半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、半期報告書提出日現在において当社グループが重要と判断したものであります。
当社グループは、物理的、経済的もしくは信用上の損失又は不利益を生じさせる可能性のある事象をリスクと認識し、組織全体として適切に管理する仕組み・プロセスを構築しております。
(1)信用上の損失又は不利益を生じさせる可能性のある事象
① 大型プロジェクトの不良化リスク
当社グループの売上の約60%を占めるエンジニアリングコンサルティング事業は多くが請負契約での受注であり、主にシステム開発、構造設計業務及びコンサルティング業務から構成されています。そのため、契約内容やプロジェクト管理の不備によって作業工数の増大や納品物の品質低下が発生した場合、大幅な採算悪化や顧客への損害賠償等が発生し、当社グループの業績及び事業展開に著しく大きな影響を及ぼす可能性があります。特に影響が大きいシステム開発分野と構造設計業務分野に対しては専門的な品質保証部門であるPM品質保証センターと構造品質保証センターを設置し、各組織に統括責任者を配置することで、業務品質のチェック体制を確保しております。PM品質保証センターはシステム開発関連分野の品質・生産性向上に注力し、構造品質保証センターは構造物や建築物のような長期的視点での品質確保が問われる構造設計業務について品質のチェックを行っております。これらを含め、当社グループでは各事業においてそれぞれの最終成果品のみならず、提案営業段階から最終工程までのプロセスごとの品質確保及び向上に取り組み、全社的な品質マネジメントサイクルを推進しております。特に近年ではプロジェクト受注前における品質リスク管理にも注力しており、更なる品質強化に努めております。更に、プロジェクト管理技術の向上や技術者教育、個人情報を含む機密情報保護の重要性を十分に認識し、社内管理体制を維持強化するとともに、当社グループ所員(当社グループでは従業員ではなく所員と定義)への教育を繰り返し徹底しております。
② 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、知的活動を行う企業として業務遂行にあたり必要な資源としてお客様の機密情報等の情報資産を保有しております。コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の外部からの不正侵入、自然災害の発生等による情報資産の多大な情報漏洩、紛失、破壊及び改ざん等が発生した場合には、当社グループの信用喪失につながり経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループ管理下の全ての活動に係る情報資産を保護の対象とし、技術的・教育的・物理的な側面から対策を講じ、情報管理及び情報セキュリティの強化・徹底を図っております。
(2)経済的損失の可能性のある事象
① 経営成績の季節的変動による資金繰りのリスク
当社グループは、多くの顧客が決算期を迎える3月末から6月末に成果品の引渡しが集中する傾向があり、またこの時期は比較的規模の大きなプロジェクトの完了時期に相当するため、当社グループの売上高及び利益は、上半期に比較して下半期の割合が高くなる傾向にあります。従って、経済状況の悪化等により銀行から借入れが困難になった場合、上半期において資金繰りが悪化するリスクがあります。
当社グループでは、エンジニアリングコンサルティング事業における大型・長期プロジェクトに対しては分割受注・部分売上の交渉を、プロダクツサービス事業においてはサブスクリプション型のビジネスモデル導入を進め売上時期を分散する等、季節的な売上変動による資金繰りのリスクの低減に取り組んでおります。
② 為替変動リスク
日本と欧米との金融政策の方向性の違いから生じる金利差等による円安傾向が継続した場合、当社グループが出資している海外パートナーやプロダクツサービス事業で取り扱っている海外プロダクツの仕入/ロイヤリティ支払いが増加する等、各種事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、販売価格の改訂、仕入及びロイヤリティの一括前払いによる為替レート固定をはじめとして、為替変動リスクの低減に取り組んでまいりました。今後も状況に応じて柔軟に施策を講じると共に、大口の投資案件や仕入及びロイヤリティの一括支払い等については機関決定後適切なタイミングで外貨への変換を行い、為替変動リスクの低減に努めてまいります。
③ 人才に関するリスク
