプロジェクトでは継続した取引が続き、中途採用により稼働率が期中に一時的に低下したものの、連結会計期間通じて稼働率は目標を達成いたしました。今後も中途採用を継続しつつ目標稼働率を達成することで、売上及び利益向上へ寄与してまいります。
受託開発事業につきましては、引き続き開発納品後の運用保守案件を中心に、SES事業の顧客からの開発案件、システムのバージョンアップ対応等、営業活動の幅を広げて案件レコードを積み重ねております。契約中のすべての案件においては連結会計期間を通じて滞りなく納品が完了しております。なお、受託開発事業の中で一部高度IT技術を用いた案件を運用保守していることで、OJTの中での高度ITエンジニアの育成にも寄与しております。
さらに当連結会計年度において、アステリア株式会社の製品であるAsteria warpのテクニカルパートナーとなりました。それによりSES事業でのAsteria warp案件でプロジェクト参画が強化され、また受託開発事業においても同様に案件受注が実現され、Asteria warp案件の増加へと繋がっております。今後は中途エンジニアの中でも未経験や微経験エンジニアを採用した際に受託開発事業でのAsteria warp案件に従事させ、スキルと実績をつけたうえでSES事業でのAsteria warp案件において新たな顧客開拓へと繋げることで事業全体を拡大してまいります。
以上の結果、当連結会計年度のシステムエンジニアリング事業全体における業績は、前連結会計年度の子会社売却及び事業譲渡による法人向け学習管理システムやコンテンツ・製品販売の減収等の影響を受け、売上高579百万円(前連結会計年度比220百万円のマイナス)、EBITDA64百万円(前連結会計年度はEBITDA108百万円)、セグメント利益8百万円(前連結会計年度比28百万円のマイナス)となりました。
なお、システムエンジニアリング事業に関するのれん償却額55百万円は当セグメント利益に含めております。
暗号資産運用につきましては、当社グループ全体で複数の暗号資産への投資を実行した結果、152百万円超の収益獲得に至りました。一方、市場における暗号資産のボラティリティの影響を受けた結果、保有する暗号資産の評価損として564百万円を計上するに至りました。暗号資産市場はマクロ経済全体の減退による影響を受ける可能性があり、今後もその影響を注視して運用をしてまいります。
また、当社で運用している情報メディアサイト「KUSHIM HACK」では、ブロックチェーン、暗号資産、Web3.0及びNFT等にフォーカスして情報発信をしており、本メディアサイトによる広告事業収益は5百万円となりました。本メディアサイトにおける協業依頼等も増えていることから、引き続き当社グループの事業関連性の高い情報発信を行って参ります。
M&A及び資本提携による事業投資につきましては、ブロックチェーンサービス事業のバリューチェーンを見直し強化することで競争優位性を高め、より一層収益力を高めるという狙いのもと2023年10月31日付で株式会社カイカエクスチェンジホールディングス(2023年11月1日付で株式会社ZEDホールディングスに商号変更。以下同じ。)の株式を84.39%取得し、同社の完全子会社(当社孫会社)である株式会社カイカエクスチェンジ(2023年11月1日付で株式会社Zaifに商号変更。以下同じ。)及び株式会社カイカキャピタル(2023年11月1日付で株式会社Web3キャピタルに商号変更。以下同じ。)を含む3社を経営統合致しました。引き続き、M&A仲介企業やデータベースを用いたM&A仲介サービスを活用し候補となる企業のソーシングを継続するだけでなく、Web3分野でのシナジーを追求した案件選定もすることで、より間口を広げたM&A戦略を推進してまいります。
以上の結果、当連結会計年度のインキュベーション事業全体における業績は、暗号資産の運用による売却益を152百万円計上した一方、評価損564百万円計上の影響による減収により、売上高△405百万円(※)(前連結会計年度は324百万円)、EBITDA△405百万円(前連結会計年度はEBITDA174百万円)、セグメント損失405百万円(前連結会計年度はセグメント利益174百万円)となりました。
(※)暗号資産売却による収益を上回る評価損計上により、合算された売上高はマイナスとなりました。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて55,216百万円増加し61,661百万円となりました。流動資産の残高は前連結会計年度末に比べて56,752百万円増加し59,562百万円となりました。これは、主に株式会社カイカエクスチェンジホールディングス、株式会社カイカエクスチェンジ及び株式会社カイカキャピタルの3社が連結の範囲に含まれた影響により57,212百万円増加(連結仕訳による相殺後)したことによるものであり、科目別要因では主に現金及び預金が359百万円増加、信託預金が6,220百万円増加、自己保有暗号資産が422百万円増加、利用者暗号資産が49,721百万円増加、未収消費税等が173百万円増加、未収還付法人税等が95百万円増加、売掛金及び契約資産が158百万円減少、預け金が85百万円減少したことによるものであります。
固定資産の残高は前連結会計年度末に比べて1,535百万円減少し2,098百万円となりました。これは、主に工具器具備品が63百万円増加、のれんが1,282百万円減少、投資有価証券が313百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて57,034百万円増加し57,630百万円となりました。流動負債の残高は前連結会計年度末に比べて56,113百万円増加し56,397百万円となりました。これは、主に株式会社カイカエクスチェンジホールディングス、株式会社カイカエクスチェンジ及び株式会社カイカキャピタルの3社が連結の範囲に含まれた影響により56,197百万円(連結仕訳による相殺後)増加したことによるものであり、科目別要因では主に未払金が133百万円増加、1年内償還予定の社債が100百万円増加、預り金が6,133百万円増加、預り暗号資産が49,721百万円増加したことによるものであります。
