文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」を理念として掲げております。この企業理念に基づき、「誰かがやらなければならないが、誰もが実現できていない社会的課題の解決を革新的なテクノロジーで実現する事」を事業展開方針の軸として、ITテクノロジーを活用した様々な事業の創出や展開に取り組むことで、企業としての持続的な成長を図ってまいります。
当社は、より高い成長性の実現に向けて、2025年10月期から2028年10月期までの4年間を計画期間とする「中期経営計画2028」を策定・公表しております。その中で、収益基盤の拡大を図りながらも、一定程度の資本収益性の確保を両立させるべく、下記のとおり経営目標を定めております。
当社は、「中期経営計画2028」の中で当社の強みを生かして以下の5つの重点施策を推進してまいります。
(重点施策)
① 「トビラフォン Cloud」の販売加速
当社が行っている直販は、プロダクト開発から販売、カスタマーサクセスまで一気通貫で対応しております。そのため、顧客ニーズを直接把握し、すぐにプロダクトのアップデートへとつなげることが可能であり、今後も直販を拡大させていく予定です。これに加えて、当社とすでに関係のある代理店を通じて、既存のオンプレ型のPBX(構内交換機)からクラウドPBXへと移行するような大型案件の獲得を目指します。さらに、当社の他のプロダクトとの連携による総合セキュリティアプリとしての販売も検討してまいります。直販、代理店販売、総合セキュリティアプリ販売の三層販売を通じて、収益の拡大を図ります。
② 「トビラフォンBiz」の販売加速
トビラフォンBizは代理店を経由した販売を行っており、既存チャネルでの販売数増加と新規チャネルの開拓の2つの方向性を強化し販売台数の増加を目指します。加えて、トビラフォンBizの迷惑電話ブロック機能をPBXへ組み込みして販売するなど新たな提供手段を通じ、収益の拡大を図ります。
③ 通信キャリア向け販売の拡充
特殊詐欺やフィッシング詐欺、グレーゾーン犯罪を抑止することは、当社が目指していることです。この実現のためには、大手通信キャリアとの更なる関係性強化や新規キャリアの開拓が重要であり、引き続き注力いたします。
④ 新規事業の創出
新規事業の創出のため、様々な施策を実行してまいります。特に「既存市場への新規プロダクト投入」については、トビラフォンBizの代理店を中心とした強力な販売チャネルがあるため、このチャネルに新規プロダクトを投入することで早期に収益化ができると考えております。また、アライアンスの拡大やM&Aの実施により、新たな価値を提供し、収益の拡大を目指します。
⑤ メンバーの拡大、成長
上記に挙げた重点施策を行い、事業の成長スピードを加速するためには、メンバーそれぞれが成長すること、そして新たな人材の採用を積極的に展開していくことが重要です。そのために、社内制度の充実や、積極的な採用活動を行ってまいります。
当社は以下の点を対処すべき課題と認識しており、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。
① アライアンスパートナーの拡大及び協力関係の強化
当社はこれまで、通信キャリアやIP電話に関する通信事業者、あるいは事務機器等商社の代理店との間で、当社の迷惑情報データベースを活用したサービスを提供するアライアンスパートナーの開拓に注力してまいりました。当社が中長期的な成長を持続し、当社事業の更なる発展・拡大をしていくためには、通信キャリアや通信回線事業者等に対する提案活動を通じ、アライアンスパートナーの拡大及び既存のアライアンスパートナーへの販売活動支援等による協力関係の強化を図ることが重要と考えております。
モバイル向けや固定電話向けの迷惑情報フィルタサービスにおいては、通信キャリアとのアライアンスの拡大とともに収益を拡大してまいりました。また、法人向けに「トビラフォン」の機能を強化した「トビラフォンBiz」はNTT東日本、NTT西日本のセレクトアイテムに登録され、アライアンスパートナーを通じた受注件数が拡大しております。
今後も、アライアンスパートナーの拡大及び協力関係の強化に注力していくことで、より一層の事業拡大を図ってまいります。
② 当社及び当社サービスの認知度向上
