第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

当社グループは、2021年9月を、第二創業と位置づけ、企業理念を再定義しました。「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念と定め、2つの使命を果たすべく事業展開を行ってまいります。

 

・第一の使命は、誠実な品質と倫理的な意味を持ち、生活に欠かせない基本商品群、基本サービス群を、手に取りやすい適正な価格で提供することです。

・第二の使命は、当社の展開する店舗が、その地域のコミュニティセンターとしての役割を持ち、地域のステークホルダーの皆様と共に、地域課題に対して取り組み、地域への良いインパクトを実現することです。

 

これらの企業理念の下、当社グループの事業展開を通じて資源循環型・自然共生型の社会、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

(2)経営環境

当連結会計年度におきましては、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症の収束がいまだ見通せず、依然として国内のみならず世界経済の先行きは不透明な状況が続いております。一部地域においてワクチンの接種が進んでいるものの、感染力が強い変異株の感染拡大の状況により、今後の経済活動に影響を及ぼす可能性があると想定しております。

 

(3)優先的に対処すべき事業上、財務上の課題

「社会や人の役に立つ」という根本方針のもと、社員および事業関係者一人一人が、社会全体や地球でいま起きている課題に敏感に呼応し、提供するすべての商品、サービス、活動の全ライフサイクルにわたり、地球環境負荷低減や個人尊重に努めてまいります。

また、2021年7月に、100年後のより良い未来を見据えて、2030年までのビジョンを策定・公表致しました。個店を通じて、日常生活の基本を担うと共に、地域社会と共生し課題解決や町づくりに貢献していきます。

 

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2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年11月29日)現在において当社グループが判断したものであります。なお、各リスクが顕在化する可能性の程度や時期については合理的に予見することが困難であるため記載していませんが、当社グループはこれらのリスクに対する管理体制を「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり整備し、リスクマネジメント活動を行っています。

(1) 経済状況、消費動向について

当社グループは、衣服・雑貨、生活雑貨、食品等のオリジナル商品を通してライフスタイルを提案する事業を営んでおり、国内、海外各国における気候状況、景気後退、及び海外での治安悪化及びそれに伴う消費縮小は当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした外部環境の変化への対応として、事業戦略においては持続的な成長基盤の強化と顧客創造、その支えとしての機能戦略においては時代対応した仕組み化や生産性向上を図ることにより、引き続き収益性の改善を図ってまいります。

(2) 海外の事業展開について

当社グループは、ヨーロッパ地域においてイギリス、フランス、スウェーデン、イタリア、ドイツ、アイルランド、スペイン、ポーランド、ポルトガル、スイス、フィンランド、デンマーク、アジア・オセアニア地域において、香港、シンガポール、韓国、台湾、中国、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インド、クウェート、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、カタール、オマーン、オーストラリア、北米地域においてアメリカ合衆国、カナダでの子会社または合弁会社による店舗展開、または現地有力企業への商品供給による事業ならびに現地における商品調達を行っております。

これらの海外における事業展開には、以下のようないくつかのリスクが内在しております。

① 予期しない法律または規制の変更、強化

② 為替レートの変動

③ 不利な政治または経済要因

④ 税制または税率の変更

⑤ 移転価格税制等の国際税務問題による影響

⑥ テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等

万一、上記のような事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新規事業について

当社グループは、住宅事業や流通加工等の小売以外の事業を展開しております。これらの事業は、多くの技術課題を解決し、販売拡大の手法を構築することが重要であります。これらの事業は不確定要因が多く、事業計画どおり達成できなかった場合は、それまでの投資負担が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 災害等について

当社グループは、国内外に店舗、物流センター等を保有しており、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害、事故、火災、テロ、戦争その他の人災等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これら災害等に対する備えとして、対応マニュアル等の策定や損害保険の付保等の対策を講じております。

(5) 個人情報の管理について

当社グループは、営業取引、インターネット取引等により、相当数の個人情報を保有しております。これらの個人情報の管理は社内管理体制を整備し、厳重に行っておりますが、万一個人情報が外部へ漏洩するような事態となった場合は、社会的信用の失墜による売上の減少、または損害賠償による費用の発生等が考えられ、その場合には当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 新型コロナウイルス感染症の拡大について

新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大による影響はすでに顕在化しており、今後も当社グループの店舗における臨時休業や営業時間の短縮等の措置が継続される場合には、当社グループの経営成績および財政状態にさらに大きな影響を及ぼす可能性があります。店舗においてはお客様同士、お客様とスタッフとの距離の十分な確保、消毒・清掃の強化、また、マスク着用、手洗い、消毒、検温といったスタッフの健康管理を徹底しております。また、本社部門(管理、営業等)については、健康管理、時差出勤、テレワークを進め、ウェブ会議等を利用した社内外のコミュニケーションを実施しています。

