独立監査人の監査報告書

 

2024年9月27日

工藤建設株式会社

取締役会 御中

 

監査法人FRIQ

 東京都千代田区

 

 

指定社員
業務執行社員

 

公認会計士

山 本 毅

 

 

 

指定社員
業務執行社員

 

公認会計士

笠 原 寿 敦

 

 

 

指定社員
業務執行社員

 

公認会計士

田 中 康 毅

 

 

<財務諸表監査>

 監査意見

当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている工藤建設株式会社の2023年7月1日から2024年6月30日までの第53期事業年度の訂正後の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、重要な会計方針、その他の注記及び附属明細表について監査を行った。

当監査法人は、上記の財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、工藤建設株式会社の2024年6月30日現在の財政状態並びに同日をもって終了する事業年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。

 

 監査意見の根拠

当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。

 

監査上の主要な検討事項

監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。

 

 

工事契約における収益認識

監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由

監査上の対応

【注記事項】(重要な会計方針)の「6 収益及び費用の計上基準」に記載のとおり、会社は、完成工事高及び完成工事原価の計上基準として、期間がごく短い工事を除き、財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識する方法を採用しており、履行義務の充足に係る進捗度の測定は、各報告期間の期末日までに発生した工事原価が、予想される工事原価の合計に占める割合に基づいて行っている。

【注記事項】(重要な会計上の見積り)の「(1)当事業年度の財務諸表に計上した金額」に記載のとおり、当事業年度に係る完成工事高11,731,821千円のうち86.7%に相当する10,177,777千円を一定の期間にわたり収益を認識する方法により収益認識しており、その中には翌事業年度以降完成予定の工事に係る完成工事高3,544,768千円が含まれている。

 

一定の期間にわたり収益を認識する方法の適用にあたっては、工事原価総額を基礎として期末までの実際発生原価に応じた履行義務の充足に係る進捗度に工事収益総額を乗じて完成工事高を算定しており、工事収益総額、工事原価総額及び期末における工事進捗度は、事業環境の状況も踏まえた経営者の重要な予測・判断が用いられる。

特に工事原価総額の見積りにおいては、工事契約ごとに仕様や作業内容及び工期等が異なり、個別性が強いことから、発注者の指示による工事内容の追加や変更、着工当初において予期し得なかった事象の発生、並びに工程圧迫や遅れに伴う外注費の追加発注見込等により、工事原価総額が大幅に増加又は減少する可能性がある。これらの予測・見積りに際しては不確実性を伴い、工事原価総額の適時な修正・見直しが行われない場合、各事業年度の完成工事高が適切に計上されないリスクが存在する。

さらに、期末時点における進捗度の算定においては、工事原価総額を基礎とすることからも、工事原価総額の適時な修正・見直しが行われない場合、各事業年度の完成工事高が適切に計上されないリスクが存在する。

以上により、当監査法人は、一定の期間にわたり収益を認識する方法の適用における工事原価総額及び工事進捗度に係る会計上の見積りは不確実性を伴い、かつ経営者の重要な予測・判断が用いられることに鑑み、当事業年度の財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項に該当すると判断した。

当監査法人は、工事原価総額及び工事進捗度の見積りの妥当性を検討するにあたり、主として以下の監査手続を実施した。

 

(1)内部統制の評価

工事原価総額の見積りに採用される実行予算等の策定・承認プロセス及び着工後の見直しを含むモニタリングの整備・運用状況を評価した。

 

(2)一定の期間にわたり収益を認識する方法を適用した会社の全ての工事に対して、監査上の主要な検討事項の内容と選定理由で記載したようなリスクが存在する可能性のある工事を識別するため、リスク評価分析を実施した。

当該分析によって抽出された工事に対し、分析結果に応じて、以下の監査手続から一つ又は複数を組み合わせて実施した。

 

①工事原価総額の見積りについて、その基礎となる実行予算書等との照合、見積原価の計算方法が工種ごとに積上げにより計算されているか、工事予算書の中に重要な原価低減策が含まれているかどうかの検討

②工事損益率が過去の実績や他の施工中工事等と比較して著しく高い場合の要因について適切な工事責任者に対する質問並びにその根拠となる管理資料及び証憑の閲覧による合理性の検討

③工事損益率が前期(又は直前四半期)時点での見込みと比較して著しく増減している場合の要因についての適切な工事責任者に対する質問並びにその根拠となる管理資料及び証憑の閲覧による合理性の検討

④会計上の進捗度と工事の時間経過率等との乖離に重要性がある場合の要因について適切な工事責任者に対する質問並びにその根拠となる管理資料及び証憑の閲覧による合理性の検討

 

さらに、複数の重要な工事について、期末日付近で工事現場を視察し、工事の進捗状況と工事原価の発生状況との整合性及び工事原価総額の見積りとの整合性を検討した。

また、実績原価の計上時期を確かめるため、一部の工事未払金期末残高について確認を実施した。

 