当社は、今後の更なる事業の展開、拡大のためには、当社及び当社サービスに対する知名度や信頼を一層向上させることが重要であると認識しております。各種テレビ番組への出演、新聞、雑誌において当社及び当社サービスを掲載していくことや、デジタルマーケティング等の広告宣伝活動及びオウンドメディア等を活用したブランディングの強化に努めてまいります。
③ 新規・周辺ビジネスの立上げ
新規事業の創出として特に「既存市場への新規プロダクト投入」に注力してまいります。新規プロダクトについては、当社の強みである迷惑電話ブロック・迷惑SMSブロック・迷惑広告ブロックサービスを行うことで培ったデータベースのノウハウを活用し、新たな事業領域への拡張を目指します。さらに、直接得た顧客からのフィードバックや代理店から得られたユーザーの要望を活用し、新しいプロダクト開発も積極的に検討してまいります。
④ 技術開発力の強化
当社の競争力の源泉は、迷惑情報フィルタ事業のプロダクト開発における技術開発力を基礎としております。サービスの差別化を向上するため、迷惑情報データベースをより充実化させることに加えて、顧客ニーズに基づいた新機能、新サービスの追加や高度なユーザビリティを追求した開発を推進いたします。
また、当社は通信に関わるサービス提供を行っているため、システムの高い安定性及び稼働率が求められています。サービス提供に耐えうる設備投資を含め、持続可能なシステム開発に注力いたします。
⑤ 優秀な人材の確保と組織体制の強化
優秀な人材の確保と適切な配置、育成システムの構築は、当社の成長にとって最も重要な経営課題と認識しております。そのため、当社は継続的に採用活動を行い、中でも優秀なITエンジニアや営業メンバーの採用に注力しております。また、適正な人事評価を行うための評価・報酬制度を構築し、当社の企業理念、組織風土にあった優秀な人材の確保に努めてまいります。
組織体制の強化としては、失敗を恐れず挑戦する場の実現に向け、環境づくり、個人スキルの向上、チーム力の向上の3つの方針を定め取り組んでまいります。環境づくりとしては、フレックスタイム制を導入し、それぞれの業務に責任をもち、個人のペースで仕事を進めることができる環境としていることや、譲渡制限付株式報酬制度により、会社の成果が自身の成果へとつながる仕組みとしております。個人スキルの向上については、資格取得の報奨金制度や各種カンファレンスやセミナーの参加費用を会社負担とすることで、積極的なスキルアップを奨励しております。チーム力の向上については、1on1や毎月の全社ミーティングを行い、会社の向かう方向と自身のキャリアの整合を図ることやチームに対する貢献の振り返りなどを行っております。今後も様々な人的投資を行ってまいります。
⑥ 企業買収(M&A)
当社は、新規事業の創出を検討するにあたり、新たなアライアンスの締結やM&Aを行うことを常に検討しております。検討にあたっては、当社事業とのシナジー、事業戦略との整合性、買収後の収益性、買収プロセスの透明性、買収後の統合効果を最大化するプロセス(PMI)等に留意しております。新たなアライアンスの締結やM&Aを推進し、一層の事業拡大を図ってまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものでありますが、一部、開示している「サステナビリティレポート」に関する内容が含まれております。
当社は、サステナビリティに関連する重要なリスク・機会を特定し、適切に監視・管理するために、取締役会の下部組織として、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しています。同委員会では、気候変動や人的資本に関するサステナビリティリスク及び機会を特定し、全社的な取組計画を策定し関連部署への展開を図るとともに、サステナビリティ活動の進捗状況のモニタリング、達成内容の評価を行っています。また、同委員会での議論の内容は都度取締役会に報告され、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行う態勢を構築しています。
① サステナビリティ全般に関する戦略
当社は、社会課題の解決を目指す企業として、サステナビリティの実現を目標として経営基盤を構築することが必要と考えており、サステナビリティに関する方針、重点課題やその施策の検討を行うために、代表取締役社長をトップとするサステナビリティ推進委員会を設置し、「サステナビリティレポート」を公表しております。
