第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

当社グループは、第二創業にあたり、「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念と定め、二つの使命を果たすべく事業展開を行ってまいります。

 

・第一の使命は、誠実な品質と倫理的な意味を持ち、生活に欠かせない基本商品群、基本サービス群を、手に取りやすい適正な価格で提供することです。

・第二の使命は、当社の展開する店舗が、その地域のコミュニティセンターとしての役割を持ち、地域のステークホルダーの皆様と共に、地域課題に対して取り組み、地域への良いインパクトを実現することです。

 

これらの企業理念の下、当社グループの事業展開を通じて資源循環型・自然共生型の社会、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

(2)経営環境

当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展、移動制限の緩和等により、国・地域によりばらつきはあるものの、経済活動は緩やかに再開の動きが見られました。一方、世界的な資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱、急激な円安の進行等により、依然として国内外における経済の先行きは不透明な状態が続いております。

 

(3)優先的に対処すべき事業上、財務上の課題

「社会や人の役に立つ」という根本方針のもと、社員および事業関係者一人ひとりが、社会全体や地球でいま起きている課題に敏感に呼応し、提供するすべての商品、サービス、活動の全ライフサイクルにわたり、地球環境負荷低減や個人尊重に努めてまいります。

また、100年後のより良い未来を見据えて、2030年までのビジョンを策定しました。個店を通じて、日常生活の基本を担うと共に、地域社会と共生し課題解決や町づくりに貢献してまいります。

 

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当社グループが2030年ビジョンを目指すにあたり、2022年度からの3年間は、そのための基盤固めの時期と位置づけ、下記4項目を中期経営計画の重点項目として掲げ、スタートしました。

 

中期経営計画の初年度にあたる2022年度におきましては、商品力の強化および収益面では課題が残った一方、国内外での出店加速、組織面の強化、店舗現場の人材育成は順調に進み、事業基盤の構築に努めました。

今後、出店ペースを加速していくにあたり、商品の質を保ち、環境にも配慮したうえで、適正価格の商品を安定して製造・供給することが重要となります。

また、中期経営計画の達成には、社員の自律性がカギとなります。中央集権型・管理統制型の組織から、自律分散型の組織づくりに注力していくとともに、多彩な価値観を取り入れ、組織風土を活性化させることで、持続的な成長を実現してまいります。

 

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2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年11月24日)現在において当社グループが判断したものであります。なお、各リスクが顕在化する可能性の程度や時期については合理的に予見することが困難であるため記載していませんが、当社グループはこれらのリスクに対する管理体制を「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり整備し、リスクマネジメント活動を行っています。

(1) 経済状況、消費動向について

当社グループは、衣服・雑貨、生活雑貨、食品等のオリジナル商品を通してライフスタイルを提案する事業を営んでおり、国内、海外各国における気候状況、景気後退、及び海外での治安悪化及びそれに伴う消費縮小は当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした外部環境の変化への対応として、事業戦略においては持続的な成長基盤の強化と顧客創造、その支えとしての機能戦略においては時代対応した仕組み化や生産性向上を図ることにより、引き続き収益性の改善を図ってまいります。

(2) 海外の事業展開について

当社グループは、ヨーロッパ地域においてイギリス、フランス、スウェーデン、イタリア、ドイツ、アイルランド、スペイン、ポーランド、ポルトガル、スイス、フィンランド、デンマーク、アジア・オセアニア地域において、香港、シンガポール、韓国、台湾、中国大陸、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インド、クウェート、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、カタール、オマーン、オーストラリア、北米地域においてアメリカ合衆国、カナダでの子会社または合弁会社による店舗展開、または現地有力企業への商品供給による事業ならびに現地における商品調達を行っております。

これらの海外における事業展開には、以下のようないくつかのリスクが内在しております。

① 予期しない法律または規制の変更、強化

② 為替レートの変動

③ 不利な政治または経済要因

④ 税制または税率の変更

⑤ 移転価格税制等の国際税務問題による影響

⑥ テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等

万一、上記のような事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新規事業について

当社グループは、住宅事業や流通加工等の小売以外の事業を展開しております。これらの事業は、多くの技術課題を解決し、販売拡大の手法を構築することが重要であります。これらの事業は不確定要因が多く、事業計画どおり達成できなかった場合は、それまでの投資負担が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 災害等について

当社グループは、国内外に店舗、物流センター等を保有しており、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害、事故、火災、テロ、戦争その他の人災等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これら災害等に対する備えとして、対応マニュアル等の策定や損害保険の付保等の対策を講じております。

(5) 個人情報の管理について

当社グループは、営業取引、インターネット取引等により、相当数の個人情報を保有しております。これらの個人情報の管理は社内管理体制を整備し、厳重に行っておりますが、万一個人情報が外部へ漏洩するような事態となった場合は、社会的信用の失墜による売上の減少、または損害賠償による費用の発生等が考えられ、その場合には当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 新型コロナウイルス感染症の拡大について