当社グループの企業成長の原動力は人才であると考えております。近年の労働市場全体の流動性の高まりや当社グループの就業環境の悪化等により優秀な人才の流出が発生した場合及び所員が心身の健康を害し戦力ダウンとなった場合に、当社グループの中長期的な成長や経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、採用や人才育成の質が低下し人才の質が確保できなくなった場合には、提供するサービスの質の低下をもたらし、競争力の低下や社会的信用、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、報酬面の改善、社会貢献度の高い業務を通じた活躍の機会や主体的な学びの場の提供、人才育成制度及び福利厚生の充実により、個々人の自己実現の場として働きがいのある環境の整備を進めております。また、参画したばかりの所員が組織に慣れ早期に活躍できるようオンボーディング施策を実施しており、特にキャリア入社所員や外国籍所員に対しては力を入れて取り組んでおります。採用活動においては、大規模な採用は行わない方針とし、良質な母集団形成に資する施策及び所員や役員とのコミュニケーションにより当社グループとのマッチングを見極める面談・面接を実施し、当社グループに参画する人才の質の確保を図っております。健康面においては、産業医に健康相談できる体制や身体のコンディションを整えるマッサージが気軽に受けられる体制の整備、当社グループ専用のトレーニングジムの設置・運営、セクシャルハラスメントやパワーハラスメント等労務相談窓口の設置等心身ともに健康的に働くための支援を行っております。また、オフィス内に学びの場としてライブラリや所員の交流の場としてカフェの設置等の物理的な就業環境の改善にも取り組んでおります。このような取り組みにより人才の定着・質の確保及び人才が健康的で持続的に働ける環境作りに努めております。
(1)経営成績の状況
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
なお、当社は、2024年7月1日に単独株式移転により、株式会社構造計画研究所の完全親会社として設立されたため、前年同期との比較は行っておりません。
当社グループは、21世紀の日本を代表する『知識集約型企業』をありたい姿としており、社会とともに目指す未来像・方向性として、ソート(Thought)「Innovating for a Wise Future」を掲げております。このソートには、「工学知」をベースにした有益な技術を社会に普及させることにより、より賢慮にみちた未来社会を創出していきたいという思いが込められております。この実現に向けて、Professional Design & Engineering Firmとして、多様な人才が自らの人生に生きがいを感じる場であり続け、工学知と情報技術に裏付けられた高付加価値なサービスを社会に提供し続ける経営を推進しております。
当中間連結会計期間の経営成績は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
当中間連結会計期間 |
連結受注高 |
9,720 |
連結売上高(※) |
8,319 |
連結売上総利益 |
3,710 |
連結営業利益 |
136 |
連結経常利益 |
111 |
税金等調整前中間純利益 |
111 |
親会社株主に帰属する中間純利益 |
3 |
(※)連結売上高に含まれる株式会社構造計画研究所の売上高 8,183百万円
当中間連結会計期間においては、前事業年度から繰り越された豊富な受注残高に加え、エンジニアリングコンサルティングの着実な進捗、及びプロダクツサービスにおけるクラウド提供型ビジネスの成長が継続したことで、売上高は順調に推移し、営業損益は黒字となりました。
当社グループでは、多くの顧客が決算期を迎える下半期に成果品の引渡しが集中することから、中間連結会計期間の売上高及び利益が占める割合は低い水準となる傾向があります。一方で、エンジニアリングコンサルティングでは分割受注・部分売上の交渉を進めたことと、順調な成長を続けるクラウド提供型ビジネスのサブスクリプション収入の拡大が下支えとなり、連結全体の売上高及び利益の下期偏重傾向は徐々に緩和しております。なお、当中間連結会計期間の売上高が通期の連結業績予想に対して占める割合は42.7%となっております。
受注残高に関しては93億98百万円を確保しており、これらの案件を引き続き着実に遂行するとともに、更なる受注獲得に努め通期計画の達成を目指してまいります。
(参考)株式会社構造計画研究所の2023年7月1日~12月31日の経営成績
(単位:百万円)
受注高 |
8,927 |
売上高 |
7,090 |
売上総利益 |
2,941 |
営業利益(△損失) |
△348 |
経常利益(△損失) |
△153 |
税引前中間純利益(△損失) |
△152 |
中間純利益(△損失) |
△132 |
当中間連結会計期間の報告セグメント別の状況は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
エンジニアリング コンサルティング |
プロダクツサービス |
その他 |
連結受注高 |
6,264 |
3,310 |
145 |
連結売上高 |
4,528 |
3,587 |
203 |
連結売上総利益 |
2,208 |
1,447 |
54 |
連結売上総利益率(%) |
48.8 |
40.3 |
26.9 |
連結受注残高 |
7,260 |
1,993 |
145 |