サステナビリティに関する課題は多様かつ広範であり、当社の限りある経営資源を有効に活用して事業活動の持続可能性を高め、企業価値向上を目指すという観点から、次の4つの重要課題(マテリアリティ)を取締役会で決議、特定しました。
社会動向や技術革新など外部状況の変化に合わせて柔軟に対応し、環境問題等の課題解決と利益創出の両立を目指していきます。
② 多様性の確保を含む人材育成及び社内環境整備に関する方針
当社は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」という企業理念のもと、事業活動における人権の尊重を経営上の重要課題と位置付けています。行動指針には、「自分と大切な人が幸せな時間を送れる環境であり続けることが、私たちの成長や世界中の人々の生活の向上につながっていきます。」とあり、当社の事業活動に関わる全ての人の人権を大切にし、雇用や処遇にあたり差別やハラスメント等を受けずに自分らしく挑戦できる環境づくりに努めています。
当社の企業価値創造の最大の源泉はメンバーであり、メンバーの一人ひとりが失敗を恐れず挑戦することが、個人の成長を促し、結果的に当社のビジネスを推進することにつながると確信しています。多様なバックグランドを持つメンバーがお互いを認め合い、チーム力を高め、課題を乗り越えていくことで成長していく場づくりに努めています。
① マテリアリティの特定プロセス
行動指針に「社会的課題を解決する、人々の役に立つ製品を次々に生み出し、持続的かつ発展的に成長するため適切な利益を得ます。」と定めています。生み出した利益を再投資し、さらなる価値を提供していくことが当社の目指す姿であり、そのために、社会課題を起点として、マテリアリティを特定いたしました。
具体的には、当社の課題から約200項目の社会課題ロングリストを作成し、ステークホルダーにとっての重要性と当社にとっての重要性から、それぞれの項目を評価し、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会で議論を行い、マテリアリティを特定し、取締役会で決議いたしました。
今後もステークホルダーからの意見に幅広く耳を傾け、継続的なレビューを行います。
② 管理プロセス
マテリアリティに基づくサステナビリティ関連リスク・機会については、サステナビリティ推進委員会において議論のうえ、取組計画を策定しています。また、サステナビリティ推進委員会は、取組内容や進捗状況を確認し、その議事内容を取締役会へ報告しています。
③ 全社リスク管理への仕組みの統合状況
当社は、事業全般にわたる管理を、リスク・コンプライアンス委員会において行っており、リスクの特定、優先順位付け、低減策の実行を行っています。
一方で、サステナビリティに係るリスク管理を、サステナビリティ推進委員会において行っており、リスクの特定、優先順位付け、低減策の実行を行っています。
また、両委員会ともに、リスクの優先順位付けを検討する際には、当社に与える財務的影響、当社の活動が環境・社会に与える影響、発生可能性を踏まえて行われ、重要なリスクは、取締役会へ報告され監督が行われます。
サステナビリティ推進委員会において特定した気候変動リスク、人的資本リスク、その他のサステナビリティ関連リスク及び機会の具体的な取り組み内容は以下の通りです。
・気候変動リスク
気候変動がもたらす事業への影響を重要なリスクと捉え、温室効果ガス排出量を開示しています。また、クールビズやウォームビズ、フルリモートワーク、オンライン会議の推奨といった省エネルギー化や、働き方の工夫を提供するビジネス(クラウドPBX)を推進する等、環境負荷低減のため様々な取り組みを積極的に推進し、脱炭素化に向けた施策を実行しています。
・人的資本リスク
従業員が働きやすい職場環境を整備することで、優れた人材の流出リスクを低減しています。加えて、従業員エンゲージメント向上を目的とした健康経営や個人スキルの向上施策を実施し、多様な人材が活躍できる組織作りを推進しています。
・その他のサステナビリティ関連リスク
特殊詐欺犯罪やグレーゾーン犯罪の増加により、被害者の精神的・金銭的負担が増加するだけでなく、社会的コストが拡大する可能性があります。当社は迷惑情報データベースやセキュリティ技術を活用した事業の推進を通じて、特殊詐欺犯罪・グレーゾーン犯罪を0にすることを目指しており、これにより顧客が安心してコミュニケーションできる環境を構築することで信頼を獲得し、新たな市場を開拓する機会を見出しています。