固定負債の残高は前連結会計年度末に比べて921百万円増加し1,233百万円となりました。これは、主に株式会社カイカエクスチェンジホールディングス、株式会社カイカエクスチェンジ及び株式会社カイカキャピタルの3社が連結の範囲に含まれた影響により687百万円(連結仕訳による相殺後)増加したことによるものであり、科目別要因では主に社債が452百万円増加、繰延税金負債が289百万円増加、長期借入金が181百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて1,817百万円減少し4,030百万円となりました。これは、主に当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失を計上した影響により利益剰余金が1,658百万円減少、その他有価証券評価差額金が171百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ359百万円増加し、1,528百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは200百万円のマイナス(前連結会計年度は999百万円のマイナス)となりました。これは、主に税金等調整前当期純損失1,583百万円、のれん償却額331百万円、減損損失950百万円、投資有価証券売却益394百万円、売上債権及び契約資産の減少額158百万円、暗号資産の減少額211百万円、預り金の増加額215百万円、法人税等の支払額60百万円によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは612百万円のプラス(前連結会計年度は66百万円のプラス)となりました。これは、主に無形固定資産の取得に係る支出66百万円、貸付金の回収による収入159百万円、貸付による支出116百万円、投資有価証券の売却による収入577百万円、投資有価証券の取得による支出350百万円、連結の範囲を伴う子会社株式の取得による収入348百万円によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは52百万円のマイナス(前連結会計年度は354百万円のプラス)となりました。これは、主に長期借入金の返済による支出52百万円によるものであります。
生産に該当する事項がないため、記載する事項はありません。
当社グループの事業は、受注から売上計上までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において経営者が判断したものであります。
当連結会計年度における売上高は394百万円(前連結会計年度比1,222百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は次の通りです。
ブロックチェーンサービス事業において、主にチューリンガムのシステム受託開発が伸長した一方、トークンエコノミクスのコンサルティングの受注案件の収益化の遅延による影響により売上高が219百万円(前連結会計年度比272百万円のマイナス)となりました。また、システムエンジニアリング事業において、前連結会計年度において祖業であるEラーニング事業の譲渡(前連結会計年度比116百万円のマイナス)及びイーフロンティアの売却(前連結会計年度比79百万円のマイナス)等の影響により売上高が579百万円(前連結会計年度比220百万円のマイナス)となりました。加えて、グループ全体で複数の暗号資産への投資実行とそれによる時価評価による評価減の影響を受けた結果、インキュベーション事業の売上高が△405百万円(前連結会計年度比730百万円のマイナス)となりました。
当連結会計年度における売上原価は598百万円 (前連結会計年度比233百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳はブロックチェーンサービス事業のトークンエコノミクスのコンサルティングの受注案件遅延による売上高の減少によるものです。販売費及び一般管理費は707百万円(前連結会計年度比121百万円のプラス)となりました。この主たる内訳は前連結会計年度において取得したチューリンガムののれん償却費が年間を通じて発生したことによるものです。これらの結果、営業損失は911百万円(前連結会計年度は営業利益199百万円)となりました。
当連結会計年度における営業外収益は28百万円(前連結会計年度比12百万円のプラス)となりました。この主たる内訳は収益分配金18百万円であります。営業外費用は44百万円(前連結会計年度比22百万円のプラス)となりました。この主たる内訳は投資事業組合運用損42百万円であります。特別利益は396百万円(前連結会計年度比152百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は当社グループが保有する「投資有価証券」に区分される有価証券2銘柄の売却による投資有価証券売却益394百万円であります。特別損失は1,051百万円(前連結会計年度比918百万円のプラス)となりました。この主たる内訳は及び当社グループが保有する「投資有価証券」に区分される有価証券4銘柄について、実質価額が著しく下落したことにより減損処理を行ったことによる投資有価証券評価損99百万円、チューリンガムののれんにかかる減損損失を950百万円であります。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純損失は1,658百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益619百万円)となりました。
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループは、営業活動によって獲得した資金を以って事業運営を行うことを原則とし、一部銀行等金融機関からの借入により、資金調達しております。また、借入金の使途は運転資金であります。なお、当連結会計年度末における借入金を含む有利子負債の残高は1,040百万円となっております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。会計上の見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的な見積り金額を判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、異なる可能性があります。なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業や事業体制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
当社は、2023年10月16日開催の取締役会において、株式会社カイカエクスチェンジホールディングス(2023年11月1日付で株式会社ZEDホールディングスに商号変更)の株式を取得し子会社化することを決議し、同日付で株式譲渡契約書を締結、2023年10月31日に株式を取得いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(取得による企業結合)」に記載のとおりであります。
(新株予約権の行使による増資)
当社は、2023年11月14日開催の当社取締役会において、東海東京証券株式会社を割当先とする第三者割当による行使価額修正条項付株式会社クシム第11回新株予約権(行使要請条項付・停止要請条項付)の発行を決議し、2023年11月30日に当該新株予約権の発行価額の総額の払込が完了いたしました。
詳細は、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2)新株予約権等の状況 ②その他の新株予約権等の状況」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。