当社グループは、世界の人々に「感じ良いくらし」を提案し、「商い」を通じて社会に貢献したいと考えております。当社グループにおける商品開発の原点は、生活の基本となる、本当に必要なものを、本当に必要なかたちでつくること。素材を見直し、生産工程の手間を省き、包装を簡略にすることで、シンプルで美しい、環境に配慮した商品を世に送り出してまいりました。
昨今の様々な自然災害や環境問題を目の当たりにし、省資源・省エネルギーを意識した消費行動が着実に主流になってきております。私たちは「社会にとって良いことを行う企業」を目指し、独自の思想から「良い商品」「良い環境」「良い情報」をより一層磨きあげ、企業価値の向上に向け、以下の課題に取り組んでまいります。
① グローバルサプライチェーンマネジメント向上
適時適量の商品仕入れを支えるグローバルサプライチェーンマネジメントを向上させてまいります。そのために、サプライチェーンのPDCAサイクルを循環させながら、常に問題点の改善を進め、グローバル視点による効率的な調達構造を構築してまいります。これにより、独自性のある品揃え及びお求めやすい価格を実現いたします。
② 商品開発力の向上
世界中の地域で信頼され、地域文化に貢献できる品揃えやサービスを、適正価格及び適正品質で提供してまいります。そのために、生活者との双方向のコミュニケーションを重ねながら、毎日のくらしに役立つ日用品の基幹アイテム開発を重点的に行ってまいります。これにより、新たな市場開拓及び店舗大型化を実現いたします。
③ グローバル人材育成
世界中で無印良品の思想を体現及び伝播できる人材を育成してまいります。そのために、管理系のシステム整備、及び業務標準化を進めたコンパクトなグローバル本部を構築し、効率的なトレーニングによって、業務経験及び知識の蓄積が行える環境を整えてまいります。これにより、専門性及び多様性のある人材の活躍を促し、持続的な成長を実現いたします。
④ ステークホルダーの期待に応えるコーポレートガバナンスの実現
各方面のステークホルダーの期待に応えるコーポレートガバナンスを実現してまいります。そのために、理念及びビジョンの趣旨及び精神を踏まえ、自らのガバナンス上の課題の有無を十分に把握した上で、適切に対応してまいります。これにより、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現いたします。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年5月28日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経済状況、消費動向について
当社グループは、衣服・雑貨、生活雑貨、食品等のオリジナル商品を通してライフスタイルを提案する事業を営んでおり、国内、海外各国における気候状況、景気後退、及び海外での治安悪化及びそれに伴う消費縮小は当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 海外の事業展開について
当社グループは、ヨーロッパ地域においてイギリス、フランス、スウェーデン、イタリア、ドイツ、アイルランド、スペイン、ポーランド、ポルトガル、スイス、フィンランド、デンマーク、アジア・オセアニア地域において、香港、シンガポール、韓国、台湾、中国、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インド、クウェート、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、カタール、オマーン、オーストラリア、北米地域においてアメリカ合衆国、カナダでの子会社または合弁会社による店舗展開、または現地有力企業への商品供給による事業ならびに現地における商品調達を行っております。
これらの海外における事業展開には、以下のようないくつかのリスクが内在しております。
① 予期しない法律または規制の変更、強化
② 為替レートの変動
③ 不利な政治または経済要因
④ 税制または税率の変更
⑤ 移転価格税制等の国際税務問題による影響
⑥ テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等
万一、上記のような事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 新規事業について
当社グループは、住宅事業や流通加工等の小売以外の事業を展開しております。これらの事業は、多くの技術課題を解決し、販売拡大の手法を構築することが重要であります。これらの事業は不確定要因が多く、事業計画どおり達成できなかった場合は、それまでの投資負担が、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 災害等について
当社グループは、国内外に店舗、物流センター等を保有しており、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害、事故、火災、テロ、戦争その他の人災等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) 個人情報の管理について
当社グループは、営業取引、インターネット取引等により、相当数の個人情報を保有しております。これらの個人情報の管理は社内管理体制を整備し、厳重に行っておりますが、万一個人情報が外部へ漏洩するような事態となった場合は、社会的信用の失墜による売上の減少、または損害賠償による費用の発生等が考えられ、その場合には当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、企業収益や雇用、所得環境の改善が継続し、緩やかな回復基調が継続し
ているものの、輸出や生産に弱さが見られ先行きの不透明感が高まりました。
世界経済に目を向けると、米中貿易摩擦、イギリスのEU離脱問題など不安定な国際情勢などから、先行き不透明
な状態が続きました。