当社は、リスクの低減や回避だけではなく、企業目的の達成、価値創造への貢献をより意識した管理が必要であると考え、サステナビリティ推進委員会での審議・議論を経て、取締役会へ付議・報告を行い、経営戦略に反映させる体制としています。
当社は、上記「(2)戦略」において記載した、サステナビリティ全般に関する戦略及び多様性の確保を含む人材育成及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する定量目標及び実績は、次のとおりであります。育児休業取得率については育児休業制度の社内周知を図るとともに、育児休業が取得しやすい社内体制の完備と上長の理解向上に努めています。
本書に記載の将来に関する事項は提出日時点での判断に基づくものであり、すべてのリスクを網羅するものではありません。
当社は取締役会の下に「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、リスク・コンプライアンス規程に基づき、リスク管理体制の構築と運用を行っています。同委員会は取締役および監査等委員である取締役で構成され、経営上重要なリスクの抽出・評価・見直し、対応策の策定、管理状況の確認を定期的に実施しています。
また、委員会の下に設置された「リスク・コンプライアンス共有会」では、各部門長および執行役員がリスクオーナーとして事業リスクおよびオペレーションリスクを職務ごとに管理しています。
<リスクマネジメント体制図>
リスクマネジメント活動では以下のプロセスを通じて、事業活動に影響を与えるリスクを評価・管理しています。
1.影響を与える可能性のあるリスクの洗い出し(リスクの一覧化)
2.各リスクのリスクオーナーの決定
3.リスクの影響度(金額基準)、発生可能性、コントロール度合での評価
4.リスク間の相対関係を考慮した優先順位の決定
一覧化したリスクは次の通りです。
当社では、一覧化したリスクを影響度(利益基準)、発生可能性、コントロール度合で評価し、リスク間の相対関係を考慮して「重要リスク」を選定しました。選定したリスクに対する対策を実施し、リスクの軽減に努めています。
a.技術革新・新技術による陳腐化
<リスク認識>
当社の迷惑情報フィルタ事業においては、AIを活用した迷惑電話・迷惑SMSの配信が確認されており、こうした新技術を用いた詐欺被害への対策が遅れた場合、当社の提供するサービスが急速に陳腐化する可能性があります。また、当社のサービスは、OS等動作環境から提供される機能を利用して実現されている機能もあり、今後の動作環境の仕様変更により、期待した動作が実現できなくなる可能性があります。当社がこうした今後の技術革新に適応できない場合、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
<対策>
当社は、優秀なエンジニアの採用を積極的に行うとともに、AI等最新技術動向をキャッチアップする組織の設置や、専任のリサーチャーによる最新の詐欺被害手口の傾向分析を絶えず行っており、今後起こりうる事業環境内での変化に対する対策を検討しております。また、1つの分野だけではなく、複数の分野に進出することで、特定のテクノロジー変化の影響を縮小化することを試みております。
<リスク認識>
迷惑電話をフィルタするセキュリティ市場において、当社は現在、高い市場シェアを有しています。しかし、市場の拡大に伴い、他業界や海外企業を含む新規参入者が増加し、価格競争や技術革新による競争激化が発生するリスクがあります。また、当社のビジネスモデルに類似したサービスが短期間で市場に投入され、当社の優位性が薄れる可能性や、利用者データの収集精度や規模において競合が追随する可能性も考えられます。これらは当社の業績や市場ポジションに影響を与える要因となり得ます。
<対策>
現在の約1,500万人の利用者基盤という優位性を維持しつつ、新規ユーザーの獲得を目的としたマーケティング施策を展開するとともに、大手通信キャリアの契約プランに当社サービスを組み込んだ販売モデルを強化していきます。また、通信キャリアや警察組織といった関係機関との連携を通じて情報収集も継続し、データベースの精度をさらに向上させ、参入障壁を構築することで、当社の競争優位性を維持・拡大します。
a.自然災害(台風・地震)・火災発生
<リスク認識>