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の進展、移動制限の緩和等により、国・地域によりばらつきはあるものの、経済活動は緩やかに再開の動きが見られております。しかしながら、完全収束には一定の期間を要すると考えられ、感染拡大の状況や経済活動への影響等によっては当社グループの経営成績および財政状態にさらに大きな影響を及ぼす可能性があります。店舗においてはお客様同士、お客様とスタッフとの距離の十分な確保、消毒・清掃の強化、また、マスク着用、手洗い、消毒、検温といったスタッフの健康管理を徹底しております。また、本社部門(管理、営業等)については、健康管理、時差出勤、テレワークを進め、ウェブ会議等を利用した社内外のコミュニケーションを実施しています。

(7) 人権に関するリスク

当社グループは、自社において生産拠点を有しておりません。商品製造/生産はすべてサプライヤーに委託していることから、サプライチェーンに関わるすべての人の基本的人権を尊重し、心身の健康や安心・安全を確保することが、最も重要な責務だと考えています。そのために、「良品計画生産パートナー行動規範」に基づき、サプライチェーン全体の労働環境、人権尊重、環境配慮の方針を取引先工場と共有し、遵守をお願いするとともに、人権尊重に向けた取り組みを進めています。しかしながら、この方針を逸脱した行為が発生した場合には、当社グループに対するお客様及び取引先の信頼低下などにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8) 気候変動について

当社グループは、気候変動に関わる課題を重要なテーマとして認識し、気候変動への影響を軽減するため、事業活動全般における温室効果ガス排出量の把握と削減に取り組んでいます。気候変動による影響はすでに顕在化しており、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

気候変動によるリスクへの適切な対応および事業機会を特定するため、TCFD「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のフレームワークに沿った分析と対策を進めております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものであります。

なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等の注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展、移動制限の緩和等により、国・地域によりばらつきはあるものの、経済活動は緩やかに再開の動きが見られました。一方、世界的な資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱、急激な円安の進行等により、依然として国内外における経済の先行きは不透明な状態が続いております。

このような状況の中、当社グループは、第二創業にあたり、「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献することを企業理念と定め、事業展開を行ってまいりました。

 

当連結会計年度末における当社グループの総資産は3,993億24百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億66百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金の減少455億89百万円、商品の増加230億38百万円、その他流動資産の増加101億37百万円、有形固定資産の増加60億22百万円および投資その他の資産の増加66億37百万円によるものです。

負債は1,544億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ240億14百万円減少いたしました。これは主に、買掛金の増加109億21百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少648億48百万円、未払法人税等の減少112億54百万円、長期借入金の増加269億6百万円、リース債務の増加52億79百万円および繰延税金負債の増加55億58百万円によるものです。

純資産は2,448億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ299億81百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金の増加135億39百万円、繰延ヘッジ損益の増加70億91百万円および為替換算調整勘定の増加71億87百万円によるものです。

 

    当連結会計年度における当社グループの経営成績は、下記のとおりであります。

 

営業収益               4,961億71百万円(前年同期比 9.4%増)

営業利益                327億73百万円(前年同期比22.8%減)

経常利益                372億14百万円(前年同期比18.0%減)

親会社株主に帰属する当期純利益     245億58百万円(前年同期比27.6%減)

 

(当連結会計年度におけるセグメント別の概況)

当連結会計年度における当社グループのセグメント別業績は、次のとおりであります。

 

① 国内事業

国内事業における当連結会計年度の営業収益は3,081億14百万円(前期比3.7%増)、セグメント利益は152億73百万円(同46.5%減)と、増収減益となりました。

出店が順調に進んだ一方、衣服・雑貨を中心に売上が伸び悩み、既存店売上高前年比(EC含む)は95.4%となりました。衣服・雑貨の販売低迷による在庫処分、急激な円安および輸送費上昇に伴う調達コスト増大等により、営業総利益が伸び悩み、営業利益は減益となりました。

 

② 東アジア事業

東アジア事業における当連結会計年度の営業収益は1,392億27百万円(前期比10.9%増)、セグメント利益は221億54百万円(同3.6%減)と、増収減益となりました。

中国大陸では、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、経済活動に影響が生じたことにより、増収減益となりました。特に第3四半期に、上海、深圳、北京等を中心に最大で約100店舗が店舗休業および営業時間の短縮を余儀なくされるなど、店舗運営に大きな支障が生じ、既存店売上高前年比(EC含む)は88.4%にとどまりました。

そのほか、台湾、香港は増収増益となった一方、韓国は増収減益となりました。

 

 

③ 東南アジア・オセアニア事業

東南アジア・オセアニア事業における当連結会計年度の営業収益は220億16百万円(前期比63.2%増)、セグメント利益は24億75百万円(同207.5%増)と増収増益なりました。