「エンジニアリングコンサルティング」、「プロダクツサービス」の区分には株式会社構造計画研究所が、「その他」の区分には株式会社構造計画研究所を除く他の会社が含まれています。
(エンジニアリングコンサルティング)
当中間連結会計期間においては、前事業年度から繰り越された案件及び今期獲得した受注案件を着実に遂行することで堅調に推移しました。また、全体工事の遅れ等の外部要因による売上計上への影響を低減するために契約を細分化し、分割受注・部分売上等の対応を実施したことで、遅滞なく売上高及び利益を計上することができました。今後も引き続き品質の確保に留意しながら着実に案件を遂行するとともに、付加価値の高い案件獲得に努めてまいります。
(プロダクツサービス)
当中間連結会計期間においては、クラウドサービス提供型ビジネスが売上成長をけん引しました。クラウド型入退室管理システムRemoteLOCKは、引き続き宿泊施設や地方自治体への導入が進んでおります。また、現場3D化を加速するNavVisは、お客さまのクラウド利用が拡大する他、新製品のハンディ型3Dレーザースキャナの販売を10月から開始しました。
(参考)株式会社構造計画研究所の2023年7月1日~12月31日のセグメント別の状況
(単位:百万円)
|
エンジニアリング コンサルティング |
プロダクツサービス |
その他 |
受注高 |
5,851 |
3,076 |
- |
売上高 |
3,987 |
3,103 |
- |
売上総利益 |
1,732 |
1,208 |
- |
売上総利益率(%) |
43.5 |
39.0 |
- |
受注残高 |
7,134 |
1,899 |
- |
(2)財政状態の状況
(資産)
当中間連結会計期間末の流動資産は、71億49百万円となりました。主な内訳は、受取手形、売掛金及び契約資産が31億64百万円、現金及び預金が12億49百万円であります。
当中間連結会計期間末の固定資産は、111億45百万円となりました。主な内訳は、土地が32億35百万円、投資有価証券が29億12百万円であります。
この結果、総資産は、182億95百万円となりました。
(負債)
当中間連結会計期間末の流動負債は、56億12百万円となりました。主な内訳は、前受金が16億18百万円、短期借入金が11億円であります。
当中間連結会計期間末の固定負債は、40億59百万円となりました。主な内訳は、退職給付に係る負債が22億26百万円、長期借入金が13億17百万円であります。
この結果、負債合計は、96億71百万円となりました。
(純資産)
当中間連結会計期間末の純資産合計は、連結決算の開始に伴い持分法適用会社の過去の累計損失を取り込み、86億23百万円となりました。主な内訳は利益剰余金が61億2百万円であります。
(3)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、12億49百万円となりました。当中間連結会計期間に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間における営業活動による資金の減少は11億57百万円となりました。主な要因は、未払費用の減少額16億43百万円、賞与引当金の増加額8億56百万円、前渡金の増加額4億44百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間における投資活動による資金の減少は6億36百万円となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出3億81百万円、投資有価証券の取得による支出2億1百万円、無形固定資産の取得による支出36百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間における財務活動による資金の減少は1億4百万円となりました。主な要因は、資金の流入では短期借入金の純増額11億円、自己株式の処分による収入1億68百万円、資金の流出では長期借入金の返済による支出4億65百万円、配当金の支払額5億45百万円であります。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当中間連結会計期間における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
エンジニアリングコンサルティング |
2,207,072 |
プロダクツサービス |
2,090,169 |
その他 |
252,799 |
合計 |
4,550,041 |
(注)1.金額は総製造費用より他勘定振替高を控除した金額によっております。
2.当社は、2024年7月1日に単独株式移転により、株式会社構造計画研究所の完全親会社として設立されたため、前年同期との比較は行っておりません。
② 受注実績
当中間連結会計期間における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
受注残高(千円) |
エンジニアリングコンサルティング |
6,264,162 |
7,260,028 |