このような状況の中、当社グループ(当社、連結子会社、関連会社)は、「『感じ良いくらし』を実現する企業」として、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」の3つの視点を基本に、生産者や生活者にとって役に立つ商品・サービスの開発、およびそれらを世界中の人々に提案するための店舗数の拡大に努めてまいりました。
当連結会計年度末における当社グループの総資産は3,065億12百万円となり、前連結会計年度末に比べ482億2百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金の減少166億30百万円、商品の増加171億43百万円、IFRS第16号「リース」の適用による使用権資産の計上及び直営店の出店および改装による有形固定資産の増加362億96百万円、無形固定資産の増加78億50百万円によるものです。
負債は980億19百万円となり、348億99百万円増加いたしました。これは主に、買掛金の増加74億8百万円、リース債務(固定負債)の増加252億5百万円、リース債務(流動負債)の増加74億24百万円、未払法人税等の減少85億34百万円によるものです。
純資産は2,084億92百万円となり、133億3百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金の増加132億25百万円によるものです。
当連結会計年度における当社グループの業績については、下記のとおりであります。
営業収益 4,387億13百万円(前年同期比 7.1%増)
売上高 4,377億75百万円(前年同期比 7.1%増)
営業利益 363億80百万円(前年同期比 18.7%減)
経常利益 363億77百万円(前年同期比 20.7%減)
親会社株主に帰属する当期純利益 232億53百万円(前年同期比 31.3%減)
(当連結会計年度におけるセグメント別の概況)
当連結会計年度における当社グループのセグメント別業績は、次のとおりであります。
① 国内事業
国内事業の当連結会計年度の営業収益は2,678億64百万円(前年同期比8.8%増)、セグメント利益は222億44百万
円(前年同期比11.3%減)となりました。
国内事業のうち、直営店の売上高は前期に比べ11.1%増加、またオンラインストアの売上高が11.2%の増加となり、引き続き堅調に推移しています。
衣服・雑貨では気温が高めに推移し、春夏には「フレンチリネン」シリーズ、「太番手Tシャツ」「ムラ糸Tシ
ャツ」のシリーズが人気となりました。一方、秋以降は気温が下がらず、冬物アウターやニット、防寒小物が伸び
悩みましたが、パジャマや肌着、靴下が通年で好調に推移し売上を底支えいたしました。
生活雑貨では価格見直しを行った「シリコーン調理スプーン」や、「厚手毛布」などの冬物のファブリックスが
売上を伸ばしました。
食品では「レトルトカレー」シリーズが好調に推移いたしました。また、「発酵ぬかどこ」や冷凍食品が話題と
なり売上を伸ばしました。
10月、12月に前年未開催の「無印良品週間」を行ったことで売上が伸長いたしましたが、販促施策を多用したこと等により、売上総利益率が低下し、セグメント減益となりました。
② 東アジア事業
東アジア事業の当連結会計年度の営業収益は1,247億1百万円(前年同期比1.9%増)、セグメント利益は168億36
百万円(前年同期比15.0%減)となりました。
中国では、昆明の旗艦店を含む積極的な出店等により、店舗売上が伸長いたしました。また、オンラインストアの売上も増加いたしました。衣服・雑貨は価格を見直しましたTシャツなどが牽引し、好調に推移いたしまし
た。生活雑貨では現地企画商品の「ステンレス保温保冷マグ」や価格を見直しましたノートやベッドが伸長いたし
ました。
台湾においては、会員向け施策である「無印良品週間」の定着や、週末限定商品の売込みを行いましたことによ
りお客様数が増加し、「撥水加工スニーカー」等も好調に推移し、衣服雑貨を中心に売上が伸長いたしました。
セグメント利益は、韓国や香港における社会情勢不安の影響を受け減益となりました。
③ 欧米事業
欧米事業の当連結会計年度の営業収益は286億30百万円(前年同期比16.9%増)、セグメント損失は31億22百万円
(前年同期に比べ19億71百万円の損失増加)となりました。
欧州では衣服・雑貨を中心に好調に推移し、新規国の出店もあり売上は伸長いたしましたが、新店を中心に売上
計画が未達、また出店にかかる経費が先行したため減益となりました。
北米においては新店舗のオープンにより売上は昨年を上回りましたが、18年以降に出店した大型店の売上が計画
未達であり、新店にかかる経費が先行したこと等により損失が増加いたしました。
④ 西南アジア・オセアニア事業
西南アジア・オセアニア事業の当連結会計年度の営業収益は175億14百万円(前年同期5.6%増)、セグメント損
失は3億49百万円(前年同期に比べ8億62百万円の損失増加)となりました。
シンガポールやタイにおいては、衣服・雑貨を中心に売上が好調に推移いたしました。
一方、シンガポール、オーストラリアでは物流費等が増加したこと、新規出店や改装にかかる経費が先行したこ
と等により、セグメント損失となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動および新規出
店等による投資活動、並びに財務活動を行った結果、当連結会計年度末の資金残高は、前連結会計年度末に比べ
197億31百万円減少し340億25百万円となりました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
営業活動で得られた資金は、244億52百万円(前年同期は236億80百万円の収入)となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益346億3百万円、減価償却費153億28百万円、たな卸資産の増加180億23百万円および法人税等の支払209億92百万円によるものであります。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
投資活動の結果使用した資金は、314億35百万円(前年同期は54億92百万円の支出)となりました。