(7) 人権に関するリスク

当社グループは、自社において生産拠点を有しておりません。商品製造/生産はすべてサプライヤーに委託していることから、サプライチェーンに関わるすべての人の基本的人権を尊重し、心身の健康や安心・安全を確保することが、最も重要な責務だと考えています。そのために、「良品計画生産パートナー行動規範」に基づき、サプライチェーン全体の労働環境、人権尊重、環境配慮の方針を取引先工場と共有し、遵守をお願いするとともに、人権尊重に向けた取り組みを進めています。しかしながら、この方針を逸脱した行為が発生した場合には、当社グループに対するお客様及び取引先の信頼低下などにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

 前連結会計年度は決算期変更(2月末日から8月31日へ変更)に伴い、6か月の変則決算となっております。そのため前連結会計年度との比較は記載しておりません。

(1)財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におきましては、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症の収束がいまだ見通せず、依然として国内のみならず世界経済の先行きは不透明な状況が続いております。一部地域においてワクチンの接種が進んでいるものの、感染力が強い変異株の感染拡大の状況により、今後の経済活動に影響を及ぼす可能性があると想定しております。

このような状況の中、当社グループは「感じ良い暮らしと社会」へ向けてグローバルに貢献する小売企業として、最良な商品の開発、調達、および地域の方々に支持され共創する店舗展開に努めるとともに、1980年の誕生以来、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」を通して見つめ直した実質本位の商品をつくり続け、ESG視点を磨き上げてまいりました。

 

当連結会計年度末における当社グループの総資産は3,933億57百万円となり、前連結会計年度末に比べ494億39百万円増加いたしました。これは主に、現金および預金の増加434億43百万円、および無形固定資産の増加52億98百万円によるものです。

負債は1,784億86百万円と175億61百万円増加いたしました。これは主に、未払法人税等の増加111億66百万円、買掛金の増加60億33百万円によるものです。

純資産は2,148億71百万円と318億78百万円増加いたしました。主な増加は、利益剰余金の増加281億20百万円、資本剰余金の増加170億22百万円、為替換算調整勘定の増加33億75百万円であり、主な減少は、自己株式の取得等に伴う自己株式の増加170億7百万円であります。

 

    当連結会計年度における当社グループの業績については、下記のとおりであります。

 

営業収益               4,536億89百万円

営業利益                424億47百万円

経常利益                453億69百万円

親会社株主に帰属する当期純利益     339億3百万円

 

(当連結会計年度におけるセグメント別の概況)

当連結会計年度における当社グループのセグメント別業績は、次のとおりであります。

 

① 国内事業

 国内事業における当連結会計年度の営業収益は2,969億98百万円、セグメント利益は285億28百万円となりました。

 新型コロナウイルス感染拡大により、度重なる緊急事態宣言の発出、外出自粛による経済活動の制限等の影響を受けながらも、日常生活の基本を支える商品群の価格改定による客数の増加が下支えとなり、食品の売上増加や、衣服・雑貨の靴下や肌着、生活雑貨の収納用品や調理器具などが堅調に推移いたしました。

② 東アジア事業

 東アジア事業における当連結会計年度の営業収益は1,255億83百万円、セグメント利益は229億77百万円となりました。

 中国大陸では、オンライン販売が堅調に推移する一方で、一部地域におきましては、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛等の影響を受け、店頭販売に影響がありました。消費環境は厳しい状況が続いておりますが、生活雑貨を中心に現地開発商品の展開を拡大し、売上向上を図っております。

 

 

③ 欧米事業

欧米事業における当連結会計年度の営業収益は176億18百万円、セグメント損失は21億7百万円となりました。

欧州・北米ともに新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、店舗の通常営業ができないことにより厳しい状況が続いておりましたが、北米においては、ワクチン接種の進展に伴い、客数、売上とも回復傾向にあり、徐々に収益改善が進んでおります。

 

当社の連結子会社であるMUJI U.S.A. Limited(以下、MUJI USA)は、2020年7月に米国連邦倒産法第11章(チャプター11)に基づく再生手続の申請を行いました。その後、MUJI USAの収益面でのボトルネックとなっていた不採算店の閉鎖、賃料の減額交渉を進め、18店舗中8店舗(東海岸1店舗、西海岸7店舗)の閉鎖並びに継続店舗の賃料減額等について合意いたしました。

これらによる収益改善、並びに無担保債権者への弁済計画を骨子とする再生計画案を現地裁判所に提出し、2020年12月に、債権者の皆さまからのご賛同のもと、現地裁判所より再生計画の承認を頂きました。また、当社を除く無担保債権者に対する弁済は2021年8月に完了しております。

なお、2020年7月及び8月に一部の店舗の賃貸人に対して退去通知を行ない、2020年8月までに店舗の営業を終了していた為、米国会計基準に基づき、前連結会計年度において、店舗の賃貸借契約の残存期間の賃借料相当となる32億20百万円をリース解約債務、また32億36百万円をリース解約損として計上しておりました。その後、2020年12月に再生計画が裁判所に承認されたことに伴い、当連結会計年度に31億35百万円のリース債務免除益を計上しております。

 