タイ、マレーシア等においては、経済活動が回復したことで、売上も大幅に伸長し、増収増益となりました。

 

④ 欧米事業

欧米事業における当連結会計年度の営業収益は268億13百万円(前期比52.2%増)、セグメント損失は8億56百万円(前期は21億7百万円のセグメント損失)となりました。

北米、欧州ともに経済活動の再開により売上が伸長し、営業損失も縮小しました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動および新規出店等による投資活動、並びに財務活動を行った結果、当連結会計年度末の資金残高は、前連結会計年度末に比べ447億87百万円減少し902億31百万円となりました。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

営業活動の結果獲得した資金は、233億50百万円(前年同期は614億47百万円の収入)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益332億4百万円、減価償却費175億96百万円、および法人税等の支払202億33百万円によるものであります。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

投資活動の結果使用した資金は、166億83百万円(前年同期は135億38百万円の支出)となりました。

これは主に、店舗等の有形固定資産の取得による支出80億30百万円、店舗出店による敷金等の支出17億96百万円およびソフトウエア投資等の無形固定資産の取得による支出78億53百万円によるものであります。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

財務活動の結果使用した資金は、586億47百万円(前年同期は151億62百万円の支出)となりました。

これは主に、長期借入金の返済による支出656億44百万円、配当金の支払110億29百万円によるものであります。

 

生産、受注及び販売の実績

  (1)販売実績

当連結会計年度における販売実績(営業収益)をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

営業収益(百万円)

前期比(%)

国内事業

308,114

103.7

東アジア事業

139,227

110.9

東南アジア・オセアニア事業

22,016

163.2

欧米事業

26,813

152.2

合計

496,171

109.4

 

(注)営業収益の商品別の構成は次のとおりであります。

 

商品別

営業収益(百万円)

前期比(%)

衣服・雑貨

182,784

108.1

生活雑貨

232,703

109.9

食品

59,977

109.9

その他

20,705

113.7

合計

496,171

109.4

 

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

① 営業収益及び営業総利益

当連結会計年度の営業収益につきましては、前連結会計年度に比べて、424億81百万円増(前期比9.4%増)の4,961億71百万円となりました。セグメント別の営業収益の詳細については、「生産、受注及び販売の実績 (1)販売実績」に記載しております。

また、営業総利益は、前連結会計年度に比べて120億21百万円増加し2,343億56百万円となりました。営業収益に対する比率は47.2%となり、前連結会計年度より1.8ポイント減少いたしました。

② 販売費及び一般管理費及び営業利益

当連結会計年度の販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度に比べて216億95百万円増(前期比12.1%増)の2,015億82百万円となりました。営業収益に対する比率は40.6%となり、前連結会計年度より1.0ポイント増加いたしました。

この結果、営業利益は前連結会計年度に比べて96億73百万円減少し、327億73百万円となりました。営業収益に対する比率は6.6%となり、前連結会計年度より2.8ポイント減少いたしました。

③ 営業外損益及び経常利益

当連結会計年度の営業外収益につきましては、前連結会計年度に比べて16億47百万円増加し、60億67百万円となりました。また、営業外費用につきましては、1億27百万円増加し16億26百万円となりました。

この結果、経常利益は前連結会計年度に比べて81億54百万円減少し、372億14百万円となりました。営業収益に対する比率は7.5%となり、2.5ポイント減少いたしました。

④ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の特別利益につきましては、前連結会計年度に比べて46億97百万円減少し、2億24百万円となりました。また、特別損失につきましては、前連結会計年度に比べて25億32百万円増加し、42億34百万円となりました。

この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べて153億84百万円減少し、332億4百万円の利益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べて93億44百万円減少し、245億58百万円の利益となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容及び資本の財源及び資金の流動性に関する情報

① 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に新規出店及び既存店舗の改装といった設備投資、情報システム投資によるものであります。
 これらの運転資金や投資資金は、自己資金により充当することを基本方針としておりますが、必要に応じて資金調達を行ってまいります。

② キャッシュ・フローの分析

当社グループの資金の状況につきましては、「 経営成績等の状況の概要  (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。

 

5【研究開発活動】

当社グループの自社ブランド商品「無印良品」の生活者のニーズへの対応と新規需要開拓のために、常に最新の商品情報を収集し、意欲的な商品研究開発活動を進めております。

商品開発部門である衣服・雑貨部、生活雑貨部及び食品部において商品企画開発を進めております。また、衣服・雑貨部内に企画デザイン室を、生活雑貨部内に企画デザイン担当をそれぞれ設置し、更なる商品開発の強化を図っています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は976百万円であります。

なお、当社グループにおける研究開発活動は概ね全セグメント区分に共通する「無印良品」の開発を目的としておりますので、セグメント別の記載は行っておりません。