これは主に、定期預金の預入による支出32億96百万円、店舗等の有形固定資産の取得による支出168億34百万円、店舗出店による敷金等の支出16億91百万円、情報システム投資等の無形固定資産の取得による支出114億88百万円によるものであります。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
財務活動の結果使用した資金は、114億67百万円(前年同期は95億5百万円の支出)となりました。
これは主に、配当金の支払99億60百万円、リース債務の返済による支出57億7百万円によるものでありま
す。
生産、受注及び販売の実績
(1)販売実績
当連結会計年度における販売実績(営業収益)をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
営業収益(百万円) |
前期比(%) |
国内事業 |
267,864 |
108.8 |
東アジア事業 |
124,701 |
101.9 |
欧米事業 |
28,630 |
116.9 |
西南アジア・オセアニア事業 |
17,514 |
105.6 |
セグメント計 |
438,711 |
107.1 |
その他 |
2 |
86.4 |
合計 |
438,713 |
107.1 |
(注)1.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、グローバル調達事業であります。
2.上記の金額には、消費税及び地方消費税は含まれておりません。
3.営業収益の商品別の構成は次のとおりであります。
商品別 |
営業収益(百万円) |
前期比(%) |
衣服・雑貨 |
187,572 |
116.1 |
生活雑貨 |
206,759 |
99.6 |
食品 |
30,629 |
113.0 |
その他 |
13,753 |
103.4 |
合計 |
438,713 |
107.1 |
(注)上記の金額には、消費税及び地方消費税は含まれておりません。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
① 売上高及び営業総利益
当連結会計年度の売上高につきましては、前連結会計年度に比べて、289億27百万円増(前期比7.1%増)の4,377億75百万円となりました。セグメント別売上高の詳細については、「生産、受注及び販売の実績 (1)販売実績」に記載しております。
売上高が増加した主な要因は、国内外における無印良品店舗の増加及びネットストアの伸長等によるものです。
また、営業総利益は、前連結会計年度に比べて62億48百万円増加し2,176億28百万円となりました。売上高に対する比率は49.7%となり、前連結会計年度より2.0ポイント減少いたしました。
② 販売費及び一般管理費及び営業利益
当連結会計年度の販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度に比べて146億11百万円増(前期比8.8%増)の1,812億48百万円となりました。売上高に対する比率は41.4%となり、前連結会計年度より0.6ポイント増加いたしました。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べて83億63百万円減少し、363億80百万円となりました。売上高に対する比率は8.3%となり、前連結会計年度より2.6ポイント減少いたしました。
③ 営業外損益及び経常利益
当連結会計年度の営業外収益につきましては、前連結会計年度に比べて7億43百万円減少し、12億14百万円となりました。また、営業外費用につきましては、3億77百万円増加し12億18百万円となりました。
この結果、経常利益は前連結会計年度に比べて94億84百万円減少し、363億77百万円となりました。売上高に対する比率は8.3%となり、2.9ポイント減少いたしました。
④ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の特別利益につきましては、前連結会計年度に比べて86億15百万円減少し、19百万円となりました。主な要因は、当連結会計年度に投資有価証券売却益が前連結会計年度に比べて86億15百万円減少したことによるものです。また、特別損失につきましては、11億79百万円増加し、17億92百万円となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べて192億79百万円減少し、346億3百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べて105億91百万円減少し、232億53百万円となり、1株当たり当期純利益は前連結会計年度128円92銭から88円47銭に減少いたしました。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に新規出店及び既存店舗の改装といった設備投資、情報システム投資によるものであります。
これらの運転資金や投資資金は、自己資金により充当することを基本方針としておりますが、必要に応じて資金調達を行ってまいります。
② キャッシュ・フローの分析
当社グループの資金の状況につきましては、「 経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。
当社グループの自社ブランド商品「無印良品」の生活者のニーズへの対応と新規需要開拓のために、常に最新の商品情報を収集し、意欲的な商品研究開発活動を進めております。
商品調達部門である衣服・雑貨部、生活雑貨部及び食品部において商品企画開発を進めております。また、衣服・雑貨部内に企画デザイン室を、生活雑貨部内に企画デザイン担当をそれぞれ設置し、更なる商品開発の強化を図っています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
なお、当社グループにおける研究開発活動は概ね全セグメント区分に共通する「無印良品」の開発を目的としておりますので、セグメント別の記載は行っておりません。