当社の本社機能および製品倉庫などの主要な施設は愛知県名古屋市に所在しており、南海トラフ地震や東海地方を襲う台風などの自然災害、または火災により設備の破損や電力供給の制限といった事態が発生した場合、当社の本社機能や事業活動、サービス提供に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。
<対策>
当社は、災害リスクに備えるため、ネットワークの冗長化や遠隔地データセンターでのデータバックアップなど、物理的な対策を講じています。また、フルフレックス制度やリモートワークを組み合わせた柔軟な働き方を導入し、緊急事態発生時にも事業活動が継続できる体制を整備しています。さらに、事業継続計画(BCP)を策定し、緊急対応の手順を明確化していますが、これらの対策を上回る規模の事態が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
a.特定取引先への依存
<リスク認識>
当社の迷惑情報フィルタ事業における主要取引先は国内大手通信キャリアであり、これら特定の取引先への売上依存度は約7割に達しています。これにより、契約更新がなされない場合や取引条件の変更が生じた場合、当社の事業および業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、これらの取引先に対して提案する新サービスの契約締結が遅延または不成立となった場合にも、同様のリスクが発生します。
<対策>
当社は、独自調査に基づく「特殊詐欺・フィッシング詐欺に関するレポート」の定期提供などを通じて国内大手通信キャリアとの良好な関係を維持しています。さらに、三大通信キャリア全てとの連携により、迷惑電話・SMSブロック傾向の早期検知と共有を実現し、差別化を図っています。加えて、モバイル向けサービス以外の「トビラフォンBiz」などの事業拡大にも注力し、取引先依存リスクの軽減を図ります。
b.関係機関との連携
<リスク認識>
当社の迷惑情報データベースは、通信キャリア、警察組織、関係省庁等との連携を通じて顧客からの信用性と信頼性を高めています。しかし、何らかの理由でこの連携が途絶えた場合、当社のデータベースの信頼性や対外的な信用度が低下し、事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
<対策>
当社は、通信キャリア、警察組織および関係省庁等との情報交換会を開始する等、関係機関との関係の維持および強化に取り組んでいます。現時点では連携に支障をきたす事象は確認されておらず、今後も継続的な連携と情報提供を維持する見込みです。また、当社の迷惑情報データベースは、独自調査と情報収集による膨大なデータの蓄積を基盤としており、特定の機関との連携に依存しない運用体制を構築しています。
a.個人情報漏洩
<リスク認識>
当社は、サービス提供に伴い取得した顧客の個人情報や購買履歴などを保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の規制を受けています。これらの情報が何らかの理由で外部に流出した場合、当社の信用力が低下し、事業および業績に重大な影響を与える可能性があります。
<対策>
当社は、個人情報の管理を重要な経営課題と位置づけ、「プライバシーマーク」を取得・更新するとともに、個人情報管理に関する規程を制定し、業務フローや権限体制を明確化しています。また、個人情報の取り扱いに関しては、従業員教育の徹底やセキュリティ体制の強化を図り、慎重な運用を行うことで、顧客に安心してサービスをご利用いただける環境を提供しています。
b.機密情報(データベース)漏洩
<リスク認識>
当社が保有する機密情報のデータベースには、警察組織などの公的機関から提供される情報や、電話番号に関する多様な情報、迷惑電話番号の着信・発信ログなどが蓄積されています。不測の事態(サイバー攻撃や人的ミス)による情報漏えいが発生した場合、警察組織や取引先との信頼関係が損なわれ、当社の事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
<対策>
当社では、情報漏えい防止を目的として、ハードウェア、ソフトウェア、人的管理体制の観点からセキュリティ対策を講じています。具体的には、データベースへのアクセスを行う際には、携帯電話持ち込み禁止の専用ルームより、インターネット非接続環境を経由してアクセスを行う等の対策を行っております。加えて、優先順位に応じて必要なセキュリティ投資を計画的に実施しています。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