 

 

不適切な原価管理

監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由

監査上の対応

会社は、【有価証券報告書の訂正報告書の提出理由】に記載のとおり、過年度に受注した工事の原価を検証している過程において、原価を過少計上していた工事が判明したほか、工事原価を別の工事として計上(原価の付替え)しようとしていたことが発覚したため、2025年1月7日に外部有識者を委員長とする社内調査委員会を設置し、事案関係の調査、類似事象の有無の確認、原因分析及び再発防止策の提言等を行うことを目的として調査を実施し、2025年2月4日に社内調査委員会から調査報告書を受領している。

社内調査委員会による調査の結果、複数の工事案件において、外注費等の工事原価の計上漏れ及び他の工事への付替え等の不適切な原価管理が行われていたことが判明した。

そのため、会社は不適切な原価管理による過年度の不適切な会計処理を修正すべきと判断し、2024年6月期の第1四半期から第3四半期までの四半期報告書及び有価証券報告書の訂正報告書を2025年2月14日に提出している。

当監査法人は、当該訂正報告書に含まれる財務諸表等の監査にあたっては、訂正の原因となった不適切な原価管理による重要な虚偽表示の内容や範囲を網羅的に理解した上で、その発生原因、類似事象の有無及び財務諸表に対する影響の検討が必要であり、慎重な判断が必要であることから、当該事項が監査上の主要な検討事項に該当すると判断した。

当監査法人は、当事業年度の不適切な原価管理の判明及びそれに伴う訂正報告書の提出を受けて、主に以下の監査手続を実施した。

 

(1) 社内調査委員会が実施した調査結果を監査証拠として利用するため、下記の観点で、調査報告書及び関連資料の閲覧、並びに社内調査委員会に対する質問等の手続により、調査報告書の信頼性を評価した。

・社内調査委員会メンバーの能力

・社内調査委員会の客観性

・社内調査委員会が実施した調査の範囲、実施手続、調査結果及びその根拠の妥当性

 

(2) 本事案の事実関係を適切に把握し、本事案と類似した事象の有無を確かめるため、以下の手続を実施した。

・社内調査委員会に対する、調査の範囲、手法、本事案の特徴や発生原因、及びこれらに対する社内調査委員会の見解についての質問

・会社の役職員に対するヒアリング調査に関する資料の閲覧及び調査担当者への質問

・デジタルフォレンジック調査に関する資料の閲覧及び調査担当者への質問

・社内調査委員会が必要と判断した役職員を対象とした社内アンケート調査結果の閲覧及び追加ヒアリング調査に関する資料の閲覧並びに調査担当者への質問

・社内調査委員会が必要と判断した協力会社を対象としたアンケート調査結果及び関連資料の閲覧並びに調査担当者への質問

 

(3) 本事案の特徴や発生原因に対する社内調査委員会の見解を踏まえ、関連する内部統制の整備及び運用状況の有効性についての評価を行うとともに、必要な監査手続を追加で実施した。

 

(4) 社内調査委員会の調査結果に基づき、必要な修正処理が過年度の財務諸表等に適切に反映されていることを検証した。

 

 

その他の事項

有価証券報告書の訂正報告書の提出理由に記載されているとおり、会社は、財務諸表を訂正している。なお、当監査法人は、訂正前の財務諸表に対して2024年9月27日に監査報告書を提出しているが、当該訂正に伴い、訂正後の財務諸表に対して本監査報告書を提出する。

 

その他の記載内容

その他の記載内容は、有価証券報告書の訂正報告書に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査役及び監査役会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

当監査法人の訂正後の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。

財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。

当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。

その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。

 

財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任

経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。

財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。

監査役及び監査役会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

 

財務諸表監査における監査人の責任

監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。

監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。

・  不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。

・  財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。

・  経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。

・  経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する財務諸表の注記事項が適切でない場合は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。

・  財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた財務諸表の表示、構成及び内容、並びに財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。

監査人は、監査役及び監査役会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。

監査人は、監査役及び監査役会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去するための対応策を講じている場合又は阻害要因を許容可能な水準にまで軽減するためのセーフガードを適用している場合はその内容について報告を行う。

監査人は、監査役及び監査役会と協議した事項のうち、当事業年度の財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。

 

 

 

<報酬関連情報>

当監査法人及び当監査法人と同一のネットワークに属する者に対する、会社の監査証明業務に基づく報酬及び非監査業務に基づく報酬の額は、「提出会社の状況」に含まれるコーポレート・ガバナンスの状況等 (3)【監査の状況】に記載されている。

 

利害関係

会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。

     以  上

 

 

※1.上記は監査報告書の原本に記載された事項を電子化したものであり、その原本は有価証券報告書提出会社が別途保管しております。

2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。

 

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