④ 西南アジア・オセアニア事業

西南アジア・オセアニア事業における当連結会計年度の営業収益は134億89百万円、セグメント利益は8億4百万円となりました。

地域により新型コロナウイルス感染拡大の影響が拡大し、タイやマレーシアではロックダウンの措置がとられるなど、店舗営業に制限がかかっております。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動および新規出店等による投資活動、並びに財務活動を行った結果、当連結会計年度末の資金残高は、前連結会計年度末に比べ434億20百万円増加し1,350億19百万円となりました。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

営業活動の結果獲得した資金は、614億47百万円となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益485億89百万円、減価償却費155億61百万円、および法人税等の支払54億14百万円によるものであります。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

投資活動の結果使用した資金は、135億38百万円となりました。

これは主に、店舗等の有形固定資産の取得による支出84億87百万円、店舗出店による敷金等の支出15億84百万円およびソフトウエア投資等の無形固定資産の取得による支出88億52百万円によるものであります。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

財務活動の結果使用した資金は、151億62百万円となりました。

これは主に、リース債務の返済による支出82億89百万円、配当金の支払65億89百万円によるものであります。

 

生産、受注及び販売の実績

  (1)販売実績

当連結会計年度における販売実績(営業収益)をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

営業収益(百万円)

前期比(%)

国内事業

296,998

東アジア事業

125,583

欧米事業

17,618

西南アジア・オセアニア事業

13,489

合計

453,689

 

(注)1.上記の金額には、消費税及び地方消費税は含まれておりません。

   2.決算期変更に伴い、前連結会計年度は6カ月決算となっておりますので、前期比については記載しており

     ません。

   3.営業収益の商品別の構成は次のとおりであります。

 

 

 

商品別

営業収益(百万円)

前期比(%)

衣服・雑貨

169,062

生活雑貨

211,832

食品

54,587

その他

18,208

合計

453,689

 

    (注)1.上記の金額には、消費税及び地方消費税は含まれておりません。

       2.決算期変更に伴い、前連結会計年度は6カ月決算となっておりますので、前期比については記

         載しておりません。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

① 営業収益及び営業総利益

当連結会計年度の営業収益につきましては、2019年9月1日より2020年8月31日までの期間(以下「前年同期間」と記載いたします)に比べて、520億34百万円増(前年同期間比13.0%増)の4,536億89百万円となりました。セグメント別の営業収益の詳細については、「生産、受注及び販売の実績 (1)販売実績」に記載しております。

また、営業総利益は、前年同期間に比べて314億10百万円増加し2,223億34百万円となりました。営業収益に対する比率は49.0%となり、前年同期間より1.5ポイント増加いたしました。

② 販売費及び一般管理費及び営業利益

当連結会計年度の販売費及び一般管理費につきましては、前年同期間に比べて56億20百万円増(前年同期間比3.2%増)の1,798億87百万円となりました。営業収益に対する比率は39.7%となり、前年同期間より3.7ポイント減少いたしました。

この結果、営業利益は前年同期間に比べて257億90百万円増加し、424億47百万円となりました。営業収益に対する比率は9.4%となり、前年同期間より5.2ポイント増加いたしました。

③ 営業外損益及び経常利益

当連結会計年度の営業外収益につきましては、前年同期間に比べて32億4百万円増加し、44億20百万円となりました。また、営業外費用につきましては、8億30百万円増加し14億98百万円となりました。

この結果、経常利益は前年同期間に比べて281億64百万円増加し、453億69百万円となりました。営業収益に対する比率は10.0%となり、5.7ポイント増加いたしました。

④ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失

当連結会計年度の特別利益につきましては、前年同期間に比べて49億3百万円増加し、49億22百万円となりました。また、特別損失につきましては、前年同期間に比べて186億26百万円減少し、17億2百万円となりました。

この結果、税金等調整前当期純利益又は当期純損失は前年同期間の310億4百万円の損失に対し、485億89百万円の利益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失は前年同期間の69億34百万円の損失に対し、339億3百万円の利益となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容及び資本の財源及び資金の流動性に関する情報

① 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に新規出店及び既存店舗の改装といった設備投資、情報システム投資によるものであります。
 これらの運転資金や投資資金は、自己資金により充当することを基本方針としておりますが、必要に応じて資金調達を行ってまいります。

② キャッシュ・フローの分析

当社グループの資金の状況につきましては、「 経営成績等の状況の概要  (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

 

 

 

 

4【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。

 

5【研究開発活動】

当社グループの自社ブランド商品「無印良品」の生活者のニーズへの対応と新規需要開拓のために、常に最新の商品情報を収集し、意欲的な商品研究開発活動を進めております。

商品調達部門である衣服・雑貨部、生活雑貨部及び食品部において商品企画開発を進めております。また、衣服・雑貨部内に企画デザイン室を、生活雑貨部内に企画デザイン担当をそれぞれ設置し、更なる商品開発の強化を図っています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,041百万円であります。

なお、当社グループにおける研究開発活動は概ね全セグメント区分に共通する「無印良品」の開発を目的としておりますので、セグメント別の記載は行っておりません。