当社は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」を企業理念として掲げ、この企業理念に基づき、「誰かがやらなければならないが、誰もが実現できていない社会的課題の解決を革新的なテクノロジーで実現すること」を事業方針の軸としております。当社事業は、電話を活用した振り込め詐欺、特殊詐欺グループが犯行前に資産情報を聞き出すアポ電、パソコンのウイルス感染を装った偽の警告画面で不安を煽り虚偽のサポート窓口へ連絡させて金銭を盗むサポート詐欺等の特殊詐欺や、スマートフォンやショートメッセージサービス(SMS)を悪用したフィッシング詐欺などの抑止に効果的な迷惑情報フィルタ事業です。当期は毎月「特殊詐欺・フィッシング詐欺に関するレポート」を発行したことにより、多数各種メディアへ取り上げられました。また、総務省主催の「不適正利用対策に関するワーキンググループ」への出席や、警視庁主催のサイバーセキュリティ有識者研修で講師を務めるなど、特殊詐欺防止に向けた活動を積極的に行いました。
迷惑情報フィルタ事業は、モバイル向け、固定電話向け及びビジネスフォン向けの3つのサービスを展開しております。モバイル向けフィルタサービスでは、一部の通信キャリアとの契約において価格条件を引き上げて更改いたしました。また、JCOM株式会社の「J:COM MOBILE」のオプションサービスに、当社のデータベースの提供を新たに開始しました。迷惑広告コンテンツをブロックするアプリ「280blocker」は認知拡大に努め、販売促進を行いました。
固定電話向けフィルタサービスでは、ケーブルプラス電話における当社サービスの販売が順調に推移いたしました。
ビジネスフォン向けフィルタサービスでは、カスハラ対策として有効な自動通話録音、録音告知メッセージ機能等、オフィス電話に必要な便利機能を搭載したビジネスフォン向け製品「トビラフォンBiz」の販売が順調に推移いたしました。クラウド型ビジネスフォンサービス「トビラフォン Cloud」は通話の文字起こし機能である音声テキスト化を標準搭載機能とすることや、当社独自の音声認識エンジンの提供を開始し、その販売は順調に推移いたしました。
以上の結果、当事業年度における売上高は2,405,885千円(前期比16.7%増)、営業利益は831,784千円(前期比21.8%増)、経常利益は829,589千円(前期比22.1%増)、当期純利益は601,854千円(前期比16.2%増)となりました。
なお、当事業年度より、「迷惑情報フィルタ事業」の単一セグメントに変更したため、セグメント別の記載を省略しております。
(2) 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における総資産は4,355,634千円となり、前事業年度末に比べ708,732千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が811,050千円増加したこと、売掛金が28,946千円増加したこと、商品及び製品が21,104千円減少したこと、のれんが65,904千円減少したこと、ソフトウエアが24,958千円減少したこと、投資有価証券が19,955千円増加したこと及び繰延税金資産が22,687千円減少したこと等によるものであります。
当事業年度末における負債合計は1,914,305千円となり、前事業年度末に比べ404,240千円増加いたしました。これは主に、契約負債が462,880千円増加したこと、未払法人税等が24,050千円減少したこと及び長期借入金が50,040千円減少したこと等によるものであります。
当事業年度末における純資産は2,441,329千円となり、前事業年度末に比べ304,491千円増加いたしました。これは主に、配当金の支払いによる利益剰余金179,490千円の減少及び自己株式190,196千円の取得に対し、当期純利益を601,854千円計上したこと、自己株式を61,677千円処分したこと及びその他有価証券評価差額金が13,848千円増加したこと等によるものであります。
なお、自己資本比率は56.0%(前事業年度末は58.6%)となりました。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べて811,050千円増加し、3,215,658千円となりました。各キャッシュ・フローの主な状況は以下のとおりであります。