プロダクツサービス |
3,310,551 |
1,993,192 |
その他 |
145,494 |
145,591 |
合計 |
9,720,208 |
9,398,812 |
(注)1.金額は販売価額によっております。
2.当社は、2024年7月1日に単独株式移転により、株式会社構造計画研究所の完全親会社として設立されたため、前年同期との比較は行っておりません。
③ 販売実績
当中間連結会計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
エンジニアリングコンサルティング |
4,528,357 |
プロダクツサービス |
3,587,498 |
その他 |
203,236 |
合計 |
8,319,092 |
(注)当社は、2024年7月1日に単独株式移転により、株式会社構造計画研究所の完全親会社として設立されたため、前年同期との比較は行っておりません。
(5)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(6)経営方針・経営戦略等
① 経営の基本方針
当社グループは、ありたい姿として21世紀の日本を代表する『知識集約型企業 Professional Design & Engineering Firm』を目指しております。ありたい姿を実現し社会と共に目指す未来像・方向性として、ソート(Thought)『Innovating for a Wise Future』を掲げております。このソートには、「工学知」をベースにした有益なソリューションを社会に普及させることにより、顧客、大学研究機関、国内・海外パートナーなどの各ステークホルダーと共に、より賢慮にみちた未来社会を創出していきたいという思いを込めております。
これらの方針を基に、当社グループの付加価値創造の源泉である多様な「人才」(当社グループでは知識集約型企業という形態の組織を支えるため、「人」を経営のリソースとして扱う“人材”や“人財”ではなく、個々の才能に着目する“人才”と定義)と共に社会を良くするためには何が必要かを考え抜き、「知(知識、知恵の集合体)」と情報技術を組み合わせ、将来に向けた新たな価値を創造し、各ステークホルダーと共にサステナブルな成長を目指してまいります。
当社グループが持続的に発展していくための経営基盤である「品質の確保及び向上」、「今後のビジネスを担う優秀な人才の確保と育成」を維持・強化するとともに、高い品質をベースとした付加価値の高い既存事業の着実な推進と更なる付加価値増大を目指した新たな事業投資を行うことで中長期的な企業価値向上を目指しております。
当連結会計年度(2025期6月期)に当社グループは持株会社制を導入いたしました。新たな体制において豊富な人的資本をより柔軟に活用し、既存事業では高い収益性の維持とサステナブルな成長を、新規事業では必要な投資の継続により高い成長率と規模の拡大を目指してまいります。
② 目標とする経営指標
当社グループは、より優れた人才が集い、互いに切磋琢磨して成長していくことが重要だと考えており、事業の成長と人才の確保・成長の両輪で持続的な成長を目指しております。こうした背景から、利益の追求に加えて、成長の源泉となる人才への還元も鑑み、営業利益に人件費と福利厚生費(フリンジベネフィット)を加えた指標を「総付加価値」と定義し、中長期的に5%~7%の年間成長を経営目標としております。得られた利益を、株主や所員をはじめとした各ステークホルダー及び将来に向けた新規事業への投資へ適正に配分することで、サステナブルな成長を実現し、更なる成長に繋げていきたいと考えております。
また、期末のネット有利子負債については、今後も事業投資とのバランスを勘案しつつ適切な水準を維持していくとともに、自己資本比率の適正な水準の維持、高いROEの維持・向上、配当性向やDOEを考慮した中長期保有株主に対する継続的かつ安定した配当も目標といたします。
当連結会計年度(2025期6月期)において、既存事業では高い収益性の維持、着実な成長とともに、組織風土に見合った品質の高い仕事を追求し、クラウドサービス提供型ビジネス等の新規事業においては規模拡大に向け、より高い成長及び利益率の改善を目指し、経営指標である総付加価値の計画(112億77百万円)を達成するとともに中長期的な成長を見据えた投資を着実に進捗させるなど、組織の定性的な頑強さを増してまいります。
③ 知識集約型企業としての行動指針
当社グループは、「知」を「価値」として社会に提供していく知識集約型企業としての行動指針として、以下の点を重視しております。
イ) 自律・自立と機動性
公開企業としてガバナンスを強化しつつも、フラットで意思決定が早い組織の維持に努めます。社内外を繋げることで生まれるオープンイノベーションを推進するためにも、自由闊達な知の探索を奨励し、所員が切磋琢磨し主体的にチャレンジできる組織風土を作ってまいります。
ロ) 独立性
信頼されるパートナーとして安心して業務を任せていただけるように、独立系企業として全ての顧客と対等なパートナーシップを構築し、良好な関係を築いてまいります。さまざまな企業の業務の理解を深めて経験知を蓄積し、知識集約型企業に相応しい価値提供を目指します。