営業活動の結果増加した資金は1,305,889千円(前年同期は1,220,958千円の増加)となりました。これは主に、法人税等の支払額が265,303千円、売上債権及び契約資産の増加が27,993千円、投資有価証券売却益の計上が29,999千円あったものの、税引前当期純利益を860,276千円、減価償却費を133,734千円、のれん償却額を65,904千円計上したこと、棚卸資産の減少が22,991千円、長期前払費用の減少が37,776千円、未払金の増加が23,892千円あったこと及び契約負債の増加が463,684千円あったこと等によるものであります。
投資活動の結果減少した資金は78,339千円(前年同期は91,470千円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出46,070千円、投資有価証券の売却による収入30,000千円、無形固定資産の取得による支出63,150千円等によるものであります。
財務活動の結果減少した資金は416,498千円(前年同期は160,645千円の減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出50,040千円、自己株式の取得による支出188,171千円及び配当金の支払179,369千円によるものであります。
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
当社は、「迷惑情報フィルタ事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
なお、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に見積り、計上しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、通信費等の費用であります。投資を目的とした資金需要はサーバ等インフラ設備、機器や本社移転に伴う敷金の差入等によるものであります。
運転資金は自己資金を基本としており、投資資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当事業年度末における借入金残高は195,710千円となっております。また、当事業年度末の現金及び現金同等物は3,215,658千円であり、流動性を確保しております。
「第2 事業の状況 1(経営方針、経営環境及び対処すべき課題等)」をご参照ください。
「第2 事業の状況 3(事業等のリスク)」をご参照ください。
当事業年度の経営成績については、「(1) 経営成績の状況」に記載の通りであり、売上高は2,405,885千円(前期比16.7%増)、営業利益は831,784千円(前期比21.8%増)、経常利益は829,589千円(前期比22.1%増)、当期純利益は601,854千円(前期比16.2%増)となりました。
当社が対処すべきと認識している課題は、「第2 事業の状況 1(経営方針、経営環境及び対処すべき課題等)」に記載のとおりです。その中でも、当社の迷惑情報フィルタ事業は、通信キャリアのオプション契約に組み込まれるサービス運営を中心とするビジネスモデルに依存している状況にあることから、新規・周辺ビジネスの立ち上げが課題であると認識しております。
そのため、中長期的な経営戦略においては、複数のビジネスモデルを持ち、より頑強な組織へと成長していくことが今後の発展において重要であると考えております。迷惑情報フィルタ事業で培ったデータベースのノウハウを活用し、新たな事業領域への拡張のみならず、新しいビジネスモデルの展開も積極的に検討してまいります。
当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は
当社は、迷惑情報を正確かつ効率的にフィルタするためのデータベースや各種アプリケーションに関する研究開発を進めており、当社の迷惑情報フィルタサービスに関する新たな収益機会創出を目的とした新規サービスの開発及び既存サービスの機能改善を中心に研究開発を行っております。
主な研究開発の成果は次のとおりです。
・モバイル向け迷惑情報フィルタサービスの機能改善
・コアデータベースシステムの機能改善
・ビジネスフォン向け迷惑情報フィルタサービスの機能改善