ハ)多様性
当社グループは「社会のいかなる問題にも対処できるよう、バラエティに富んだ専門家を集めた工学を生業とした組織を作りたい」という創業の志を引き継ぎ、人才の多様性を重視しております。専攻、性別、年齢、国籍等に依らない所員個々の多様な経験や知見、価値観が組織の活性化及び新たな事業展開に繋がると考えております。
ニ)透明性
各ステークホルダーに対しては、透明性の高いガバナンス体制の構築に継続して取り組んでまいります。また、当社グループのありたい姿を実現するため、組織としての目標を所員全員に共有し、その目標達成を目指してまいります。
ホ)社会性
当社グループの所員全員が、「真善美」を追求し、様々な活動において関わる人の行動や考え、評価や価値観などを察し「慮る」姿勢を常に持ち続け、各ステークホルダーや社会へ貢献してまいります。
(7)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、品質管理を最重要事業課題として捉えるとともに、人才をサステナブルな成長の源泉と考えております。品質管理の点では、納期・予算・質の面から第一級の顧客満足度の獲得を目指し、各々のサービスに適した品質確保に取り組み続けております。人才の点では、個人の成長を促す機会の提供に加え、多くの優秀かつ多様な人才が参画し意欲的に働ける場作りに力を入れております。当社グループは、既存事業により得られた収益を次のシーズや新規事業へ投資することで持続的な成長を実現してきました。今後も中長期的な経営目標を達成するために、既存事業の受注活動における量と質の確保、更なる利益性向上、継続的な新規事業の創出が継続的な課題と考えております。
このような認識のもと、当社グループは以下の観点を踏まえた施策を積極的に推進してまいります。
① 品質の確保及び向上
当社グループは、確かな品質と付加価値の高い成果により顧客の信頼と期待を獲得し続けることができると考えております。過去から蓄積してきた組織知をベースに品質管理体制を構築しておりますが、更なる改善と着実な運用に継続的に取り組みます。また何よりも品質に対する所員一人ひとりの拘りが重要であることを認識し、責任感の醸成を図ってまいります。事業の中核となる既存事業だけでなく、多岐にわたるビジネスの形態に応じた品質保証のあり方についても引き続き検討し全社的に取り組んでまいります。
② 多様性のある優秀な人才の確保・育成・定着
前述のとおり、当社グループの価値創造の源泉は人才です。社会のいかなる問題にも対処できるように人才の多様性を重視しており、当社グループのありたい姿や企業理念に共感する人才の採用に力を入れております。新卒採用活動では外部環境の変化に留意し良質な母集団形成に資する施策として長期インターンシップへの注力、選考フローの変更等、今後も改善を継続していくとともに、入社前から所員との交流の機会を積極的に創出するなど、当社グループへの入社意欲を高めるコミュニケーションを早期の段階から行っております。また当社グループの強みである多くの大学との関係性を活かし、各研究室への個別のアプローチを強化します。キャリア採用活動においては、リファラル採用なども強化し、当社グループの経営方針やありたい姿に対する共感度の高い人才の採用を目指しております。また、昨今の転職市場の高い流動性に鑑み、キャリア採用チームの体制強化も実施してまいります。海外採用においては、シンガポールでの採用活動及び国内留学生へのアプローチを通して、多様な文化的背景や価値観を有する外国籍人才の獲得を目指しております。
人才の質の面においては、当社グループが大切にしている品格や徳といった価値観、社会貢献度の高い価値提供というミッションを共有し共感できるように全社に向けた定期的な経営メッセージの発信、全所員参加の創業イベント等の施策も実施してまいります。今後も技術力だけでなく、営業力、マーケティング力、企画力等に秀でた多様な人才を確保し、多様な領域へとビジネスを拡大してまいります。
更に、様々な事由(育児、介護、配偶者の転勤等)により、働く場所や時間等の制約なく自由な働き方を選択したい所員のために2022年7月に設立された株式会社KKEスマイルサポートを活用し、金銭的な待遇だけでなく、所員一人ひとりが自らの能力を発揮し、自己実現できる場を提供いたします。また熊本に拠点を構える株式会社PARA-SOLでは、地方ならではの豊かな生活を希望する方々の活躍の場を提供いたします。
人才の成長を支援する方針として、若手には研鑽の機会、経験者にはプロジェクト運営における裁量が与えられ、その結果として、顧客満足度が高く、質の高い成果が提供できる企業風土を維持してまいります。また、単に年齢で立場や処遇を決定することなく、若手からシニアメンバーまでそれぞれの所員が持つ才能を評価した上で役割や処遇を決定しております。
今後も個々人が成長できる場や主体的に挑戦できる機会等を整備することで、所員にとってより魅力の高い組織となるよう、報酬面の改善に留まらない所員のモチベーションを上げるための様々な制度の改善に取り組んでまいります。
③ 付加価値向上及び高い品質をベースとした既存事業の着実な推進
当社グループの事業においては、工学知の積み重ねやバラエティに富んだ解決策の提案による顧客への着実な付加価値提供及び、各プロジェクトにおける高い品質を目指す必要があると考えております。まず、今後当社グループが安定的かつ継続的な成長を実現するために、豊富な経験知や複数分野の工学知による多角的な視点に加え、顧客密着により得られる信頼関係に基づき、価値ある提案となるように注力してまいります。
④ 中長期的な企業価値向上を目指した新規事業開発・開拓
社内発の新規ビジネスの立ち上げ・更なる成長に向けた積極的なマーケティング活動に取り組んでおります。特に新規ビジネスの立ち上げにおいては、オープンイノベーションの実践として、大学・研究機関との長期的な関係の維持、発展を継続しており、粉体シミュレーションのiGRAFや水位予測ソリューションRiverCastは東京大学の社会連携講座による成果となります。また海外の有用なサービスを日本に導入し、普及させることにも力を入れてきました。その成果として、これまでに、Twilio Inc.、NavVis GmbH、RemoteLock,Inc.、Vitracom GmbH、Inferics GmbH等の海外スタートアップ企業のサービスを導入してまいりました。近年はドイツのSimScale GmbH 、PeakAvenue GmbHやポルトガルのAllbesmart LDAのサービスも開始しました。今後も国内外の大学・研究機関及びパートナー企業と協業を行うとともに、社内事業開発も進めてまいります。このように前述の企業をはじめとした当社グループとWin-Winの関係構築ができるスタートアップ企業を含めたパートナー企業と共に、オープンイノベーションを推進してまいります。また、近年では社内のビジネスシーズを発掘するための研究開発投資(未来投資)に力を入れており、こうしたシーズが次世代における当社グループの中核となるようなビジネスに発展するよう、事業育成の活動も継続的に行ってまいります。
(8)研究開発活動
当社の研究開発活動は、社会の複雑化する課題やお客様のニーズに応えるための技術開発と、その社会実装を推進する取り組みを中心に展開しています。これらは、中長期的な成長を見据えた戦略的投資と、新規事業の迅速かつ大規模な成長を目指す短期的な投資の両面から構成されています。また、産学連携や外部パートナー企業との協業を通じて、これらの取り組みを加速し、実現を図っています。
当中間連結会計期間において当社が支出した研究開発費の総額は1億63百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
① エンジニアリングコンサルティング
エンジニアリングコンサルティングでは、前期より販売を開始した、実験・研究用のオープンソース5G基地局をオールインワンパッケージで提供するOAIBOXについて、次世代通信技術の実証・実験を迅速に行える環境の実現を目指したプラットフォーム開発を継続しております。東京大学社会連携研究部門「建築・都市サイバー・フィジカル・アーキテクチャ学」における研究成果をベースとし技術実証を進めている設備系統デジタルツインについては、プロトタイプ版の完成が間近であり、今後外部パートナー企業と検証を進め事業化を加速してまいります。
当中間連結会計期間の研究開発費の金額は1億10百万円であります。
② プロダクツサービス
プロダクツサービスでは、計測データを活用してシミュレーションの精度を向上させるデータサイエンス技術「データ同化」を、専門知識がなくても迅速に利用できるようにすることを目指し、データ同化プラットフォームの開発に注力しています。その結果、アルファ版の完成に至りました。本技術の適用範囲は製造業にとどまらず、運用・維持管理、防災など、幅広い分野へと拡大しています。建築分野では、現場での即時的な構造検討や技術者のスキル向上を支援する構造解析デジタルノートMystructureNoteのiOSアプリ版を開発し、完成しました。今後はリリースを予定しており、総合建設業を中心とした市場での本格的な展開を目指します。
当中間連結会計期間の研究開発費の金額は53百万円であります。
当社グループは、事業の多様化に即した自立的・機動的な意思決定と事業運営、並びに人を中心とする経営資源の適切な配分を行うことにより持続的な成長を目指すため、2024年7月1日付けで株式移転により株式会社構造計画研究所ホールディングスを設立し、持株会社体制への移行を行いました。それに伴い、今後の当社グループの管理・運営を円滑に進めるため、会社分割を行い、株式会社構造計画研究所の資産等を当社に承継しました。詳細については、「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
また、持株会社体制への移行に伴い、当社は、連結子会社である株式会社構造計画研究所との間で、経営指導、業務受託サービス提供及び建物等の貸付を行うことについて、それぞれ契約を締結しております。